ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

リヴァプール、最後の恋

2019-03-30 12:09:36 | ら行

アネット・ベニングがチャーミング!

「リヴァプール、最後の恋」70点★★★★

 

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1981年。イギリス。

青年ピーター(ジェイミー・ベル)のもとに

かつての恋人でハリウッド大女優のグロリア・グレアム(アネット・ベニング)が

倒れたという知らせが来る。

 

二人が出会ったのは数年前。

モノクロ時代の映画スターであり、アカデミー賞助演女優賞を受賞したグロリアと

駆け出しの若手舞台俳優だったピーター。

 

親子ほども年の離れたふたりは

どうやって出会い、恋におちたのか。

甘い日々が、ふたりの脳裏に蘇る・・・・・・。

 

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往年の大女優と青年、

歳の差30歳以上(!)のロマンス。

 

オバサンには夢のようなメロドラマではあるけれど

なんと実話が基。

そりゃ心強いというか、いいね!(笑)

 

 

舞台となるのは1979年から81年あたりなので

ふたりがデートで映画「エイリアン」を観に行ったりとか、

流れる音楽にも

世代が近く、懐かしさがありました。

 

なによりアネット・ベニングが、まーあチャーミング。

 

最初こそ「え?ありなん?」と思ったけど

実際、若作り、とかではない素直な可愛らしさがあり

歳下くんとの恋を納得させてくれました。

彼の両親にも、彼女がすごく気に入られてる、っていう状況も

あったかくてよかったな。

 

さらにラスト、本人の映像が流れ

アネット・ベニングがその声や様子を

かなりうまく寄せていることがわかりました。

 

「リトル・ダンサー」(00年)のジェイミー・ベルも

いい青年になったよなあ。

 

★3/30(土)から新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMAほかで公開。

「リヴァプール、最後の恋」公式サイト

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記者たち~衝撃と畏怖の真実~

2019-03-26 23:57:52 | か行

ジャーナリスト話は燃えるなあ!

 

「記者たち~衝撃と畏怖の真実~」71点★★★★

 

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2001年9月11日。

アメリカで同時多発テロが発生した。

 

ブッシュ大統領はすぐさまテロとの戦いを宣言。

 

そんななか、中堅新聞社「ナイト・リッダー」の

支局長ジョン・ウォルコット(ロブ・ライナー)は

ブッシュ大統領が、ビンラディンとは関係ないイラクも攻撃対象にしている、との情報を得る。

 

その理由は「大量破壊兵器を保有しているから」。

 

ホントに、そんなものがあるのか?なんか、おかしくないか?

そう考えたウォルコットは

二人の記者ジョナサン・ランディー(ウディ・ハレルソンン)とウォーレン・ストロベル(ジェームズ・マーズデン)に

真実を探るよう命じる。

 

だが有力紙含む大手メディアが

みな、一様にブッシュ政権の言い分を流し、イラク侵攻を肯定していた。

 

唯一「大量破壊兵器はない」と確信し、政府発表に抗う記者たちは

想像以上の苦戦を強いられることになる――。

 

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9.11後、イラク戦争に突入したアメリカで唯一、

「イラクに大量破壊兵器はない」「ブッシュ政権は戦争をしたがっているのだ」と

最初から報道していた

ナイト・リッダーの実在記者たちを描くドラマです。

 

あのときブッシュ政権は

9.11の悲劇から芽生えた米国民の「愛国心」を利用し

最初から「イラクを攻撃する」目的ありきで嘘の事実を集め、

偽の情報を流した。

 

でも、当時はニューヨークタイムズはじめ有力紙も

テレビも、メディアはみな、その情報をそのまま流したんですね。

「わかりやすい敵」を見せることで、新聞もテレビも売り上げを伸ばすから、

という理由もあったわけで

 

で、我々一般市民は

そうした報道を信じるしかないわけで。

 

そのなかで「真実」を報道しようと闘った記者たちがいた!という実話は

まさに「胸アツ」!です。

 

 

ジャーナリズムとは、報道とはこうあらねば、ということも学べるんですが

彼らを導く支局長ジョン・ウォルコット(演じるは、ロブ・ライナー監督本人!)が劇中で言う

「記者のすべきことは、事実を見極め、集めたファクトを分析し、さらに

“その先を読む”ことにある」という言葉に

ウッ、ときた。

 

そのとおり、だよね。

そしていま世界に日本に、それだけの覚悟ある人がいるのか。

てか、そもそも

そういう記者を「育て導ける」土壌がいま、どれだけあるのだろうと

我が身に手を当てつつ、考えてしまいました。

 

そして、おなじみ「AERA」で

ロブ・ライナー監督にインタビューさせていただきました!

「スタンド・バイ・ミー」な監督が、昨今めっきり社会派に転じた理由、そして

 

構想15年の本作は

まさに、彼自身が劇中で演じる

実在の支局長そのものの「記者魂」から生まれたのだ――とヒシヒシ感じました。

 

発売は来週4/1発売号、AERAdotにも順次、アップされると思います!

映画と併せて、ぜひご一読くださいませ~

 

★3/29(金)からTOHOシネマズシャンテほか全国で公開。

「記者たち~衝撃と畏怖の真実~」公式サイト

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ぼくの好きな先生

2019-03-24 00:47:53 | は行

「こんな夜更けにバナナかよ」監督が

恩師・・・とは違うか

出会った強烈な“先生”を写したドキュメンタリーです。


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「ぼくの好きな先生」70点★★★★


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「こんな夜更けにバナナかよ」の前田哲監督が

2009年から東北芸術工科大学に准教授として赴任し、

そのときに出会った

同じ大学で洋画を教える画家・瀬島匠さんがおもしろくって!撮った!という感じの

ドキュメンタリー。

 

マシンガントークの芸術家と

撮影者・前田氏のトボけたツッコミや、対話がおかしく(笑)

一人の芸術家の創作と人となりに迫っていて

なかなかおもしろい。

 

瀬島さんはとにかくじっとしていられないタチで

常に体を動かし、手を動かして、何かを「創作」している。

 

そのパッション、そして

「芸術は人の心を動かしてこそ。

『いい絵』というものがあるのではなく、『人の心を動かした絵』があるのだ」など

こぼれる発言が、なるほど深くもある。

 

映画は瀬島さんのキャラクターの魅力と作品を写しながら

終盤、ハッとさせる

ある家族の事情を、明らかにするんですね。

 

家族のなかで、一番「破天荒そうな」自分が

いまだ生き延びていることを自嘲気味に語る彼は

その創作の原点を、このときに、もっとも露わにしている。

 

こういう告白はやはりドキュメンタリーの力なのか、と

改めて思うのでありました。

 

RCサクセションの名曲に

相応する先生だと思います。

 

★3/23(土)から新宿ケイズシネマほか全国順次公開。

「ぼくの好きな先生」公式サイト

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セメントの記憶

2019-03-23 14:01:29 | さ行

ドキュメンタリー×エッセイの趣き。

新たな風を感じる。

 

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「セメントの記憶」71点★★★★

 

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1981年、シリア生まれの監督が

ベイルートの建設現場で働くシリア移民労働者を撮った

ドキュメンタリーです。

 

 

映像の切り取り方が実にアーティスティックで美しく

そこに主人公(監督であろう)が

子ども時代にベイルートで働いていた父の記憶をたぐっていく

詩のようなモノローグが重なる。

説明や解説はなく

淡々と状況が写され、

 

ドキュメンタリー×エッセイ、という趣きがあり

新しい風を感じました。

 

でも、そんな映像の背景にあるのはシビアな現実。

 

1975年から90年まで続いたレバノン内戦で

破壊され尽くしたベイルートは

その後、復興をしてきたけれど

06年にはイスラエル軍による空爆で、また破壊が。

 

そして現在のベイルートは再び復興中で

カメラにはビルの建築現場で働く大勢の人々の姿が写る。

「建設と破壊」の繰り返し――巨大な虚しさをいやでも感じ、ずーんとなる。

 

さらに衝撃的なのは、

働く人々が寝泊まりする場所。

建設現場の地下、簡易宿泊所とも言えない、

雨水でびしょびしょな地面にダンボールを敷いただけの場所なのだ!

 

そこで彼らは会話をするでもなく、

それぞれがスマホで、いまだ破壊され続ける故郷シリアを見ている――。

 

瓦礫の中から助け出される人、死体の山、瀕死の猫(涙)――

いったい、人間は何をやってんだ?

 

独特の映像センスで監督が切り取るのは、

途方もなく虚しい世界。

 

でも、この現実がこうして我々に届くことには

確実に意味がある。

その先に、何をみるか。

課題は、大きいです。

 

★3/23(土)からユーロスペースほか全国順次公開。

「セメントの記憶」公式サイト

 

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ユーリー・ノルシュテイン《外套》をつくる

2019-03-22 23:13:31 | や行

手塚治虫、宮崎駿、高畑勲氏ら

日本の大巨匠たちにもリスペクトされるアニメーション作家の、いま。

 

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「ユーリー・ノルシュテイン《外套》をつくる」71点★★★★

 

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「霧の中のハリネズミ」(75年)などで知られる

ロシアを代表するアニメーションの巨匠

ユーリー・ノルシュテイン氏。

 

彼が30年以上作り続けている

ロシアの文豪ゴーゴリの名作「外套」のアニメーションは

いまだ完成していない。

 

本作は

「ラピュタ阿佐ヶ谷」の主宰で

ノルシュテイン氏とも懇意である才谷遼氏が

自らカメラを携え、「なぜ、外套は完成しないのか?」

ロシアに飛んで直撃取材したドキュメンタリーです。

 

完成途中の《外套》の映像をはさみながら(これが、またすごい!)

77歳のノルシュテインの頭の中をのぞく

貴重な記録です。

 

なぜ、完成しないのか?の理由は

長年信頼していた撮影監督の死、自身の病気、

製作パートナーである妻の病気、資金の問題――そしてなにより、自身の気力の問題だ、と話す

ノルシュテイン氏。

 

しかし、ドキュメンタリーが捉える本人は

いかにもロシア叔父さん、的にお酒を飲みながら、意外に饒舌で、朗らか。

文豪たちの著作をひもとき、語られるその言葉は

哲学者との会話のように深淵。

 

「世の中は悪意に満ちており、おとなしい聖人にはいじわるなのだ」――

まさに「幸福なラザロ」(4/19公開)に通じるような、

巨匠の言葉に感じ入ります。

 

そして、なんとそのアニメーション制作の秘密も

公開してくれるんです!

 

まるで着せ替え人形のような、

細かいパーツを組み合わせる技にびっくり!

 

 

「みんなが、あなたを待っているんだ!」――酔っ払った才谷監督の切なる言葉に、

この探訪が、何かのきっかけになれば、という願いをヒシヒシと感じました。

 

★3/23(土)からシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。

「ユーリー・ノルシュテイン《外套》をつくる」公式サイト

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