ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

最終目的地

2012-10-01 20:43:09 | さ行

ジェームズ・アイヴォリー監督、久々に会心の作!


「最終目的地」77点★★★★

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コロラド大の若き教員オマー(オマー・メトワリー)は
ある作家の伝記を書こうとする。

しかし、遺族に協力願いの手紙を出したところ
「お断りします」の返事。


押しの強いオマーの恋人は、
「遺族に直接お願いに行け」と、彼を南米ウルグアイに送り出す。

果たして、作家の屋敷で待っていたのは
作家の妻(ローラ・リニー)
作家の愛人(シャルロット・ゲンズブール)とその幼い娘

作家の兄(アンソニー・ホプキンス)
東洋人の青年(真田広之)の奇妙な暮らしだった――。

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試写状やチラシの印象から想像してたのは、
もっと時代がかった重い話。
いやいや、まったくいい感じに裏切られました。

てかタイトルとともに、
「イメージ戦略間違ってるで賞」だよなア(笑)

久々に「眺めのよい部屋」時代を思わせる
よい作品でした。


南米独特の熱っぽい土地のなか、
作家の遺した広大な敷地で
4人の男女は過去に縛られ、土地に縛られ、
いわば自ら「かごの鳥」になっている。

しかし
一見フクザツに思える4人の関係だけど、

当人たちはそう気にもせず、
決して悲壮でもなく

そこでの生活には
どこかけだるいあきらめや、甘やかさがある。

まるで斜陽貴族のような。


と、そこに誠実でハンサムな
部外者の青年がやってきて、変化が起こる――という話なわけですが


なんといっても
登場人物の個性が実にうまく描かれ、
そのアンサンブルが素晴らしい。

人間の綾を巧みに織ってる、という感じ。

シャルロット・ゲンズブールの
折れそうに頼りなげな感じもいいけど、
いかにも“斜陽”なローラ・リニーがね、グッとくるんですよ。

A・ホプキンスの存在感はもとより
真田広之氏は佇まいも英語もしっくりくるしねえ。


それに意外に多くのカップルが
自然に倣っている“鉄板法則”
「人に頼られる人」「頼る人」の描きかたが絶妙なんです。


誠実だけど気弱な主人公と、
気の強いカノジョ、

そのカノジョをローラ・リニーがバッサリ斬る
セリフには思わず拍手が出ましたねえ。

ぜひお試しあれ~。


★10/6(土)からシネマート新宿ほか全国順次公開。

「最終目的地」公式サイト
コメント
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