ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

エッセンシャル・キリング

2011-07-31 16:02:52 | あ行

「アンナと過ごした4日間」は
すっげ好きなんですけどねー。


「エッセンシャル・キリング」56点★★★


アフガニスタンの砂漠地帯。

一人、洞窟に潜んでいた
アラブ兵士ムハマンド(ヴィンセント・ギャロ)は

偵察にきたアメリカ兵と対戦し
捕虜になってしまう。

だが、護送車で移送される途中にアクシデントが起き、
彼は車の外に飛び出し、脱走を図る。


が、そこは一面の銀世界だった――。

慣れない雪に足を取られながら、
ムハマンドの決死の逃走劇が始まった――!



前作「アンナと過ごした4日間」(2008年)で
世界を沸かせた
ポーランドの巨匠イエジー・スコリモスフキの新作です。


ヴィンセント・ギャロが83分間、
セリフなしで
雪の山中をひたすら逃げ続ける映画で、


砂漠から一転して雪山、という
転換のおもしろさや、

ひたすらに走る、食べる、殺す!といった
人間の本能がむき出されるさま、

自然のなかでの動物との邂逅など、
時間をおいて思い返すと
哲学性を秘めた、深遠さが確かにある……気がする。


というのも正直、見た直後は
山中に放たれた殺人鬼にしか見えなかった(苦笑)

しかも
「怒濤のノンストップ・アクション!」という宣伝文句もあって

シンプルゆえに“凝り”が必要な
究極シチュエーションスリラーかと思ってたので、

うーん、ただ山中を逃げ続けるだけかーと
物足りなかった。


「セリフを一切排し」なのも
話す必然性がないからで、ちょっと煽りすぎ。


まさに
タイトルの「本質的な殺害行為」
そのまんまの83分をどうとらえるか、ですね。

時間を置いて、こんなシーンを写真で見ると
ジワジワとなんか効いてきますわ。


★7/30から渋谷シアターイメージフォーラムで公開。ほか全国順次公開。

「エッセンシャル・キリング」公式サイト
コメント

スーパー!

2011-07-30 16:33:15 | さ行

「キック・アス」と激似の設定ですが
こっちのほうがかなり、マジでヤバめ。
てか、痛い。

で、こっちのほうが好きって人
嫌いじゃないな(笑)。


「スーパー!」68点★★★☆


冴えない人生を歩むフランク(レイン・ウィルソン)は
唯一の自慢だった妻(リヴ・タイラー)を
ドラッグ売人(ケヴィン・ベーコン)に盗られてしまう。


フランクはお手製のコスチュームで
正義のヒーローになり、

妻を取り戻し、街の悪を退治することを決意する。

それを知った
アメコミ屋の店員(エレン・ペイジ)が
相棒として参加することになり――?!


冴えなすぎるオヤジが
正義なき世を嘆き、
お手製のコスチュームで正義のヒーローになる……て
動機も展開もまさに「キック・アス」。


しかしこちらはかなり、マジで
アンダーグラウンド派っつうか、キレてます(笑)。


監督のジェームズ・ガンは
「ドーン・オブ・ザ・デッド」の脚本家で、
コメディとホラーが専門でもあり、

なんといっても
「JUNO/ジュノ」のエレン・ペイジが
相棒役になって
とんでもないことになってるし(笑)


オープニングのアニメーションも
最高にセンスいい。


もうちょい暴力描写を抑えてもらえたらなあと思うけど
でも話にシンパシーは感じるんですよ。


顔もまずい、パッとしない、
家族もいなくなった主人公が

神に「不公平すぎる!」と嘆くシーンなんて
クッ、と辛さが身に染みた。

「他のみんなには気づかってくれる人がいて
愛に囲まれているのに」って。

ラストの哀しさもピカイチです。


イカれた仮面を被って、キレた芝居をする。
いまなぜこういう作品を作らなきゃならないのか、を考えれば
答えは明快。

それに共感できる人々が
大勢いるからなんでしょうね。


★7/30からシアターN渋谷、新宿武蔵野館で公開。ほか全国順次公開。

「スーパー!」公式サイト
コメント

ふたりのヌーヴェルヴァーグ ゴダールとトリュフォー

2011-07-29 23:30:39 | は行

ヌーヴェルヴァーグ、
知ってるつもりだったんですが、
けっこう知らないことだらけでした(笑)。


「ふたりのヌーヴェルヴァーグ ゴダールとトリュフォー」73点★★★☆


1959年、フランスで起こった
映画の新しい波=ヌーヴェルヴァーグ。

その旗手であった
フランソワーズ・トリュフォーと
ジャン=リュック・ゴダールを中心に

「ヌーヴェルヴァーグとはなんだったのか」を
てきぱきと明瞭な解説で
丁寧に教えてくれる
実にうまいドキュメンタリーです。


「大人は判ってくれない」「勝手にしやがれ」に始まる
二人の代表作の名シーンを挿入しつつ、
インタビュー映像や
当時の背景をコンパクトにまとめ、

ヌーヴェルヴァーグを知らない人にも
とても優しいし

「勝手にしやがれ」がマイベスト5に入る人も
へえ、とおもしろがれる。


「新しい波」がもとは社会学の用語だったことなんて
知らなかったですねえ。


二人ともに映画狂で
雑誌に映画批評を書いたりしてて、
そこから映画製作に至ったというのも
おもしろいですし、

トリュフォー本人が
「演出によってどう役者を動かし、
それがこういう効果として画面に残るんだ」なんて

自ら「大人は判ってくれない」を例に解説してくれる。

なんと贅沢な映画!

“映画の教科書”としても使えるし、
批評家を目指す人、
映画を目指す人、必見!ですね。


なかでも番長が一番ウケたのは
当時「勝手にしやがれ」を観た観客の反応。

「こういう若者が現実にいるから怖いねえ」という紳士や
「バカにしてるわ」と憤慨するご婦人。

そうだったんだ、やっぱり(笑)


そんなこんなで見ながら
あらためて

ドキュメンタリーに出る人ってみんな
気の効いたいいコメント残すよねえ、と感心。

インタビューアーのくせに
モゴモゴしゃべると評判の番長(最悪やな。笑)

ちょっと練習しとこうかな……。(なにを?)


★7/30から新宿K's cinemaで公開。ほか全国順次公開。

「ふたりのヌーヴェルヴァーグ ゴダールとトリュフォー」公式サイト


現在発売中の『週刊朝日』(8/5号)ツウの一見で
菊地成孔さんに本作について
お話を伺ってます。

「20世紀はすでに古典」という
菊地さんさすがの切れ味でおもしろい!

まだ書店にありますんで、ぜひ!
コメント

おじいさんと草原の小学校

2011-07-28 15:53:01 | あ行

世の中には
いい実話がまだまだあるんですねえ。

「おじいさんと草原の少学校」77点★★★★


内乱を経て独立したケニアで
2003年、国がようやく
「全ての国民に無償で教育を」をスタートさせる。


84歳の老人マルゲは
昔、ケニア独立のために戦った戦士で
当然、学校などに行っていない。

マルゲは「自分も文字を習いたい」と
小学校に通おうとする。


心ある女性校長は
その熱意に負けて入学を許すが、

思いがけない周囲の妬みが、
マルゲを壮絶な過去の体験へと引き戻してしまい――。


ロサンゼルスタイムズにも掲載され、
ニュースになった
「世界最高齢の小学生」マルゲの実話を
「ブーリン家の姉妹」の監督が映画化したものです。


真剣な目をして授業を受ける
ケニアのリアル・小学生たちの
生き生きとした表情、

そして
学ぶことをあきらめなかったマルゲの姿に

“教育”の重要さを
あらためてかみしめられる良作です。


美談に終わらず
ケニアがいまだ抱える問題や、
過去との向き合いかた、

それでも未来への進もう、という希望を
上手に含ませてるのもいい。


なにより
快活な女校長役のナオミ・ハリスが
見ていて気持ちいいですわ。


マルゲの過去の回想シーンは
表現は抑制されているものの、ちょっとキツい気もするけど
見れば必要だ とわかります。


部族間のわだかまりは
今も残る問題だけど、
そこで立ち止まってはならない。

子どもたちと、よき教育が
未来を照らすんだなあと、しみじみ感じました。

もっと勉強しないといかんなー。


★7/30から岩波ホールで公開。ほか全国順次公開。

「おじいさんと草原の小学校」公式サイト
コメント

カーズ2

2011-07-26 23:46:51 | か行

前作からもう5年ですか……はやっ!


「カーズ2」3D版。62点★★★


車を擬人化した
ピクサーアニメの続編です。

自意識過剰な天才レーサー、マックィーン
ルート66沿いのさびれた町で
友情と愛に目覚めていく様子を描いた前作。

そして、今回。

レースで4連覇した
天才レーサー、マックィーンが
町に帰ってくる。

つかの間の休息を楽しもうとしていた彼だが
親友でちょっとヌケてるメーターのおかげで
石油に替わる新しいクリーン燃料を使った
レースに参加することになる。

第1戦の舞台は――東京!

マックィーンはメーターを
レースのパートナーに任命し、東京に向かう。

だが、このレースには恐ろしい陰謀が渦巻いていて――?!


しょっぱなから
英国諜報部のスパイ車が絡む
007ばりのアクションがあり、


前作よりもスケールとアクションは
数十倍、派手になっています。


東京、イタリア、ロンドンと
世界各地の名所レースで魅せるし。


やはり見どころは
トーキョーの街中を走る
レースのシーンでしょうか。


ゲーム「グランツーリスモ」を思い出しつつ、
3D効果もほどほどにあり、
キャラも生き生きしてるし
家族連れとか、十分楽しめると思います。


ここでも石油に替わる代替エネルギーが
ネタになってたりもして(笑)。


なんですが、

前作のような
開発に取り残された“古き良き時代”を想う、といった
作り手の「思慕」がないのが
ちょっとマイナスですね。

しかも今回の主役は
あのよくしゃべる、おんぼろ(失礼)レッカー車のメーター。

正直ちょっと、いや、かなりウザいのが
つらかったです。すんません(苦笑)

同時上映「トイ・ストーリー3」の
その後、も込みで
このお値段なら、ま、納得…かな。


ピクサー作品って本当にいつも
おまけ短編がいいね!


★7/30から全国で公開。

「カーズ2」公式サイト
コメント (4)