ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

トレヴィの泉で二度目の恋を

2015-01-30 23:37:08 | た行

老年の恋かあ、だいたいこんなものかしら、というイメージを
けっこう上回るいい映画でした。


「トレヴィの泉で二度目の恋を」71点★★★★


****************************

老年を迎えつつある
エルサ(シャーリー・マクレーン)は
一人暮しを楽しむ、明るく陽気な女性。

そんな彼女のアパートに
80代のフレッド(クリストファー・プラマー)が引っ越してくる。

長年連れ添った妻を亡くしたフレッドは
家に引きこもったまま。

しかし、エルサはあることから
フレッドと関わるようになり――?

****************************


ワシ、シャーリー・マクレーンって
ちょっと小意地悪い感じというか
あまり好みじゃなかったんですよ(すいません)。

「あの日の指輪を待つきみへ」(07年)の
イメージが強いせいだと思うんですが。


でも、この役柄は
虚言癖ある、クセのある役ではあるけれど
とにかく「アハハハハ」と明るく弾けるような笑い声が
とてもよかった。

とかく沈みがち孤立しがちな老年を、
こんなふうに笑えばいいんじゃん? と、
パッと目を覚ましてくれるような気がしました。


彼女は都合の悪いことをごまかす
ご愛敬な嘘もつくんですが

「若いころはアニタ・エクバーグより美人だった」
「ピカソの絵のモデルになったこともあるの」

とか、もう嘘なのか、妄想なのか、わからないところもある。

でもそうやってイキイキとして

「我々は人生に価値を見出せない」
「俺たちは出がらしだ」と話す男たちを
チャーミングにリードする彼女を見ていると
なんだか老後が明るく感じました。

彼女の“嘘”が、最後にいきてくるのもいい。

最初ヨボヨボで焦った
クリストファー・プラマーも
ちゃんとやっぱりカッコイイですしね。

余談。

映画の新聞広告のために
「シャーリー・マクレーンの大ファン」という
ジャズシンガーの綾戸智恵さんにお話を伺ったんです。
(もう掲載されたのかな?わかんないんですが)

シャーリー・マクレーンがインタビューで
「もう最近は鏡なんてみないし、自分がどう見えるかなんて
気にしない」と話していて

でもワシは最近、毎日鏡で白髪を見つけては
「ああトシとった・・・」ってガックリしますって
綾戸さんに話したら

「ああ、それはアンタの中身が伴ってないせいやな」と。
ズサッ!(大笑)。斬られました。

そのとおりです!
目が覚めました。


綾戸さん、ありがとうございます。


★1/31(土)からBunkamura ル・シネマほか全国順次公開。

「トレヴィの泉で二度目の恋を」公式サイト
コメント

バベルの学校

2015-01-29 19:16:27 | は行

フランスを舞台に描かれる
“共生”の重要性。

いま観るべき映画、でしょう。


*************************


「バベルの学校」74点★★★★


*************************


舞台はパリの中学校。

リビア、ウクライナ、中国、スリランカ、ギニア……
20の違う国籍の子どもたちが集まったクラスを追うドキュメンタリー。

これは、見応えありました。


映画は各国の「こんにちは」を教え合うシーンから始まるんですが
ここですでに言語の違いが、宗教・民族対立へと発展していく
まさに「バベル」な状況が巻き起こり

相当、ハラハラします。


育った環境や事情から心を閉ざし、
取りつく島もない子もいるんですが

しかし
粘り強い女性教師の引っ張りもあって
子どもたちはだんだん「違い」と「共生」を学んでいく。

そして
クラスが段々ひとつになっていくんですねえ。

学期の終わるラストは感涙ものでした。


監督は「やさしい嘘」「パパの木」と
感情表現の巧みなジュリー・ベルトゥチェリ。

そうそう、彼女はもともとドキュメンタリーの監督なんだった。
うまいですね、さすが。


それにしても。

授業のなかでクラスの子どもたちの「特技」が
ちょこちょこ披露されるんですが

チェロを弾く子も、歌手を目指している子も、マンガを描く子も
さらっと披露するその特技のレベルが、半端ないんだ!

国を追われたり、苛酷な状況にいる彼らは
総じて早く大人になるようで

生きることにも、とても真剣に見える。

心に刺さりました。


★1/31(土)から新宿武蔵野館、渋谷アップリンクほかで公開。

「バベルの学校」公式サイト
コメント

ドラフト・デイ

2015-01-28 22:44:07 | た行

アメリカンフットボールのドラフト話。
ただでさえ、ややこしいのに……(苦笑)


「ドラフト・デイ」48点★★★


****************************

2014年。

全米が注目する
アメリカンフットボールのプロリーグNFLの
ドラフト会議の一日が始まった。

NFLに所属するチーム、クリーブランド・ブラウンズの
GM(ゼネラル・マネージャー)サニー(ケヴィン・コスナー)は悩んでいた。

オーナーから
「大物ルーキー、ボー・キャラハンを手に入れろ!」と言われた彼は
キャラハンを獲得する賭けに出るのだが――?!

****************************


アメリカンフットボール界のドラフト話。

逆転劇も、その先も
じっくり見るとおもしろいんですが

どうも馴染みの薄い世界だけに
やっぱりややこしくて
ちょっとでも気を抜くと「?」となってしまう。

最初に説明とかもあるんですが
実際、肝心なところで何が起きたのかは
2度見てようやく理解できました。


それなのにですねえ
主役のケヴィン・コスナー、注意散漫すぎ!

一年に一度の大事なドラフトの日に
彼女の妊娠騒動に、母親との確執、そのうえ元妻まで登場……って。
ドラフトに集中せんかい!(笑)

ドラマを膨らませるというより
それらの装飾要素が邪魔になってる。

しかも
結局、選手の人柄が大事なら
指名ギリギリじゃなく、もっと事前リサーチしとこうよ!とか
なんだかツッコミどころ満載ですが

逆転劇の意味がわかると
たしかに
痛快エンターテイメントではある……かも。

土俵に乗るまで、ちょっと苦労しますんで
事前に理解しといたほうがいい……かも。


★1/30(金)から全国で公開。

「ドラフト・デイ」公式サイト
コメント

さらば、愛の言葉よ

2015-01-26 22:53:31 | さ行

困惑したけど、困惑していいんだって!(笑)


「さらば、愛の言葉よ」3D 60点★★★


***************************

(ゴダールの解説より)

テーマはシンプルだ。

人妻と独身男が出逢う。

ふたりは愛し合い口論し、叩き合う。

一匹の犬が町と田舎を彷徨う――。

***************************


84歳になるジャン=リュック・ゴダール監督が
初めて3Dで作った長編。

ゴダール作品は久々な感じでしたが
これが想像より難問だった(汗)。


映画は章立てされ、
男女と、犬が出てくる。

章ごとに、同じシーンを別の角度から見せられる。

散文的なイメージの羅列だけではなく、
意図があるのはわかるのですが

深い考察をもって解明に取り組もうと努力したけど……負けました。
わからない!
69分なのに……。


現代を憂え、しっかり考えよ、との
巨匠の声は聞こえる気がするんですが

左と右からバラバラな音が聞こえ、
3D画像が分離したり、
映像は記憶に刻まれるんですが
中身を考えようとすると、難解すぎる。


でもですね、わかんなくていいみたいです。

おなじみ『週刊朝日』の「ツウの一見」で
『ゴダール的方法』の著者である
横浜国立大学の平倉圭さんにお話を聞いたところ
ストーリーはあってないようなものだと。

この作品はとにかく
ゴダール氏が自作の3Dカメラで撮った映像が見どころと
教えていただきました(よかった~。笑)

まあ私にわかりやすーく、お話してくださったのだと思うのですが。
「ユリイカ」のゴダール特集を熟読したいところなのですが

あまり難しく考えず、
「見てよし!」とお墨付きをいただき、ホッとしました。


あとね
ワシ、実は大学時代に
カメラを2台ならべて3D作品を作ったことがある!んですよ。思い出しました。

単純に立体に見えて「おー!」を楽しみたかっただけ。
しかも、のぞき穴からでないと、うまく立体にならなかった。
最後まで「見えない」人もいたんですけどね。

すいません、映画レビューとは
全然関係なくなってしまいました(笑)


★1/31(土)からシネスイッチ銀座ほか全国で公開。

「さらば、愛の言葉よ」公式サイト
コメント

二重生活

2015-01-25 20:56:42 | な行

中国の“問題児”監督のひとり。


「二重生活」59点★★★


********************************

現代の中国。

ルー・ジエ(ハオ・レイ)は可愛い娘と
稼ぎよく優しい夫(チン・ハオ)を持つ幸せな主婦。

彼女は娘の幼稚園で、同じクラスの男の子の母親
サン・チー(チー・シー)に
「ママ友にならない?」と声をかけられる。

気軽に応じたルー・ジエだったが
実はその裏には事情があり――?!

********************************


「天安門、恋人たち」で天安門事件を扱ったり、
同性愛を扱った「スプリング・フィーバー」など
中国のタブーに触れ続けるロウ・イエ監督作品。

中国当局からは活動禁止処分を受けるも

カンヌ国際映画祭をはじめ
海外で高い評価を受け、創作を続けている監督です。

で、本作は
本妻と愛人家庭を行き来する夫と、
それに気づいた妻の、つまりは泥沼話。


まず
「スプリング・フィーバー」でもそうだったけど
“詩人”と言われるこの監督は登場人物の心を表すような
“揺れる”カメラワークが独特で
ハマる方にはハマるらしいんですが

ワシは
“詩人”というより、これに酔うんですわ・・・・・・(苦笑)。


中身もミステリーかと思いきや
そういう感じではなかった。

だめんずの不倫から始まる悲劇なんて
死ぬほど転がってる話だし

男女のドロドロ、いわゆる“ソープオペラ”には
記憶に新しい「ゴーン・ガール」があるからなおさら分が悪い。

ただ
一人っ子政策によって
「どうしても跡取りの息子が欲しい」という
主人公の母親の圧力などは、現代中国を描いているのかなと思いました。



★1/24(土)から新宿K'sシネマ、渋谷アップリンクほか全国順次公開。

「二重生活」公式サイト
コメント