ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

LOVE【3D】

2016-03-30 23:45:01 | ら行

ついに、3Dをこう使ってきたか!
(ウソウソ。そればっかりじゃないよ。笑)


「LOVE【3D】」71点★★★★


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若い妻と、2歳になる息子と暮らす
青年マーフィー(カール・グルスマン)は
ある元旦、電話で起こされる。

電話をかけてきたのは、マーフィーの昔の彼女
エレクトラ(アオミ・ムヨック)の母親。
彼女は
「エレクトラとずっと連絡が取れない」と心配しているのだ。

そしてマーフィーは
エレクトラのことを思い出す。

彼女との出会い、ともに過ごした2年間は
生涯最大の愛だった――。


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ギャスパー・ノエ監督が
「愛」を3Dで描いた作品。

モザイクだらけだけど
それでも相当に濃厚なラブ・シーンが3Dで描かれ、
確かに見どころのひとつではある。

でも
もっとエグい中身を想像していたのですが
意外に、残るのは“純愛”だった。
それがよかったですね。

そりゃ最初こそ
「なんやねん、しゃーもない浮気男(マーフィー)の自業自得話かい!」と
呆れて見始めたんですよ(苦笑)。

でも、彼の忘れられない「愛」の変遷を
時間をさかのぼりながら描き、
「愛」のはかなさを知らしめていく――というその手法に
けっこうハマりました。

そうやって見ていくと
確かに、マーフィーの浮気が全てを崩す原因にはなるんだけど
それに至るまでの、微妙な、ささやかな
かすかに「カツン」と音のするような、

カップルの間の“ひび割れ”の描写が
すごくリアルだったりする。

こうやって常に
「忘れられない愛」「忘れられない人」
延々と脳内再生することも含め、

これが男性が考え、行為として示せる
「純な愛」なのだろうか、と
結論にたどり着いた感じです。

しっかし、
「一回だけ」が全てを変えてしまうことって
まあ、実際にもよく聞くけど
本当によくあるんでしょうねえ。


★4/1(金)から新宿バルト9、ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国で公開。

「LOVE【3D】」公式サイト
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桜の樹の下

2016-03-29 23:46:27 | さ行

田中圭監督って女性なんです。

しかも87年生まれかあ。
うへえ。いろいろやられた・・・。

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「桜の樹の下」71点★★★★


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川崎市の、とある市営団地。
1973年築のここは、いまや住人の7割が高齢者で単身者。

川崎出身の監督が
そんな団地に暮らす4人の単身高齢者に焦点を当て
その暮らしぶりに
カメラを向けたドキュメンタリーです。

はっきりいって
すごく好きなテーマだけに
若い監督が、ここに踏み込んだことに
「おお!やられた!」と思った。
(やられたと思ってばっかだな。苦笑

正直、序盤のやりとりこそ
「踏み込みが足らないんじゃないか?
とか思ったけれど、

いやいや、進むほどに
思ったより長い時間をかけて取材対象と関係を築き、
じっくり撮っていることがわかって驚きます。


おそらく監督は取材者として押しが強いタイプではないけれど
その分、足を運び
「すすす」と、すり足で相手の領域に入り
そこからドラマを引き出すタイプなのかな。
そして結果、魅せる作品になっていると感じます。


特に、夫に長年愛情を注ぎ
夫亡き後はインコに愛情を注いできた女性(79歳)
ゴミ部屋に暮らす“困った女性(71歳)”の
世話を焼いてやるようになる展開は、思いがけないものだった。

誰かの面倒を見ることができる人と
誰かに世話を焼かれないと、生きていかれない人。
人には適正と役割がある――と、改めて思わせるエピソードでした。

ほかにも
お弁当の配達業をする72歳の男性を見ながら
「こういう仕事もあるのか・・・。この単価では厳しいけど、将来できるかな。
にしても、安くね?」とか
少しの希望や、情報をいただいたり。

彼らはいわゆる“下流老人”であり
経済的にも、健康面でも厳しい状況にある。

しかし、彼らの多くは家をキチンと片付け
「人に迷惑をかけたくない」という矜持と
品位を持っているように思える。

これは日本人の持つ、ある種の美徳なんだろうか。

彼らの小さな暮らし、ミニマムな世界に
悲壮感を感じないんです。

少なくとも、この映画は
そう伝えている。


ゆえに
これは自分にとっても、おそらく都市に暮らす多くの人にとっても
最終的に行き着く、少し先の未来なのだろうと、
静かに思いながら考えられた次第。


その美徳、美学にあぐらをかき
弱者を切り捨てる政権は許せないけれど
実際、そこで生きる“術”を先輩に見せてもらうことは
ワシにとっても励ましになったし、
映画を見る人にとっても、なにかの希望になるのでは、と感じました。


★4/2(土)からポレポレ東中野ほか全国順次公開。

「桜の樹の下」公式サイト
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光りの墓

2016-03-27 19:16:39 | は行

アピチャッポン・イヤーの今年、
「世紀の光」に続いて公開。


映画「光りの墓」68点★★★☆


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タイ東北部の村にある病院に
足の悪い女性ジェン(ジェンジラー・ポンパット・ワイドナー)がやってくる。

この病院では
原因不明の“眠り病”にかかった兵士たちが
延々と眠りについていた。

ジェンは一人の兵士
イット(バンロップ・ロームノーイ)の世話をするようになる。

そんなある日、
イットがふいに目覚めて――。

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「世紀の光」にも登場した
足の悪い女性ジェンが主人公。

病院で眠り続ける兵士たちが登場し、
彼らや死者と交信できる女性が登場し、

まあいつもどおり(笑)
不思議な感覚の映画です。


ただ
この「眠り続ける兵士」は
実際にニュースとして報道された出来事で
監督はそこから物語を発想したそう。
ほへえ。不思議なことって現実にあるんですねえ。

兵士たちに蔓延する「病」というモチーフは
「世紀の光」にも共通していて
監督のタイの政治状況に対する思いや
警鐘が込められているのだろうと推察します。

まあそこを
「兵士たちが眠り続けるのは、病院の下にかつての王の墓があり、
彼らがその魂を吸って今も戦っているからだ」とか解説させちゃう
その感性が監督たるゆえんですけどね。

そも
アピチャッポン監督の映画って
そのもの自体が有機的というか、触れる感じがするというか
しかも触るとしっとり、苔のような感じ?とか
思えるんですよねえ。


で、常に目に見えない「存在」が写っている。

この映画にも「それ」はあるんですが
人工的でカラフルな光の使いかたによって
それがちょっと「ほかの人でも考えつきそうな」感じに可視化されている気がして
惜しかったな。

個人的には
「世紀の光」のほうが
よりストレートで、やわらかい手触りで、好みですが
見比べてみると、おもしろいと思います。


★3/26(土)からシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。

「光りの墓」公式サイト
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バットマンVSスーパーマン ジャスティスの誕生

2016-03-26 19:42:03 | は行

へえ、ベン・アフレックって
こんなにハンサムだったっけ?(笑)


「バットマンVSスーパーマン ジャスティスの誕生」3D版 67点★★★☆


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いまから2年ほど前。

バットマンとして街を守る
ブルース・ウェイン(ベン・アフレック)は
宇宙船からの攻撃で街が破壊される現場にいた。

その戦いは
スーパーマンと彼を追ってきたゾッド将軍の戦いだった。

多くの人命が失われたことに
怒りを燃やしたバットマンは――?

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バットマンとスーパーマンが戦うって
一体なにさ?と
やっぱり気になる作品。

でもスーパーマンの前作の話を
もうすっかり忘れてたので
冒頭から「誰と誰が戦ってるのかわからない!」と大混乱。

152分もよくわからないまま見るのは
いろいろ不都合なので(苦笑)
多少、復習しといたほうがいいですね。


まず冒頭、バットマン(ベン・アフレック)が見ているのは
スーパーマンの前作の戦いのシーン。

当然、街はズタボロに破壊されるわけで
それを地上から見ていたバットマンは
スーパーマンに対して
「あんなパワーを持ったヤツはフツーじゃないし、
余計な敵も来るし、
多くの人々の命が失われたじゃないか!」と怒りを燃やす。

それが本作のVSの構図の根本になる、ということですね。

さらに大富豪のレックス・ルーサー(ジェシー・アイゼンバーグ)も
自分よりスゴイ存在のスーパーマンが気にくわなくて
彼を抹殺しようと計画する――という流れ。

ジェシー・アイゼンバーグ演じる
この饒舌な悪役は
まんま「ソーシャル・ネットワーク」のキャラのようで
笑ってしまう。


ベン・アフレックのバットマンは
ずんぐりむっくり一歩手前という感じですが

ベン・アフレックって193センチもあるそうで
スーパーマンに対抗する威圧感を出すために
わざとそういうスーツにしているそうです。

で、ほとんどマスクをしてるので
顔が出ないんですが
たまに顔出すと、なんだかちょっとカッコいい(笑)。
ギャップ萌えというやつかしら。

いま東京メトロに乗ると
彼がゴッサムシティへの旅をオススメするCMをやっていて
トルコ航空のCMなのね)
これもカッコいいなあ、とか(笑)

バットマンを支えるアルフレッドに
ジェレミー・アイアンズが扮しているのもおいしく
ワンダーウーマンも
コミックの再現性高いなあ!と感心。


お話の中身には全然触れずにここまで書いていますが(笑)
でも「マン・オブ・スティール」より
いろんなキャラ見ているのが楽しかったですね。

アベンジャーズ新作も
「アイアンマンVSキャプテン・アメリカ」だし
今年はヒーロー対決(仲間割れか?)がトレンドのようです。


★3/25(金)から全国で公開。

「バットマンVSスーパーマン ジャスティスの誕生」公式サイト

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バンクシー・ダズ・ニューヨーク

2016-03-24 23:47:03 | は行

バンクシーを知るなら
「イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ」(10年)
は必見です。

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「バンクシー・ダズ・ニューヨーク」69点★★★☆


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忽然と現れては
路上にグラフティを描き、姿を消す
正体不明のストリートアーティスト、バンクシー。

彼が2013年10月の1ヶ月間、
ニューヨークのあちこちの路上で1日1作品を作っていく展示会を開催。
その模様を追ったドキュメンタリーです。

ニュースでも報道されたので
知ってる方も多いかも。


彼は1ヶ月間、路上で作品を作っては
その場所を明かさずに、公式サイトにアップ。

それを見た人々が
ツイッターやインスタを駆使して
その作品を追いかけたそうで
たしかにこれ、現場にいたら盛り上がるかも。


常に、社会の裏をかく彼の仕掛けた
SNSツールあってこそ、のゲームで
この時代ならではの意味もある。

バンクシーの作品を
「機知があって面白い」と表する路上の女性のいうとおり、
本当に彼のアートには
ただの悪ふざけではない意味があるのがおもしろいんですよねえ。

ただ
監督は、バンクシーを追いかけた一般の人々の
SNSの素材などから本作をまとめたそうで
(どこまで本当かわからないけどね

けっこう
追いかけっこのドタバタのほうに
焦点が合っている感じはある。

彼の痛烈なメッセージ性や
「既成のルールを疑え」という精神は薄まっていて

この展開だと
「路上でのバカ騒ぎ」
受け取られる心配もあるかなあと。

なので、未体験の方は
「イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ」(10年)から
ぜひ入ってほしいと思いました。


★3/26(土)から渋谷シネクイント、4/2(土)から渋谷アップリンクほか全国順次公開。

「バンクシー・ダズ・ニューヨーク」公式サイト
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