ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

日本の悲劇

2013-08-30 20:53:55 | な行

すべて身近にある悲劇だからこそ、重く、染みる。


「日本の悲劇」69点★★★☆


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2011年の晩秋。

東京にある木造平屋の家に
不二男(仲代達矢)が
息子の義男(北村一輝)に付き添われて帰ってくる。

不二男は最近妻を亡くし、
肺がんをわずらい、
しかし手術を拒んで、病院を勝手に退院してきたのだ。

義男の説得に耳を貸さず、自室にこもった不二男は
家族との過去を次々と思い出していく――。

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「春との旅」小林政広監督×仲代達矢コンビの第2弾。


全編ほぼモノクロで、
舞台は古い木造家屋の室内のみ。

ワンシーンずっと芝居が続く、舞台劇のような長回しを基本に
ほぼ仲代氏と息子役・北村一輝の二人芝居という、
かなり実験的な映画です。

ワシには「春との旅」より
心に入ってきました。


描かれるのはどこにでもある家庭の、どこにでもありそうな悲劇。

40代の息子はリストラされ、うつ病を患い、妻子とも別れ
父の年金で生活している。

その父親は
妻に先立たれ、いま自分も病におかされ
そこに震災の不幸も重なってくる。

不況、解雇、貧困、病気、介護、孤独、死、そして震災――
すべてが日本社会が抱える不幸であり、悲劇であり、
他人ごとではない。

自室にこもって死を待つ“即身仏”のごとき父親は、
暗い部屋のなかで、様々な家族の思い出を振り返るんですが、

最後に、もっとも幸せだったであろうときの記憶が
カラーで描かれるのが切ない。

動きが少なく、終始暗い画面ゆえ
カクッと眠気に襲われる瞬間はあったけど
終わって、充実感が残りました。

特に「遠くで鳴る電話をなかなか取れない」という
シーンが印象的。

自分の死の間際って、こんな感じな気がしますわ。マジで。


★8/31からユーロスペース、新宿武蔵野館で公開。ほか全国順次公開。

「日本の悲劇」公式サイト
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夏の終り

2013-08-29 23:38:35 | な行

想像してたのと、違ったんだなア。


「夏の終り」58点★★★


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昭和30年代。

妻子ある作家・慎吾(小林薫)と
8年、一緒に暮らしている知子(満島ひかり)。

仕事を持ち、自立を自負している知子だが
週の半分は妻子のもとに帰る慎吾との生活に、
寂しさを感じてもいた。

そんなとき、知子の前に
かつての恋人である年下の涼太(綾野剛)が現れて――。

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瀬戸内寂聴氏の原作を
「海炭市叙景」の熊切和嘉監督が映画化。

満島ひかりが官能バリバリの芝居を見せてくれるのか――?!と
グイっとがぶり寄りになって
かなり期待したんですが(すいませんね、スケベで。笑)

意外や意外。

そんなシーンはほとんどなく(ガーン
間の悪いフェードアウトがやたら多く、
人物描写も浅くてがっくり。

たとえば
本妻から知子に電話がかかってくるシーンがあって、

声だけで「本妻」を表わす役者と拮抗する
一等の見せ場だと思うんですが

それを、あれで切り上げちゃダメでしょ!

全体に「二人の男の間で揺れる」というよりも
どう「自分で立つか」を模索する女を描いていて、

そのことはとてもいいんですが、
冒頭からのどこか“気無し”な感じがずっと続いてしまい
残念だった。

陰影のある画面は美しく、満島ひかりもいいと思う。
だから
彼女なら、もっともっとできるんじゃないかなアと思ったんですけどね。
もっともっと
女の業を絞り出してほしかったなー。

次回に期待!


★8/31(土)から全国で公開。

「夏の終り」公式サイト
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ジンジャーの朝 さよなら、わたしが愛した世界

2013-08-27 23:19:05 | さ行

そこらの「思春期ムービー」とは
ちょい違うんだなア。


「ジンジャーの朝 さよなら、わたしが愛した世界」73点★★★★


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1960年代、ロンドン。

ティーンエイジャーのジンジャー(エル・ファニング)
ローザ(アリス・イングラート)は
母親のお腹にいたときからの親友。

いつも一緒に
宗教や政治、ファッションについて語り合う日々だが、

冷戦下での核の脅威を本気で心配するジンジャーと
恋愛体質なローザの間には
次第に溝ができていく。

そして、ジンジャーの思いもしなかった事態が起り――-?!


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「タンゴ・レッスン」(97年)の
サリー・ポッター監督新作です。


愛のベタベタではなく、少女の自立と成長の物語で
キャリー・マリガンの出世作「17歳の肖像」に少し近い印象がある。

いきなり原爆のキノコ雲から始まるのも衝撃で、
しかもほんの数カットのうちに、作者のセンスを感じさせ、

若さのきらめきや、
触れたら消えてしまいそうな“淡い感情”やはかなさを表現しつつ

少ない登場人物の描写が、大変きめ細かいんですわ。

愛に生きる“奔放タイプ”の親友に
なんとかついてこうとする主人公ジンジャー。

詩人を目指し、活動家を目指し、ボーヴォワールに憧れ、
でも夜はクマちゃんと寝る(笑)
このアンバランスさを、
エル・ファニングを素材に
さりげなく、リアルに描き出してます。


ジンジャーの母親は専業主夫で
夫に去られた親友の前では無意識に「勝ち」を意識しているけど、
本音では、自己実現が途中である不満を持っている、とか。

ジンジャーの父親は
思想家で“自由な存在”として描かれ

彼女は自分で、そんな父親の影響を大きく受けていると思っているのだけれど、
そこここで「母親」の血を感じさせるシーンがある、とかね。

父親の前で泣くジンジャーが、
母親とゾッとするほど似てたりとかね。怖いしね(苦笑)。

そういうところが、まあ細かくうまいんですわ。


少女の焦りと、息づかいを感じる詩情の映像に、
単なる「思春期ムービー」以上の共感と
社会性を持たせることに成功した
なかなかの作品ですハイ。

でも副題は無粋な気がする……。
シンプルに「ジンジャーの朝」でいいじゃんね?

★8/31(土)からシアターイメージフォーラムで公開。ほか全国順次公開。

「ジンジャーの朝 さよなら、わたしが愛した世界」公式サイト
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オン・ザ・ロード

2013-08-26 13:02:00 | あ行

『路上』読んだなア。


「オン・ザ・ロード」69点★★★☆


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1947年のニューヨーク。

若き作家のサル(サム・ライリー)は
タイプライターに向かうが、何も書けない。

そんなとき、サルは
ディーン(ギャレット・ヘドランド)と知り合う。

16歳の恋人メリールウ(クリステン・スチュワート)と結婚し、
車泥棒の常習犯という彼は
破天荒だが、ネタ満載の男。

サルはディーンに導かれるように
部屋を飛び出し、路上へと旅に出る――。

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ジャック・ケルアックの『路上』を
フランシス・F・コッポラ製作総指揮、
「モーターサイクル・ダイアリーズ」のウォルター・サレス監督が映画化したものです。

気持ちいいロードムービーだけど、
これは長いわ(笑)。

旅がなかなか終わらないんだよ~(笑)


21歳の若き作家(サル=ケルアック自身ね)は、机に座っても何も書けず、
ネタ満載の友人とつるみ、路上へと旅に出る。

ただひたすらに「移動」することで、もて余す若さを消費し
そこでの出会いや経験がすべての血肉となる……

サレス監督は
ホントにロードムービーの世界感が好きなんだなあと

そして彼のように
この世界に魅せられてハマる人は多いんだろうなと感じます。

ロケーションは素晴らしく、音楽もいい。


ケルアック(=サル)役のサム・ライリーはちょっとディカプリオ似だし、
クリステン・スチュワートも気っぷのいい脱ぎっぷりだし(偉い!)

ヴィゴ・モーテンセンは相変わらずのカメレオンぶりで。
(最初、全然気づかなかった!)

でもね、やっぱり
旅に出る→戻ってくる→原稿が書けず、机の前で唸る→また旅に出る→戻ってくる……と
延々ローテーションなので

139分は、ちょっと長いわな(笑)。

★8/30(金)からTOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開。

「オン・ザ・ロード」公式サイト
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マン・オブ・スティール

2013-08-24 19:22:00 | ま行

え?え?次にこの人と戦うのは
ベン・アフレックさんになるんですって?


「マン・オブ・スティール」3D版58点★★★


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地球から遠く離れた惑星クリプトンで
一人の男の子が生まれた。

父親のジョー=エル(ラッセル・クロウ)は
彼をカプセルに乗せ、宇宙へと送り出す。

地球にたどり着いた赤ん坊は
ジョナサン(ケビン・コスナー)に発見され
クラークと名付けられ、育てられる。

しかし、クラークは人間とは違う
超人的な力を持っていた……。

そのことを隠し、成長した
クラーク(ヘンリー・カビル)だったが――?!

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「300<スリーハンドレッド>」のザック・スナイダー監督が
みんなが知ってるあの“スーパーマン”
誕生と、成り立ちを初めて描く
アクション・エンターテインメントです。


見どころはとにかく
予告映像でも「どんだけ速いんだ!」と度肝を抜かれる
スーパーマンの動き。

マジで恐ろしいほどの超高速っぷりで
目で追いきれません(苦笑)。

でも、それが「最先端!」という感じで
見応えはあります。

しかし、
内容はというと……うーむ、といった感じ。

ハッキリ言って、子どもっぽいんですよね
話も、演出も。

冒頭、ヒーロー誕生が出産シーンから始まるってだけで、
「うわ、ベタベタやん……」と、かなりガクッ(笑)

展開のつなぎも都合よすぎるし、
(死んだはずの人間が、そこここでヒントをくれたり、
助けてくれたり……まあ別にいいけどさあ。苦笑)

惑星が滅亡するっていうのに
悪者をワープさせておいたら、彼らだけ生き残っちゃうじゃん?とか
もうツッコミ以前の、穴だらけ具合にがっくり(苦笑)

でも
地球での父親役ケビン・コスナーはとてもいい。
この扱いはもったいない。
もっと出してほしかったです。

それにスーパーマン役のヘンリー・カビルは
真摯な姿勢でがんばる好ましい青年だし
映像はすごいし、続編はたぶん、観ると思う。

この続きは
「スーパーマンVSバットマン」になって
バットマンをベン・アフレックが演じるらしいすよ。
(ああ、やっぱりジョゼフ・ゴードン=レヴィットじゃなかったのね……残念すぎる…笑)


★8/30(金)から全国で公開。

「マン・オブ・スティール」公式サイト
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