ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

バクマン。

2015-09-30 23:30:19 | は行

ワシは
シュージン=神木隆之介氏のキャスティングが
ニュースになったときから
「ピッタリじゃん!」と思いましたよ。


映画「バクマン。」65点★★★


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真城最高(サイコー)(佐藤健)は
さしたる目的もない、凡庸な高校生。

クラスメイトのアズキ(小松菜奈)に恋し、
彼女の絵をこっそりノートに描いている。

ある日、サイコーは高木秋人(シュージン)(神木隆之介)に
そのノートを見られてしまう。

サイコーの絵の才能に感動したシュージンは言う。

「二人で漫画家を目指そう!」

こうしてシュージンが原作、サイコーが作画を担当する
高校生コンビが誕生する。

そして二人は
『週刊ジャンプ』の新人賞に応募するのだが――?!


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『デスノート』コンビによる
同名大ヒット漫画を
「モテキ」の大根仁監督が映画化。

漫画家を目指す高校生コンビの
成長と友情の物語。

導入の“ジャンプ史”みたいなの面白かったし、
基本は原作漫画ベースに
エピソードがほどよく取捨選択され、
サクサク進んでいきます。


二人の設定を高校生にし、

ライバルの新妻エイジ(染谷将太)ほか
一緒にジャンプ連載を目指す仲間たちとの友情を
クローズアップしたのも


持っていきかたとして美味いと思う。

アズキ役の小松菜奈氏も可愛かったし
(「渇き。」は壮絶だったけどね)

「ラッコ11号」を描く平丸役の
新井浩文氏にはウケたし(笑)。


ただ幼少時代のサイコーと
叔父・川口たろう氏(宮藤官九郎)の回想シーンを挟む
パターンの単調さや

サイコーとシュージンの創作の描写、

そしてなぜか挟まる
バトルシーンで一気に冷めたんですよねー。悔しい。


単調な作業である「漫画の創作シーン」を
映像で見せるのが
ムズカシイというのはわかる。

大根監督が大の漫画好きだっていうのも
絶対にわかるんだけど

マンガを描いている場面で
インクが空を飛び、ページが魔法のように出来上がっていく描写って
血のにじむような一筆一筆を
軽んじてるように見えやしないか。

ワシには残念ながら
そう見えてしまいました。

それに
二人が描くマンガの中身が
もっと魅力的に見えるとよかったんだけどなー。

ただ、一部でも話題になっているように
エンディングのスタッフロールが
めちゃくちゃ凝ってておもしろい!(笑)

プレス資料も凝ってる!


見どころは多々アリです。


★10/3(土)から全国で公開。

「バクマン。」公式サイト
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アメリカンドリーマー 理想の代償

2015-09-29 23:16:52 | あ行

これは、想像以上。
大変よかったです。


「アメリカンドリーマー 理想の代償」77点★★★★


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1981年のニューヨーク。

「史上もっとも犯罪が多かった」この年、
オイル会社の若き社長アベル(オスカー・アイザック)は

事業拡大のために全財産をつぎ込んで、
ある土地を手に入れようとしていた。

が、そのころ
アベルの成功をねたむ同業者が
会社のトラックを襲い、オイルを盗む事件が多発。

妻(ジェシカ・チャスティン)は
「手を打つべき」と進言するが

実直でクリーンなアベルは
それを拒否する。

しかし、そんなアベルにさらなる危機が――?!


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「オール・イズ・ロスト~最後の手紙~」
監督の新作。

この監督、3作目にしてホント手堅いなー。


1981年、凶暴な時代に高潔な信念を持ち
オイル業界でのし上がろうとする男の物語は

昨今のスピーディーだけど実態のない
“マネーゲーム系サスペンス”とはまったく違う
リズムとスリル、
重厚で分厚い手応えがあって
たまらない。


クリーンな主人公が
ダーティーな社会で生き残ることの難しさにぶつかる、
その困難や怒り、もがきに
すごく共感できました。

この監督、
「オール・イズ・ロスト」も
けっこうハードボイルドだったけど


男の静けさと、その内にある荒ぶる熱を
なめらかに描くのがうまいんですねえ。


全体にオールドスタイルな雰囲気もあり、
我々の前に道を切り開いてきた親父世代への
敬意も感じたなー。


妻役ジェシカ・チャスティンの
多層な“女の顔”の表現も見事でした。

ちなみに
ジェシカ・チャスティンとオスカー・アイザックは
学生時代からの盟友で

先にキャスティングされた彼女が
「インサイド・ルーウィン・デイヴィス」で注目される前の
オスカー・アイザックを、この役に推薦したんだとそうです。

同志って感じ? いいねえ。


★10/1(木)からTOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開。

「アメリカンドリーマー 理想の代償」公式サイト
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岸辺の旅

2015-09-28 22:48:51 | か行

吹石一恵さん、ご結婚おめでとうございます。
いいよなあ彼女。
「六月燈の三姉妹」おすすめっすよ。

すいません本編には関係ありません(笑)


「岸辺の旅」69点★★★★


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ピアノ教師をしている瑞希(深津絵里)は
一人、ひそやかに暮らす女性。

彼女には
3年前に失踪した夫(浅野忠信)がいた。

ある日、瑞希の家に突然、夫が帰ってくる。

だが、夫は言う。

「俺、死んだよ。」――。

「見せたい場所がある」と誘われ、
夫と旅をすることになった瑞希だが――。


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今年のカンヌ国際映画祭「ある視点部門」監督賞を受賞した
黒沢清監督作品。

一言で言うと、
不思議な映画。

死んだ夫が帰ってきて、
残された妻と旅に出る。

それは夫が旅の途中で出会った人々を
再訪する旅で、
訪ねた先の人々は、夫の来訪を歓迎し、受け入れ、
妻もまた受け入れられる。


すべてのなかに死者と生者が自然に混在し、
その境界がだんだん曖昧になってゆく――というお話。


所々にあるホラーふうの演出が黒沢監督らしいけど
怖がらせではなく、湿っぽくもなく。

何処か昔話の怪談のような民話のような
児童文学のような、
おだやかさに包まれている。

なんだか
キツネにつままれたような感覚になる、というのかな。

特に最初の新聞屋さんのエピソードは
怪談っぽくて好みでした。


そうそう、バレエダンサーの
首藤康之さんが、
存在感ある役柄で出てますよ。


★10/1(木)からテアトル新宿ほか全国で公開。

「岸辺の旅」公式サイト
コメント (2)
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バードピープル

2015-09-26 22:42:54 | は行

あ、これ好きそうだな、と思って観た人は
間違いなく好きになると思う。


「バードピープル」71点★★★★


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パリ、シャルル・ド・ゴール空港近くのホテルに
やってきたアメリカ人のゲイリー(ジョシュ・チャールズ)。


成功したビジネスマンである彼は
今日はパリで会議に出席し
明朝にはドバイに飛び立たなければならない。

が、そんな日々は明らかに彼を摩耗していた。
そして翌朝、彼はある決断をする――。

いっぽうホテルでメイドとして働く
オドレー(アナイス・ドゥムースティエ)は
大学も休学し、アパートと職場を無為に往復する日々。

ホテルの窓辺から、空港を飛び立つ
飛行機を眺めていた。

すると、彼女にあることが起きて――?


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「レディ・チャタレー」から8年ぶりとなる
パスカル・フェラン監督の新作。


ささやかだけれど、ふっと心に入ってきて
好きだなあと思える映画でした。

監督は本作を着想したとき
村上春樹の小説を思い浮かべたそう。
なるほど~。なんか伝わる。


舞台となるのは空港やホテル、移動するバスという
人々が交錯する空間。

目的を持って、先を急ぐ人々のなかで
ふと、異邦人のような、所在なげな気分になる瞬間って
ないですか。

それとか
空港までのモノレールに揺られて、遠くを見ているときに
ふと感じる、吹っ切れ感や、開放感のようなもの。

そんな空気を
とてもうまく写し出していると感じました。


そして、そんな場所で、所在なげな男女の物語が
スーッと始まっていく。

最初のエピソードがアメリカ人の男の話で
続いてホテルメイドの女の子の話になり

特に女の子のほうは
「え?こうくるの?」と驚きつつウケた(笑)。


女の子を演じているのは
フランソワ・オゾン監督の
「彼は秘密の女ともだち」のアナイス・ドゥムースティエ。

うん、この映画の彼女は
すごくかわいい。
小動物っぽさが、ピッタリハマってました。


映画を観たあと、ボーッと流れていく
抜けた景色が見たくなって
ゆりかもめに乗っちゃいましたよ(笑)。

モノレールで空港に行ってもよかったな。

余談。
そういえば「レディ・チャタレー」で監督に会ったかもしれん。
記事を書いた記憶があるなー。対談だっけ?


★9/26(土)からユーロスペース、新宿シネマカリテほか全国順次公開。

「バードピープル」公式サイト
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一献の系譜

2015-09-24 23:29:17 | あ行

先日、家で利き酒ごっこをしてみたんですよ。
「天」と「楯野川」と「獺祭」。

後者ふたつは、意外に……似ていた。
一応、当たったけど。

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「一献の系譜」70点★★★★


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石川県の能登で酒造りをする
「能登杜氏」たちを追ったドキュメンタリー。

厳しくも美しい能登の風景とともに、
半年間蔵にこもって酒造りをする人々の姿が
写し出される。


もっと教科書的かと思ったんですが
解説も少なく

酒造りのハウツーものではなく
そこに携わる人の“空気”も密封した、というのでしょうか。


派手さやPR臭、お勉強とも違う、
映る対象自体の精錬と佇まいが、
自ずと染みてくる映画、という感じ。


「四天王」と呼ばれる超スターな杜氏たちを追いながらも
淡々と、彼らの日常や家族も映したりして。

最初こそ、つなぎがパラパラかなと
ちょっと気になったけど
だんだんと核となる杜氏たち自身に惹かれてゆくんですねえ。


常に感覚を研ぎ澄まし、責任も全て負う
杜氏もすごいけど

酒造りには
半年間を一緒に過ごす蔵人たちとの「和」が大切なんだと
よくわかりました。

あと
「杜氏や蔵人たちがなぜみんな腕時計をしてるの?(邪魔じゃね?)」と
不思議に思ったけど

観ているうちに
なるほど酒造りには「時間」がすっごく大切なのだ、
ということもわかりました。


ほかの地域ってどうなんだろう
全国各地の杜氏シリーズも
ありなんだろうか
観てみたいなーと思いましたよ。


★9/26(土)から新宿武蔵野館ほか全国順次公開。

「一献の系譜」公式サイト
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