ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

マネー・ショート 華麗なる大逆転

2016-02-29 22:56:53 | ま行

祝・アカデミー賞脚色賞受賞!
もっともタイムリーな公開がめでたい。


「マネー・ショート 華麗なる大逆転」70点★★★★


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2005年、金融トレーダーのマイケル(クリスチャン・ベール)は
低所得者に頭金なしで住宅ローン組ませるサブプライム・ローンが
数年以内に債務不履行に陥る可能性があることに気づく。

しかし、アゲアゲ&イケイケの銀行家や投資家たちは
「そんなことあるわけない」と相手にしない。

そこで、彼はサブプライムが破たんしたときに
大儲けをする方法を考えつく。

マイケルの動きに気づいた銀行家(ライアン・ゴズリング)は
サブプライムのやり口に疑問を持つ
ヘッジファンド・マネージャー(スティーブ・カレル)に

「サブプライム破たん時に大儲けする方法に乗らないか?」と
誘いをかけるが――?


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あらすじ、これであってるよね?って感じ(笑)

映画を見るのに、こんなに頭を使ったのは初めてかもしれない。
見応えはあるけど、難しいっつの!(笑)

サブプライムくらいは知ってたけど
さらに複雑な債券の名前と、詐欺の方法はややこしすぎるよ~。

脚色賞は、つまり、元のややこしい話を
よくここまでほぐしたってことね?
(注・脚色賞は小説などの元ネタをうまく映画にしたで賞、です)


サブプライムについては
「ドリーム・ホーム」を見ておくのも予習になるかもしれません。

ただ
リーマンショックの裏で何が起こったのか?
そもそもリーマンショックってなんで起こったの?
てか、証券取引とかってイマイチわからない・・・・・・

こんなレベルのワシにも
何が起こっているかはなんとかわかるし、
勉強になった。


金融市場が崩壊・爆発することに
いち早く気づいたマイケル(クリスチャン・ベール)らが
それを利用して儲けようとするんだけど

しかしなかなかドカンと爆発せずに苦戦する様子など
相当にハラハラで、目が離せないし。

日常で起きた異様な現実を、
再び、改めて日常に落とし込もうとするような
ズーム多用のドキュメンタリーふうなカメラワークも独特でした。

登場する各人が
「そのとき、どうしたか?」見どころで

倫理と正義に揺れながら、
しかし結局は「勝ち抜け」しようとする人
ハナから倫理ゼロなキャラなどいろいろで

そのなかで
もとは正義漢ながら、結局は同じ穴に生息する身に苦しむ
スティーブ・カレルが魅せますねえ。
この人は本当にカメレオン俳優だと思う。いつも彼だとなかなか見抜けない。


村上春樹氏の小説からの引用があったり
あるミュージシャンの曲がかかったりするので
日本人は「おっ」と思うかもしれません。

★3/4(金)から全国で公開。


「マネー・ショート 華麗なる大逆転」公式サイト
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第88回アカデミー賞 番長的おすすめ作品

2016-02-28 22:39:17 | ぽつったー(ぽつおのつぶやき)

いよいよ第88回アカデミー賞発表ですね。
今年は「おっ!いいね!」な作品多しです。

受賞予想じゃないですが
主要賞のなかで、今後公開されるおすすめ作品をあげてみます~。
今後のセレクトのご参考に。

<作品賞>

これは予備知識ナシでぜひ!
「ルーム ROOM」(4/8公開)



正義感に燃える、社会派ネタ。「完全なるチェックメイト」のリーヴ・シュレイバーが存在感あり。
「スポットライト 世紀のスクープ」(4/15公開)



ディカプリオも凄いけど、撮影がスゴイ!
「レヴェナント 蘇えりし者」(4/22公開)


<主演男優賞>

オスカーは上の方に譲ってほしいけど、エデイ・レッドメインの演技には震えます。
「リリーのすべて」(3/18公開)


<主演女優賞>

キャロルもいいけど、これはシャーロット・ランプリングに!
「さざなみ」(4/5公開)


さあ、祭です!
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虹蛇と眠る女

2016-02-26 12:58:28 | な行

なかなかのミステリーでした。


「虹蛇と眠る女」72点★★★★


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オーストラリアの砂漠地帯にある
小さな町。

キャサリン(ニコール・キッドマン)は

夫(ジョセフ・ファインズ)と
娘のリリー(マディソン・ブラウン)、
まだ幼さの残る息子トミー(ニコラス・ハミルトン)とともに
都会から、越してきた。

キャサリンの心配事は、思春期まっただ中の
娘リリーのことだ。

そんなある朝、一家に異変が起こる。

二人の子どもたちが
忽然と姿を消したのだ――!


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ニコール・キッドマン主演の
オーストラリア映画。

失踪ミステリーであり、
心理サスペンスであり、
さらにホラー、というか怪奇に通じるような
異形の作品です。


導入から不安を煽る旋律が響き、
けっこう怖い。

で、
「子どもたちの失踪」という出来事が起きるわけですが
「事件だ!」「捜査だ!」というよりも
どこか神隠し的な要素をはらんでいるというか

オーストラリアの過酷な自然、先住民の信仰など
“大きな不気味”の存在を
うまく演出し、不安を煽るんですねえ。

しかし同時に
性的に早熟な娘の危うさ、一家を取り巻く田舎町の閉塞や噂話、
さらに家庭内部に問題が――?!など
リアル世界の淀みがどよんと物語を覆っていく。

なので
リアルと神秘のどっち側の事件なのか
けっこう揺さぶられる。

なかなかよくできているのです。

ヒタヒタと静かにだけど
けっこうエロスにも満ちていて
ヒヤヒヤしながら引き込まれました。

ニコール・キッドマンのすべてをさらけ出した
体当たり演技も迫力ですよ。


★2/27(土)からヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国で公開。

「虹蛇と眠る女」公式サイト
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偉大なるマルグリット

2016-02-25 23:26:45 | あ行

事前に映画宣伝会社の方から
「本人が歌っているYouTubeがあります」と聞いて
見ておいて、とてもよかったと思った。


「偉大なるマルグリット」69点★★★☆


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1920年、フランス郊外の邸宅に暮らす
裕福な男爵夫人マルグリット(カトリーヌ・フロ)は

オペラが大好きで
自宅サロンでリサイタルをするのが趣味。

が、誰も指摘できないでいたが
マルグリットはものすごい音痴だった――!

そんなマルグリットが
「音楽会で歌ってほしい」という誘いを受けるのだが――?!


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アメリカに実在した
フローレンス・フォスター・ジェンキンズという女性を
モデルにしたフランス映画です。

事前に映画宣伝会社の方から
「本人が歌っているYouTube」の存在を聞き、事前に聞いておいたのが
すごくよかった。

本家のその音を聞いても
最初はその破壊力に、確かに笑ってしまうんです。
しかし、そのインパクトが次第にリスペクトへと変わっていくような
なんだか、爽快な気分になる不思議がある。


そして、その感覚が
そのまんま、映画に表現されていたと思います。


それに、モデルはいても
本作はあくまでも「マルグリット」という人物を監督が造形して描いたもの。

だから、厳密にモデルと同じ人ではないんだけれど
歌は、なるほどYouTubeのそれにちゃんと似せてあって
その不思議な歌声の威力、破壊力
ぶっ飛んだパワーがよくわかる。


ともすれば「音痴」を揶揄することに落ちそうですが
そこもうまく回避しているし

彼女の歌声を最初に発見する新聞記者が
適切でうまい批評を書くくだりもいい。
批評する人間の“役割”と、悪意ではないその姿勢が、現れていると感じました。

さらにマルグリットのいた時代背景に
ダダイズムなど前衛芸術があった、という描写も
納得いくものでした。


ただね、想像では
ハート・ウォーミングな “いい話”なのかなと思ってたんですわ。
でも
そういう方向を完全に拒否している点がフランス風というか(笑)。

時間もちょっと長かったな。


でも
おなじみ『週刊朝日』の「ツウの一見」で
オペラ歌手の鈴木慶江さんにお話を伺いまして(美人!
とても興味深かったのですが

オペラを知る人にとっては
この作品は「マルグリット」という“オペラ”として
作られていることが明確で
一幕、二幕、という展開の仕方も
あのラストも「オペラ的」なのだそう。

オペラ音痴にはそこまでわからなかったので
そう思うと、うん!より見ごたえが出てきました。

ちなみに。
ハリウッドでも
フローレンス・フォスター・ジェンキンズの伝記映画が制作されていたそうで
主演はメリル・ストリープだそう。
うーん、彼女だとちょっと重いかな・・・(すみません。笑)

そして本作のカトリーヌ・フロって、
キムラ緑子さんに似てる、とすごく思いました(笑)


★2/27(土)からシネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開。

「偉大なるマルグリット」公式サイト
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ヘイトフル・エイト

2016-02-23 23:46:11 | は行

映画から受け取ったものは、間違ってなかった!(自信)
でもそれがハマるかは、別の話……(笑)


「ヘイトフル・エイト」55点★★★


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カウボーイの時代。

賞金稼ぎのウォーレン(サミュエル・L・ジャクソン)は
雪の中を走ってきた駅馬車をヒッチハイクした。

馬車には同じ賞金稼ぎのルース(カート・ラッセル)と
その獲物であるデイジー(ジェニファー・ジェイソン・リー)がいた。

途中で新任保安官(ウォルトン・ゴギンズ)を乗せ、
とりあえず猛吹雪から逃れ
ロッジに到着した彼らだったが
そこには先客がいた。

しかも、全員どこかワケありな様子で――?!


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クエンティン・タランティーノ監督の新作。

開始20秒、
ワイド画面で雪景色が延々と写され、
点のような馬車が、だんだんこちらに近づいてくる・・・というシーンで

どうにも、やたらと尺が長いなあ
(しかも「ニーチェの馬」とかの長さとは違うなあ)
カメラを回すのが楽しくて
写ったものを見るのが楽しくてしかたない!という感じだなあ・・・・・・
と思ったんですが

後で資料を見たら
わずかな映画でしか使われていない
70ミリフィルムで撮影をし、
さらにワイドスクリーン用のアナモルフィック・レンズを使い
2.76:1の比率で撮った類い希なる映像、だそうで
(学校で習った気がするけど忘れたよー。笑)

うわお!映画から受けた印象は間違いなかった!と思いました。
そんだけですが(笑)

ただ、そのへんのことは
観る前に知っておいたほうがいいのかもしれません。
そこに「垂涎」できないと、
延々と映像を見せられる感じは否めないかも。


で、中身はと言いますと
クセモノたちが、豪雪のロッジに閉じ込められ
そこで殺人が起きて――?!というもの。

これも予想はしていましたが
あまりミステリーの味はなく
血が飛び散る殺し合いで。

裏切りやかけひきが多少あっても
飛び散って終わってしまうので、物足りない。

ただ
エンリオ・モリコーネが担当した音楽は
さすがに迫力があってぴったり。
(この二人にも、いろいろ因縁?があったようですが

映画単体よりも、いろいろほじることを要求されるのが
タランティーノ作品らしいとも言えるけど

結論としては
やっぱり監督が一番、楽しそうでした(笑)


★2/27(土)から全国で公開。

「ヘイトフル・エイト」公式サイト
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