ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命

2017-03-31 22:40:05 | さ行

ナタポーの表情が、すべて。


「ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命」61点★★★


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1963年11月22日。

テキサス州ダラスにやってきた
夫ジョン・F・ケネディ大統領(キャスパー・フィリップソン)と
妻ジャッキー(ナタリー・ポートマン)は

オープンカーに乗り込み、パレードに参加する。

が、そのとき
夫を銃弾が襲った――。

夫の死後、
ジャッキーは取材に来た「ライフ」誌のジャーナリスト(ビリー・クラダップ)に
語り始める。

あのとき、そしてあのあと、
自分が何を見て、何を感じたのかを――。

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「NO」の監督とあって
想像はしていたけれど、かなり特殊な映画だった。

本当にケネディ暗殺後の
ファーストレディーの心境にのみフォーカスし
二人の出会いとか、大統領の功績とか
なんとなーく期待する
偉人伝的な要素はゼロ。


ナタリー・ポートマンの演技にすべてをかけて
その表情と声で編まれる
心理サスペンスのようでもあって。

ある意味「ブラック・スワン」とも言えるんじゃないだろか。

この題材にして
なんという思い切った映画なんだろう!と驚きます。

ただ
多くを語らない、のはいいんだけど
こちらが「歴史的事件」と構えてしまっているので
あまりにもヒラリと交わされ“すぎた”感じ。

ジャクリーン・ケネディのなんたるかを知らないと、
かなりちんぷんかんぷんなんですよ。

逆に見終わってから
二人のことを調べると、なるほどと思う。

子を失った経緯や夫との不仲などがわかると
この映画の意図するところが、なんか腑に落ちました。

いや、不勉強なのは認めるけど
知らないんですよ、そこまで・・・(苦笑)


★3/31(金)から全国で公開。

「ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命」公式サイト
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ムーンライト

2017-03-30 20:31:28 | ま行

後出しみたいだから言わなかったけど
作品賞はこれだと思ってた(←ゆってるじゃん。笑)


「ムーンライト」77点★★★★


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治安の悪いマイアミの公団住宅で
母(ナオミ・ハリス)と暮らす少年シャロン(アレックス・ヒバート)。

体が小さく、内気な彼は
学校で“リトル”とあだ名をつけられ
“オカマ”だといじめられている。

ある日、いじめっ子たちに追いかけられた彼は
フアン(マハシャーラ・アリ)に助けられる。

麻薬のディーラーで強面のフアンは
なぜかシャロンを気にかけ、面倒を見てくれるようになるが――。


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これは応援したくなる映画!

一人の若者の人生を
「幼少期」「少年期」「青年期」に分けて
別の俳優に演じさせる手法もおもしろいし

とにかく
フレッシュさと、リリシズムに溢れている。

人物の周りをカメラが360回転したりする、ラフで自由なカメラワーク。
月夜の闇、明け方のブルーなど
主人公たちの肌を照らし、たゆとう光。

なにより好きなのは
「察してくれよ」なところですね。

麻薬中毒者や売人がはびこる
危険なマイアミの地域が舞台なのに
過激な暴力描写もなく、

3つのパートに飛ぶ
そのあいだの説明もなく。

すべては
言わずもがな、言わぬが花。

そんななかで描かれる
主人公の迷いや届かぬ想いに、キュンとする。

日本的な
わびさび、さえ感じるなあと思った。

監督は「ウォン・カーウァイやゴダールに影響を受けた」と
語ってるんですが

ツイッターで見つけた動画で
「ウォン・カーウァイ監督作との類似点」
というのを見て
すんごく納得!いきました。

コレ作った
Alessio Marinacciさんはスゴイ。


でもね、正直、試写では
“ダブル・マイノリティ”(=ブラックでゲイ、ということ。「ぼくの魔法の言葉」のロジャー監督が言ってた)
という題材ゆえか、
首を振りながら出て行く年配の方も散見した。

そういう場面に出くわすたびに
壁ってまだまだあるんだよなあと、ホント実感するんですよね。

そんなもの越えて、
この映画が羽ばいていくことを願ってるし、
きっと羽ばたくと思う!


★3/31(金)からTOHOシネマズ シャンテほか全国で公開。

「ムーンライト」公式サイト
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サラエヴォの銃声

2017-03-27 23:50:56 | さ行

ダニス・タノヴィッチ監督が
故郷サラエヴォで初めて撮った作品。


「サラエヴォの銃声」67点★★★☆


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サラエヴォ事件から100年の記念式典のため
老舗の「ホテル・ヨーロッパ」にさまざまな人々が集まってくる。

ある女性ジャーナリストは
ホテルの屋上で教授にインタビューをしている。


支配人のオメルは
VIPである俳優を迎え入れ、

美人ホテルウーマンのラミヤは
厨房のコックから言い寄られ
迷惑そうだが、変わらず
テキパキと仕事をこなしている。


だが、ホテルの経営は
実は悪化していた。

そしてこのタイミングで賃金未払いに抗議する
従業員たちのストが行われようとしてるのだが――。


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ダニス・タノヴィッチ監督の新作。

サラエヴォ事件から100年の記念式典の舞台になるホテルでの
1日の出来事を、さまざまな人の視点から追う群像劇。


ホテルウーマン役のラミヤ(スネジャナ・ヴィドヴィッチ)は美人だし、
フランス人俳優、ジャック・ウェバーも活き活きしてるし
さすがの“世界標準”なんですが

いかんせん
「サラエヴォ事件なんて、知ってるよね当然?」な体で進むので
事件や、サラエヴォの歴史をある程度知らないと
誰と誰が対立しているのか、
いや、そもそも何の口論をしているのか「??」となってしまい
映画の意図がちょっとわかりにくいのがカナシイ。

まあ映画でも
インタビューに答える教授とかが
少し解説してくれてはいるんだけど・・・
理解力が低くてスミマセン。


資料によりますと
サラエヴォ事件とは、1924年6月28日に発生した事件。
オーストリア=ハンガリー二重帝国の皇太子と妻が
サラエヴォ訪問中にボスニア系セルビア人プリンツィブによって
射殺されたもので

これが
第一次大戦の引き金になった――そうです。

えーと、ぜひ
みなさん、学んでください!
(お前はいーのか。苦笑


★3/25(土)から新宿シネマカリテにて「汚れたミルク/あるセールスマンの告発」と連続公開。

「サラエヴォの銃声」公式サイト
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標的の島 風(かじ)かたか

2017-03-24 23:48:22 | は行

やっぱり、この映画によく出てくる石嶺さんが
いまニュースになっている方か。

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「標的の島 風(かじ)かたか」70点★★★★


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「標的の村」
「戦場ぬ止み」
などで
沖縄の現状を訴え続ける、三上智恵監督の新作ドキュメンタリー。

沖縄での闘いドキュメンタリーとも
長い付き合いになってきました。


今回も涙なしでは見られないというか。
冒頭、1分で泣けてきます。悔しさと怒りで。

「風かたか」は「風よけ」という意味で、
2016年にうるま市で起こった
元米海兵隊員による女性暴行殺害事件の追悼集会で使われる言葉。

まだ記憶生々しい事件を思いだし
マジで憤怒がこみあげてきます。


今回は
宮古と石垣で進んでいる
大規模な自衛隊駐屯計画を大きく取り上げている。

「基地ができ、武器がそこにあれば、敵に標的にされてしまうんですよ!」

反対運動をする住民たち――今年1月に市議にもなった石嶺香織さんら
母親たちを中心とした活動に対し、

駐屯に賛成の住民が多数いることも
重たい事実なんだよね。

賛成派は言うんです。
「宮古では学校もどんどん閉校になっている。自衛隊が来れば学校も動く。
先生たちにも仕事ができるんだよ」って。

これ、
飲食業者や商店主も同じ思いだろうと思う。
たしかに、宮古島、だいぶ行ってないし
地元の産業が苦しい状況も目に浮かぶんですよね・・・。


小さな島で暮らす人々が
引き裂かれてしまうような苦しさを感じました。


さらに
高江のヘリパッド建設に抵抗する人々も映る。
つい先日、5ヶ月間もの拘留ののち
保釈された運動のリーダー、山城博治さんもクローズアップされていて
まさに、いま起こっていることが
映っているドキュメンタリーです。


シリーズをとおして監督に
標的となるのは“村”であり、沖縄全体=“島”なんだと教えてもらったわけですが
今回は
「いや、アメリカにとって、日本列島全部が捨て石なんだよ」という
言葉にゾッとしました。
そうなんだろうね、実際。


★3/25(土)からポレポレ東中野で公開。ほか全国順次公開。

「標的の島 風(かじ)かたか」公式サイト
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未来よ こんにちは

2017-03-23 21:35:40 | ま行

ワシ、これDVD買う(笑)


「未来よ こんにちは」77点★★★★


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パリの高校の哲学教師ナタリー(イザベル・ユペール)は
人生を折り返した50代。

二人の子どもたちは独立し
同じ哲学教師の夫(アンドレ・マルコン)とは
同士のような関係。

最近は夜中にかかってくる
一人暮らしの母(エディット・スコブ)から愚痴の電話に付き合っている。
母は少し、ボケてきているようだ。

そんな日々でも教師の仕事に情熱を持ち
前向きに日々を過ごしているナタリーだが

ある日、夫に突然
「離婚してほしい」と切り出されてしまう――!


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ミア・ハンセン=ラヴ監督。

またしても登場人物と同じ時間を過ごした気になる、
この監督の不思議なマジックにやられました。


取り立てて大事件も起こらないのに
するすると見て
「ああ、このままこの時間が、終わって欲しくない・・・!」と思うというパターン。

「EDEN/エデン」もそうだったし、
「グッバイ・ファーストラブ」もそうだった。

振り返ってみると
「あの夏の子供たち」からやられてるようだ(笑)

どれも自分とどこか引っかかるようで
実際はビミョーに違うのに、なんでこんなにシンクロ?

この監督の不思議さは、なんだろう?と
このところずっと考えている。


登場人物の心理描写が、とりたててすごーく掘り下げられてるわけでもない。
ただ、とにかく、映画時間が、自然。

シーンのつなぎがうまいのかなあとも思う。
時間の流れが中断されることがないんだよね。
(「3年後」とか、いともたやすく時間が飛ぶのだけど)

とにかく身を任せるのに気持ちいいんです。


プレス資料のインタビューで監督が
「映画というのは私にとって動いている肖像画」と語っていて
「うおぉ、それだ!」とちょっと開眼しましたよ(笑)
なるほど、そんな感じ。

まして、今回はその肖像がイザベル・ユペールだもの。
とにかく見飽きない。


ボケてきた母親の介護に、浮気をして出ていく夫。
ずっと付き合ってきた出版社からも
「もうあなたは古いのよね・・・(面と向かっては言えないケド)」と
見放されてしまう。

スリムな体型を保ちつつも、老いは確実に忍び寄り
確実に時間に追いつかれ、追い抜かれそうになっている50代のヒロイン。
(実際の本人は60過ぎというのがすごすぎるけど。笑)


すべてが「なんだかなあ!」な状況なのに、
でも、彼女は慌てず騒がず、淡々と前へ進むんです。

仲良くなった猫にさえ執着しない。甘えない。
このあっさり感は、達観の域。

そうやって
過ぎていくものを追わず、いまを受け入れ、どんどん身軽になっていく。
そんな彼女が素敵でたまらない。

でもちょっぴり泣いたりする夜もあって
ああ、なんて共感できるんだろう!って。

ずっとこのイザベル・ユペールを見てたい。
この映画時間、終わってほしくない!と思いました。


★3/25(土)からBunkamura ル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開。

「未来よ こんにちは」公式サイト
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