ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

オカンの嫁入り

2010-08-28 18:42:55 | あ行

ようやく来週公開ですね。

「オカンの嫁入り」70点★★★


京都の古い町屋に暮らす
月子(宮あおい)は
オカン(大竹しのぶ)と犬のハチの3人家族。

ある夜、酔っぱらったオカンが
金髪にリーゼントの若者・研二(桐谷健太)を連れてくる。

そしてオカンが言うことにゃ
「わたくし、ケンちゃんと
ケッコンすることにしました」

はああ?と、
本気にしない月子だが

このケンちゃん、見た目によらず
意外と礼儀正しかったりするようで――?


舞台挨拶で見た呉美保監督(33)は
ごくごくフツーの雰囲気が感じいい娘さんだった。
その感じそのままに
素直にスッと撮られた家族ドラマ。


前作「酒井家のしあわせ」と似た空気で

いいあんばいに笑いがあり
美味しそうなごはんとともに

あたりまえで、見落としがちな
家族の絆の大切さを見せてくれます。


その当たり前こそが、かけがえのない幸せであり
それを実感せよというのが
映画を貫くメッセージ。

ケンちゃんが言う
「いま当たり前にあることが
すぐその先でなくなるかもしれない」

という言葉が、意外なほど心にずーんと響いた。

これ最近、身近に死を経験した人間には
よくわかるんだよなー。


ただ、すごーく根源的なこと言っちゃうと
オカンは大竹しのぶさんじゃなくても
よかったんじゃないか、と思う。

すごく抑えた芝居だとは思うけど
どうしても彼女だけ
“気配”が違うように番長には見えました。


ま、それはともかく
ちゃぶ台に並ぶごはんもこの映画の主役。

しかも地味~な色のきんぴらとか
野菜の「たいたん」とか
ツヤツヤの炊きたてごはんとか

気張った感じでないのが
これまたいいあんばいでした。


★9/4から角川シネマ新宿ほか、全国で公開。

「オカンの嫁入り」公式サイト
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トイレット

2010-08-24 10:19:45 | た行

この映画、2回見て
だいぶ印象が変わりました。

「トイレット」70点★★★


「かもめ食堂」の荻上直子監督の新作です。


舞台はカナダ。

母を亡くした
プラモおたくの次男レイ、引きこもりの兄モーリー、
大学生の妹リサの三兄妹は

母が生前日本から連れてきた
ばーちゃん(もたいまさこ)と暮らすことになる。

英語がしゃべれないばーちゃんは
なぜかいつも
トイレから出るたびにためいきをつき
レイはそれが気になってしかたない……。


最初みたときは
「う~ん」と思ったんです。

オールカナダロケ
全編英語で
もたいまさこが一言もしゃべらない、という
シチュエーションの妙だけで

ほかはバラバラな家族や死、など
ありがちで目を引きやすい素材を集めただけに見えて

なんか残尿感が残った。

でも、2回見たら
意外と素直に見られたんですよ。

なんででしょうね。
単に期待が高すぎたのか?


コピーに
「ホントウの自分で、おやんなさい」とあるんだけど

ああ、受け取るものはそれでいいんだ、と。



自身はどっしり不動ながら
周囲を動かしていく
もたいさんの存在感が波及して

三兄妹がそれぞれホントウの自分を見つける。

その素直なメッセージで
この映画
十分かもなあという気になりました。


昨日、これまた
もたいさん主演の「マザーウォーター」(10/30公開)を見てて
つくづく思ったんですが

この「かもめ食堂」から続く
ゆるいシリーズは
わかっている人が、そこに流れる空気を買う、という
感じなんだと思います。


番長、正直「かもめ~」以降
「めがね」も「プール」(これは大森美香監督)も
初見では必ずダメなんですよ。

なーんか鼻白む感じで。

でも
それぜ~んぶ2回見てるんですよねえ(苦笑)。

え?素直になれって?
すいません……。


あとお知らせをば。

今日発売の「週刊朝日」9/3号に
拙者が構成いたしました
もたいまさこ×片桐はいり対談が掲載されてます。



「トイレット」話から
「かもめ食堂」秘話、そして
おひとりさま談義もチラリ。

ゆったりまったり、お楽しみください


★8/28から新宿ピカデリーほかで公開。

「トイレット」公式サイト

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小さな村の小さなダンサー

2010-08-23 10:51:41 | た行

あら、予想以上にスケールでかっ!

「小さな村の小さなダンサー」72点★★★


1972年、中国・山東省。

11歳の少年リー・チンシンは
毛沢東の文化政策によって
バレエ団にスカウトされる。

厳しい練習を積んだリーは
やがてダンサーの才能を開花させ
アメリカに留学することに。

そこで自由と愛を見つけたリーは
ある重大な決断をする……。


中国版「リトル・ダンサー」って宣伝文句から
小さな可愛らしい作品かと思ったら

意外にスケールでかかったです。

どちらかというと
バレエ版「ラスト・エンペラー」って感じ。
ちと大げさか。


実在のバレエダンサーの生涯を
奇をてらわない
オーソドックスな演出でしっかり描き

画面の色味といい
正統な感じといい
なんとなく80年代っぽい。


なにより
このドラマチックな話が実話で
しかもほんの最近のことだという事実に
けっこう驚きがありました。


主人公のお母さん役で
ジョアン・チェンが出てくるのも
ラスト・エンペラーを想起させた理由かも。


ほかにも
あの懐かしい人が出てくるのでびっくりしました。

いや~久しぶりだなあ
カイル・マクラクラン!


★8/28からBunkamura ル・シネマ、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開。

「小さな村の小さなダンサー」公式サイト
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BECK

2010-08-22 10:47:15 | は行

これはヤラレタ~

「BECK」77点★★★☆


平凡な高校生・コユキ(佐藤健)
ある日、天才的なギターテクを持つ
NY帰りの竜介(水嶋ヒロ)と出会う。

竜介は日本でバンドをやるべく
メンバーを探していた。

コユキは竜介から古いギターをもらい
親友のサク(中村蒼)と練習を始める。

やがて二人は
ベースの平(向井理)
ボーカルの千葉(桐谷健太)とともに
バンド「BECK」に参加することに。

竜介からギターの猛特訓を受けるコユキだが
彼には
秘められた才能があった……。


見終わって「うっわー、こうくるか!」と思いました。
バンドもので禁じ手でしょコレは!という。

しかしながら、それが意外に
ちろちろちろと、後を引くんだなぁ。


原作はハロルド作石氏の同名マンガ。
絵がちょっとダメだったんで未読でしたが
それもよかったのかも。


ストーリーは淡い恋あり
バンドメンバーのぶつかり合いありの
シンプルな青春音楽モノですが

主要なバンドメンバーをはじめ
登場キャラが立ってるのと

そこにロックフェスのシーンなど
高揚感アリアリの
でかい仕掛けがあるのが映画的。

映像全体にも
「マンガっぽい遊び」が随所にあり
いい意味でコラボに成功してると感じました。


しかし、こうしてみると
キャラ、マンガにかなり似てて笑える。



堤幸彦監督、
「20世紀少年」よりも
全然いいっすよ!(笑)


★9/4から全国で公開。

「BECK」公式サイト
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カラフル

2010-08-21 02:15:23 | か行

制作・サンライズったら
「イデオン」「ザブングル」でしょー!
・・・え?古い?


「カラフル」73点★★★


「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲」(2001)など
「(意外に)オトナも楽しめる」アニメ監督として
評価の高い原恵一監督が

森絵都のベストセラー小説を映画化したものです。


主人公は死んでしまった「ぼく」。
「ぼく」はなぜか
下界に戻って再挑戦するチャンスを与えられる。

「ぼく」が入りこんだのは
中3で自殺した小林真(まこと)の体。


真として学校に通い、その家族と暮らすうちに
「ぼく」は真がクラスメートから
「いないもの」とされていたことや
平凡に見える小林家のほころびに気づいていく。

やがて「ぼく」は
真の自殺の理由を知ることになり……。


いや~
日本のアニメーションのクオリティはやっぱりすごい!

とにかく絵がいいんですよねえ。


ありふれた住宅街や、家庭の食卓、
そんな日常が“絵”になることで
とても新鮮なものになる。

この楽しさは、格別ですよ。


ジブリ作品でいうと
「耳をすませば」の街の風景が
大好きな人は、まずいけるかもしれません。


特に筆者には
舞台となる等々力→二子玉周辺の風景が
実に懐かしくツボでした。


ごはんのシーンもどれも美味しそうで
「あ、今夜豚しゃぶ鍋にしよ」とか思っちゃった。
絵なんですけどねえ。


ただ、ストーリーが常に中3の視点と
脳みそのキャパシティのなかで描かれるので

例えば
真が母親に対する嫌悪感をいつまでもぬぐえずに

ネチネチと拒絶を続けるシーンなど
正直イライラする場面もあります。

「いつまでふくれてんだよ、青いなあ」って。


でも、これこそが
おそらく中学生のリアル心情でしょう。


思春期のモヤモヤって
そんなにカンタンに消えるもんじゃないし

「ある日突然、ボクは目が覚めた!」とか
実際にはあり得ないから。


本作はかつて中学生だった人には
こうした自己嫌悪と甘じょっぱい感覚を

現・中学生には
単純そうで実は到達しずらい
「ダルくてウゼー毎日と、10代を生き抜く奥義」を
教えてくれる作品かと思います。


中学生とその親世代に
ぜひ見て欲しいなあ。


★8/21から全国で公開。

「カラフル」公式サイト
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