ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

水曜日のエミリア

2011-06-29 23:01:07 | さ行

相次ぐナタポー出演作のなかで
「ブラックスワン」の次に、これが最高。

「水曜日のエミリア」80点★★★★


現代のニューヨーク。

弁護士のエミリア(ナタリー・ポートマン)は
上司と不倫し、
いわば“略奪婚”で幸せを掴んだ。

が、そんな彼女をある不幸が襲う。

そのショックから立ち直れず、
どこかモヤのかかった毎日を生きるエミリア。

さらに彼女を悩ませているのが
普段は前妻と暮らし、水曜だけ泊まりにくる
前妻と夫の子、8歳のウィリアム(チャーリー・ターハン)の存在だった。


手のかかる子ではないのだが
なぜかウィリアムとエミリアは
すれ違い、衝突ばかりを繰り返す。


エミリアの心が
癒えるときはくるのだろうか――?



ほんと思いがけず、いい映画でした。


図書館で何気なく借りた本に
電車のなかで号泣、みたいな(笑)


不倫、妊娠を経て略奪婚をしたものの
不幸にあった女。

しかも継子の8歳男児ともギクシャク……と、
字面にすると暗そうだけど

いやいや、
いい感じのニューヨークスタイルというか、
映画全体が重くなく、酸味が効いていて
さっぱりしてるのがいい。

でも肝心なところでは
ギュッと心を持ってかれるんだよなぁ。


悲しみからなかなか立ち上がれず
ときに周囲にも棘を出してしまう
難しい役柄を

ナタリー・ポートマンがナチュラルに演じていて
さすが、見入ってしまいました。


特に
子どもが苦手で、付き合い下手な番長には
彼女の不器用な子どもとの接し方に
とても共感できた。


子役チャーリー・ターハンも達者す。
彼は「きみがくれた未来」でも好演してた
あのコリン・ファース似の子(笑)


最近、特に目立つ“家族再生”ストーリーのなかでも
特に女性目線で
かなり腑に落ちる作品と思います。

ちなみにこれ、
実は買い付けが渋られてたそうなんですが
配給会社の女性陣が
「これはいい!ぜひに!」とがんばって
めでたく公開となったそう。

そのエピソードがホント、映画を象徴してますよ。

おすすめス。


★7/2からヒューマントラストシネマ有楽町、シネマート新宿で公開。ほか全国順次公開。

「水曜日のエミリア」公式サイト
ちなみに公式サイトに
番長のコメントも掲載されてやす。ヨロシク
コメント

ラスト・ターゲット

2011-06-28 22:47:38 | ら行

G・クルーニーって
まーじでかっこいいっすよねェ。

「ラスト・ターゲット」72点★★★☆


ある組織に属する
殺し屋のジャック(ジョージ・クルーニー)は
何者かに命を狙われ、
イタリアの高地にある小さな町に身を潜める。


商売柄、本名も仕事も明かさず
孤独に生きている彼だが、

この町で思いがけず
神父と、美しい娼婦クララと親しくなる。

そんなジャックのもとに
ある依頼が舞い込んだ――。


脂乗り切ったG・クルーニーが
孤独な暗殺者に扮する
ハードボイルドタッチのサスペンス。

ドンパチ少なく、寡黙なところが美学で

「ソラリス」(02年)や「フィクサー」(07年)の
どこか哀しげな佇まいの彼が好きな向きには
超オススメす。


常に姿の見えない敵につきまとわれ、
“死”の影を背負った主人公が

神父とワインを酌み交わしたり
娼婦との会話に
つかの間の“生”の喜びを味わう

その静と動の心理の切り替えが
印象的でした。


また
世界的な写真家でもある
アントン・コービン監督ならではの
構図の見事さも必見。


普通だったら「つなぎ」的になる
風景ショットも

それだけでも見惚れ、
意味を持つように感じました。

ゆったり、大人が味わう映画だと思います。



ただ欲をいえば
役柄的に重要ポイントな
G・クルーニーの手先が
もひとつ器用に見えなかった……(苦笑)。

「ER」ではどうだったっけ?


★7/2から角川シネマ有楽町ほか全国で公開。

「ラスト・ターゲット」公式サイト


現在発売中の
『週刊朝日』(7/8号)ツウの一見で
原作小説『暗闇の蝶』の翻訳家・松本剛史さんに
この映画の見どころを伺ってます。

翻訳家ならではの視点が
ビビビッと伝わってきます。

ぜひご一読を
コメント

ハングオーバー!!史上最悪の二日酔い、国境を越える

2011-06-27 23:27:48 | あ行

この映画、ホントに男性ウケが
いいっすよね~。


「ハングオーバー!! 史上最悪の二日酔い、国境を越える」65点★★★


独身最後のパーティーでハメをはずしすぎ
大ピンチに襲われる
「二日酔い=ハングオーバー」な男たちを描いて
大ヒットしたコメディのパート2です。


ステュ(エド・ヘルムズ)の結婚式が
タイで行われることになった。


フィル(ブラッドリー・クーパー)と
ダグ(ジャスティン・バーサ)は

問題児アラン(ザック・ガリフィアナキス)を連れて、
タイに出発する。

2年前、ダグの結婚式前に飲み過ぎて、
大変めにあった4人は
「もう、あんなことはごめんだ」と肝に銘じ、

美しいリゾート地の海辺で
“一杯だけ”のビールで乾杯する。

しかし、翌朝目覚めると、
記憶もなく、髪の毛もない!
そして新郎ステュの顔面には、ヤバめのタトゥがガッツリ……!

さらに16歳の義弟の姿がない――。

結婚式まであと1日。
さあ、どうする――?!



前回よりも下ネタや、エグみが控えめで、
フツーに見やすく、
話としては“出来てる”感じはあります。


ただ
飲み過ぎ→記憶ナシ→ピンチ!という展開は同じで
まあ「性懲りもなく」としか言いようがないですわな(苦笑)。



こういう映画の細部に目くじらたてるのは
いかにも“PTAのオバサン”的で
カッコワルイってのがまたヤなんだけど

それにしても
どうも“悪ふざけ”が過ぎて
ノレない部分があるんだよなー。



ちっちゃい体の猿とか
将来ある少年に
こんなことしていいんか?とかさー。


なにより
試写室で隣の男性二人組が
「サクラか?」ってほどに
ウケていたのが気になってしょうがなかった。

ザック・ガリフィアナキスが
登場しただけで
館内に響く大爆笑って、なんかもう違うよな?という。


まあエンドロールのタネ明かしフォトといい
前作のファンを決してガッカリさせない
レベルと思います。


★7/1から全国で公開。

「ハングオーバー!!史上最悪の二日酔い、国境を越える」公式サイト
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セヴァンの地球のなおし方

2011-06-26 11:53:05 | さ行

「未来の食卓」監督の続編です。


「セヴァンの地球のなおし方」70点★★★☆


「大人たちにお願いです。
どうやってなおすかわからないものを
壊し続けるのは、もうやめてください――」


1992年の地球環境サミットで
伝説のスピーチをした
12歳の少女・セヴァン・スズキ。


29歳になった彼女を中心に、
各国で「地球のなおしかた」を考え、行動する人々を取材した
ドキュメンタリーです。


セヴァンはカナダ在住で
お父さんが日系3世の環境活動家。

8歳でクラスメートと
「子ども環境活動」というクラブを立ち上げ
自らサミットに出席したっつうからスゴイ。


しかし決しておっかない活動家、ではなく
12歳当時もいまも
やさしく、わかりやすく
「環境破壊をやめよう」と語ってくれる。


そのほか
前作で小学校の給食を
すべてオーガニックにした
フランス・バルジャック村のその後の様子や、

コルシカ島のワイン農家などが紹介されます。


特に日本での取材が多いのが
我々にとってはうれしいところ。

福岡県で合鴨農法をしている農家や、
福井県で子どもたちのために
無農薬食材を育てる農家のお母さんたちも登場します。


ただ
ジャン=ポール・ジョー監督というのは
いたくマジメな人物で、

本作もいたってマジメな
ドキュメンタリーになってる。

映画的なサービスや工夫は薄く、
「複数のパーツをつないだ」感はあります。


しかし、その思いの純粋さ
映像に写っているし、

いま見るべき映画として70点。

それに本作が作られたのは2010年。
震災後、また状況も変わってますしね。

ぜひ。


★6/25から東京都写真美術館、渋谷アップリンクで公開。ほか全国順次公開。

「セヴァンの地球のなおし方」公式サイト

余談ですが
日本でもオーガニック、だいぶ認識されてきたし
いい方向に行ってるのかなーと思ってたんですが

先日、関係者に伺ったところ
状況は決して好転してないらしい。

それどころか
後退しているというんです。

たしかに
原発、放射線うんぬん、というなかにあっても

おサイフ事情もより厳しくなり、
ちょっと高くても安心な野菜、に
手が出しにくくなってしまうのかもしれない。

難しいとこだけど
でも、こういう映画を見て考え
意識し続けるしかないんだろうな。
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デンデラ

2011-06-25 13:38:17 | た行

これじゃあ石原都知事に
「それみたことか」って言われちゃうよ。

「デンデラ」19点☆


姥捨山には
続きがあった、という話。


雪深く、貧しい村。

この村には70歳になった者は
山に捨てられる掟があった。

70歳を迎えたカユ(浅丘ルリ子)は
息子に背負われ、姥捨てされる。


雪のなかで意識を失ったカユだが
目を覚ますと、見知らぬ小屋にいた。


あたりは老婆ばかり。

なんと
捨てられた彼女たちは
デンデラという共同体を作って
生き延びていたのだ!

カユは30年前にデンデラを作った
メイ(草笛光子)と再会する。

メイは恐るべき野望を持っていて――!?



うわーこりゃまいった(苦笑)。

もっと思慮深く、
工夫ある話かと思いました。


結局、婆VS熊かよ!
そんで血や腕が飛び散るスプラッタかよ!っつう。


「歳を取ることは罪じゃない」と
がんばる婆さんはいいけど、

行動の動機が薄いし、
品のなさが、大変に不愉快。


「開き直った」「原始の」みたいなことを
意識してるのかもしれないけど
これじゃあなあ。

石原都知事が
「それみたことか」ってニヤ笑いする姿が
目に浮かぶよ~
くやしい!


集団のキャラ分けも典型的で
おもしろみがないし、

同じ展開が何度も繰り返されて
工夫ゼロ。

ベテラン女優を贅沢に使ったのに
もったいない!

なにより
「歳を取ったら未来がないから、
過去の怨みをはらすのみ」
って考えかたが、あまりに非生産的だよなあ。

「老い」ってものすごく
語りがいのあるテーマなのになあ。


それに
これをいっちゃあおしまいですが
若い娘の一人も出てこない映画が
どんだけしんどいかが、身に染みました。


★6/25から全国で公開。

「デンデラ」公式サイト
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