ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

千年の祈り

2009-09-30 23:11:41 | さ行
風邪治んねなーちくしょー
まあだいぶマシにはなりました。

今日はすごく気に入った映画を。

「千年の祈り」84点★★★


香港出身でサンフランシスコ在住の
ウェイン・ワン監督作品。


北京に暮らす初老の父親が
アメリカに暮らす
離婚歴アリ・妙齢の一人娘を訪ねる
というお話。


うっとうしいけどあったかい
こういう何気ない家族映画って好き。

異国の地で父親が
カタコトの英語で周囲とコミュニケーションをとる姿と
最も近い存在であるはずの娘との
ディスコミュニケーションの対比がおもしろい。


それに30代の負け犬娘(中国では余女っていうそうですね)
を心配する60代の父親って
まんま自分にどんぴしゃで(離婚歴すらありませんが、何か?)
もう痛いったらありません。


娘を気遣いながら、それでもボソっと
「孫の顔がみたい」と本音を出してしまう父よ!

そんな父娘の手探りでぎこちない
コミュニケーションの結末は
家族を想う誰の胸にも
しみると思います。

それにしても
お父さん、心配かけてごめんなさい(反省)


★11/14から恵比寿ガーデンシネマほか全国順次公開

来日した監督に
インタビューでお会いしたのだけど
60歳とは思えない
スマートな優しい紳士で感動!

「私、これからどしたらいいですかね?」なんて
思わず相談しちゃったりして←マジです。

このインタビューの模様は
11/2発売(予定)のアエラで紹介します。
お楽しみに!
コメント (4)

アンヴィル!~夢を諦めきれない男たち~

2009-09-28 23:21:03 | あ行
う~風邪ひきばびだ。すんません。

そんなテンションのなか
ガツンと感動させていただきやした

「アンヴィル!~夢を諦められない男たち~」77点★★☆


かのマイケル・ムーアも
「ここ数年のドキュメンタリーで最高傑作!」と絶賛したそうですが
(しかしあちこちでこのフレーズ言ってないか?オッサン


これが
まさにあのミッキー・ローク主演「レスラー」の
実録版なんですわ。
(題材はヘビメタだけど)

あの映画でワシが見たかった
「栄光のその後のリアルな人生」が
ここにある!


1984年に来日公演も果たしている
「アンヴィル」というメタルバンドが主人公。

メタリカとかにも影響を与えたバンドだそうだけど
なぜかブレイクにいたらず
泣かず飛ばずで30年。

当時のメンバーたちは
すでにオーバー50歳。

が、しかし!
彼らはいまも故郷・カナダのトロントで
地味な日常をこなしつつ
ヘビメタに人生を賭けているという
ドキュメンタリー。


ボーカルのリップスは
普段は給食デリバリーの仕事をしており
ビニール・キャップを被って
地道~に働いてる。
まさしく「レスラー」のミッキー・ロークそのもの!


そのリップスとバンドのドラマー・ロブとは
15歳からの幼なじみで
35年も友情を続けてる。


そんな彼らが
一発逆転を狙って
世界ツアーに出てみれば…という
ドタバタ珍道中などが描かれます。


「売れたい!」という願いは
もちろん真剣なんだけど

メンバーをはじめ、周囲の人たちが
どこか田舎らしいというか
のんきで明るく、ずっこけで楽しい。


そもそも映画を撮った監督からして
高校生のときに
アンヴィルのツアーローディーをしてたっていうんだから
なんかいいよなー。


その実
成功者とあと一歩及ばなかった者の差とは何なのかも
シビアに見えてくる。

そしてクサいけど
名声や金よりも大事なものも、ここに映ってる。


「人生はあっという間に過ぎ去るんだ。だからいまやらなければ」
というロブの言葉が
ずしんと響きました。


★10/24からTOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国で公開
コメント (2)

母なる証明

2009-09-23 23:07:40 | は行
連休中、ずっと原稿書きで地獄でした…

地獄といえば(?)
ようやく10/31公開が決まった

「母なる証明」73点★★☆


「殺人の追憶」「グエムル―漢江の怪物―」の
ポン・ジュノ監督最新作。

前2作にド肝を抜かれ、
かつ本作は
今年のカンヌ国際映画祭で大絶賛、ということで

異常なまでに期待も高まりましたが


正直、見終わってすぐは30点と思った。


だって
「殺人事件の容疑者となった息子を救うため
真犯人を追う、母親の姿を極限まで描く
ヒューマン・ミステリー」

という前宣伝から想像してた映画と
あまりにも違ってたから。


しかーし。

試写から2ヶ月近くたったいまも
じわじわとシーンが蘇ってくる
ある種の「囚われ」映画です。


主人公は漢方薬局で働く母(キム・ヘジャ)。

彼女は
クリクリと小鹿のような目をした
無垢な一人息子(ウォンビン)を溺愛している。

だがある日、町で殺人事件が起き
息子が容疑者に。

母は息子の無実を信じて
一人で真犯人を追う…

ってこれじゃ前宣伝の文句とおんなじやん!


しかし、かん口令もしかれており
実際、
ネタをばらすと本当にもったいないので
これ以上は書けません。


ただ
わざと感動話を避けたであろう
後味のしょっぱさ、
そしてポン・ジュノらしいあっけないまでの残酷さに
衝撃を受け、あ然とすることは間違いなし。


子を思う母の重さを
なにかが憑依したように演じる
キム・ヘジャの迫力にゾッとするし
犯人探しのミステリーとしても
かなり斬新な展開かと思う。


ホラー的怖さではないので
その点は心配無用。

ただし「楽しんで」とはとても言えず
後からじわじわと効いてくることは
間違いありません。


いやー
雰囲気を伝えることすら
拒否する映画ってある意味すごい。


★10/31からシネマライズ、シネスイッチ銀座、新宿バルト9ほか
全国で公開
コメント (4)

ココ・アヴァン・シャネル

2009-09-22 21:52:49 | か行
この連休、見る映画ないよね~

まあイチオシは「正義のゆくえ」ですが
今年はシャネル映画が多いので
話題として


「ココ・アヴァン・シャネル」60点★★


シャネル生誕125周年(!)のこのタイミングに
本拠地フランスが
「うちがやらずにおられるか!」と
「アメリ」のオドレイ・トトゥを主演に
伝記映画に参戦した模様。


8月に公開された
シャーリー・マクレーン主演「ココ・シャネル」と
どうしても比べてしまうんだけど

あちらが出生から晩年まで
シャネルの生涯をもれなく網羅した
超大河ドラマだったのに比べて
(ちょっと橋田壽賀子モード入ってた)


こちらは孤児院時代から
デザイナーとして立身出世する前、
男性をパトロンに持ちつつ、自立を模索していた時代に
スポットを当てている。


シャネルの“恋”に焦点を絞ったのが
フランスらしいし
さすがにムード作りは上手。


しかし、どちらかといえば
シャネル映画に現代女性が求めているのは

ひらひらドレス全盛時代に
「そんなのダサい!」と異を唱え
パンツスーツでわが道を行った

元祖「BOSS」的
ワーキングウーマンとしての
彼女の姿なのではと思う。


となるといかんせん、この時代は中途半端。


いまいち盛り上がりに欠ける
結果となりました。


ただ演技人のレベルは超高い。

特にシャネルに出世の道を開く
貴族女性を演じる
エマニュエル・ドゥボスが素晴らしい!


★9/18から全国で公開中。


来年のお正月第二弾で
もう1本
デザイナーとして成功したシャネルと
妻子持ちの作曲家ストラヴィンスキーの
秘めたる恋愛を描いた
「シャネル&ストラヴィンスキー」が公開されます。

マクレーン版と3本
まとめて比較するのが
一番おもしろいかも。
コメント (2)

脳内ニューヨーク

2009-09-20 23:33:38 | な行
読者からのリクエストにお答えして

「脳内ニューヨーク」74点★★


「エターナル・サンシャイン」の
チャーリー・カウフマン初監督作
×
「マルコヴィッチの穴」の
スパイク・ジョーンズ製作

まあ
いかにも業界人が好みそうな映画ですが

けっこう好きでした。


はじめのうちは
妻に捨てられ、人生うまくいかない
孤独な劇作家(フィリップ・シーモア・ホフマン)の
よくある日常話なんだけど


彼がNYの巨大スタジオに
擬似NYを作り出し
役者たちに「ありのままの自分」を演じさせるという
プロジェクトを思いついたあたりから

次第に彼の作る演劇と現実が交じり合い
混沌としてくる…という。


これも昨日書いた
デヴィッド・リンチの超混迷作
「インランド・エンパイア」を思わせるんだけど

こちらは混乱しつつも、一応の流れがあり
いたずらに観客を翻弄しようという気配がないので
なんとかいけます。

それに
なんというか全体の手触りが柔らかくていい。


思考が必要だけれど、いい映画だと思う。


まあお疲れのかたは
間違いなく寝ると思いますが…


★11月からシネマライズほか全国で公開。

しかしこうしてみると
D・リンチの「インランド・エンパイア」って
アート志向のクソ映画かと思っていたけど
意外にいろんなシーンで思い出されるんだよね…。
コメント (8)