妙に、まぶたの奥に残るんだなこれが・・・。
「モーリス・ピアラ ヴァン・ゴッホ」70点★★★★
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1890年。
売れない絵描きである
ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ(ジャック・デシュトロン)は
フランス・オーヴェルの村に宿を借り
絵を描き始める。
村の娘マルグリット(アレクサンドラ・ロンドン)に出会った彼は
彼女をモデルにし
マルグリットは
親子ほども歳の離れたゴッホに惹かれていくのだが――?!
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ゴダールなどヌーヴェル・ヴァーグ作家たち、そして
それ以降の映画作家らに多大な影響を与えた
フランス映画界の巨匠、モーリス・ピアラ監督。
しかし日本ではほとんど公開されたことがなく
本作は今回、
「モーリス・ピアラ」特集上映として、初公開される1996年の作品です。
ワシも恥ずかしながら、初見なんですが
う~~む、これは
なんとも言えぬ不思議な作品。
と言ってもアバンギャルドなわけではなく、
ごく普通のことしかしていないのだけど
(まあ160分もあるというのが、アバンギャルドか。笑)
しかし妙に、観たあと、まぶたの奥に残るっつうか
再生されるんですよねえ。
かの有名な「耳切り落とし事件」のあと、
田舎の村で絵を描くゴッホの日常を描いており
しかし伝記然としたところまったくなく、
悲壮なドラマもない。
田園風景や酒場など
彼が描く絵画そのまんまの風景のなかで
彼らが生活し、
その生活のなかに芸術があり、遊興があったのだ、と
生き生きと描いているような。
人当たり悪そうなゴッホ氏が
打ち解けてくるとお茶目で、なかなか人好きする人物だったりするのが
なんだか楽しく。
ピストルで自殺?!というシーンでも
銃声すらしないし
いよいよの最期は、
クワガタが死ぬように、
細い手足を折り曲げて、フッと命の炎を消す。
これって、かなり、
斬新・・・。
160分は確かに長いけれど、
決して退屈ではない不思議な体験でした。
★11/2(土)からシアター イメージフォーラムほか全国順次公開。
特集上映「モーリス・ピアラ」「ヴァン・ゴッホ」公式サイト