ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

世界最古の洞窟壁画 3D 忘れられた夢の記憶

2012-02-29 23:09:45 | さ行

この作品も「Pina/ピナ・バウシュ」同様、
あ、3Dってこんなふうに使えるんじゃん!という発見の映画でした。

「世界最古の洞窟壁画 3D 忘れられた夢の記憶」70点★★★★


1994年に発見された南仏、ショーヴェ洞窟の壁画。
その内部を3Dカメラで撮影し、研究者の話を交えた
ドキュメンタリーです。


ここの壁画、ホントにめちゃくちゃ絵がうまくて
しかも驚くほどモダン。

さらに保存状態あまりにいいので
発見のニュースのとき、
「イタズラじゃねーか?」と思った記憶がある。

しかし科学的調査により
3万年前の絵画であると証明されたのだ!ひぇー。

そんな洞窟に3Dカメラが潜入、
っていうんだから、これは見逃せません。

しかも監督は
「バッド・ルーテナント」(09年)でも「!」をかましてくださった
名匠ヴェルナー・ヘルツォーク。


実際、洞窟内部は厳しい撮影規制のため
明かりがほとんど使えず、かなり撮影条件としては
厳しい感じもする。

が、そのなかでも
「3Dならでは!」の意味を持って
たち現れてくる絵画に圧倒されます。

というのも、ここの壁画が
平らな壁ではなく凹凸のある岩肌に描かれていて
そこに意味があるからなのだ!

だからこの映画には、3Dの意味がある。

学者たちによる解説シーンには
申し訳なくも
若干うつらうつらしましたが(苦笑)

それでも3万年前の人々の
思いに触れた感触が、確かに残りました。

ただ
邦題が長すぎるのはいただけませんな。
しつこいよね。

★3/3(土)から3週間限定で全国公開

「世界最古の洞窟壁画 3D 忘れられた夢の記憶」公式サイト
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プリピャチ

2012-02-28 22:46:37 | は行

これは、我々の物語。

「プリピャチ」69点★★★☆


1986年に起きたチェルノブイリ原発事故。

原発から30キロ圏内は立ち入り禁止区域となり、
許可なく立ち入ることができない。

本作は事故から12年後、
原発から4キロのプリピャチ村に自主的に戻って暮らす老夫婦や
稼働中の原発で働く人々のインタビューをまとめたドキュメンタリーです。

まさに福島の状況、そして未来を描いているような映画で
注目度も高いと思います。


ある日突然、故郷を奪われた
プリピャチの人々の心境、原発事故への思い、放射能への対応認識は、
驚くほど今の我々の状況と酷似している。

彼らは一様に
美しかった故郷の変わり様を嘆き、
不安を感じつつも

しかし12年がたち、
目に見えない危険は
どんどん日常のなかに埋没していっている。


自分たちの意志でプリピャチに戻った老夫婦は
湖で小魚を捕り、
禁止されているキノコも「何トンも食べるわけじゃない」と食べる。


だって、誰も助けてくれないから、
目の前の生活が、優先されるんです。


いっぽう、政府の事情で移住が叶わず、
子どもを含む80世帯ほどが暮らしている村もある。


監督は「いのちの食べかた」のニコラウス・ゲイハルター氏で
ほぼ同じ画角で、常に一定の距離感を保って対象に向かい合っている。

そして
閑散とし、色褪せた世界を映すのに
モノクロームの映像がピッタリ合っている。

何の装飾も、てらいもないシンプルな作りも
かえって訴える力になっている。


なにより戦慄なのは
この映画が1999年製作ということ。

人間は、何も学びやしない。
平手打ちを食らったような感じです。

せっかくの先人の啓示から
学ぶべきではありませんか。ねえ。

★3/3(土)から渋谷アップリンクほか全国順次公開。

「プリピャチ」公式サイト
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戦火の馬

2012-02-27 01:26:07 | さ行

この映画がいいのは
“ザ・映画!”なところ。

映画そのもので“映画愛”を表現してるんだよね。


「戦火の馬」77点★★★★


スティーブン・スピルバーグ監督作品です。


第一次大戦前夜のイギリス。

ある村の牧場で、一頭の仔馬が生まれた。

脚先が白く、額に白いひし形の斑がある美しい馬だ。

農家の少年アルバート(ジェレミー・アーヴィン)は
その馬にジョーイと名付け、深い愛情を注ぐ。

が、戦争が始まり、
ジョーイはアルバートと引き離され、戦地に赴くことになる。

それはジョーイの長い旅の始まりだった――。


いやー、“ドを超えた”動物好きとして
正直これほど気のすすまない映画もなかった。

しかし、
想像以上に心動かされました。


可哀想ばかりでなく(やっぱり辛い場面もあるけど)、
不必要な残虐さはなく、

混乱の時代に翻弄されながら、生き抜く馬の強さが圧倒的で。


彼(馬)は、その時々でさまざまな人に出会い、
手綱が繋がれていくんですね。

不思議な縁を積み重ね、
大きな物語の波へとつなぐ構成もよかったし、

なにより
馬という神の生き物の気高さ気品、
美しさを存分に堪能しました。

こうして
一頭の馬の物語を描くことで、
スクリーンや歴史に出てはこなくとも、
戦火に命を散らした多くの馬たちを忍んで涙が出る。

そして
ジョン・ウィリアムズの音楽が素晴らしい!

夕日、丘、馬……と
まあ美しい映像と相乗し、
「風とともに去りぬ」レベルの高揚なので、
ぜひ大画面で見るべし!

★3/2(金)から全国で公開。

「戦火の馬」公式サイト
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ヒューゴの不思議な発明

2012-02-26 01:29:57 | は行

いよいよアカデミー賞ですねえ。

作品賞、監督賞はこれと
「アーティスト」(4/7公開)の勝負でしょうね。


「ヒューゴの不思議な発明」69点★★★☆

マーティン・スコセッシ監督が
初3Dに挑んだ作品です。


1930年代のパリ。

駅の壁の中に隠れ住み、
時計を修理して暮らす少年ヒューゴ(エイサ・バターフィールド)。

彼はひとりぼっちで
父親(ジュード・ロウ)の形見である
オートマタ=機械人形を修理しようとしていた。

あるときヒューゴは
少女イザベラ(クロエ・グレース・モレッツ)に出会い、
彼女の助けを借りて、
ついに人形を動かすのだが――?!


3Dは実に美しく、
濃紺や金の深みある色合いの映像を堪能しました。

プレス資料の絵のほうが
この映画を表してる。


ただ、
なぜ監督がこの映画を3Dで描かねばならなかったのか、
理由があるのですが、
それがわかるまでに、ちょっと時間を要するんですよね。


つまり、いまから110年ほど前。
映画を初めて目にした人々は
走ってくる列車の映像を見て
「ギャーッ」と逃げ出した。

その驚きをいま再現するには、
映画の新しい魔法=3Dが一番ということなのですね。

その意図はよくわかるし
「月世界旅行」(1902年)は学生時代、感動して見たもんです。

しかし、ワシは勝手に
少年の冒険にもっと焦点があるのかと思ってたんですよ。

父親の形見であるオートマタを通じて、
なんかもっと
父親の死には陰謀が絡んでいた……?!とか、
もっと膨らむのかと思ってワクワクしたんですが

全然別の方向に話が行き、かなり肩すかし(苦笑)。

結局、この映画は
映画黄金期を回顧しつつ
“映画愛”を描いているので

そういうものとして見ないといけません。

少年役の子が
あまり好みでなかったのも
もひとつ熱中要素に欠けたのかもしれない。

クロエは、さすがに勘所いいけどね。

★3/1(木)から全国で公開。

「ヒューゴの不思議な発明」公式サイト
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恋人たちのパレード

2012-02-25 01:44:46 | か行

ここでもロバート・パティンソンが
ロマンチックなラブを披露。

「トワイライト」と同時期公開とは
タイミングが悪いのか、運命のイタズラなのかー(笑)

「恋人たちのパレード」58点★★★

1930年代のサーカスが舞台。

大学で獣医学を学んでいたジェイコブ(ロバート・パティンソン)は
ある出来事から大学を辞め、路頭に迷ってしまう。

行く当てもなく
やぶれかぶれで、やってきた列車に飛び乗るジェイコブ。

それはサーカス一団の列車だった。

そこでジェイコブは
一座のオーナーの妻(リーズ・ウィザースプーン)に
一目惚れしてしまうのだが……。


老人の回想から始まり
「列車に飛び乗って人生が開ける」という展開、

そしてどこかノスタルジックな映像、と
終始おとぎ話譚な雰囲気。


ロバート・パティンソンも
リーズ・ウィザースプーンの切ない恋も悪くないし、

なにより大所帯のサーカスというモチーフは
魅力的なんですが


動物好きの番長に盲点だったのは、
サーカスって動物がいっぱい出てくるんだよ!ってところ。

暴君なサーカスのボスが
動物に非人道的な行為をするシーンは
かなりつらかった。


まあそれは抜きとしても
描きたいことへの情熱は感じるんですが、

どうも筆が流れがちで
場面転換が不自然だったり、作りにちょっと不安定さがありました。

しかし
ロバート・パティンソンって
誰相手でも、ラブな雰囲気キメるよなあ……。


★2/25(土)からシネマート新宿で公開。

「恋人たちのパレード」公式サイト
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