ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ラブ&マーシー 終わらないメロディー

2015-07-29 18:24:49 | ら行

ビーチボーイズの曲聞くと思い出すのは
鈴木英人さんの絵、そしてなぜか
ミスタードーナツの江口寿史氏のグラス。(なんでだ?)


「ラブ&マーシー 終わらないメロディー」69点★★★★


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1960年代のカリフォルニア。

ザ・ビーチ・ボーイズの中心メンバー
ブライアン・ウィルソン(ポール・ダノ)は
曲作りに悩んでいた。

62年のデビューから
ヒットを飛ばし、スターになっていたが
最近はどうもうまく行かない。

そして80年代。
苦しみの最中にいるブライアン(ジョン・キューザック)は
メリンダ(エリザベス・バンクス)という女性に出会い――?

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ザ・ビーチ・ボーイズの
ブライアン・ウィルソン氏の自伝を基にした作品。

耳馴染みよいあの曲たちに
作者のこんな苦しみがあったとは知らなんだ。

頭の中で声が聞こえる、というのは
いまでいう、解離性同一性障害というやつだろうか。
天才的な音楽センスの代償なのか。


80年代になっても的確な治療なく、
騙し騙しやってきたというのが
気の毒でならない。


若い時代をポール・ダノ、
中年期をジョン・キューザックが演じ、
時代もサッサッと入れ替わりながら進んでいく。

伝記の描き方としてはちょっと変わってるし
試みとして悪くないんだけど、
テンポをつかむ中盤まではけっこうダルかったかな。


天才が悩んで苦しんで
薬に溺れて、自滅して……みたいな展開は、
ミュージシャンものにはよくあるけれど
この映画は、不思議にカラッとしているというか
どこか呑気そうな空気もある。

本人のキャラなのだろうか。

過去映像を見ると
ポール・ダノがけっこう本人にそっくりで驚きます。
歌も彼が歌ってるところがあるそうです。

最後に、ご本人も登場しますよ。


★8/1(土)から角川シネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国で公開。

「ラブ&マーシー 終わらないメロディー」公式サイト
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進撃の巨人

2015-07-27 23:31:07 | さ行

やっぱ、観たかったんですよ、これは。


「進撃の巨人」60点★★★☆


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百年以上前。

突如現れた巨人たちに
人類の大半は喰われ、文明は崩壊した。

生き残った人々は巨大な壁を築き、
そのなかで暮らしていた。

壁の内側で生まれ育ったエレン(三浦春馬)は
幼なじみのミカサ(水原希子)やアルミン(本郷奏多)に
「巨人なんて伝説じゃないか?」と言い、
壁の向こう側を見ることを夢見ていた。

が、そのとき
壁が大きな音を立てて揺れ出して――!?


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諫山創氏のコミック原作×樋口真嗣監督。

コミックは既刊16巻が
全世界累計発行部数5000万部(!)だって。

噂はたんまり聞いてたけど
漫画もアニメも未読&未見だったので
実写版、興味津々で観ました。


「観ました」と言うと
「え!どうだった?」という反応が100%なので
多いに注目されている作品だと思います。


で、どうだったかというと
正直「グロい」(笑)。
でも
9月19日公開の後編も見る(笑)。


“ザ・特撮”という感じのパキッとした絵のなか
巨人に喰われる人類、という設定は
やっぱ斬新で衝撃。


特にCMで見る赤白の巨人よりも
割と普通サイズ(?)の巨人が、果てしなく気持ち悪く(苦笑)
彼らが人間を襲うシーンには
かなりグロい描写が畳みかけられている。

製作者側の
「振り切ることに、決めたんだ!」という
志を感じました。

あの軍艦島をロケ地にし
さらに
「巨人はなぜやってきたのか?」
「どうやって繁殖しているのか?」など
謎めいた展開も、見る人を引っ張る。


ただ
話の斬新さ、ビジュアルの強烈さとのバランスなのか
登場人物の造型もパッキリしすぎていて
そこは漫画っぽい。


ただ
「日本も、相当マッドなことになってんな」ということは
海外に大きく伝わると思います。

いや
「病んでんな」か?(苦笑)

そこが、すごいかなと。


★8/1(土)から全国で公開。9/19(土)連続公開。

「進撃の巨人」公式サイト
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セバスチャン・サルガド/地球へのラブレター

2015-07-26 12:47:12 | さ行

サルガドの写真は、まさにネ申。

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「セバスチャン・サルガド/地球へのラブレター」75点★★★★


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世界的な写真家、セバスチャン・サルガドのドキュメンタリー。

ヴィム・ヴェンダース監督と
サルガドの息子が共同監督し、

サルガド自身の語りとともに、これまでの仕事を振り返り、
進行中のプロジェクトを追う構成になってます。


彼の“神”写真が、たくさん紹介されるので
サルガドの写真を初めて知る人も
絶対に引き込まれると思う。


この人の写真は、すごいんだもの、マジで。


「どうやって撮ったの!?あり得ない」というほど
完璧な構図。完璧な瞬間。


例えば悲惨な状況を、そのままに映すのではなく
違う視点から
物語を想起させるように切り取って
見る人の心に焼き付けるような。


やはり1985年の
アフリカの飢餓を撮った「SAHEL(サヘル)」の写真が胸を打ちますが、
肉体労働者たちを映した「Workers」の写真もすごい。
ブラジルの金鉱で働く人々がわらわらわらわら……とひしめく写真なんて
聖書の世界のシーンを見ているようというか、

もうね、頭がくらくらします。


彼はテーマを決めて、リサーチをし
6~7年をかけて撮影をするそうで
仕事のやり方も勉強になる。

写真を一緒に選び、編集をするのは奥さんで
そのなれそめや、ともに歩んだ道のり、
そして祖父や息子の話などが、オープンに語られるのもいい。

次男の話は知らなかったな。


なにより
アフリカ各地の飢餓や難民、ルワンダの大虐殺
ユーゴの紛争など
様々な悲劇を見つめてきた彼が、

しかし厭世的にならず、悲嘆にくれるだけでなく、
地球や自然の再生能力に注目し、自ら活動しているという部分に
ガーンときた。

あれだけの悲劇を見てきた人が
まだ希望を持てると考えているんだ……って。説得力がある。



サルガドの写真と彼の語りを見るだけで価値があるし、
さらにヴェンダースも負けじと
美しいモノクロ階調で彼を映してますから。

最強のコラボね。



★8/1(土)からBukamura ル・シネマほか全国で公開。

「セバスチャン・サルガド/地球へのラブレター」公式サイト
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人生スイッチ

2015-07-22 23:45:37 | さ行

ブラックな笑い満載のアルゼンチン発映画。
こういうの好き(笑)


「人生スイッチ」74点★★★★


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ほんの些細なきかっけによって
人生を変えてしまう人々の姿を描く。

仕事で飛行機に乗った美しきファッションモデル、
郊外のレストランで働くウェイトレス、
一本道を新車で気持ちよく飛ばす男……。

それぞれの人生に、何が起こるのか?
そこには
どんなきっかけがあったのか?!


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ブラックな笑いのショート・ショート6連発。

意外な手段で積年の恨みを晴らす者あり、
「ムカッ」ときた一瞬の行動が、悲劇へと転じる者あり……

日常のあるある場面から
人間という生き物のしょうもなさを描き出します。

シュールさと、ときにやりすぎなくらいの不快さ、
後先考えずに「やってやったぜ!」な爽快さが
実におもしろく

隣人トラブルを描いたアルゼンチン映画
「ル・コルビュジエの家」を思い出しました。

タイトルロールに映される
動物たちのネイチャー写真はどういう意味だろう?と思ったんですが
原題が「WILD TALES(野生の物語)」で、なーるほど。

人間を動物としてみた
“人間観察学”という意味なのかなと。

おなじみ「週刊朝日」「ツウの一見」でお話を伺った
ラテンアメリカ文学者の久野量一先生もおっしゃっていましたが
この映画、アルゼンチンでもかなり話題で
見た人はみんな
「どの話が好きだった?」と聞きたがるそう。

確かに観たあと
「どれがおもしろかった?」を話すと
めちゃくちゃ盛り上がります。

ワシは1話が一番好き。ねじ曲がってますハイ(笑)

2話の猫いらずも捨てがたいし、
3話も「わかるわかる!」だし
4話なんて社会や制度に反抗的なワシがいかにもやりそうな話で反面教師(苦笑)
5話のラストは最高だった。

6話はちょっとお腹いっぱいだったけどね(笑)

きっと爽快な気分になりますよ。


★7/25(土)からヒューマントラストシネマ有楽町、シネマライズほか全国順次公開。

「人生スイッチ」公式サイト
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共犯

2015-07-21 23:38:48 | か行

台湾発、学校を舞台にしたミステリー。


「共犯」58点★★★


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台湾。

いじめられっ子の男子高校生ホアン(ウー・エンホー)は
ある日、通学路の路地裏で
血を流して倒れている女生徒を発見する。

彼女はすでに死んでおり、
ホアンは通りかかった同じ学校の不良イエ(チェン・カイユアン)
優等生のリン(トン・ユィカイ)とともに第一発見者となった。

ホアンたちは亡くなったのが
3年生のシャー(ヤオ・アイニン)だと知る。

「いったい、彼女はどんな子だったのか?」

三人は彼女の死の理由を探し始めるが――?!


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「光にふれる」
チャン・ロンジー監督が手がけた学校舞台のミステリー。


自殺か?事故か――?と疑問を投げかける
ある女生徒の謎の死から、

その遺体を発見した
いじめられっこ君、秀才君、不良君の凸凹三人組が
犯人捜しをするストーリー。

設定はおもしろく、
オープニングからヒントを散りばめたような映像が
美麗でスタイリッシュ。
「光にふれる」の映像もきれいだったもんね。


亡くなった女生徒の人物像が次第に明かされる展開は
ミステリーの王道だし
SNSなどを駆使したネタもいまふう。


少年少女の孤独、厭世観などの描き方も
わかるんだけど、

ただミステリーとしても、子どもを取巻く空気についても
もうひとつ深みに欠けるかなあと。

映像が凝ってるだけに
ちょっとそっちに引っ張られてしまった。


なにより
もっと宮部みゆきチックなミステリーかと思ったら
実際はかなり青春映画っぽかったのが意外だった。


しかし
SNS社会での孤独やプレッシャー、
スクールカーストなど
どこの国でも同じような問題が起こっているんだなあとは
つくづく。


★7/25(土)から新宿武蔵野館ほか全国順次公開。

「共犯」公式サイト
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