ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー

2018-11-12 23:33:57 | あ行

 

最初は「ん??」って思ったんだけど

異様に残るんですよ、これが。

 

「A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー」72点★★★★

 

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田舎町の一軒屋で暮らす若い夫婦

夫(ケイシー・アフレック)と妻(ルーニー・マーラ)。

 

夫はこの家を気に入っているが

妻は引っ越しを希望している。

 

そんなある日、夫が事故で突然、他界してしまう。

あ然としながら、妻は病院で夫の遺体と対面する。

 

そして妻がその場を離れたあと

死んだはずの夫が、突然シーツを被った状態で起き上がった!

 

夫は自宅に戻り、妻を見守るが

妻は夫には気づかない――。

 

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ケイシー・アフレック×ルーニー・マーラ。

 

妻を想いゴーストになった男の長い長い時の旅。

 

最初、ちょっと怖いんです。

どういうジャンルの映画なのか、まったくわからないから。

ホラーなの?とすら思うような感じ。

 

で、少し進むとこれが

静謐な絵画のような、なんともいえない美しいトーンで

気の遠くなるような永遠に続く時間や、哀しみ、

崩壊を描いていくものだとわかる。

 

でも正直、最初は「???」と思いました。

途中、眠くもなりました。

実際、60点以下かと思いました(笑)。

 

 

しかし!ですね

 

見てから3ヶ月くらいたったいまでも、

ふとしたときに

この映像、この「感覚」を思い出してしまうんですよ。

 

愛する人とのマイホームだった

「その場所」に留め置かれ

 

愛する人が去っても、新しい家族がきても、

はたまた、時間を遡ったはるか昔の「その場所」になっても

彼はずっと、そこにいる。

 

シーツをかぶった姿で、

壁を延々とほじくる、その姿。

 

あなたは、どこに行くの?

 

この視覚体験が、頭から離れない。

 

なんなのだ!というくらい。

この「感覚」をふと思い出してしまう。

 

「アンダー・ザ・シルバーレイク」(18年)とともに

今年の「残る映画」ベストに入りますなあ。

 

この感覚に似ているなと思い出したのは

テレンス・マリック監督の「ツリー・オブ・ライフ」(11年)。そして

深田晃司監督の「さようなら」(15年)でした。

 

のこる、こういう体験って

映画の本当の醍醐味かもしれません。

 

★11/17(土)からシネクイントほか全国で公開。

「A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー」公式サイト

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ボヘミアン・ラプソディ

2018-11-09 23:28:51 | は行

 

クイーンの歴史を初めて知った。

 

「ボヘミアン・ラプソディ」72点★★★★

 

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1970年、ロンドン。

生い立ちや容姿にコンプレックスを抱える青年フレディ・マーキュリ-(ラミ・マレック)は

昼は空港で働き、夜はライブハウスに通い詰める日々。

 

終演後、フレディが

出演バンドのギタリスト、ブライアン・メイ(グウィリム・リー)と

ドラムのロジャー・テイラー(ベン・ハーディ)に声をかけると

ちょうどボーカルが辞めたところだという。

 

「僕、曲も作るし、歌えるよ」とフレディは二人に自分を売り込むが

相手にされない。

だが、フレディが歌い出すと、二人の顔色が変わった。

 

――こいつは、なかなかすごいぞ?!

 

そしてフレディはバンドに加入し

1年後「クイーン」としてアルバムを製作することになるが――?!

 

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あのフレディ・マーキュリーと伝説のバンド、クイーンを

ブライアン・シンガー監督が描いた作品。

 

 

想定以上に王道で、

学生バンド時代から、ボヘミアン・ラプソディ制作あたりまでなど、

泥臭いほどなんだけど

 

パターン化することを好まず、

実験的手法を試み続いたバンドの成り立ちや、

衝突しつつも、互いを高め合う

彼らの道のりがしっかり描かれることで

それであの曲が出来たのか!というおもしろさがあったし、

 

その後、セクシュアリティに揺れ、迷走もする

フレディ・マーキュリーにとって

バンドが「帰れるホーム」となっていく、

そのかけがえのなさを、きっちり表現しているなあと思いました。

 

アイコンと化しているフレディ・マーキュリーを演じた

ラミ・マレックの勇気と渾身の迫力にも感服だけど

 

ギターのブライアン・レイを演じた

グウィリム・リーがいいなあ!

黙々としたキャラも好きなんですが

最後の実映像見て、「え、本人にそっくりじゃん!」と驚きました。

実際、本人も「自分にしか見えない」と驚いていたそうで

これ、ファンにはたまらないだろうなあ。

 

ラスト、21分の舞台はホントに圧巻!

 

ただ、音楽括りで言うと

生歌やライブシーンの魅せ方のエモーショナルさでは

ガガの「アリー/スター誕生」(12/21公開)にちょーい軍配かなあとワシ的には。

 

★11/9(金)から全国で公開。

「ボヘミアン・ラプソディ」公式サイト

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生きてるだけで、愛。

2018-11-07 23:20:42 | あ行

 

最初は「なんぼじゃ!」と思った。

でも気づいたら涙出てた。

 

「生きてるだけで、愛。」75点★★★★

 

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寧子(趣里)と津奈木(菅田将暉)は

同棲3年めのカップル。

 

メンタルに問題を抱える寧子は

うつ状態に入るとカオスと化した部屋の布団から出られず

ひたすら眠り続け、

起きられないのでバイトも続かない。

 

出版社に務める津奈木は

そんな寧子にどんなに理不尽を言われても、

罵倒されても

怒ることもなく、ひたすら寧子に寄り添っている。

 

ある日、寧子のもとに

津奈木の元カノだという安堂(仲里依紗)が訪ねてくる。

 

安堂も相当にヤバい感じを醸し出しているのだが

寧子は安堂に言われるがまま、

自立のために、強制的にアルバイトをすることになるのだが――?!

 

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生きてるだけで、ホント疲れる――

名言としかいいようがない

この時代の、この映画、という感じでした。

 

「腑抜けども、哀しみの愛を見せろ」(05年)でも知られ、

16年、ついに芥川賞作家となった本谷有希子氏が

06年に発表した同名小説の映画化です。

 

最初はうつ治療もしないメンヘラヒロイン・寧子が彼氏に迷惑かけまくる――という展開に

「なんぼじゃ!」と思った。

でも、気づいたら涙出てました。

 

「ブラックペアン」の趣里氏、うますぎます。

そして

「なんで、こんな女と一緒にいるんだろう? 」な菅田将暉氏の、

受け身で聞き役に徹する芝居もうますぎます。

 

そして「なんぼじゃ!」のもとは、

リアルすぎるヒロインへの拒絶反応だったのかもと思う。

なんでこんなに寝られるの、というくらい寝まくり、

学校にもバイトにも遅刻し、

もうどうでもいいやーな時代を

間違いなく、自分も過ごしているんですよね。

しかも誰もが周囲に

あるいは自分自身に「うつ」を抱える時代ですから。

 

それにキャラの造作もだけど

寧子の部屋の

布団の匂いがしてくるような、カオス具合もリアルすぎて(苦笑)

「太陽の塔」の関根光才監督、すげえなと思いました。

 

なぜ、津奈木はこんなにも寛容なのか?

この状況を寧子はどうやって、前に進めるのか?

見届けていただきたいす。

 

発売中の「AERA」で

菅田将暉さんにインタビューをさせていただきました。

 

AERAdotでも後に配信されると思います。

映画と併せてご一読いただければ!

 

★11/9(金)から全国で公開。

「生きてるだけで、愛。」公式サイト

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十年 Ten Years Japan

2018-11-03 00:59:30 | さ行

 

是枝裕和監督が総合監修。

 

「十年 Ten Years Japan」71点★★★★

 

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5人の新鋭監督が

日本の“十年後”をテーマにした短編オムニバス。

 

75歳以上に安楽死が推奨された日本を描く「PLAN75」(早川千絵監督)、

徴兵制が始まった日本が舞台の「美しい国ニッポン」(石川慶監督)――など

 

現代社会への問題提起を含む5作品。

 

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是枝裕和監督が総指揮を取り、

5人の監督が日本の十年後をテーマに、5つの短編を製作したもの。

 

5作品とも揃ってアイデアのリアルさに驚かされ、

また、その未来が見事になまでに暗いことに

苦笑してしまうという、おもしろ哀しな感じでした(笑)。

 

 

75歳以上に安楽死が推奨される制度を描く

「PLAN75」(早川千絵監督)は特にリアル!

ああ、自分がいま75歳だった全然ありかも・・・・・・と思いつつ、

身寄りのない老人や低所得者をターゲットにしているというえげつなさ

そして、その勧誘にあたる若手公務員が

妻との間に新しい命を授かる、という展開に

「終わりが決まっている世界に生まれるって、どうなん――?」と

虚しさと怖さがヒヤリと漂い、考えさせます。

 

 

亡くなった母のデータベースのキーを

父(田中哲司)にナイショで手に入れた娘(杉咲花)を描く

「DATA」(津野愛監督)もなるほど。

 

死後、メールやSNSの膨大な自分情報がどうなるのか、

残された人がそれを見たら――?のゾッとするリアル。

それでいて、演じる杉咲花の伸びやかさで

唯一、明るい兆しがある作品でもあります。

 

 

「美しい国ニッポン」(石川慶監督)は

徴兵制が始まったニッポンで、その広告キャンペーンをする

広告代理店の社員(太賀)が主人公。

これまた絶妙にリアルで、いや~~なことこの上ない。

 

と、

テーマもキャストも実にビビッドな意欲作ばかりですが

実は「政治的テーマはちょっと・・・・・・」と株主やスポンサーに敬遠され

資金集めに非常に苦労されたのだとか。

 

それを乗り越え、作られた作品たちに敬意を表すとともに、

そんな状況じゃ、本当に日本版マイケル・ムーアなんて、まだまだだなあ・・・・・・と

焦りと怒りも感じるのでした。

 

★11/3(土)からテアトル新宿、シネ・リーブル梅田ほか全国順次公開。

「十年 Ten Years Japan」公式サイト

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ぼけますから、よろしくお願いします。

2018-11-02 23:13:38 | は行

 

ああ、これ、うちの両親だ!

と、笑いながら涙が(笑)

 

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「ぼけますから、よろしくお願いします。」77点★★★★

 

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広島県呉市で

95歳のお父さんが、86歳の認知症のお母さんと暮らす。

その日々を、東京で暮らす一人娘である監督が撮ったドキュメンタリーです。

 

映画いっぱいに愛がこぼれて、受け切れないほどで

ニコニコ笑いながらボロ泣きしてしまいました。

 

 

なんといっても

お父さんが素敵すぎる!お母さんが可愛らしすぎる。

悲壮でなく、ユーモアに溢れているところも素晴らしく、

そして一人娘でいながら独身、という監督の状況も、我が身に近すぎて泣ける(泣)

 

 

はじまりは2014年。

いつもニコニコと明るく社交的なお母さんが、

アルツハイマー型認知症と診断される。

 

そして90歳を超えたお父さんが、お母さんを支えながらの

日々をスタートさせる。

 

といっても、お父さんも高齢ゆえ、

ちょっと歩くのも休み休み。

しかし、しんどくても、気力で「よいっしよ」と前に進み、

買い物をし、ご飯を作り、裁縫までこなすようになる。

 

そんな二人を見つめる監督の視線は、たしかに娘のものではあるんだけど、

決定的に「客観的な」スタンスも持っており、

そこがこの映画のキモでもある。

 

ゆえにプッと笑いもおきるし、

夫婦がお互いを必要としているさま、そこに醸し出される波長が

何でもないツーショットからもにじみ出て

おもわず笑い泣きしてしまうんです。

 

布団からお父さんに手を伸ばす、

お母さんのシーンも、うーんグッとくる・・・・・・(笑泣)。

 

 

ここにあるのは、誰もに、決して他人事ではない出来事。

そして誰もが記録したくても、出来なかった

自分の両親の「記録」なのかもしれない。

 

勇気と笑いと、力をもらえる

見るべきドキュメンタリーです。

 

 

そして

おなじみ「AERA」にて

信友直子監督にインタビューをさせていただきました。

AERAdotでも読むことができます。

映画と併せて、ぜひご参考ください!

 

★11/3(土)からポレポレ東中野ほか全国順次公開。

「ぼけますから、よろしくお願いします。」公式サイト

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