ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

グリーン・ライ エコの嘘

2020-03-29 00:19:18 | か行

いろんなことが

いまの状況につながっている。

 

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「グリーン・ライ エコの嘘」69点★★★☆

 

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スーパーで目にする

「環境に優しい」という文句やマークのついた商品。

 

それを選んで買えば、当然消費者は「地球や環境に貢献してる」気になる。

でも、それ、ホントだと思いますか? 実はね・・・という

恐ろしい状況を知らせるドキュメンタリー。

 

でも

「暴く!」「告発!」というトーンではないのが、なかなかおもしろい。

 

鋭く問題をつく女性ジャーナリストと、

のんきなおじさん監督コンビが(そういうポジションを演じているんだろうけどね。笑)

世界各地の「問題となる現場」を訪ね、

サスティナビリティなどを売り文句にする

商品や企業の嘘を、じわじわと表出させてゆく――という作りなんです。

 

なかでも特に象徴的だったのは

あらゆる食品や石けん、シャンプーなどに使われている

「パーム油」をめぐる話。

 

日本では「植物油脂」と表記するだけでOKで

知らぬ間に

我々が日常口にしているパンやインスタントラーメン、チョコなどにも多様されている。

とにかく「カネになる」油らしいんですよ。

 

なので、そのカネを目当てに

パーム油を栽培する畑を作ろうと考える人たちが多い。

 

そこで故意に森林火災を起こし、すべてを焼き払い、

その跡をパーム畑にする――という、あり得ないような非道が

各国で行われているんです。

熱帯雨林に火災を起こし、すべての動植物を殺してしまった

インドネシア・スマトラ島の無残な焼け野原・・・・・・。

その状況に心が痛みます。

 

しかし

そうした非道を行っていても、政治やカネの力によって

「持続可能(サスティナビリティ)のパーム油です」という

認証を取得している場合が多いんですって!

 

特に大企業に多く、

でもパッケージには「環境にいい」と表示されているので

我々はいいことをしてるつもりで、それを買う。

でも、それってどうなの?と、知らせるのが、この映画。

 

 

「環境にやさしい」マークがついているからといって

むやみに信用できないんですよ、

いいことをしているつもりが、非道に加担していることになりかねないんですよ、と

そのからくりを、本作は暴いていくんです。

 

ほかにも監督とジャーナリストのコンビは

各国のさまざまな現場を訪ね、

欺瞞を垂れ流す企業主催の環境問題パーティーやイベントに行き

その様子をレポートする。

 

あるときは会場に怒れる若者たちが乱入したり、

反対派が静かな抗議を行ったりしていて

意外に「変化」の兆しもあるように見えるんです。

 

でも実際、大企業が「環境にいい」マークをつける商品は

資本がでかいだけに100円で売れる。

真に「環境にいい」ものにしようとすると500円になってしまう。

5倍の値段で、「真に環境に配慮した」商品を我々は選べるだろうか?

ビンボー人には、なかなか選べませんよね・・・。

 

じゃあ、どうすればいいのか、も

登場する識者たちのわかりやすい説明で見えてくる。

 

つまり、我々=消費者に選ばせるのではなく、

「ちゃんとした品」しかダメな法律を作ればいいんだ、という

彼らの意見に超・同意!

 

変革は容易ではないけれど

こうした事実を知ることで、変革は起こるかもしれない。

 

世界が揺れているいまこそ、

あらゆるものごとを、根底からひっくり返して考える必要があるのでは?と

思えるのでした。

 

★3/28(土)からシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。

「グリーン・ライ エコの嘘」公式サイト

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世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ

2020-03-28 01:11:45 | さ行

あのエミール・クストリッツァ監督が

元ウルグアイ大統領を写したドキュメンタリー。

 

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「世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ」70点★★★☆

 

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2012年の国連で素晴らしいスピーチをして

世界に注目された

元ウルグアイ大統領、ホセ・ヒムカ氏。

 

まったくもって無知ながら

ワシ、この大統領のことを知りませんでした。

 

その質素な暮らしぶりで

「世界でいちばん貧しい大統領」と紹介され

世界的に有名な方なんですね!

 

自分のお給料を貧困層のために、とすべて寄付し

真に人のために動く。

そんなムヒカ氏にクストリッツァ監督も魅了され

「ドキュメンタリーを撮りたい!」と参上したそう。

 

映画はムヒカ氏の人生、そして

2015年に任期満了で、大統領の座を辞するまでを追っていきます。

 

何も知らずに見はじめると

まず、丸っこくて、くしゃっとした笑顔のチャーミングなムヒカ氏が

画面に登場する。

 

それだけでも、ワクワクしてくるんですが

ムヒカ氏に対面している監督の、まあ存在感がハンパない(笑)

 

「マテ茶」という、苦そうなお茶をガシガシと漉しながら

お互いにタバコ(葉巻)をくゆらせながら見つめ合う

オヤジ2人のオーラの拮抗といったら!(笑)

 

そこにまず「オトナの了解」のもとのドキュメンタリーなんだな、

という印象がありました。

 

 

そして映画はムヒカ氏の人となりを追っていく。

 

発する言葉すべてが示唆に富む「名言」で

街を歩けば人々にめちゃくちゃ囲まれ

 

スマホを操作しながら

「まあ便利だけどさー。どうせなら、ワシらのような老人向けに

トイレをつけてほしいよね」とか(笑)

”愛されキャラ”ぶりがよくわかる。

 

しかし、その過去には

軍事政権下で貧困層のために活動し、10数年、投獄されていたこと、

 

さらに

活動家時代、大義のために犯罪も行なっていたこと――などが

明かになっていくんです。

 

そうした経験が、弱者にとことん寄り添う

いまの、ムヒカ氏をかたち作ったんだなあと。

 

さらにおもしろいのは

ムヒカ氏の妻にフォーカスが合っていく点なんですねえ。

 

二人の出会い、そして活動家としても歩みを同じくした歴史。

そして奥さん、

実は副大統領も務めているんですよ。

すげー。

 

そして、映画はやがて

夫婦の純粋な愛の物語になっていくんです。

 

これって

想田和弘監督の最新作「精神0」(5/2公開)と親和していて

すごく興味深かった。

(実は今日、想田監督に「AERA」にてインタビューさせていただきました!また続報します)

 

さらに。

ムヒカ氏について、ちょうど同タイミングで

もう一本、ドキュメンタリーがあるんです。

「ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ」(4/10公開)

 

こちらは若い日本の監督がムヒカ氏を追ったもので

2作の違いがまたおもしろい。

ぜひ、見比べてもらいたいです。

 

結論としては

「映画、そしてドキュメンタリーは、真に作り手を写すものなのだ」ということ。

 

そして、ムヒカ氏の言葉と生き方は

いまの世にものすごく響くのだ、ということです。

 

新型コロナで大変な時期ですが

こうした映画を観ることで「心のもちよう」を学ぶこともまた

救済になる、と思います。

 

無理なきように、ぜひ、映画を摂取してくださいませ。

 

★3/27(金)からヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開。

「世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ」公式サイト

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21世紀の資本

2020-03-22 23:42:53 | な行

こんなご時世に

改めて、考えさせられますわー

 

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「21世紀の資本」68点★★★☆

 

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2013年にフランスで出版され、2014年に日本でも出版。

大ベストセラーになったトマ・ピケティ著の『21世紀の資本』。

あの本を、わかりやすく映画にした

ドキュメンタリーです。

 

あの本、真っ白な装丁がクールでミニマムで、

「これは読まねば!」と手に取っては見たけれど、

けっこうデータが多くてムズカシクて

完読できなくなかったですか?ーーはい、ワタシがそうです、すみません・・・・・・

 

これは、そんな人たちのための映画です。

 

格差がなぜここまで広がったのか、そもそも資本とは何か?――を

ピケティ氏本人をはじめ、さまざまな学識者が解説しながら

ビジュアルでわかりやすく、伝えてくれる。

 

 

はじまりは18世紀、

ヨーロッパでは人口のたった1%の貴族に富が集中していた、という話に始まり

産業革命、戦争、復興、デジタル革命など歴史の変化を標し、

 

それらによって“階級”や出自だけでなく、

”勤勉”=がんばり、によって

誰もがのし上がることが可能な時代にはなったけれど

 

じゃあ、のしあがってリッチになったら、どうなん?

成功したらしたで、貧しい人のことなど気にかけないでしょ?

という現実を

いやっていうほど、見せられたというか。

 

大企業や富裕層は

オフショアやタックスヘイブンで税金を逃れ、

 

貧困層を助けるはずの税金を

いかに少なくしか払わないか、にやっきになっている。

 

その状況は過去の「貴族」となんら変わりない。

 

結局、人間は「自分」そして「家族や"おともだち”が大事」という

行動原則を変えられないんだなと。

既得権を自ら手放すことなどありえないんだなあと。

 

暗たんたる気持ちになりつつ

経済を学ぶことは

結局は歴史の勉強なのだ、と思い至りました。

 

ピケティ氏は著作でも

「富の正当な分配」のために

大企業や富裕層への課税を解決法として示していたはず。

映画も、そう言っていて、よりわかりやすく理解できると感じました。

 

ただ、ちょっと緩急がなくお勉強チックなところが

「映画」としてはもうひとつなのが惜しい。

 

しかも

監督は制作に4年をかけたそうで、

あいやー、その間にどんどん世界の状況は

さらに悪くなっていったよね・・・・・・

 

さらに、この新型コロナショックだしなあ・・・・・・

 

と、さまざまに考えてしまう。

 

ただ

いまの状況だからこそ

このままの「資本主義」な世界は

やっぱりどこかで破綻するのではないか?

改めて強く考えさせる。

それも

本作の重要な意義なのかもしれません。

 

★3/20(金)から新宿シネマカリテほか全国順次公開。

「21世紀の資本」公式サイト

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三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実

2020-03-20 23:37:14 | ま行

これは想像以上に、見応えアリ!!

 

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「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」71点★★★★

 

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1969年、三島由紀夫が自決する1年前。

東大駒場キャンパスで

左寄りの血気盛んな東大全共闘メンバーたちが

思想も行動も真逆と思われる、あの三島由紀夫を招いて行った

伝説の討論会。

 

その貴重な映像をもとにしたドキュメンタリーです。

 

三島由紀夫自決の年に生まれ、

三島文学といえば、高校から大学生時代に読んだ数冊。

つまり、知識ほぼナシ(すみません・・・)なワシにも、

頭をフル回転させ、議論についていかんとさせる。

 

人と人、知と知のぶつかり合いを愉しませてくれる

その作りがお見事!でした。

 

 

まずはこの討論が行われた背景、

学生運動、そして「東大全共闘」とはナンなのか?にはじまり、

 

三島由紀夫とは、どんな人物だったのか?

そして、なぜ、この討論が画期的だったのか?――などを

当時壇上で三島と対峙した人々や、

作家・平野啓一郎氏や、文学者・内田樹氏ら識者たちが

しっかり解説してくれるんです。

 

ハイレベルな討論の内容も

わかりやすく教えてくれるので、とっても助かった。

 

合わせて、討論会の映像から

三島由紀夫という人が

頭脳レベルは高くともやっぱりまだまだ青臭い大学生たちにも

とても真摯に向き合い、対話をしようとしている様子がよくわかるんです。

 

世界的作家の顔よりも

晩年の処し方を表面的に見て

なんとなく三島=ウヨク?なイメージを正直持っていたのですが

 

この映画で

彼が何を考えていたのか、

その意外な側面が、識者たちの導きで、明らかになって

驚いた。

 

自決の衝撃だけではなく

やっぱり時代の「カリスマ」たる人物だったのだな、と

納得できました。

 

なにより

異なる意見や立場にある人間と人間が

真っ正面からぶつかり合い、知の火花を散らす様に

これが「討論」もとい、「闘論」というものか、と思ってしまう。

 

当時の学生だったり、記者だったり

この熱を知る主要人物たちは、いまやみな70~80歳代。

 

そう考えると、

キャンパスで、街で、政治の場で

いま、こんな「闘論」ができる若者、いや大人はいるのだろうか??

 

と、自戒の念を含めて考えてしまうのでした。

 

映画.comさんの映画評欄にも、そんなことを書かせていただいております。

 

作品に興味を持っていただく

きっかけになれば幸いです!

 

★3/20(金)からTOHOシネマズ シャンテほか全国で公開。

「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」公式サイト

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ジョン・F・ドノヴァンの死と生

2020-03-14 14:18:26 | さ行

グザヴィエ・ドラン監督、最新作。

 

「ジョン・F・ドノヴァンの死と生」68点★★★☆

 

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2006年のニューヨーク。

人気俳優のジョン・F・ドノヴァン(キット・ハリントン)が

29歳の若さでこの世を去った。

 

そのニュースに息を呑む人々のなかに

11歳のルパート(ジェイコブ・トレンブレイ)がいた。

彼はドノヴァンの大ファンだった。

 

10年後。

成長したルパート(ベン・シュネッツアー)は俳優となり、

ジャーナリスト(タンディ・ニュートン)の取材を受けている。

 

その内容は、

ドノヴァンの死に関わるもの。

 

ルパートには、誰にも知らない

ドノヴァンとの交流があったのだ――。

 

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スターと秘密の文通していた少年が

その想い出を語る、というお話。

 

ドラン監督自身が

「タイタニック」のディカプリオに憧れて

手紙を書いた経験から紡がれた話だそうです(カワイイ。笑)

 

思い入れが伝わる感じですが

 

しかし

意外と・・・・・・薄味。

こってり濃いめのコクありラテかと思って飲んだら、

あれ?薄い?デカフェ?みたいな?

 

おいしくない、というわけじゃないんだけど

ドランといえば、

やっぱり濃いめを期待してしまうんだよねー。

 

天才子役ジェイコブ・トレンブレイをはじめ

ナタリー・ポートマン、スーザン・サランドンと

役者は揃いすぎてるほどだし

(特にマネージャー役のキャシー・ベイツが、さすがの存在感!

 

テーマも

母親との関係、セクシュアリティについての苦悩や偽り、

他者を拒絶した行いが、やがて己に返ってきてしまう――など

いつもながらの題材だと感じるんですが

 

このところのドラン監督は、どうもそつなく平均点、という感じで

ファンとしては、正直、物足りない。

「Mommy/マミー」(15年)を超える

新しいドランを見せてほしい、と願うのでありました。

 

★3/13(金)から全国で公開。

「ジョン・F・ドノヴァンの死と生」公式サイト

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