ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

おとなの恋には嘘がある

2014-03-29 22:28:46 | あ行

オトナにおもしろい映画。


「おとなの恋には嘘がある」74点★★★★


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離婚して10年になるエヴァ(ジュリア・ルイス=ドレイファス)は
ボディセラピスト(マッサージ師)として
今日もがんばって働いている。

女で一つで育てた一人娘は
今年から大学に行き、独り立ちする予定だ。

嬉しい反面、ちょっぴり淋しさも感じているエヴァは
あるパーティーで
気になる男性アルバート(ジェームズ・ガンドルフィーニ)に出会う。

太っているけど、明るく
なにより話の合うアルバートにエヴァは惹かれていくのだが・・・・・・?!


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FOXサーチライトピクチャーズ20周年記念第3弾。

FOXサーチライト、マジで良質ドラマのお墨付きですね。
これも、クオリティ高い。

40代で離婚経験ありのエヴァが
ある男性と知り合う。
会話も弾み、ジョークもいいあえて
すっごくいい感じになるんだけど

なんと彼は偶然、同じタイミングで知り合って
仲良くなった女性顧客の、元夫だった……!

ああ世間は狭い!ホントありそうで、なんかいやだわあ(笑)


事態に気づきつつも元妻の語る元夫の「ダメなところ」についつい耳を傾け、
彼を査定してしまうエヴァがおかしくて

「ネットの口コミ情報を見て、ホテルを決めるような感じ」ってセリフ
なるほどなあと思った。

失敗したくない彼女の気持ちもよくわかるし

出会いの情熱が冷めた後を知る“おとな”であり、
しかし
人とは誰かを求めずにいられないのだ、という
矛盾した思いと、手さぐり感がうまく描かれている。

元妻が元夫を語る、
「なぜ、あんな人と会話してたのかわからない」
「でも最初からイヤな所に気づいてたのかも。でも無視してたのかも」とか
なんでしょう、リアルですねえ(苦笑)


確かに完璧な男なんていないし
それにエヴァのほうも、端々に皮肉がキツすぎるキャラでもある。

結局、人は欠点だらけ。
そんな他人どおしが、寄り添っていかねばならないというのも
また人のさがだよなあと。

大学生になる娘と母親の
親離れ子離れの瞬間もうまく入れ込んでる。

監督・脚本は「SEX AND THE CITY」の演出・脚本を手がけた人。

やっぱり“人間”の営みを見るのって面白いっすね。

そしてアルバート役のジェームズ・ガンドルフィーニ。
2013年に急逝した彼の見納めになるかもしれない。
惜しい・・・。


★4/4((金)から公開。

「おとなの恋には嘘がある」公式サイト
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ジャッカス/クソジジイのアメリカ横断チン道中

2014-03-27 21:38:23 | さ行

祝!アカデミー賞
メイキャップ&ヘアスタイリング賞ノミネート!(笑)


「ジャッカス/クソジジイのアメリカ横断チン道中」68点★★★☆


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86歳のスケベなじいさん(ジョニー・ノックスヴィル)の
妻が亡くなった。

葬儀にやってきたじいさんの娘は
8歳の孫ビリー(ジャクソン・ニコール)を残し、出て行ってしまう。

困ったじいさんは
娘の別れたダンナにビリーを預けるべく、
アメリカ横断のふたり旅に出ることになるが――?!


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MTVのリアリティ番組「ジャッカス」の映画版。
実はこれで4作目。

確か1作目「ジャッカス・ザ・ムービー」(2004年)は見てますが
もう忘れてた(笑)

なので、今回も新鮮な気持ちで見つつ、
意外に楽しんじゃいました。


86歳のじいさんが8歳の孫と車で旅をし、

途中、様々なシーンで素人さんを引っ掛け、
その反応を見るという
いわば「ドッキリ」映画ですが
一応、ストーリーに乗っ取ってはいる。


道路沿いの看板にドカーンと突っ込むなんて序の口、
自販機に〇〇〇が挟まっちゃった!ヘルプ!なんて失笑モノから
結婚式に乱入……などなど

仕掛けも多々ありそうだけど、
引っかけられる人々はホンモノらしい。

そして
相手が善人であるほど
そのリアクションや、困惑した表情が面白いという
いやらしい(笑)映画です。

ワシ、普段ドッキリ番組は嫌いだし、
お下品も勘弁!なほうですが
これは意外に見入ってしまいました。

一応、ストーリー仕立てになっていることと
少年ビリーの存在が効いてるのかな。

一人、ぽつねんと街にいる彼に
親切心で声をかけたが最後、
「僕のパパ(ママ)になって」なんて話になったら、
自分、どんな反応するだろ?なんて思っちゃったりして(笑)


美少女コンテストに乱入する場面は
「リトル・ミス・サンシャイン」の名場面をちょっと思い出したり。

そして、
まあどうしようもなく元気なおじいさん、と思ったら
エンドロールで秘密が明かされますんで、お見逃しなく。
メイキャップ賞、ですからね(笑)

★3/29(土)からヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開。

「ジャッカス/クソジジイのアメリカ横断チン道中」公式サイト
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白ゆき姫殺人事件

2014-03-24 23:32:14 | さ行

「そこのみにて光輝く」(4/19公開)試写を見てから
綾野剛氏が気になる(笑)。


「白ゆき姫殺人事件」67点★★★


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公園で、美人OL典子(奈々緒)が殺害された。

テレビ局で働く赤星(綾野剛)は、
そんな第一線の事件とは無関係の契約ディレクター。

だが彼のもとに
女友達の里沙子(蓮佛美沙子)から電話がかかってくる。

「いま話題の殺人事件、
被害者の典子さんってあたしの会社の先輩なんだ」

そして里沙子は赤星に
ある女性が犯人ではないか、と話す。

それは典子の同僚で目立たない
美姫(井上真央)という女性だった――。

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湊かなえ原作×中村義洋監督。

まず
ツイッターが小道具として大活躍するのが一大ポイント(笑)

湊氏独特の
各人の主観で形成される「証言」や「噂」の綴り方に
ツイッターというツールを重ね

ひとたびネタになると
同僚や同級生たちが勝手につぶやきはじめ

果ては写真や住所、実名まで拡散されてしまうという
現代ならではの怖さを
わかりやすく描いていると思います。


また事件を追っていく
綾野氏演じるディラクターがホントにおポンチなヤツで(苦笑)

ツイッターで不用意に
取材中のネタをつぶやいたり
リテラシーまるでナシ、のまま
事件に巻き込まれていく。

そこが
失笑というか、笑いになってもいる。


見応えあるとは思うんですが
ただ、この作品は
中村義洋監督には、ちょっと合わなかったのかなあという気がした。


“女の給湯室話”系のドロドロを
男子が「お~コワ」と
若干、薄笑いしつつ描いている感じがしてしまったんですよねえ。

自分も「お~コワ」って距離置いてる側なんで
立位置にはまったく共感できるんですが、

それでは
怖さの本質には迫れないのかも、と。

真犯人?誰でもありじゃん?どうせ女は怖えぇんだからさあ、となってしまったら
つまんないですからね。

2時間09分もちょっと長かったかな。


★3/29(土)から全国で公開。

「白ゆき姫殺人事件」公式サイト

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ダブリンの時計職人

2014-03-22 23:44:10 | た行

“ほっこり系”とはまるで違うけど
鼻ツン、としつつ、でもホワッとした温かみ。


「ダブリンの時計職人」71点★★★★


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イギリスで失業し
故郷ダブリンに戻ってきた50代半ばのフレッド(コルム・ミーニイ)。

住む家もない彼は
駐車場に停めた車のなかで暮らし始める。

ある日、駐車場に
同じように車で寝泊まりする
青年カハル(コリン・モーガン)がやってくる。

隣人になった二人は
次第に交流を始めるが――?!

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ラストの展開の予測はつくけれど、
途中の登場人物たちの行動には「え?」と気持ちよく裏切られたりする。

どうにも不思議で、でも
胸にジワジワ染み入る、なかなかの珠玉作でした。


監督はドキュメンタリー出身で、
実際にアイルランドの失業状況や、
フレッドのようなホームレスの取材をたくさんしているそう。

だからでしょうか
想像したような“ほっこり”系とはちょっと違って
ツン、と鼻にくる痛みもあり、
それでも、やっぱり、ホワッとした温かみもある。


主人公は人生半ばにして道を見失ったフレッド。

駐車場に停めた車のなかで生活する彼は、
失意の底にあっても

歯を磨き、掃除をし、車に置いた植物に水をやり
規則正しい日々のリズムを見出すことはない。

好感が持てますねえ。


そのうち、駐車場に
ご同輩といえる車上生活者のカハルが表れる。

ドラッグをやったり、ヤバい奴らと付き合いはあるんで
ヒヤヒヤするんですが
これがなかなかいいヤツで

孤独だったフレッドが
カハルとの交流や、ある女性との出会いで、少しずつ変化していく――という話。


状況説明はほとんどなくとも
日常描写から登場人物の人となりを伺わせるのが巧く、

繊細な光の使い方や
クローズアップ多めの図も
けっこう、心を揺らしてくる。

「人生に迷うことは恥ではない」とか
「葉っぱが木から落ちる瞬間を見たことある?そりゃあ美しいんだよ」とか
スッと響く美ゼリフも多く

フレッドの境遇といい
このご時世、他人事ではない題材としても染み入りました。


ただ、なんというか、
カハルのキャラも、ドラッグディーラーたちの描写も、
提示される映画的な要素がわかりやすいところとか
(メタファーとか)

どうも素朴というか、世慣れていないというか
不思議な印象が残ったんですが


そんな「不思議」に、答えを出してくださったのが
アイルランド文学研究者で早稲田大学教授の栩木伸明さん。

アイルランドの成り立ちや、状況を教えていただくと
これらの不思議の秘密が「なるほど~!」と理解できました。

3/25(火)発売の週刊朝日「ツウの一見」にご登場いただくので
ぜひ、映画と合わせてご覧くださいませ。

さらに
栩木さんのお話を、トークショーでも聞くことができます。
3/26(水)渋谷アップリンク「アイルランド・ナイト」

ワシも聞き手として登壇いたしますので(タハハ。笑)
ご興味ある方は、ぜひご参加ください!


★3/29(土)から新宿K'cinema、渋谷アップリンクほか全国順次公開。

「ダブリンの時計職人」公式サイト
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ウォルト・ディズニーの約束

2014-03-21 18:30:06 | あ行

「メリー・ポピンズ」を
予習していったほうがよさそうです。


「ウォルト・ディズニーの約束」66点★★★


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1961年。

『メリー・ポピンズ』の著者である
トラヴァース(エマ・トンプソン)は悩んでいた。

もう20年も前から、
メリ-・ポピンズを映画化しないかとオファーを受けていたのだ。

企画の主は、かの
ウォルト・ディズニー(トム・ハンクス)。

ずっと断り続けてきたものの
最近、経済的にも厳しくなってきた彼女は
とりあえず、ウォルト氏に会うことにするが――?!


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これは予備知識ナシで観ると
最初は「??」かもしれません。

ウォルト・ディズニー氏が主役ではなく、
かの有名な「メリー・ポピンズ」の作者、
トラヴァース女史が主役なんですよ。


ワシ、例によってなんにも知らずに観たので、

最初に「♪チムチムニー~」の曲がかかったものの
始まってしばらくは、字幕なしで観ているような
何の話だか、まったくちんぷんかんぷん状態(苦笑)。

もうちょっと親切に作ってもよかったんではないか?

このひねくれて偏屈なご婦人が誰なのか、
なぜ不機嫌なのか、ちっともわからないし

彼女にチャーミングなところでも
チラリとあれば別なんですが、

あまりに取りつく島ないおばさんなので(失礼!)
これで観客を惹き付けておくには
無理があると思う。


そんな彼女が書いた「メリー・ポピンズ」を
ウォルト氏が映画化したいと熱望しているとわかり
(ようやくトム・ハンクス登場!笑)

で、あれこれ難癖をつけて拒否する彼女と
ウォルト氏、制作スタッフたちとのやりとりが始まるって話。


合間にトラヴァース女史の回想シーンが挟まり、

彼女を創作へといざなったのが父親であること
子供たちには最高に楽しいパパだったけど
現実と折り合えず、苦しんだ男性だった……ということがわかる。

と、
構成パターンにも工夫ないんですが
ただ、それでも「うるっ」とさせられるシーンがあるから不思議。

彼女が、
左手薬指にしている指輪の秘密が切ないしね。

それにトラヴァース女史のような人は、実際にいると思うんですよ。

物事、なんでも最初は否定。

でも、絶対に拒否するわけでなく、
本人が噛み砕くまでに時間がかかる、というタイプ。

トム・ハンクスがあの手この手で
そんな“めんどくさい人物”を説得する様は
『イヤな相手でも諦めず、説得する方法』として
ビジネス指南書になるかも、と思いました。


★3/21(金・祝)から全国で公開。

「ウォルト・ディズニーの約束」公式サイト
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