ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

グレタ GRETA

2019-11-09 23:32:21 | か行

予想以上にイヤ〜な怖さが持続する・・・・・・!

 

「グレタ GRETA」70点★★★★

 

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NYの高級レストランで

ウェイトレスをするフランシス(クロエ・グレース・モレッツ)は

帰宅中の地下鉄で、誰かが置き忘れたバッグを見つける。

中には落とし主のIDカードも入っていた。

 

遺失物センターが閉まっていたため

しかたなくバッグを持ち帰ったフランシスは

親切心からIDカードを頼りに

持ち主であるグレタ(イザベル・ユペール)の自宅に

バッグを届けに行く。

 

出迎えたグレタはフランシスに感謝し、

お茶に誘う。  

 

母子ほど年の離れた二人は

どんどん親密になっていくのだが――?!

 

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イザベル・ユペール大好きだけど

正直あまり期待してなかったんです(すみません。笑)

 

でも、これが意外に、最後の最後までかなり怖かった。

 

地下鉄で拾ったバッグを

持ち主に届けたヒロイン(クロエ・グレース・モレッツ)が

思わぬ自体に巻き込まれる――というスリラー。

 

親切心が仇になる現代の病理が

なかなかリアルに描かれていて

 

ストーカー心理や執着の描写、

ホラー要素にサイコな心理要素が絡み、

ゾクッ、ゾゾゾ、うわぁ(いやだ~)・・・・・・の三段ステップで

ラストまでイヤ〜な感じが続くんです。

 

 

バッグひとつで善人な女性を釣る――ってアイデアがおもしろいし

若くて屈強そうなクロエを

華奢で年配のユペールが翻弄する構造も

実際にある「この手の人々」のずる賢さを強調していて、

うへぇ~~と思いました。

 

深みはそこそこですが、まず構築がうまいなあと。

それに

グレタの友人役のエリカがえらい!

 

ファンとしては

ユペール様の「すごみ」や「怖さ」を

あまりこういう方向に使ってほしくないのだけど(笑)

どうにも最近、怖キャラが多いよね・・・・・・。

 

怖っ――!の切っ先が一番鋭かったのは

やっぱりミヒャエル・ハネケ監督の「ハッピーエンド」(18年)

そして「エル ELLE」(17年)ですかねえ。

 

★11/8(金)から公開中。

「グレタ GRETA」公式サイト

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永遠の門 ゴッホの見た未来

2019-11-08 23:22:25 | あ行

すごい・・・・・・ウィレム・デフォーがゴッホにしか見えん!

あの自画像が動いてる!(笑)

 

「永遠の門 ゴッホの見た未来」71点★★★★

 

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1886年ごろのパリ。

画家ゴッホ(ウィレム・デフォー)は

「暗い!」「陰気だ!」とまるで評価されていなかった。

 

そんなとき、ゴッホは

画家ゴーギャン(オスカー・アイザック)に

「南へ行け!」と言われ、南仏アルルへやってくる。

 

厳冬の日々を抜け、春を迎えたその地で

ゴッホは、いまだ見たことのない

まばゆい太陽や緑の風景に触れ、

無心に創作をはじめる。

 

が、そんなゴッホは

「変わり者」として、村人たちのなかで孤立していく――。

 

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現代美術作家としても有名なジュリアン・シュナーベル監督が

あのゴッホを題材にした作品。

 

まずはゴッホ演じるウィレム・デフォーの

なりきりぶりにびっくり!

 

本当にゴッホにしか見えないーって

本人、知らないですが(笑)

あの自画像の、肌のカッサカサ感までがそっくりなんですよ。

すご!

 

しかしこの映画は別に

そっくりさんを目指してるわけではないんです。

 

ジュリアン・シュナーベル監督は本作で

自作「潜水服は蝶の夢を見る」と似たアプローチをとっている。

それは、ある意味「不自由な人」の生きる世界をどう写し取り、

それをどう共有させるか、ということ。

 

この映画では

孤独な画家の感じていた光、風、熱、空気、色――

ものすごく個性的な、五感に訴える絵作りがされている。

 

分厚いレンズ越しにみているような世界。

ゴッホの歩く様子とリンクして、動く目線。

 

グラグラするカメラワークは

三半規管弱いワシには、少々しんどくもありましたが(笑)

これがゴッホの見ていた、感じていた世界なのかも、と

確かに思わせる。

 

そう、この映画は観客が

ゴッホの見ていたであろう世界を、

まさに同じように体験するものなんです。

 

それを経て、彼の作品を見ると

また違った印象が生まれてくるってのがおもしろい。

それこそが、監督の思うところだったんだな、と感じました。

 

さらに自分がゴッホになることで、

「ゴッホ~最期の手紙」(17年)で描かれたように

村の厄介者になってゆき、孤立する彼を

社会が殺したのかもしれない――という視点も

「ありかも」とリアルに感じることができました。

 

おなじみ「AERA」(11/11号)いま観るシネマで

ウィレム・デフォーさんにインタビューさせていただいています。

怪演俳優、とも言われる彼が

どのように役に向き合うのか

ものすごく優しく、真摯に答えてくださって、感激しました。

 

話に熱中し、数センチまでに迫るような、深い瞳の色に

吸い込まれそうになった――(笑)

さすが名優!・・・・・・ちょっとした魔術でしたよ(笑)

 

「pen」さんにも映画評書かせていただいております。

 

映画と併せてお読みいただければ幸いです!

 

★11/8(金)から新宿ピカデリーほか全国順次公開。

「永遠の門 ゴッホの見た未来」公式サイト

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ワイン・コーリング

2019-11-04 16:11:02 | わ行

こちらは南仏で自然派ワインを造る醸造家たちのドキュメンタリー。

これまた、個性的なのだ!

 

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「ワイン・コーリング」70点★★★★

 

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「ジョージア、ワインが生まれるところ」(19年)とともに

「映画で旅する自然派ワイン」の特集上映で公開中の本作。

南仏ルーション地方で自然派ワインを造る生産者たちのドキュメンタリーです。

 

ジョージアワインから続けてみると、

まずロックミュージック&ゴリゴリにカットを刻んでくる

ハードなオープニングにビビる(笑)

 

同じ自然派ワイン括りでも

これほど味わいが異なるとは!

 

でも、進んでいくと、なるほど~と思う。

彼らはちょっとヒッピーなんだなあ

自然派、というポリシーのもとで

いわばコミューンを形成している人々なのだ。

 

彼らの造る自然派ワインは、

認証機関の規定に基づいて造られる「ビオワイン」ともまた違っていて

超我が道なやり方を貫いている。

 

農薬や化学肥料NOはもちろんのこと

添加物もナシ、ある人なんか機械も拒否し、馬で畑を耕したりもしていて

とにかく「自然のまま」がモットー。

 

注目はされているけれど、

まだまだ、かなりの少数派なんですね。

 

そんな彼らが、いかに闘い、相互互助によって成り立っているかが

この映画からよくわかります。

 

そして

「自然のまま」は当然ながら「放っとけばいい」とは違う。

 

ケミカルは使わないけど、そのぶん

めちゃくちゃ科学的に成分を分析したり、気象変化を読んだり

最先端のアプローチもあるんです。

 

そこのところも、実におもしろかったなあ。

 

研鑽を怠らず、ワインに全身全霊の

反骨者たちって感じ。

 

こちらのワインも希少ですが

試飲会でいただいたものは、どれも個性的で超おいしかった!

ぜひ機会あればお試しください~

映画に登場する生産者のワインがあるのはこちら。

オルヴォー

 

★11/1(金)から

「ワイン・コーリング」公式サイト

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ジョージア、ワインが生まれたところ

2019-11-04 15:28:28 | さ行

世界遺産であるワイン造りを守る人々のドキュメンタリー。

 

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「ジョージア、ワインが生まれたところ」72点★★★★

 

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ジョージア(グルジア)で

世界最古のワイン造りを守る人々を追ったドキュメンタリーです。

 

ワイン好き&こんな記事も書いてるワシとしては

「勉強したことが、全部映像になっていて助かる〜!」という感じ(笑)

ただ、決して「お勉強チック」ではない。

 

監督は

米ロサンジェルス生まれの女性で

案内役はパートナーでもあるトップソムリエ。

 

二人は長年、外食産業で働いてきたそうで

おそらく、大の「ごはん好き」なんでしょう(笑)

なのでジョージアの食、人々の生活もしっかり紹介され、

興味の対象が素直、かつ、ツボを得てるという(シャレ?笑)

なかなかのコンビなのでした。

 

で、

ジョージア最古のワイン造りとは

素焼きの巨大な壺(クヴェヴリ)に固有品種のブドウを入れて、

土に埋めて発酵と熟成させるもの。

 

この映画では

クヴェブリを粘土から作る様子(すごい!でかい!

焼いて、土に埋める様子も見られて嬉しい。

 

そして甕を埋めるとき、収穫のとき、

9ヶ月後に開けるとき、すべてに祈りがあるんですね。

 

ワイン造りが神聖で聖なる行為であるんだなあと。

そしてこの地では

ワインも食も、すべてが大地のエネルギーと陽の要素に満ちている。

観ていて、何もない気持ち良さがあります。

 

だけど、同時にジョージアの土地には

侵略のつらい歴史が染み込んでもいる。

 

「肥料は何を使ってるんですか?」と聞かれて

「我々の血と涙の歴史だ」と答える生産者の言葉。

これ是なり、でした。

 

そして

鑑賞後はぜひ、その個性的な味をぜひ味わってみてください!

映画に出てくる生産者のワインを扱っているお店もありますよ~

ノンナアンドシディ

 

★11/1(金)からシネスイッチ銀座、アップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開。

「ジョージア、ワインが生まれたところ」公式サイト

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少女は夜明けに夢をみる

2019-11-02 23:18:06 | さ行

これは

「存在のない子供たち」(19年)と対をなす作品だなあと。

 

 

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「少女は夜明けに夢をみる」72点★★★★

 

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イランの少女更生施設に収容された少女たちを写したドキュメンタリー。

撮影許可に7年をかけたそうで

かなり貴重な記録だと思う。

しかもテーマは重いのに

なんともやさしい光に満ちているのが、いい。

 

まず冒頭、雪景色のなかで無邪気にはしゃぐ少女たちが映し出される。

何も知らずに見ていると、本当に仲良し学生寮の風景のようで

ちょっと面食らいます。

 

そんななかで、何人かの少女たちが

自分について、犯した罪について、話し始める。

 

その告白は、やはり、重い。

 

17歳にして2歳の子を持つ少女、おじに性的虐待を受けてきた少女、父を殺した少女・・・・・・

ほとんどの少女が

近親者からの虐待やレイプを経験し、

劣悪な家庭環境のなか、盗みやドラッグで逮捕されていることがわかってくる。

 

彼女らの状況はつらく厳しいんですが

でも、映画はそういうトーンで描こうとしていない。

 

 

カメラに向かって話す少女たちは素直で、屈託なく、愛らしくもあって

そして

似た経験を持つものとして、収容施設のなかで互いをいたわりながら

支え合って日々を過ごしているんですね。 

 

そんな彼女たちの横顔を、メヘルダード監督、よく切り取れたなと思う。

16歳の娘がいるという監督にとって

相当につらい取材だったと想像できるから。

 

 

それに

「育てられないのに、なぜ産んだのか」と親を語る少女の言葉が

まさに「存在のない子供たち」の少年ゼインと同じで、びっくりした。

そういえば「存在のない~」のナディーン・ラバキー監督も

やはり刑務所などで、子どもたちへの取材を重ねた、と言っていた。

そして、監督はこうも言っていたっけ。

「彼らはみな、話したがっていた。自分たちの状況を知ってもらいたがっていた」と。

 

彼女たちも、そうだったのかもしれない。

 

 

虐待や貧困という環境が、悲劇や負を連鎖させる状況は

どこの世界でも同じ。

彼女たちの状況は、我々にも地続きだと

つくづく思いました。

 

実際、この映画のあと、来年1月に公開される

日本の刑務所に初めてカメラを入れたというドキュメンタリー

「プリズン・サークル」(坂上香監督)を観て、そのリンクに驚いたんです。

罪を犯した青年たちが語る、子ども時代や家庭環境に

通じるものがあるんですよね・・・・・・。

 

★11/2(土)から岩波ホールほか全国順次公開。

「少女は夜明けに夢をみる」公式サイト

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