ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

NO

2014-08-30 19:19:13 | な行

最近、みんなの評価にどうものれない自分。

え?前から?(笑)


「NO」47点★★


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1988年、南米チリ。
ピノチェト独裁政権の末期。

独裁政権に反対する人々が
国民投票で独裁を阻止しようとしていた。

独裁政権反対の「NO」派と
現政権側の「YES」派は
互いの陣営をPRするため
毎日1分15分、テレビでコマーシャルを流してよい、とされる。

広告マンのレネ(ガエル・ガルシア・ベルナル)は
友人の誘いで、反独裁政権のCMを作ることになるが――?

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CMの力で独裁政権が転覆したという
事実は知らなかったし
へえ!と思った。

あの手この手のCM作りを描いたり、
当時の映像を、いまのドラマ部分にうまく融合させたり

絵作りには工夫があるけれど、
なんというのかな~・・・どうも一本調子。

広告マン役の主人公、ガエル・ガルシア・ベルナルの
表情もずっと同じだしなー。

納得できない政治に
一般市民が「NO!」を唱えて立ち上がる、というネタは
いまのグッとくるテーマ。

政府VS市民の闘いには
メディアやSNSを含む媒体による
“風”や“流れ”の演出が重要なのも身に染みてわかってる。

でも
「それが簡単にはいかない」ことも
我々は知っていたりもするわけで。

この映画を見てると
「そんなにうまくいくんかいな」的思いもしてしまう。

たぶん、この映画を知るには
当時の背景なんぞをもっと知らないと
納得に足らないんだと思いました。


★8/30(土)からヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開。

「NO」公式サイト
コメント (2)
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TOKYO TRIBE

2014-08-28 23:28:43 | た行

園監督の詩人の血が
ラップにうまくハマったんだと思います。


「TOKYO TRIVE」67点★★★☆


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近未来の“トーキョー”。

シブヤやブクロ(池袋)など街ごとにトライブ(族)が存在し、
暴動を繰り返しつつも、お互いの縄張りを守っていた。

ブクロのボス、メラ(鈴木亮平)は、
ムサシノのカイ(YOUNG DAIS)に異常な敵対心を持っている。

そして
ある事件をきっかけに、メラはカイをおびき出し――?!


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井上三太原作、伝説的コミックを
園子温監督が映画化。

主人公たちのセリフがラップで綴られる
「ラップミュージカル」っていうんでしょうか、
手法が意外でおもしろい。

さらに
近未来の“トーキョー”が
池袋=ブクロや渋谷、新宿に練馬など
地域ごとに“族”となり対立しており

ヤバイ「歌舞伎町」とか
ピースフルな「ムサシノ(武蔵野)」とか「なるほど!」と笑えて
着想がいいね!と思いました。


ハッキリ言って、話としては
戦う理由もなにもくだらないんですが(笑)

想像よりも血みどろやエグさではなく、
ハチャメチャでも、一定クオリティなのは、
さすが園子温監督。

それに今回は
監督独特の(時にしんどい)セリフ回しが
「ラップ」という素材にピタリとハマった。

ライム(韻を踏む)&フロウ(節回し)っていうんでしたっけ。
言葉が、けっこうしっくり伝わるんですねえ。


主人公のひとり、海役のYOUNG DAIS氏はラッパーだそうですが、、
ほかはみな役者がラップで語っており

なかでも
狂言回し役・染谷将太氏の
ラップがかっこよく、ハマってました。

それに主題歌になってる
AIの「HOPE」がいい!

はなはだしく暴力的な鈴木亮平氏のほか、
しょこたんや叶恭子氏も出演しております。

★8/30(土)から新宿バルト9ほか全国で公開。

「TOKYO TRIBE」公式サイト
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ルパン三世

2014-08-27 23:40:35 | ら行

プレス資料が、けっこうなクオリティ。
写真集として、取っておこうと思う。


「ルパン三世」19点★★


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クレオパトラが贈られたという
首飾りとルビーを組み合わせて完成する
究極の宝「クリムゾン・ハート」。

対立する二つの組織が
互いに、秘宝を手中に収めようと狙っていた。

一方の組織に属する
峰不二子(黒木メイサ)とルパン三世(小栗旬)も
その争いに参加することになるが、

その先には過去の因縁や、仲間の裏切りが
待ち受けていて――?!

*************************

何かと話題の
アニメ「ルパン三世」の実写化。

黒木メイサの峰不二子も
小栗旬の「ふ~じこちゃ~ん」の口調も

玉山鉄二の次元も、
浅野忠信の銭形も、

キャストはみんなアリだと思う。

なのに、なぜ?といえば

それはね
ルパン三世ってさ、こんなドンパチ話じゃないよね!(怒)という所につきる。

爆薬とか銃撃とか、つかみ合いのアクションとか
バイオレンスじゃなくて

軽妙洒脱、スマートさ、そしてユーモア、でしょ!

そこが、ないー!

もっとルパンと次元が
アジトでどうしようもない話してるとかさ、
そんな映画のほうがよかったのに(個人的希望。笑)

映画の趣旨として
バイオレンス方面に軸を置いており、
話もいまいちで、2時間13分は長い。

これならキャストによる
ビジュアルブックだけで満足かなア。

さらに
舞台はタイや香港、シンガポール
俳優たちも国際色豊かで
セリフのほとんどは英語らしい。

ワシ、日本語吹き替え版で見たので
英語でしゃべっている小栗旬に、本人の吹き替えが被るという
微妙なことになっており

口パクが合わないのが、どうにも気になってしまいました。

日本語吹き替え版じゃないほうがオススメかも。


★8/30(土)から全国で公開。

「ルパン三世」公式サイト
コメント (4)
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LUCY/ルーシー

2014-08-26 23:51:34 | ら行

スカヨハ見たさで行き、
その目当ては得られました。


映画「LUCY/ルーシー」55点★★☆


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ごく普通の生活を送っていた
ルーシー(スカーレット・ヨハンソン)は

滞在先の台北で
マフィアの闇取引に巻き込まれ、

ある特殊な物質を体内に埋め込まれる。

だが、その物質のせいで
彼女の脳が目覚めることに――?!


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10%しか機能していないと言われる人類の脳を、
あるアクシデントにより覚醒させ、
驚異的な力を発揮していくヒロインを描くアクション。

ヒロイン、スカーレット・ヨハンソンは
予想通り、カワイイです。強いです。

ただこれもまあ予想通りだけど、
リュック・ベッソン監督は
もう構築力がなくなっているのかも。

する気もあまりない感じ?

可憐で最強なヒロインを
スクリーンのなかでのっしのっしと歩かせよう!
そのイメージだけで走ってるよな~(笑)。

冒頭のルーシーとチンピラな友人のやりとりの
妙に長い、その間の悪さから始まり、

脳科学者役のモーガン・フリーマンに
講義の形で「脳の機能うんぬん」のすべてを説明させ(苦笑)、

しかし、講義のなかでも突っ込まれるように
科学的根拠や、説得力も薄い。

暴力要素として
「オールド・ボーイ」チェ・ミンシクを出しても、
どうにも映画がもたない。

っていうか、人材がもったいない!(笑)

ただ
人類の祖先とされる女性の“猿人”がルーシー、というのには
ちょっと笑いました。


★8/29(金)から全国で公開。

「LUCY/ルーシー」公式サイト
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物語る私たち

2014-08-25 23:28:16 | ま行

このヒトは、タダモノではない。
予備知識なく見るのがオススメ!

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「物語る私たち」78点★★★★


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“アトム・エゴヤン監督の秘蔵っ子”として
「スウィート ヒア アフター」(97年)に出演し、

自らも監督として
「アウェイ・フロム・ハー/君を想う」(06年)(いい映画!
「テイク・ディス・ワルツ」(11年)(これもベスト!)で才能を発揮している

女優であり監督のサラ・ポーリーが
自身の家族について撮ったドキュメンタリー。


主軸は
女優であり、彼女が11歳のときに亡くなった
個性的な母親ダイアン・ポーリーを追うもの。

父や兄姉、周辺の人々にインタビューをしながら
“瞼の母”を追い、

さらに
「実は自分の本当の父親は、別の人かも?」という疑惑を
追いかける作りになっていて
そのドラマ加減がめちゃくちゃおもしろい。


なにより、いろいろある家族の事情を、
彼女は自分の特殊な立場=(末っ子、というのもそのひとつ)を武器に、
周囲にグイグイ語らせていく。

その容赦なき追求がすげえんです(笑)。

「ある家族の肖像」としても
十二分に見応えあると思いますが

さらに!
何も知らずに見たので
エンドロールを見たときの驚きが忘れられない。

なので、楽しみたい方は、ぜひここまで。


それ以上進みますとですね、
見ながら
「よく、こんなに過去映像が残ってるなあ」と思ってはいたんですが、

エンドクレジットに
「ダイアン・ポーリー=レベッカ・ジェンキンズ」とか
名前が出てくるんですよ。

つまり。

過去映像は巧妙なことに、
そっくり俳優たちが演じているんですよ!

もちろん本人含む、実在の父や兄姉たちも登場するし、
監督自身も女優なんで、
もう、その虚実の皮膜の淡いこと淡いこと。
つうか、わからなかった!(笑)

自分の家族の話を
より「ドラマチックに」「おもしろく」作り上げる、このクリエーター根性。

明かに
「やられた!」という感じです。

おすすめです。


★8/30(土)から渋谷・ユーロスペースほか全国順次公開。

「物語る私たち」公式サイト
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