ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

グッド・ストライプス

2015-05-28 01:54:46 | か行


28歳のギャルにすすめたら
「キョトン」とされた(笑)
でも、見てほしいなー。


「グッド・ストライプス」79点★★★★


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自由奔放な文化系女性の緑(菊池亜希子)
おぼっちゃまの真生(中島歩)。

付き合って4年のカップルは
いわゆる倦怠期。

もう別れ時か?と思ったそのとき
緑の妊娠が発覚して――?!


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2012年公開のオムニバス映画
「BUNGO~ささやかな欲望」
「乳房」を担当した岨手(そで)由貴子監督の作品。

倦怠期→思わぬ妊娠→え~?じゃあ結婚?という
いまどきなカップルの6ヶ月を描く。

妊婦の話ではなく、他人同士が一緒に暮らし、
“一組”という単位になっていく様を追うので、
男女問わず「あるある」が満載だと思う。

演じる二人の自然さもハンパなく、
菊池亜希子氏もすごくいいんだけど

ダサい髪型で胸板うっすい中島歩氏が、
見事にフツー男子に化けていて感動した(笑)

そんな二人のゆるいテンポと会話が、
日常をうまく切り取っていて笑えるんですわ。

片方がおおざっぱで
片方が神経質、とか。

足だるい~、と投げ出すと、
彼氏が黙ってさすってくれる、とか。

そんなささやかな幸福に
クスクスと笑いがこみ上げたり。

初めて親に会わせたとき、
想定以上に、親とうまくやってくれたときの
「おっ」な、嬉しさとかね。


そんだけ共感できるということは
どこにでもいるフツーの人々が
ひとりひとりドラマを生きているんだなと
いまさらだけど、フフッと思えることだったりするわけで。

なんか、いいんす。

ちなみにグッド・ストライプスとは
素晴らしき平行線という意味なんだそうです。


★5/30(土)新宿武蔵野館ほか全国で公開。

「グッド・ストライプス」公式サイト

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ジェームス・ブラウン 最高の魂を持つ男

2015-05-26 23:18:52 | さ行

ゲロッパ!の人は
こんな人生を歩んだのか……と。


「ジェームス・ブラウン 最高の魂を持つ男」66点★★★☆


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1933年、アメリカ南部に生まれた
ジェームス・ブラウンは
家は貧しかったが、幼少から教会などで音楽に触れていた。

しかし6歳のとき母が家を出て、
やがて父とも離ればなれに。

貧困ゆえに盗みを働いて刑務所に入った彼は
のちの親友となるボビー・バード(ネルサン・エリス)と出会い
音楽の道へと目覚めていく――。


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“キング・オブ・ソウル”と言われる
ジェームス・ブラウン=JB の人生を描くドラマ。

監督は「ヘルプ ~心がつなぐストーリー~」のテイト・テイラー。
プロデューサーにミック・ジャガー。

子ども時代、人生を決めた出会い、デビューの日……と、
JBの人生のイベントを抽出し、
現在、過去を軽妙に行き来する作りで

知らなかったその人生を
サクサクッと知ることができて「へえ!」なのですが


ちょっと
構成がシャレすぎなんですよね。

カッコいい
ミュージッククリップみたいというか。

シーン変わりから芝居がいきなり始まる感じがあって
ドラマがぶつ切りで、
心が繋がっていかないのが、ちょっと残念。


「単純な伝記モノにしたくない」意図は通じるし、
説明すっ飛ばしとかは構わないんですけどね。


主人公がカメラに向かって話しかけたりするのは
「ジャージーボーイズ」っぽい感じもあり。


主演のチャドウィック・ボーズマンは熱演で
ステージシーンはあのダンスとか、開脚の再現とかすげえ!
盛り上がります。

あの才能の代償に彼が払ったものは
想像できないほどに、大きかったんだろうな、とは
感じました。


★5/29(土)から全国で公開。

「ジェームス・ブラウン ~最高の魂を持つ男~」公式サイト
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アドバンスト・スタイル そのファッションが、人生

2015-05-25 01:17:32 | あ行

写真集が売れてるそうですよ。

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「アドバンスト・スタイル そのファッションが、人生」70点★★★★


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NYの街で見かけたおしゃれマダムたちをスナップし
ブログにアップし、評判になっていた
31歳の男性カメラマン、アリ・セス・コーエン。

彼が見つけた
60歳以上95歳までのマダム7人に焦点を当てて
その人生とスタイルを紹介するドキュメンタリーです。


なんたって
こんなにファッショナブルなマダムたちがいるんだ!ということが
まず驚きであり

それを30歳そこそこの青年がやった、ということが
やられた!と盲点だった。

コーエン氏はおばあちゃんっ子だったそうだけど
女性カメラマンが声をかけるのと
孫みたいな男性カメラマンに声をかけられるのとでは
マダムたちの反応も対応も、絶対に違うはずだもんなー。


7人はみなファッション同様、パワフルで明るく前向きで、
見ているだけで元気をもらえるし
「歳を取って自分を受け入れられるようになった」というような、
先輩からのリアルな言葉に勇気ももらえる。


特に雑誌社で働いていたという
元祖キャリアウーマンな女性が素敵だなあと思った。

当たり前なんだけど
ファッション=中身であり
そこにいたるまでの「人生」がしっかりあってこそ、
ここに到達できるのだ、と改めて感じました。


ただ、そこまで“人生話”とかでなく
思ったよりサクッとあっさり軽めではあった。
72分だし、逆にそれがちょうどいいのかもね。

これを見てから、銀座を歩いていても
白髪の女性ばかりに目がいってしまうのでした(笑)


★5/29(金)からTOHOシネマズ シャンテ&新宿ほか全国で公開。

「アドバンスト・スタイル そのファッションが、人生」公式サイト
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だれも知らない建築のはなし

2015-05-22 20:39:42 | あ行

建築って、ホントにおもしろい。

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「だれも知らない建築のはなし」70点★★★★


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建築家の父を持ち、
磯崎新アトリエでの勤務経験もあるという
1979年生まれの石山友美監督が撮ったドキュメンタリー。


日本の1970年代以降の建築を振り返るという
おもしろいテーマのインタビュー集です。


ワシ、建築にかなり興味あるほうで
建築目的で旅もするし
実は学生時代に丹下健三事務所で
バイトをしていた笑い話(というしかない!)もあるんですが

でもこのドキュメンタリーで
建築家の“人間らしさ”も見たうえで

建築家って改めてあらゆる意味で本当に到底かなわない
すげえ人たちなのだなとわかった。
つまり「哲学を具現化する存在なのだ」って。


映画の軸になるのは
1982年にアメリカで行われた
世界の一流建築家が議論する「P3会議」の話。

そこに磯崎新氏が、当時まだ若手だった
安藤忠雄氏や伊東豊雄氏を連れていくんだけど
そこでプレゼンテーションした安藤氏が
冷笑の拍手に遭ったそうなんですね。

映画はその場にいた当人たちに
当時の様子をインタビューしながら
「日本の現代建築とはなんなのか?」を描いていく。


磯崎氏、安藤氏、伊東氏、そして
ピーター・アイゼンマン氏たちのインタビューは
建築とはなんぞや、を教えてもくれるんですが

名指し批判もありーの、な
辛辣さを併せ持っていて

でも当人たちはそれぞれ、そんなこと気にもしてないようで
そこがおもしろい(笑)。

特に建築家レム・コールハース氏がまあ辛口で
でも、言われたほうも
苦笑していなすしかないほど
的確でシャープな斬り方と、高い思考能力はさすが。

芸術批評の世界はなにかと難しいので、
高い次元で批判もし合える、こういう関係が羨ましいなと。


なにより
いま、そこにある日本の建築物を見ながら
ポスト・モダンとは何だったのか?
バブル崩壊から現在の流れは……? と
多くを学べるところがいいんです。


例えば
バブル期のころは、確かに風変わりで個性的な建築物があった。
神奈川県の湘南台文化センターとか
神戸のフィッシュ・ダンスとか
福岡のキャナルシティもそうなのか……とか。

でも、いま次々と建っているマンションやショッピングモールは
正直、無個性なものばかり。

それは
建築家なし、で建てられているからなのか、と
この映画を見て、改めて理解した。

でも
いまはそれが求められているわけで
建築を見るとそれが建った時代背景がわかるんだということも
すごく勉強になりました。


建築専門用語を知らなくても楽しめるけど
資料併読か、解説付きの上映だと
よりおもしろさ倍増だろうなあ、とも思いました。


★5/23(土)からシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。

「だれも知らない建築のはなし」公式サイト
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追憶と、踊りながら

2015-05-21 00:39:53 | た行

ベン・ウィショー好きな人には
絶対に、強固に、おすすめ(笑)


「追憶と、踊りながら」72点★★★★


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ロンドンの介護ホームで暮らす
初老の中国人女性ジュン(チェン・ペイペイ)。

英語を話せない彼女の楽しみは、
優しい息子のカイ(アンドリュー・レオン)が
ちょくちょく面会に来てくれることだ。

だがジュンは、カイが一緒に暮らしている
友人リチャード(ベン・ウィショー)を気に入らない。

そんなある日、
リチャードが一人でジュンを訪ねてきて――。


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1975年、カンボジア・プノンペン生まれで
その後ロンドンに移住した
ホン・カウ監督の長編デビュー作。


ベン・ウィショーをして「ラブリー」と言わしめ
本人もインタビューのなかでさりげなくカミングアウトしているので

母親にカミングアウトできないまま不在となった青年とその母親、青年の彼氏の
手探りの邂逅というこの題材は
とても無理なく、自然に選ばれたものだと思う。


セピアがかったやわらかな映像と描写に
細部まで統一感があり、完成度が高い。


そして
ベン・ウィショーの、身をちぎられるような演技が
そりゃあもう切なくて切なくて、泣ける(泣)

カイ役のアンドリュー・レオンも
まあ端正なハンサムで(笑)
とても美しいカップルですな。


母親が中国語しか話せないので
リチャードが女性の通訳を雇うんだけど、
その通訳とリチャードのやりとりが明るくて
フッと笑える場面につながるのもよかったな。


回想シーンと現在の時間の境界を淡くしてあるのも
映画全体を覆うどこか夢のなかのような、
ほんのりした甘い優しさになってました。

ただ
この境界の淡さって、認知症の初期症状なんじゃないかとも思う。
まだそんなに高齢ではない母親をホームに入れた理由も
それで説明がつくかなと、想像しました。


★5/23(土)から新宿武蔵野館ほかで公開。

「追憶と、踊りながら」公式サイト
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