ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

津軽百年食堂

2011-03-31 23:31:52 | た行

公開延期とか
されなくてよかった。


「津軽百年食堂」70点★★★☆


お笑いコンビ、オリエンタルラジオを主演にした
ご当地ムービーです。



明治42年。

青森県弘前で
大森賢治(中田敦彦)は
津軽蕎麦の屋台を営んでいた。


そして現代。

賢治が興した「大森食堂」の4代目にあたる
陽一(藤森慎吾)は
故郷を離れ、東京で暮らしている。


父(伊武雅刀)との確執から上京し
大学は卒業したものの
就職はせず
自分の道を考えあぐねている陽一。


そんなある日、父が
交通事故で入院したとの知らせが入る。


陽一はとりあえず
故郷・弘前に帰ることにするが――。



現代を生きる陽一の時間軸を基本に
そこに百年前の
モノトーンの回想が挟まる構成。


いやいや
思ったとおり
メガネの藤森慎吾がいいじゃないですか!


父親に反発して東京に出てきたものの
パッとしない若者の風情を
ごく自然にまとっている。


彼の一昔前ふうのルックスも(笑)
大森一樹監督独特の
どこか懐かしい80年代っぽいテイストと
絶妙にマッチしていて

想像以上の効果を出していました。



前から藤森氏に注目していたのは
バラエティ番組でいじられて
相当に恥ずかしい局面になっても
かけられたハシゴを
降りようとはしないところ。


プロ意識もあるだろうけど
意外に骨があり
とにかく
素直な青年なんだろうなあと思ってた。


本作を観て、やっぱり確信。


役者として求められたものに素直に答え
場に溶け込もうとしている努力が
よくわかります。

まあ相方は
あの感じのままですが(笑)


ところどころ
展開が単純すぎたり
古くさい感じもしたけれど

そこもまずまず笑える程度。


野村宏伸の登場に
試写室で「おお!」と声があがったりもして(笑)


適度な懐かしさと
家族で見るのに最適な安定感がありました。


ロケには青森県が全面協力し
「大森食堂」のモデルになった食堂や
劇中に登場するカフェなども実存してる。


3.11の前、試写で観たときは
考えもしなかったけど

震災後のいま
こうした「ご当地ムービー」は

復興を目指す現地にとっても
それを支える我々にとっても

ひとつの光になるのかなと思います。


がんばれ、東北!


★4/2から有楽町スバル座、シネマート新宿ほか全国順次公開。

「津軽百年食堂」公式サイト
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婚前特急

2011-03-30 22:21:32 | か行

「GANTZ」続編とこの作品で
苦手だった吉高由里子が
ちょっと好きになりました。


映画「婚前特急」58点★★☆



5人の彼氏と付き合っている
24歳のOLチエ(吉高由里子)。

だが
親友のトシコ(杏)の妊娠&結婚で
自分も結婚を意識しはじめる。

そこでチエは5人の男たちを査定し
仕分けをしようとする。


(1)営業マン(33歳)(加瀬亮)
(2)父親が不動産会社社長の趣味人(29歳)(青木崇高)

(3)美容室3店のオーナー(54歳)(榎本孝明)
(4)大学生(19歳)(吉村卓也)
(5)パン工場の工員(26歳)(浜野謙太)

……さあ、チエに仕分けされ
最後に残るのはダレだ――?!



時間を有効に活用すべく
恋愛同時進行をする主人公チエ。

これが
女からみても全然イヤな人物ではなく
思った以上にイケる話でした。


ただ
初っぱなの査定時点で
結構笑えたので

そこから
5人に仕分けがコミカルに行われるのか?

……と思ったら
ちょっと思惑とはずれ
意外にシンプルな恋愛劇だった。


5人の誰が選ばれるか?について

プレス向けの資料に解説を寄せている
男性評論家は
「意外なダークホース」と書いてるけど


いや、はっきり言って
査定時点で
どの男を選ぶかわかっちゃったんですが(笑)


これは、たまたま?
いや、自分がチエと同系女だから?


まあ周囲の女はみんな
わかったみたいだし

もし男性が本当にここに
「意外性」を感じられるなら

男女の感覚差を論じられる
興味深いテーマかもしれません。


監督の前田弘二氏は
1978年生まれの期待の新人で
これが初の劇場公開作。

しかし
それ以前のインディーズ作品やビデオ作品でも
テーマが一貫しているようで

タイトルだけみても
「古奈子は男選びが悪い」
「誰とでも寝る女」
「先輩の女」……


いったい、
なにがあったんでしょうねえ(笑)


経歴もなかなかおもしろくて

鹿児島・種子島生まれで
高校卒業後、美容師に。

その後、上京し
映画館でアルバイトしながら
独学で映画を学んだそうです。

俄然、興味が沸きました。


★4/1からテアトル新宿、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかで公開。

「婚前特急」公式サイト
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SOMEWHERE

2011-03-29 13:01:42 | さ行

ソフィア・コッポラ監督って
描くものが一貫してますね。


「SOMEWHERE」70点★★★



主人公はそこそこ売れてる
ハリウッド俳優、ジョニー(スティーヴン・ドーフ)。


仕事のスタンバイの間
彼はひとり
ホテルで所在なく
ダラダラな日々を過ごしている。


そんな彼のもとに
別れた妻と暮らす11歳の娘クレオ(エル・ファニング)が
やってくる。


彼女とニンテンドー「Wii Sports」に熱中したり
出かけたりすることで
ようやく彼の日常が動き始め――。



ほかの監督だったら「クソ退屈な映画!」
となりそうだけど

彼女のだと
なんか見てしまうんですよねえ。


ちょっとぬるくて
いつも退廃的。

女の子を可愛く描くのが上手で


年を重ねても毎回作品に
共通するスタイルがあるところなど
少女漫画っぽいというか


男性に「わからん」という人が
多いのものよくわかるっつうか。


まあ、私は少女漫画好きなんで
見てしまいますけど(笑)



「所在のなさ」や「孤独」「少女」は
「ヴァージン・スーサイズ」から
繰り返されるモチーフだけど


今回はまさしく
彼女自身の少女時代を映してるんだろうな。


セレブ特有の距離感を
感じ取りながら
ホテルで孤独で退屈な時間を過ごす感覚は


彼女に取って
郷愁のモチーフなのでしょう。


ここで一区切りがついたのか
はたまた
このスタイルが繰り返されるのか

興味ありますね。


★4/2から新宿ピカデリーほか全国で公開。

「SOMEWHERE」公式サイト
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名前のない少年、脚のない少女

2011-03-27 23:45:51 | な行

衝撃的で印象深いタイトルは
主人公の少年がウェブ上に書いている
詩に登場する人物たちのことです。


「名前のない少年、脚のない少女」57点★★



ブラジルのなかでも
移民の歴史によって
ドイツ文化が残る田舎町。


都会から遠いその町に住む少年は
自分の詩を
ネットに投稿している。


そんな彼は町である青年と出会う。


彼は恋人の少女とともに
自殺を計ったものの

彼女だけが死に
自分は町に戻ってきたのだ。

少女は生前、ネット上に
自分が撮った映像を遺していた。


もうこの世にいない彼女の笑顔が
ネットのなかで
何百回も何千回も再生され
生き続けている……。


少年は次第にそのバーチャルな世界に
引き込まれていき――。



監督のエズミール・フィーリョは28歳、
原作者であり、少女の恋人役の
イズマエル・カネッペレは32歳。


若い作り手による
みずみずしく類のない
ティーンエイジャー映画でした。


特に
ネット世代の感性をとらえた点が新しく


自分の残像をネット上に置いたまま
死んでしまった少女、というのは
ドキンとする設定でした。

最近、よく思いますもん。


自分を含めて
書き手が死んだあとも
ブログやYouTubeの画像はネット上に残り続ける。

あと何十年かすると
ネット上はそうした人たちの
墓場のようになるのかな……と。



あと
おもしろかったのが監督が
出演者たちを探すのに

舞台となるドイツ村地域に住む子たちの
ブログやフォトログなどを
調べたという話。


地元にいることの
リアリティが欲しかったと同時に


彼らがどのように自分を見られたがっているか
また
書かれたブログで
どのような心情にいるか、などが
わかったんだそう。

これは新しいオーディション方法ですねえ。


ただ
若々しい作品だけに

青春は遠くなりにけり、な身には
伝わりにくい感覚もあり
少々うつらうつら……

試写室には
より青春から遠い年配のかたがたの
大いびきも響きわたってました。


若い時代に見たかったなあ。

★3/26からシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。

「名前のない少年、脚のない少女」公式サイト
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ピュ~ぴる

2011-03-25 23:44:12 | は行

いま世界でもっとも
必要とされている「寛容」と「愛」。


そのあるべき姿がここにあります。


映画「ピュ~ぴる」80点★★★★



心は女で体は男な
性同一性障害の
現代アーティスト“ピュ~ぴる”。


手作りのコスチュームをまとって
自分を変身させるパフォーマンスをし

海外の美術館に展示されたり
イタリア版「VOGUE」に紹介もされている。


そんな彼が悩んだり、恋をしたり
物理的にも「男」から「女」に変身していく様子を

長年の友人でもある監督が
8年にわたって追い続けた
珠玉のドキュメンタリーです。


これはですね~
まっすぐで、ほんといい映画なんで
見て欲しいですねえ。


まず単純に
主人公のピュ~ぴるがとてもいい子!(笑)


素直で一途で一生懸命で


心の奥からわき上がる衝動で
作品を作り続けている。


その様子を見ていると
「内なるものを吐き出さざるを得ない」
“業”も背負った真のアーティストなんだと
感心します。

実際、作品にも度肝抜かれますしね。


そして
おそらく彼の素直さの源であろう
彼の家族が素敵すぎる!



たぶん東京近県の
ごく普通のベッドタウンに暮らす家族は

10代のころから自作の奇抜な衣装で
電車に乗っていたという息子を


それぞれのやりかたで受け止め
受け入れている。


弟にゲイと告白されて
さらりと名言をつぶやくお兄ちゃん。

どんな道をゆこうとも
“自分の子”として
彼を愛してることをきちんと表す
お母さんとお父さん。


たとえ完全には理解されなくとも
自分を許容してくれる人に恵まれることが
どれだけ大切で幸せなことか。


いまこの生きにくい世の中で
もがいている誰もが
涙し、勇気づけられるのではと思います。


ずっとキワモノとして
メディアに取り上げられていたピュ~ぴるを
「アーティストとして評価すべきだ!」と
立ち上がった写真家など


彼を助ける人々の
温かさもよくて


それも紛れもなくピュ~ぴる自身の
キャラクターのおかげだと思う。



監督はいまも変身を続ける彼を
撮影し続けているそう。

続編も可能性ありとのことで
互いにがんばって欲しいです。


★3/26から渋谷ユーロスペースほか全国順次公開。

「ピュ~ぴる」公式サイト


おなじみ
週刊朝日「ツウの一見」(3/30発売、のはず)で
本作について
「ハッシュ!」「ぐるりのこと。」の
橋口亮輔監督にお話を伺いました。

ピュ~ぴるのヒリヒリするほどの痛みに
共感したと絶賛する監督。

ご自身の経験を
踏まえながらのメッセージ
こちらにもヒリヒリと伝わりました。

ぜひ、ご一読ください。


ちなみにインタビューには
橋口監督をリスペクトする松永監督も同席。

実はもともと俳優だった松永監督
「ハッシュ!」にも出演してるんです。

さあ、どこに出ているか――?

わかったかたは
番長にお知らせを!

賞品は…ありませんすみません(笑)
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