ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

オール・ユー・ニード・イズ・キル

2014-06-30 23:53:47 | あ行

これは・・・キタ。

「オール・ユー・ニード・イズ・キル」80点★★★★


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謎のエイリアン“ギタイ”からの攻撃で
世界が滅亡に追い込まれている未来。

軍の広報担当で戦闘スキルゼロのケイジ少佐(トム・クルーズ)は
ある日、なぜかいきなり戦地に送り込まれ

案の定というか、
開戦5分で命を落としてしまう。

が、次の瞬間、
彼は出撃の前日に戻っていた。

いったい、彼に何が起こったのか――?

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これは・・・すごい。

久々に「新しい眼が開いた」SFでした。

桜坂洋氏の原作を
トム・クルーズ主演で、気合いたっぷりに映画化。

原作未読ですが
メイド・イン・ジャパンの“感性”が、
超スケールの映像に融合した成功例だと思います。


圧倒的な敵“ギタイ”によって
絶望的な状況にある地球。

そのヤバい度合いを
現在の日常の延長上にスムーズに想像させる序盤は
「パシフィック・リム」的な雰囲気。

そこに、元々広告会社勤務だったという
武器を持ったこともない主人公(トム・クルーズ)が登場。


IMAXで観るとより臨場感ハンパない戦場に放り込まれ、
あっという間に死亡する。

「え?」という驚きがあり、

しかしなぜか次の瞬間、
時間がまた戦地に行く前に戻っている。

ここからが恐ろしいのが
彼は
その日から、何回も何回も何回も
出撃しては死に、また前日に戻るの無限ループを繰り返すんですね。

何度も何度も、延々と死ななきゃいけないなんて
かなーり地獄(苦笑)

そのループのなかで彼は
少~しずつ知恵をつけて
前日と“違う手”を試みるようになる。

彼はそのループの秘密を握る
女性兵士(エミリー・ブラント)に出会うことができるんですが、

それからも、まだまだ秘密は深い・・・という。

この経緯を読んで、ピンと来た人はわかるはず。

そう、
この映画はゲームで何度も何度も死にながら
ボスキャラを倒す努力をしたことがある人なら
絶対に“わかる”はず。

この映画にあるのは
何度死んでも、へこたれずに同じステージを繰り返し、

信じられないような持久力と、努力の積み重ねたのち
ようやく「次のステージに行けた!」という喜びの尊さに
よく似た感覚なんですね。


いま考えると信じられないような
あの、集中力や忍耐の美学。

そんなゲーマー・スピリットに、
この映画はきっと呼応するはずです。

何度も繰り返すシーンや展開を、
飽きずに見せる工夫もうまいし、

同じトムさんの「宇宙戦争」のように
序盤はめちゃくちゃおもしろいのに
ラストはよくわからないまま強大な敵が死んで「???」とかいう
SF映画にけっこうありがちな
がっかり感がないのもいい(笑)

拍手!


★7/4(金)から全国で公開。

「オール・ユー・ニード・イズ・キル」公式サイト
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収容病棟

2014-06-29 01:16:00 | さ行

ワン・ビン監督、どんだけ気配を消しているのか
完全に、この場所に混ざっているのか(笑)

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「収容病棟」68点★★★☆


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「無言歌」「三姉妹~雲南の子」などで
中国の“真の姿”を静かに描き、問題を提起しているワン・ビン監督が
雲南省にある精神病院を撮影した
237分のドキュメンタリーです。

2010年、中国当局の発表によると
中国には精神病患者が1億人いるそうで
(億って・・・
しかし、彼らの実態は知られていない。
ま、日本でもそうですけどね。

で、今回ワン・ビン監督は200人ほどを収容している病院に3ヶ月通い、
患者の姿を映したそうです。


病院は中庭を囲む回廊のある建物で、
その3階の廊下がほぼ全編の舞台であり
患者たちの世界。


そのなかをカメラは
患者たちと同じ目線ですいすい、グルグル歩き回り、
ふと目に付いた患者の一コマに寄っていくわけです。

夜は異様な熱気を帯びて
廊下を走り回る人がいたり

4人部屋でも
まあ床に痰どころでなく、放尿までしちゃう
かなり壮絶な環境ではありますが

ただ
“精神病棟”ということで
すごく激しいものを見るか、というと
意外にこれが、穏やかだったり、ユーモラスだったりする。

夜、ひとりぼっちが寂しくて
人の布団に無理矢理潜り込もうとして
追い出される男や

昼には肩を寄せ合って
ひなたぼっこをしている二人などには
おもわず微笑んでしまうしね。

彼らの中にもルールや
お互いをいたわる人間らしい暮らしがあるとわかる。


同時に、やっぱり「意志疎通が無理」な人もいて
その混濁に現実を見たりもします。

と、試みもおもしろく、成功しているのですが
ただ、237分はやはり長い。
その状況に観客の身を置かせる意味はあると思いますが、
今回は、もうちょっと取れ高を整理してもよかった気がします。


ラストにテロップで説明が出てきますが
この収容所には精神疾患だけでなく
「一人っ子政策に違反した人」とか
「政府に対して陳情をした人」なども
収容されているそうで

見ていても
明らかに「まともでは?」と思える人もいる。

「“ダメ”なものを、なんでも隠してしまえ」という、
国のやり方の乱暴さにぞーっとします。


★6/28(土)からシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。

「収容病棟」公式サイト
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ビヨンド・ザ・エッジ ~歴史を変えたエベレスト初登頂

2014-06-27 23:32:26 | は行

涼しくなります。

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「ビヨンド・ザ・エッジ ~歴史を変えたエベレスト初登頂」65点★★★


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1953年、世界最高峰のエベレストに初登頂した
イギリス隊のメンバーで、ニュージーランド人のエドモンド・ヒラリー氏と
シェルパを務めたテンジン氏。

彼らの当時の映像をまとめたドキュメンタリーと、
再現ドラマを組み合わせた作品。

エドモンド・ヒラリー氏の息子と、テンジン氏の息子が登場し、
当時の貴重な映像も多く使いながら、

宇宙に行くに等しい冒険を支えた
科学者の苦労なども描きつつ、
「どうやって初登頂が成功したのか」の真実が語られます。


来週発売の『週刊朝日』ツウの一見で取材させていただいた
登山家・田部井淳子さんも
「ウソがほとんどなくて、おすすめ」とのこと。
プロフェッショナルから見ても、かなり充実の内容だそうです。


登山素人から見た本作の特徴は
いわゆる“再現ドラマ”の域を脱している、その映像作り。

「ロード・オブ・ザ・リング」撮影スタッフらが担当し、
雲海の上の世界や、端っこギリギリを歩くスリルなどを
3Dで体感できるのもすごい。

実際の登山隊の苦労もよくわかるし、

限界に挑戦するすごさ、
何かを成し遂げるには、愚直なまでに一歩一歩進んで行くしかないのだ・・・という
教訓をしっかり受け止めました。

ただ
素人が「山岳映画」にどうしても求めてしまう、生死を賭けたハラハラは
結果がわかっているだけに
やはりドラマチックさには欠ける。
そんなのしかたないんですが。

あと、構成も映画として見ると、単調かな。

この偉業の意味をわかっている人には
より、噛みしめられる映画だと思います。


ちなみに当初のタイトル
「天空の頂き」から原題ママに、タイトルが変更されたのは
配給元KADOKAWAさんの今後作品タイトルとの兼ね合い・・・というのが事情らしいですハイ。


★6/28(土)から角川シネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国で公開。

「ビヨンド・ザ・エッジ~歴史を変えたエベレスト初登頂」公式サイト
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マダム・イン・ニューヨーク

2014-06-26 23:52:12 | ま行

ウディ・アレンが大好きだという
39歳のインド人女性監督の初長編。
これがセンスよくて、巧い!


「マダム・イン・ニューヨーク」75点★★★★


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シャシ(シュリデヴィ)は
お菓子作りが得意なインドの主婦。

家族のなかで自分だけ英語ができないことが
コンプレックスだった。

そんな彼女が姪の結婚式の手伝いで
ニューヨークに行くことになる。

そしてある出来事をきっかけに、
シャシは「英語を学びたい!」

周囲にナイショで英語学校に通いはじめるが――?!


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インドの古風な美人マダムが
コンプレックスである英語を学ぶことで、
新しい世界を開いていくというお話。

まずインド映画といっても長くなく
バタ臭くなく(いつの話よ?笑)、洗練された様子に驚きます。
最近のインド映画の進化はスゴイね。


緩急自在に盛り上げ、ドキドキさせ、
ラストはしっかり絞めつつ、
大円団でフィニッシュ!――という、

これは娯楽としての映画の上級ワザですよ。

ラスト、英語でシャシが話す、
新郎新婦へのスピーチは感動モノです。


女性の自立を描いているのは確かだけれど
この映画がおもしろいのは
「語学学校」が、とてもいい題材になっているところ。

多彩な国から集まった、個性的なメンバーたちのやりとりや交流が
実にユーモラスで、そののち深い。

で、
「これは、この方にお話を伺うしかない!」と

おなじみ『週刊朝日』(6/20号)ツウの一見で
大ヒットコミック『日本人の知らない日本語』の海野凪子先生に
お話を伺いました。

さすがの視点だなあ!と唸ったのは

学校で最初に自己紹介したシャシに
語学学校の先生が言った“起業家”というワードが
いかに彼女のモチベーションをあげる魔法だったか、ということ。

言葉が、その人の人生に大きく関わる瞬間のおもしろさを
ぜひ感じながら、見て頂きたいです。

主演のシャシ役のシュリデヴィは
インドの国民的女優だそう。

結婚を機に女優業から遠ざかっていたけれど本作で復活。

ニューヨークの街中で、優雅にサリーを着こなし
ゆったりした気品と魅力があって美しい方でした。


★6/28(土)からシネスイッチ銀座ほか全国で公開。

「マダム・イン・ニューヨーク」公式サイト

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オールド・ボーイ

2014-06-25 23:57:05 | あ行

いまだに、なにかと囚われてしまう
元ネタ映画の凄さを、しみじみ実感。


「オールド・ボーイ」50点★★★


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1993年。

広告代理店の重役ジョー(ジョシュ・ブローリン)は、
仕事では腕利きだが私生活ではアルコールに溺れ
3歳の娘とも離ればなれだ。

そんなある日、いつものように
町で泥酔した彼は

目を覚ますと窓もドアもない不思議な部屋に
監禁されていた。

いったい、彼は何のために
監禁されたのか?

その謎は、20年後に明かになる――。

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元ネタは、1990年代に
土屋ガロン×嶺岸信明氏が発表した漫画。

それを2003年にパク・チャヌク監督が映画化し、
いまだ語り継がれる作品に。

そして、その映画に驚愕したスパイク・リー監督が
今回、映画化・・・という流れです。


ストーリーは想像以上に元ネタ忠実だったけど、
しかし、端々に“アメリカの倫理”があると感じます。

全体に
残虐描写は割と控えめ(助かる~。笑)
乱闘シーンは漫画というより、こりゃゲームか!のコミカルさ(笑)で。


ヒロイン役のエリザベス・オルセンの配役は絶妙で
かなり期待しまして
まあ悪くはないんですが、

どうしても韓国版と比べて、
何も知らない父娘の間に起こる“愛”の描き込みが
濡れ場を含めて、決定的に不足している。

ゆえに、結末の慟哭が弱いんですよね-。

ハリウッドの倫理ラインに、
この描写がギリギリだったのか。


ならば、なぜリメイクしたの?という疑問も起こりますが
いや、まあ
やりたかったんでしょうね。わかります。

クリエーターとして、名誉なる挑戦ですもん。
その結果ですから、いいと思いますよ。


★6/28(土)新宿バルト9ほか全国で公開。

「オールド・ボーイ」公式サイト
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