ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

メランコリック

2019-08-03 15:21:00 | ま行

おもしろい!「カメ止め」に続くヒットになって欲しい。

 

「メランコリック」80点★★★★

 

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30歳の和彦(皆川暢二)は、一応東大卒だが

いまはフリーター&ニートで実家暮らし。

 

うだつのあがらない日々を送るも、

両親も別にうるさく言うわけでなし

ぼんやりのんびり暮らしていた。

 

あるとき、和彦は近所の銭湯で

高校時代の同級生・百合(吉田芽吹)と再会し

ちょっといい雰囲気に。

 

百合に「ここでバイトすれば?」と言われ、

和彦はバイトの面接を受ける。

 

銭湯のオーナー(羽田真)は穏やかそうな人物で

一緒に面接にきた、金髪の松本(磯崎義知)も採用され、

二人は一緒に働くことになる。

 

そんなある深夜、銭湯に明かりがついているのをみた和彦は

興味本位で中をのぞく。

と、そこではなんと殺人が行われていて――?!

 

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銭湯で殺人?!――に

なぜか笑いと共感が巻き起こるというおもしろさ。

 

血みどろスプラッタ!とかではなく

ほんわか恋愛があったり、なにより笑えるので

ぜひ観に行ってください。

 

映画.comさんにも書かせていただいたんですが

この映画、

ある種の「お仕事ムービー」であるところが最高にツボるんですよね。

 

 

銭湯でバイトを始めた主人公・和彦は

一緒に働き始めた金髪のバイトくん・松本が

何やらオーナーに声をかけられてるのを見てしまう。

「なに話してたの?」と聞くも

「いや、なんでもないっす」。

 

で、そのうちに松本のほうが

「あ、これお願いしといていいすか。オレ、ちょっとオーナーに呼ばれてるんで」的に

なんとなく一歩優位な感じになっていく。

 

一緒に働き始めたのに、なんで?って

和彦はもやもやっとする。

そのやっかみからか、東大卒というビミョーなプライドからか

ヘタに首を突っ込み、裏の世界を知ってしまう――という。

 

バイト先での力関係をはじめ、

若者のヒエラルキーやら、負け感やら

心理描写が実に細やかで

共感度が高いのだ。

 

もちろんストーリーもよくできてるし。

 

田中征爾監督と、和彦役の皆川暢二氏、

松本役の磯崎義知氏(いい味出してるんだ、また彼が)はもともと友人だったそうで

皆川氏はプロデューサーを兼務、

田中監督は平日はベンチャーIT企業で映像制作をし

磯崎氏は武道経験を持ち

タクティカルアーツのディレクションをしているらしい(どうりで!)

 

みな別に仕事を持っている

いわば「兼業映画作家」集団なわけで

彼らの社会での経験値が、誰もに共鳴する感覚をリアルに描けた

大きな理由じゃないか、と思いました。

 

余談。

3人はOne Gooseという名の製作チームなんだけど

試写のあとの3人によるトークで聞いた

その名前の由来にも笑った。

 

昔、皆川さんが端役でドラマだか映画だかに出ていたとき

現場で名前の記載が「皆田“鴨”一」だったかな、

漢字一個しかあってねえけど?!なくらい

派手に間違えられていて

それで鴨と一、になった、って。たしか。

 

ワシ、爆笑したんだけど、

ん?よく考えると、鴨ってダック?

いや、なんかきっとほかに意味があるんだろうな(笑)

 

※↑上記に関し、皆川さんがTwitterでお答えくださいました☆

皆川暢二@映画『メランコリック』

香盤表に「皆口鴨一」と書かれていました。

本当は英訳すると「ダックワン」なので

それだとあまりにもワークマンみたいな感じになってしまうので、「ワングース」になりました。


そうだったのか~!(笑)

納得&スッキリした~!ということで転載させていただきました☆

 

★8/3(土)からアップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺、イオンシネマ港北ニュータウンほか全国順次公開。

「メランコリック」公式サイト

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マーウェン

2019-07-18 23:52:53 | ま行

これは良品!

 

「マーウェン」73点★★★★

 

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第二次世界大戦中、勇敢なパイロット(スティーヴ・カレル)は

不時着したベルギーの田舎で

ドイツ兵に囲まれ、大ピンチに陥る。

が、そこになぜか美女軍団が登場して

ドイツ兵を一掃し、パイロットを助けた!

 

――と、これはすべて

アーティスト、マーク・ホーガンキャンプ(スティーヴ・カレル)による

写真作品の一部。

 

マークはG.I.ジョーやバービー人形をセッティングし、ストーリーに沿って動かし

映画のワンシーンのような写真を撮るアーティストだ。

 

高い技で、多くの人を魅了するマーク。

だが、彼にはそれをしなければならない理由があった――。

 

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「バック・トゥ・ザ・フューチャー」などで知られる

名匠ロバート・ゼメキス監督が

「これは描かねば!」と挑んだという作品。

予想以上に、すてきな良品でした。

 

なーんにも知らずに観ても

十分におもしろいと思う。

でも、この人物が実在し、内容も相当に現実と知ると

また感銘が深いと思います。

 

主人公マーク・ホーガンキャンプは

2000年、バーで居合わせた男たちに「ハイヒールを履くのが好きなんだ」と話し、

その帰り道に男たちに囲まれ、瀕死の重傷を負わされてしまう。

つまり「キモイやつ!」というだけが理由の

ヘイトクライム(憎悪犯罪)の犠牲になったわけです。

 

 

瀕死の重傷を負ったマークは、脳を損傷し

事件のフラッシュバックに悩まされながらも

フィギュアを使ってリアルな写真を撮ることを始める。

そしてその写真が評判となり、個展が開催されたり

2010年にはドキュメンタリー映画も作られた。

 

そんな彼の物語に着手したのが

ロバート・ゼメキス監督なんですね。

 

PTSDに苦しみ、

さらに裁判で加害者と向き合わなければいけないことにも苦しむ

マークの実際の闘いをベースにしながら

監督は最先端の映像を駆使して

マジで実写と見まごうフィギュアを使ったCG画像と

実際の俳優の映像を合成し、

この物語を描いている。

 

この映像はおそらく

マークの写真世界の発展系であり

彼がやりたかったこと、表現したかった「思い」を

忠実に現していると思われ、

なによりこの映画、本人にとって最高の贈り物だろうな、と思いました。

 

ともすれば被害者側が「自分に落ち度があったのでは」となってしまう

ヘイトクライムの難しさや闇を告発してもいて、

 

監督がこの物語で

さまざまにつらい状況にある人々を

勇気づけようとしている意図が伝わるんです。

 

それに、単純にミニチュア好きにはたまらない!(笑)

ドールハウス的な美術や小道具、さらに

俳優本人に限りなくそっくりな人形の見事な動きも必見です。

 

「バック・トゥ・ザ〜」の名シーンを模した遊びなどもあって

ニヤリさせられました。

 

マークを演じるスティーブ・カレルも、

「ビューティフル・ボーイ」(18年)といい

老けて、よりいい感じになってきた!

 

★7/19(金)から全国で公開。

「マーウェン」公式サイト

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名探偵ピカチュウ

2019-05-02 00:55:56 | ま行

もうね、これはズルいですよ。

みてくださいよこのビジュアル(笑)

 

「名探偵ピカチュウ」70点★★★★

 

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かつてポケモン大好き少年だったティム(ジャスティス・スミス)は

成長し、ポケモンのことを遠ざけていた。

 

理由は、父親。

 

父はポケモンに関わる調査に没頭し、

ポケモンと人間が暮らす街「ライムシティ」に行ったきり、

ティムとも疎遠になっていたのだ。

 

そんなある日、ティムのもとに

「お父さんが事故で亡くなった」との連絡がくる。

 

複雑な気持ちでライムシティを訪れたティムは

遺品整理のため、父が暮らしていたアパートへと向かう。

 

が、そこで出会ったのは

ピカチュウ(声・ライアン・レイノルズ)。

 

しかもティムには、なぜかピカチュウの言葉が理解できるのだ!

 

ティムは「父と相棒だった」というピカチュウと

父の死の謎を解明することになるのだが――?!

 

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 「パシフィック・リム」シリーズを手がけたスタジオによる

ポケモン世界の実写化。

 

いや~、予告編(トレーラー)にやられて

観に行きまして

 

そして

観たあと、また何度もトレーラーを見返して

ニヤニヤするという状況に陥っております(笑)

 

まあ、こっちがポスター・ビジュアルなんですが

あえて、ここはピカチュウでしょ!という。

 

でもね、ワシ、そんなにポケモン知らないんですよ。

 

ポケモンの誕生は1996年。

ワシの記者人生の最初からアイコンだったので

たくさん取材もしたし、映画も観てきた。

 

でも

近所にたむろする「ポケモンGO」の人々の情熱にはハマれず

やや、冷淡な目で見てた。

 

しかし、これは観てよかった(笑)。

そして、GOな人々にも間違いなくおすすめしたいです。

 

それほどに、ツボるビジュアル。

ピカチュウの、ふわっふわとも違う

この、ちょっと硬めな毛の質感がたまらん(笑)。

「パシリム」同様、世界の方々に、

こんなに愛していただいて、ありがとう!という感じ。

 

で、中身がおっさんで、演じるは

「デップー」=「デッドプール」なライアン・レイノルズ、っていうんですから。

 

「テッド」的なテイストも感じさせ、

実際、おもしろいキャラではあるんですが

まあ「テッド~」より断然お子さま向けでもあり

そこまでお下品とかなキャラではありません。笑

 

 

ピカチュウのほかのキャラもいっぱい登場するので

その個性を知っている「ポケモンラヴァー」は、より楽しめると思います。

 

しかも話がちゃんとあるので(当たり前だ!笑)

ピカチュウの質感だけで観るってわけにはいかないんですが、

 

しかし、ピカチュウとティムの関係、

その会話がしっかりオチへの伏線になってもいたりするので

まずまず、うまく出来ていると思います。

 

おすすめしたいのは

1度、劇場でしっかり観て、

ネタバレも気にしない身の上になってから

YouTubeに溢れる「ピッカ~!」なピカチュウ映像を

心ゆくまでもだえつつ楽しむ、という鑑賞法です。

 

ピッカ~!笑。

 

★5/3(金)から日本先行公開。

「名探偵ピカチュウ」公式サイト

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マローボーン家の掟

2019-04-11 23:05:16 | ま行

「永遠の子どもたち」に通じる

これぞスパニッシュホラーの正統系譜!

 

「マローボーン家の掟」73点★★★★

 

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1960年代の米・メイン州の古い屋敷に

マローボーン一家が引っ越してきた。

 

シングルマザーである母ローズ(ニコラ・ハリソン)と

責任感の強い長男(ジョージ・マッケイ)、

妹、弟、そしてまだ幼い末の弟の5人家族は

祖国イギリスでのある過去を捨てて、新たな一歩を踏み出そうとしていた。

 

だが、ほどなくして母ローズが病に倒れ

亡くなってしまう。

 

力を合わせて生き抜くことを決意した

4人の子どもたち。

 

が、それ以来、

屋敷に不気味な現象が起こり――?!

 

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うわ、こっわ!

 

でも、こうして新しいものに出会えるから

ホラーは怖いけどやめられない!んですよねえ。

 

 

ギレルモ・デル・トロが製作総指揮した

「永遠の子どもたち」(07年)のJ・A・バヨナ監督が

今度は「永遠の~」の脚本家が監督した

この映画を製作総指揮している。

 

 

スペイン映画界の“ホラー&ダーク”の才能の系譜が

脈々と受け継がれている、って状況に

熱くなると同時に、鳥肌立つというか(なんなんじゃー!)

 

 

で、映画はというと

やっぱり単なる“脅かし”ではなく、

ラストもきちっと収束した、見応えある物語でした。

 

 

冒頭から恐怖をあおるようなことはせず、

どこか穏やかな「ことの後」のような雰囲気を漂わせるあたりが、実にうまいし

 

その穏やかさに

「これ、ホラーなの?」という疑問符を持ちながらスタートし、

のちに、そんな「ことの後」感さえも

伏線になっていた――とオチるんですよね。

 

白昼の光のなかで“怖さ”を演出する挑戦、

子ども使いの巧み、

根源にある“悲しみ”――

 

さらに、直接的ではなくとも

どこかにスペイン内戦という近い歴史と悲劇を

忘れずに内包し、血肉にしている感じは

昨今、国際的評価を得ている作家に共通しているものだと感じます。

 

 

それにね、途中まで、ある程度は想定できたけど

このラストは想像しなかったなあ!

 

ぜひ、劇場で

ヤラレタ!となってください。

それが楽しいんだと思うのです。

 

★4/12(金)から新宿バルト9ほか全国で公開。

「マローボーン家の掟」公式サイト

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マックイーン:モードの反逆児

2019-04-04 23:34:13 | ま行

ファッションデザイナーのドキュメンタリーは往々にしておもしろいけど、

これは出色だったなあ。

 

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「マックイーン:モードの反逆児」74点★★★★

 

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1969年、ロンドンの労働者階級に生まれ

23歳でデザイナーデビュー。

大活躍しつつも、40歳で自ら命を絶った、伝説のデザイナー、

アレキサンダー・マックイーンのドキュメンタリーです。

 

実際、

「名前は聞いたことある」くらいの知識だったので

オープニングの昆虫やドクロや血、

美しいけどまがまがしい世界に「へえ」と興味を惹かれ

さらに、プライベート映像に写る

こんな“やんちゃ坊主”が、デザイナーとは!

しかも、そのセンス、すげえ!

度肝を抜かれっぱなしの111分でございました。

 

ぽっちゃりとした、田舎のぼっちゃんふうの彼が

16歳でテーラーに就職し、

その後、大学で服作りを学び、

23歳で衝撃のデビューを果たす。

 

で、「ジバンシィなんてバアさんのブランドだろ?」なんて軽口を叩いていたら、

いきなりデザイナーに抜擢され、

さらにはグッチへ、と成功の階段を爆走する。

 

本人映像も肉声もたっぷりで、

会議での一悶着シーンなど

「よくこんなの、撮ってたなあ!」という映像もあり、構成も巧み。

 

しかし、最も驚かされたのは、他でもない彼のショー。

演出も、服も、装置も発想も、アイデアとストーリー性に溢れ、

ファッションのショーというより、もはや舞台劇を見ているかのよう。

完全にアート。

すごすぎる!

 

そんなショーを

年に10回もやっていれば

疲弊し、ドラッグに溺れるのも仕方ないのかもしれない。

 

燃え尽きさせ、あまつさえ殺してもしまう

この業界から一歩引いて別の世界を試せば、

また新しい展開があったのでは、と素人ながら思ってしまった。

生きていれば、ワシと同い年くらいか・・・・・・。

 

才気溢れる風雲児の駆け足の人生に、涙。

 

そして「AERA」にて

映画にも登場する03年の伝説のコレクションで

トリを務めたモデルの冨永愛さんに、お話を伺いました。

その超絶のスタイル、超絶の美に圧倒されつつ

マックイーンとの思い出話に、涙。

 

掲載は4/15発売号の予定です。

ぜひ、映画と併せてご一読くださいませ!

 

★4/5(金)からTOHOシネマズ日比谷ほか全国で公開。

「マックイーン:モードの反逆児」公式サイト

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