えーと、実際のところ
3Dの「タンタン」より
こっちのほうが、俄然おもしろいですよ。
「タンタンと私」72点★★★★
世界中に愛されるキャラクター、
あのタンタンの作者エルジェ(1907~1983)。
あまり素顔をさらさない世界的漫画家に、
なんと40年前、インタビューをした大学生がいた。
大学生はその後、そのインタビューを本にしたのだが
本作はそのときの録音テープをもとに
タンタンの大ファンだった
オステルガルド監督が
エルジェ氏の人生と内面に迫る
ドキュメンタリー映画に作り上げたもの。
あまり自身を語らなかったというエルジェ氏が、
どういう心境からか、
ある大学生の取材を了承し、
しかも、かなり突っ込んだ話をしているのが、まずすごい。
1907年にベルギーに生まれた氏が、
カトリックの厳しい家庭に育ち、
生涯をその規範に縛られていたことや
意外なタンタン誕生のきっかけなど
驚くことばかり。
なぜタンタンが少年記者なのか、とかも
初めて知りました。
さらに以前から
氏の未亡人が「やけに若いなあ」と気になっていたので、
その出会いの顛末などにも「へぇ~」と。
しかも、インタビューをした人物は映画のなかで
後にこのインタビューを本にしたとき、
エルジェ氏から校正に次ぐ校正が入り
「完成に3年もかかった」と話していて(汗)
それだけ氏にとって「しゃべりすぎた」ものだったんですねえ。
それだけに生録音で綴る本作は貴重なものだし、
インタビューを仕事にする者として
ものすごく“うらやましい”と感じた。
でも確かに思い返すと大学生のころのほうが、
意外に人や社会が寛容だった気もする。
「学校の課題で」とかで、あちこち入り込めたもんなー。
それを思うと、このインタビュアーは実にうまく
タイミングと運を利用したと思う。
そしてやっぱり短いインタビューのなかで
対象にここまで迫れたのは
幸運だけでなく彼に「何か」があったのでしょうね。
ただ、当時のインタビューはテープだったので
エルジェ氏本人の映像が多くはなく、
そこはやや残念ですが、
それでもこの内容は十分魅力的。
数少ない氏の映像を見ると、
これまた
タンタンそっくりの細身で
頭の形のよい風貌なのがすごくステキ!(笑)
★2/4(土)から渋谷アップリンク、銀座テアトルシネマほかで公開。ほか全国順次公開。
「タンタンと私」公式サイト