ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ストックホルムでワルツを

2014-11-29 17:30:56 | さ行

ヒロイン役は本物の歌手だそう。
だから歌がすごくいいのかー。


「ストックホルムでワルツを」70点★★★★


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1960年。

スウェーデンの田舎町に暮らす
23歳のモニカ・ゼタールンド(エッダ・マグナソン)は
娘を持つシングルマザー。

電話交換手をしながら
ジャズ歌手になる夢を追っていた。

あるとき、彼女にチャンスが巡ってくる。

有名なジャズ評論家に
「ニューヨークで歌わないか?」と誘われたのだ。

モニカはジャズの聖地に乗り込むのだが――?!

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ビル・エヴァンスとの共演で世界的に有名になり
2005年に亡くなった
スウェーデンの国民的歌手モニカ・ゼタールンドを描いた作品。

実在人物話だけど
伝記モノっぽくしなかったのが正解で

向上心あるシングルマザー歌手の
奮闘と自立へのもがきがスムーズに描かれていて、見やすい。

ヒロインが美人で
歌もすごく魅力的なんですねえ。

というのも
演じるエッダ・マグナソンは
実は歌手で本作が映画デビュー作だそう。
これは女優選びが当たったのでしょう。

がんばる女が
ずっとそばにいてくれた最高の相手に気づくまでの
長い長~い道のりを描いた
ラブストーリーでもありますしね。


週刊朝日「ツウの一見」でお話を伺った
ジャズ雑誌「Jazz Perspective」編集長の山本隆さんによりますと
エッダは実際のモニカにかなりそっくりだそう。

ただあのベーシストは
実際はもっとでっぷりと貫禄のある方らしいす(笑)


★11/29(土)から新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開。

「ストックホルムでワルツを」公式サイト
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インターステラ―

2014-11-27 02:17:14 | あ行

やっと見られた!(笑)


「インターステラ―」80点★★★★


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近未来。

世界的な食糧不足が起こり
地球はじわじわと瀕死の状況に向かっていた。

トウモロコシ農家のクーパー(マシュー・マコノヒー)は
ある日、娘が気づいた不思議な現象によって
ある場所に導かれる。

そこでは人類が住める惑星を探しに宇宙へ向かうという、
重大なプロジェクトがひっそりと進んでいた。

かつて科学者でありパイロットだったクーパーは
博士(アン・ハサウェイ)らともに、
途方もない宇宙への旅に出ることになるが――?!

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「インセプション」クリストファー・ノーラン監督×
マシュー・マコノヒー×アン・ハサウェイのSF。

フツーの宇宙モノじゃないと思ってたけど
予想通りでもあり、超えてた。けっこう、傑作かも。

特に
「未知との遭遇」がファースト映画で
SF好き、宇宙モノ好き、ディザスターけっこう好きなワシには
かなりツボでした。

ツボったポイントは

(1)知的で基本静かなSFであること。
   「2001年宇宙の旅」×ダンカン・ジョーンズ監督「月に囚われた男」×「ゼロ・グラビティ」のリアルって感じ。


(2)「地球がもうダメ」な、近未来の状況が異常にリアルなこと。
    エイリアン襲来とかでないんだよねー。


(3)すべてに“科学っぽい”リアルがあるところ。
   特に「時間」を、興味深く描いている。

   私たちが見ている星の光は、何十年、何百年も前に光った光だとか
   「わかっちゃいるけどピンとこな?」な世界を、優しく解説するように描く試みがおもしろい。
   「その惑星で数時間を過ごすと、地球では23年経っている」(!)とかね。


(4)ワームホールとかブラックホールとか慣性の法則とか、難しい事柄を
   「なんとなく、感覚でオッケー」な程度に理解させてくれること。
   まあわかんないところも一杯あるし(苦笑)
   都合よくね?もなくはないんですけど、これはこれで十分。


(5)ベタな「ヒーロー話」でないところ。
   マシュー・マコノヒーだけに
   ブルース・ウィリスやベン・アフレックが地球を救ったりするのとは違うんだねー。


(6)意外とシンプルな冒険話なところ。宣伝では「父子愛」が強調されてるけど、それよりも科学話がおもしろかった。
   あと、ラブも薄いところ(笑)。

(7)ラブは薄くとも、やっぱり“愛”がポイントなところ。
   「インセプション」にはイマイチ入れなかったけど、これはいい感じ。


約3時間で「うへえ」と思ったけど、
本当に退屈知らず、あっという間でした。
これぞ、時間の不思議。


おすすめです。


★11/22(土)から全国で公開。

「インターステラ―」公式サイト
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フューリー

2014-11-25 20:46:12 | は行

いやあ、これはすごかった。


「フューリー」72点★★★★


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1945年4月、第二次世界大戦末期。

ドイツに侵攻する連合軍のなかに
「フューリー」(=激しい怒り)と名付けられた
一台の戦車があった。

搭乗する5人のリーダーである軍曹(ブラッド・ピット)は
新兵(ローガン・ラーマン)を厳しく鍛えつつ、
的確な指揮で激しい戦闘をくぐり抜けていく。

しかし、最後の抵抗をするドイツ軍は
各所で熾烈な反撃をしかけてきて――?!


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戦争映画なんてもう見たくない、と正直思いつつ、
これはすごかったです。


戦争の狂気のリアリティ、
首が吹っ飛ぶような生々しさはあるけれど、
なかなか描写が絶妙で、不必要に血なまぐさくない。

死体を踏みながら進む、
いわば“泥臭い”戦車を主役にしたという着眼点もよいし

中心となる部隊一人一人の過去の背景などを全く排除し、
常に戦火の状態を、現在進行形で描いている。

そのことで
戦争というものが、どんなにありえない異常な状況かという輪郭が
すごくハッキリしたんだと思います。

それにやっぱりブラピがいいっす。
頼りがいあるリーダーっぷりに惚れ惚れ。
理知的なシャイア・ラブーフのキャラも効いているしね。

「勝ち目のない敵に、数人で挑む」状況も
決して美談ではない後味で、

いままで映画などで見聞きしてた“戦争体験”が上書きされた感じに
見た意味があるかなと思いました。

これを観たあとに
ベニチオ・デル・トロが第2次大戦に従軍し、傷を負った男の役で
マチュー・アマルリックがその精神分析をする
「ジミーとジョルジョ 心の欠片(かけら)を探して」(来年1月公開)の試写を見たのですが

この映画に戦場シーンはなくても
デル・トロの苦しみの背景を
「ああ、あの経験をしたんだな・・・」と、フューリーの世界を思い浮かべて
なんか、鑑賞の助けになった気がします。

なんか、つながりますね映画って。


★11/28(金)から全国で公開。

「フューリー」公式サイト

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滝を見にいく

2014-11-18 23:49:12 | た行


「キツツキと雨」ホントに好きなんですよ。


「滝を見にいく」69点★★★☆


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紅葉の滝見物バスツアーに参加した
7人の女性たち。

病気自慢で盛り上がる
賑やかな二人連れもいれば、一人参加の女性もいる。

やがて目的の山に到着し
山道を歩き始めた7人だが、

頼りないガイドが道に迷ってしまい――?!

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「キツツキと雨」「横道世之介」の沖田修一監督。

今回は
「40歳以上の女性・経験問わず」という
オーディションを開催し、

ほぼ素人なおばちゃま7人を主役に起用し、
山道で道に迷う彼女たちのサバイバルを描いている。

とにかくリアルおばちゃんの生態というか
「あるある」の現場をリアルに表現。
(自分も十分にオーディション参加資格ありなんだけどね・・・苦笑


起こる出来事や世界の“小ささ”がおかしみという感じの作品で、
プッと吹き出すところは満載。

もちろん「わかるわあ」な
トゲも相当含んでいる。


映画前半、7人が仲良くなる前の
トゲトゲしいやりとりがかなり笑えて

それだけに、7人の関係ができて行く中盤からは
ちょっと失速気味で
それが物足りなかったかな。

「横道世之介」後なのに
ビッグバジェット方面に行かず、こうきたか!いう監督のスタンスが、
すっごい好きですけどね。


★11/22(土)から新宿武蔵野館ほか全国順次公開。

「滝を見にいく」公式サイト
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オオカミは嘘をつく

2014-11-17 23:42:48 | あ行

イスラエル映画でパッと思いつくのは
「戦場でワルツを」とか。
事情を知ったという点では
「いのちの子ども」
とか。

まあ戦争、紛争がらみばかりなんですけど
これは違うんです。


「オオカミは嘘をつく」65点★★★


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現代のイスラエル。

少女をターゲットにした凄惨な殺人事件が続き
また一人の少女が犠牲になった。

容疑者として浮上したのは
おとなしそうな中学教師ドロール(ロテム・ケイナン)。

刑事ミッキ(リオール・アシュケナズィ)は
ドロールをつかまえて暴力で自白をさせようとするが
うまくいかない。

しかし、ほかにも密かにドロールの後をつける
人物がいて――?!


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イスラエル人の30代監督2人組による
誘拐サスペンス。


タランティーノ監督が「2013年のナンバーワン!」と絶賛した作品。
まあこの方はよくそんな賛辞をしていますが(笑)
でも、なるほど見応えありました。

冒頭、かくれんぼをして遊んでいるいたいけな少女を
スローモーションで写すところからして
非常に“王道”といえる
ハリウッドふうホラー&サスペンス演出なんですね。


監督らは子ども時代から
スピルバーグやロバート・ゼメキス監督に夢中になり、
そういう映画をイスラエルで作りたかったそうです。


容疑者となる教師、暴走する警官、被害者である少女の父親・・・と
登場人物の誰もが怪しいというか、危険。
イスラエルは皆兵制なので、全員に軍隊経験があったりして
そのへんの社会背景もにじませてあります。

娘を誘拐された父親の暴走
「プリズナーズ」を思い出せる感じもあるんですが、

でも凄惨な拷問シーンのなかに
なんだかマヌケな笑いもあったり。

クオリティは高いんですが、
ただ
「なぜこやつが容疑者なのか?」など
肝心の部分や根拠がけっこう飛ばされていてモヤモヤしたり
やや“要素の寄せ集め感”は否めなかったかなー。


しかし
来日した監督コンビと政治学者・藤原帰一さんの対談を取材させていただき
おなじみ「ツウの一見」で藤原さんに解説もしていただき
わかったことは

“イスラエル映画がこれを作った”ことの意味と大きさ。
そして背景にイスラエル社会が見えることのおもしろさ。

あまり考えずに見て、
後で解説を知ると、よりおもしろいタイプの映画だと思います。


★11/22(土)からヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国で公開。

「オオカミは嘘をつく」公式サイト

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