ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

2012

2009-10-31 13:00:32 | な行
いやー凄かった、この映画。
地球は完全に終わりました。

「2012」80点★★★


「インデペンデンス・デイ」「デイ・アフター・トゥモロー」の
ローランド・エメリッヒ監督最新作。

古代マヤ人の暦が止まる
2012年12月21日。
この日に世界の終わりがくると言われていた。

そして2012年。本当にその日がやってきた。
人類に生き残るすべは、ない――

ギャー!


天変地異や災害の映画を
古くはパニック映画、
最近は“ディザスタームービー”と呼びますが

本作は
「もうこれ以上のものは作れないんじゃないか?」
というほど
ディザスタームービーの頂点です。


過去のあらゆるそれ系映画の要素をふんだんに盛り込み

とにかく、映像がすごい。
スケールがでかい。


地震、噴火、津波が都市を襲う様子や
特にヒマラヤが津波に飲まれるシーンなど
その惨事はもう宗教絵画のように
美しくすらあります。

あまりの災害の大きさになすすべもなく
ただ口をあけて映像に見入るしかない。

映画のなかの人々も
きっとそうだったんだろうな。

崩壊と破壊のカタルシスが大きいぶん
一人ひとりの物語は希薄で
人間の命が軽く見えてしまうことは否めませんが

まあ、これは映像を楽しむ映画ということで。

マジで2012年、なんかあったらどうしよう・・・



★11/21から全国で公開
コメント (4)
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マイケル・ジャクソン THIS IS IT

2009-10-28 23:36:58 | ま行
本日28日に全世界同時公開、
その当日にマスコミ試写、
公開は2週間のみ…

という異例づくめの

「マイケル・ジャクソン THIS IS IT」★★★78点

今年6月に急逝したマイケル・ジャクソン。
その幻となったロンドン公演の
リハーサル映像からなるドキュメンタリー。

いや~、びっくりしました。
完成度高くて。

すごいじゃん、MJ!←スタッフみんなにこう呼ばれている。

リハーサル風景とはいえ
ほとんどライブを見ているかのようなクオリティで
映画としても十分楽しめる。


本当にこのままコンサートできたんだ。
本当に死ぬはずじゃなかったんだ。
心底「もったいない!」と強烈に感じました。


彼のエンターテイメント世界は
よくディズニーの世界にたとえられるようだけど
マジ見ていてそんなイメージ。

七色の声を操る姿、メリハリのあるダンス。

存在自体がキラキラしていて
魔法チックで
ディズニーか、ネバーランドかって思いました。


演目はみな知ってる音楽ばかり。

ジャクソン5から、ビリー・ジーン
そしてニューバージョンのスリラーの映像と演出(すごい!)
などなど
頭からしっぽまで飽きずに魅せます。


サングラスをはずした
素顔もたっぷり写っていて

ダンサーたちには自ら踊ってみせ、
次々と演出のアイデアを出し、

音楽面はもちろん
バックに流れる映像から、
立ち位置まで
すべてを把握し、コントロールしてる。

で、たとえ
指示通りに進まなくても
「僕は怒ってないよ。LOVEだよ」と
周囲の雰囲気を気遣う様子には
びっくり。


彼の音楽で育ちつつも
最近の奇行やゴシップ報道にばかり
気を取られていた人たちはみな(番長ももちろんその一人)

彼のこの姿を見届ける
義務があるんじゃないかとすら思いました。

とはいえ
公開はわずか2週間。

追悼やチャリティーの意味もつけて
年末あたりにテレビ放映される
気もしますな。


★10/28から11/13まで丸の内ピカデリーほかで公開
コメント (4)
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SOUL RED 松田優作

2009-10-26 22:14:14 | さ行
今日は家にこもって、この映画についての
原稿書いてました。
1000字未満なのに、けっこうヒイヒイ。


「SOUL RED 松田優作」71点★★☆


1989年11月6日、
40歳で亡くなった俳優・松田優作の
没後20年を機に公開される
初の公式ドキュメンタリー映画。


正直、松田優作ってテレビの「探偵物語」再放送や
80年代、薬師丸ひろ子の「探偵物語」以降しか
よく知らなかったけど

本作は1973年のデビュー作「太陽にほえろ!」から始まり
「最も危険な遊戯」「蘇える金狼」「野獣死すベし」などなど
映画各社をまたいで
彼の出演映画やドラマのハイライトシーンが
入ってるのがみどころ。


いわゆる“いいとこ取り”が満載で
“名作アニメ最終回全部見せます”のノリ。
初心者でもファンでもオイシイ。


プラス
「ブラック・レイン」のカメラテストなどの秘蔵映像、
そして彼を知る人たちや、彼に影響を受けたという
浅野忠信、仲村トオル、香川照之らの
インタビューで構成されてます。


草食系男子はびこる時代に改めて見ると
この「男」としての存在感は
ものすごいです。圧倒されます。

男は女とはまったく別の“性”なのだ、と
久々に思わされました。

やっぱりかっこいいねー


〆は俳優としての成長目覚ましい
息子たち松田龍平・翔太へのインタビュー。


自分亡き後も、人と血を残す仕事をする。
実に見習いたい生き様です。


それに松田優作について知っとくと
人としても箔がつくって感じだし

ちょっとでも興味ある人、オススメです。


コメントでは香川照之がダントツ光ってましたな。



★11/6から新宿ピカデリー、11/7から丸の内ピカデリーほか全国で公開。

※11/2発売の「週刊朝日」巻頭グラビアで6pで
 松田優作特集やります(ヒイヒイ)。こうご期待!
コメント (4)
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なくもんか

2009-10-25 23:27:31 | な行
すっごく期待したのにがっかり・・・
というときは
自然、点も辛くなるってもんです。

「なくもんか」41点。★☆


脚本・宮藤官九郎×主演・阿部サダヲによる
下町人情あふれる爆笑コメディ映画

――のはずなんだけど

2時間半近くで
“2クスり”(笑いの単位ね)しかできずに
ガックリ。

試写室を出るときのみなさんの無言の空気
怖かったなぁ(笑)


ともあれ
映画の舞台は東京・下町の商店街。

8歳で親に捨てられ
総菜屋の夫婦に息子同様に育てられた裕太(阿部サダヲ)は


店主亡き跡、秘伝ソースのハムカツを看板商品に
店をもり立てている働き者。


また彼は頼まれれば何でも断れない
究極のお人好しで
商店街になくてはならない存在になっている。


そんな彼のもとに
家を出ていた総菜屋の実の娘(竹内結子)が
突然現れて一騒動。

さらに
漫才で大ブレーク中の祐介(瑛太)が
裕太の実の弟だとわかり・・・という話。


笑えないだけならセンスの問題とあきらめるけど
ストーリーの狙いがよくわからないのが
つらいところ。


しかも
生き別れの兄弟だの商店街だの人情だの
なんとなく“いい話”っぽい仕掛けばかりが印象に残り
なんとも癇にさわる。


後半の沖縄ロケも必然性が感じられず
内輪の旅行ですか?って感じ。
(あれ、日航アリビラだよなあ)


気が強く、蹴りもかます
出戻り娘役の竹内結子が
唯一、生き生きと楽しそうだけど

あとは空振り。

劇中にしょっちゅう出てくる
「薄ら寒い!」ってセリフがそのまんま
当てはまってしまうよ、これじゃ。



でもね、この尻の穴がむずがゆくなるような
カスッとはずした笑いのリズムは
最近流れている
阿部サダヲの
ポテトチップスのCMにすごく似ている。

あれを普通に見られる人には
この映画、普通におもしろいのかも。


番長は、単に彼の笑いの
センスに合わないのかも。

クドカンの「少年メリケンサック」は
大爆笑だったんだけどなあ。

★11/14から全国で公開
コメント (2)
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サイドウェイズ

2009-10-23 20:33:48 | さ行
昨日、伊勢丹のワイン売り場のモニターに
映像が流れてて
思い出しました。

「サイドウェイズ」67点★★☆


ワイン好きなら知らぬ人はいない
第77回アカデミー脚本賞受賞の映画「サイドウェイ」(2004年)を
日本人俳優がリメークしたもの。


「なんでそんなことすんの?」と思ったけど
監督や脚本などにハリウッドの人材を起用したからか
思ったよりもこなれた映画で
焼き直しの意味はあると思いました。


なんといってもオリジナルで
「ピノ・ノワール」や「シラー」の特徴を知り
以降、ワイン街道爆走中の番長としては
見ないわけにはいきません。


ストーリーの骨格はオリジナルとほぼ同じ。

冴えない独身男を演じた
ポール・ジアマッティの役柄を
小日向文夫が演じてます。

シナリオライターとして芽が出ず
養成講座の講師をしている
道雄(小日向文夫)。


ワイン好きの彼は
親友・大介(生瀬勝久)の結婚式のためカリフォルニアへ。


大介とカリフォルニアのワイン聖地
ナパ・バレーに向った道雄は
昔好きだった女(鈴木京香)に出会い…という話。


監督のチェリン・グラックは和歌山生まれ。
日本とハリウッド両方で活躍する彼の演出はなかなか巧みで

普段「楽しく盛り上がってるぞ~」的演技のヘタな
日本人もうまくのせられたみたい。


ナパの風景のなかで
ワインとチーズでピクニックをする
男女4人は
けっこうハマってました。


まあ生瀬は少々ハジケすぎだけど
アメリカ在住の日本人女子を演じる
菊池凛子がリアルで
作品を引き締めてます。


オリジナルでは主人公が
「ピノ・ノワール」好きだったけど

今回は舞台となる地域が少し違っており
ゆえに「カベルネ・ソーヴィニヨン」へのこだわりが
語られたりするのも興味深い。


とはいえワインはあくまで小道具で
ほぼ7割は
仕事と恋に悩む少々トウのたった男女のラブストーリー

なので
ワイン好きとしては物足りなくもある。
まあ
その分、こちらが成長したのかも…ムフ


★10/31から全国で公開
コメント (4)
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