ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ミリオンダラー・アーム

2014-09-30 20:21:48 | ま行

これはめっけものでした。


「ミリオンダラー・アーム」74点★★★★


******************************

スポーツ選手と所属チームの間を取り持ち、
有望選手を売り込んだり、
契約金の交渉をするスポーツ・エージェント、JB(ジョン・ハム)。


しかし、いま彼はアメフトの有望選手をライバル会社に取られ、
ピンチに陥っていた。


だがJBはあるアイデアを思いつく。

野球未開拓の地・インドで投手を発掘し、
メジャーリーガーを誕生させたら・・・?というもの。

JBは有望選手を発掘するため
インド各地でコンテストを開催するのだが――?!

******************************

2008年にあった実話が基。

俳優は地味めなんですが
スポーツの高揚感にインドの熱気
事実の面白さがうまく混ぜられた良作でした。

脚本が
「扉をたたく人」(07年)のトム・マッカーシーなんですね。
まあ、この人は巧みですわ。

メジャー選手を目指す二人のインド人の若者の成長と
彼らを育てるエージェントの成長が、
うまく相乗し、織り上げられている。

スムーズな進行ながら中身が濃いので
2時間3分がかなり長く感じるけど

実際の道のりの苦労と、その波瀾万丈さを思えば
よくまとめてあります、はい。

深刻になりすぎない加減で、苦労や失敗をしっかり書き込んでいるので、
結末の盛り上がりもひとしおだしね。

エンドロールの映像にも、グッときます。

しっかし
スーザン・ボイルのあのオーディション番組を見て
豪速球オーディションを思いつくなんてウソみたいだけど
(まあこの部分はフィクションかもしれないけど。笑

誰もやってないことをやる、という
ひらめきの光明は素晴らしいね!


★10/4(土)から全国で公開。

「ミリオンダラー・アーム」公式サイト
コメント   トラックバック (1)

世界一美しいボルドーの秘密

2014-09-26 23:36:42 | さ行

要は、マネーの話でね(笑)

****************************


「世界一美しいボルドーの秘密」55点★★☆


****************************

「シャトー・マルゴー」や「シャトー・ラトゥール」など
ワインにさほど詳しくなくても
名前だけは聞いたことある
フランスはボルドー・メドック地区で生産されるボルドーワイン。

フランスワインのなかでも
ちょっと格が違うそのワインは
飲む楽しみだけでなく、金融資産として取引されているそう。

その現実を描いたドキュメンタリーです。


有名シャトーの畑が見られたのはよかったんですが
まあ、フツーのワイン好きが想像するような内容ではなかった、というギャップが
一番の問題だったかも(笑)


ワインの滋味とか
生産者の真摯な土作り・・・的な方向ではなく、
ようは、ビジネスとマネーの話なんですよ。

だから
正直なところあまり“美しく”はない(笑)


「潜入!ボルドーワインの裏事情!~迫り来る中国マーケット~」
なんてタイトルで
ガイアの夜明け的な想像をしていれば
きっとオッケーだと思います。


ボルドーワインには他のワインと違って値段がなく
その年の値段を決める批評家たちの集いがあるとか

先物買いをしておいて、
売って利益を得る投資の対象なのだとか、

また近年、ボルドーワインの価格を釣り上げている
中国の動きとか

「へえ~」なことは確かです。

現地シャトーの買収はまだしも、
ウイグル自治区やゴビ砂漠で国家をあげてワイン作りを推奨しているとか
全然知らなかったのでびっくり。

まあ、そんなビジネス話ムードのなかで唯一、
ボルドーで修行し、醸造者となった中国人男性の真面目そうな人柄と
農業への真摯な取り組みが紹介され、気持ちの良さがある。

彼は2009年、国際コンクールで最優秀になったそうで。

そうそう、ワシ単純なんで
こういうのがほしいんですよね。


★9/27(土)からヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開。

「世界一美しいボルドーの秘密」公式サイト
コメント

聖者たちの食卓

2014-09-25 23:17:24 | さ行

カレーは魅惑よねん。

************************


「聖者たちの食卓」66点★★★


************************

インド北西部にある“黄金寺院”。
ここでは毎日10万食(!)の食事を
巡礼者や旅行者のために無料で提供している。

その無料食堂の風景を映し出す
ドキュメンタリーです。


監督は映像作家で料理人でもあるベルギー人の夫婦コンビ。
たまたま“黄金寺院”を訪れ、
感銘を受け、撮影許可を取ったのだそう。

で、本編は
ナレーションなどなし。

大鍋に火を入れるシーンから始まり、
大量の一斗缶や食器、野菜の収穫シーンなど、
カメラが切り取るものに、実際さほど新味はない。

しかし
見どころはその圧倒的な量と手際のよさ。

大勢の人々が(ボランティアの方々らしい)分業で大量のニンニクをむき
タマネギを刻み(これが一番大変そうだ!)、
ナン種を丸め、延ばし、焼き、料理を作っていく。

出来上がったカレーは4種類で、
いずれもおかわり自由っぽい。

食べ終わると自分で食器を片付け、
また次の人々に床を譲る。

きっと明日も明後日も100年後も、同じ風景が続くのだろう。
そう思うと、意識がフッと時空を超える。

料理が永久の時間を、想像させる不思議。


実際、この寺院では
500年に渡って、この光景が続いているらしいです。

・・・カレー・・・(遠い目。笑)。


★9/27(土)から渋谷アップリンク、新宿K's cinemaほか全国順次公開。

「聖者たちの食卓」公式サイト
コメント

不機嫌なママにメルシィ!

2014-09-24 23:54:44 | は行

コメディかしらんと思ったら
深~い話だった。


「不機嫌なママにメルシィ!」68点★★★☆


****************************

俳優のギヨーム・ガリエンヌ(本人)は今、
自作の一人芝居の舞台に立とうとしている。

彼の波乱に満ちた人生は
ママ(ギヨーム・ガリエンヌの二役)との関係から始まった。

女の子が欲しかったママは
幼いころから、ギヨームをどこか特別扱いして育ててきた。

ギヨームは
大好きなママのようになりたいと願うのだが
その様子は段々と周囲から浮くことになり――?!

****************************


「イヴ・サンローラン」
サンローランのパートナーを演じた
ギヨーム・ガリエンヌ。

フランスで演技派として知られる彼が、
自身の自伝的戯曲を映画化。
そして、自分と自分の母親の二役をやるという。

なんだか楽しそう!コメディかしらん・・・と思ったら、
彼が自身のセクシュアリティを、
自らが演じる母親の存在を借りて探すという

なかなかに深い構造になってました。


ギヨームが一人芝居をする舞台劇で始まり、
合間に回想シーンがはさまり、

淡々とし、独特のリズムがあり、
最初はなかなか意図が掴みにくい。

ただ主人公が父親にも言われるほど
「母親にそっくり」で
ママの仕草を真似たりすることから
次第に自身が「男であること」に違和感を持っていることに気づく・・・となっていくと
なるほどなと。

しかし、そこからもまた悩めるところで

いったい自分はゲイなのか?女の子なのか?
「男」が好きなのか?

そしてそのうち
「え!そうなるかい!」のラストに。

LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)
それぞれの違いが改めて学べる感じでした。

ギヨーム・ガリエンヌをもっと知っていると
よりおもしろかったかもしれないなと。
けっこう知ってる映画にも出てるんだよね。

今後はより、気をつけて見てみます。


★9/27(土)から新宿武蔵野館ほか全国順次公開。

「不機嫌なママにメルシィ!」公式サイト
コメント   トラックバック (1)

アルゲリッチ 私こそ、音楽!

2014-09-23 23:16:21 | あ行

サラ・ポーリーの
「物語る私たち」じゃないけど
これも“内輪”ならでこそのおもしろさ。


****************************


「アルゲリッチ 私こそ、音楽!」72点★★★★


****************************


「別府アルゲリッチ音楽祭」でも知られる
偉大なピアニスト、マルタ・アルゲリッチ。

もう何年も取材を受けていない彼女の日常や過去を
三女ステファニー・アルゲリッチが追った
とても貴重なドキュメンタリーです。


実の娘だからこそ撮れるものであり、
逆に映画作家としては禁じ手とも言えるけど、やはりおもしろい。

姉妹全員父親が違うとか、家庭の複雑な事情など
スキャンダラスな面にも
アルゲリッチは一生懸命答えようとしているし

なにより撮っているステファニー自身が
母親と自分の父親を理解しようと
手探りしてる感じ。

姉妹や母親が映る
撮りためた昔のビデオ映像の力も強くて、

「非凡な人の娘であることとは、どういうことなのか」という
ステファニーの模索に関心がありました。


しかし
マルタ・アルゲリッチという人は
本当に天才肌なんですなあ。

インタビュー中も「言葉では表せない」と非常に感覚的で、
こういうタイプの人は
実に取材者泣かせではあり(お目にかかったことないけど。苦笑)。

だからこそ、そこに向かい合うのが
娘であることに大きな意味がある。

娘の問いかけに懸命に答えようとする
彼女の真摯さは本物で
それを記録できることの意味は大きいですからね。

なかでも彼女ほどの天才でも感じる
「不安」や「肉体の衰え」についての言葉も
ずん、と感じました。

★9/27(土)からBunkamuraル・シネマほかで公開。

「アルゲリッチ 私こそ、音楽!」公式サイト


劇場パンフレット用に
ステファニー・アルゲリッチ監督と作家・平野啓一郎さんの
対談記事を不肖ワタクシがまとめました。
「ほお~」な話も満載。
映画と合わせてぜひ、ご覧くだされ~。
コメント