ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ニッポンの嘘 ~報道写真家 福島菊次郎90歳~

2012-07-30 23:30:18 | な行

いま、これを見る意味は大きいす。


「ニッポンの嘘~報道写真家 福島菊次郎90歳~」72点★★★★


カメラ片手に真実を追い求め、
90歳の現在もなお現役な
フリー報道写真家のドキュメンタリーです。

対象のおもしろさもありますが
この作品はまず
ドキュメンタリーとしてよくできている。

冒頭、原発デモを真っ正面から撮る
か細いおじいさん(=菊次郎さん)の姿が
全て語る導入となるんですが、

警官隊にも一歩も引かず
グイグイと、いやスイスイと
撮り進める姿に
「……ただ者じゃない」感ありありで(笑)


「報道は法を犯すこともある。
しかし相手が法を犯している場合はそれは必要だ」と
実に明瞭なしゃべりで語る彼に
グイと引き込まれる。

ヒロシマの被爆者から写真を撮り始めたこと、
学生運動、安保、新宿のフーテン・・・
さまざまな時代を切り取ってきたことが
整然と並べられて、とても見やすい。


なにより、その間に
彼が愛犬ロク(11歳。賢くカワイイ!)と一人暮らしする
その生活ぶりが、丁寧に描かれるのがいいんですわ。

きちんと整理された部屋で、
朝からきちんと朝食を作り
犬と一緒に食べる。

その暮らしぶりから、
彼の性格や規範が、たち現れてくるという。

基本だけど
なかなかこうは描けない巧い見せかただと思います。

年金を拒否し
子供たちからの援助も拒否して暮らす、
その芯の通った生き方に
感銘を受けます。

「なぜ子供たちとも距離を置くのか?」という
疑問は次第にほのかながら分かってきたりして。

けっこう色っぽい90歳でありますからね。


再びカメラを構えた時機や理由は
詳しく語られないけれど、
やはり3.11と原発問題がきっかけなのでしょう。

ラストもすごくよくて、
彼のつぶやく一言の
その真の意味は何だろう?と、考えさせられました。

原発デモなど
市井の声の力がようやく見直され、今後も高まっていくだろう
このタイミングに
彼の生き様は多くの人の心に響くと思います。

ぜひ!


★8/4(土)から銀座シネパトスほかで公開。全国順次公開。

「ニッポンの嘘 ~報道写真家 福島菊次郎90歳~」公式サイト
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劇場版 東京スカイツリー 世界一のひみつ

2012-07-28 12:05:39 | か行

夏休みにぴったし。


「劇場版 東京スカイツリー 世界一のひみつ」58点★★★


NHKスペシャルなどでスカイツリーを撮ってきた
NHKエンタープライズ制作の
60分ドキュメンタリー。

おそらくいままで撮りためたものを
劇場版用にシナリオを作り、構成し直したのだと思います。

まずは天気のいい最高の状態で
スカイツリーからの展望を体験。
(でも観光客たちの驚嘆の声はいらなかったよなあ。苦笑)

そして
着工からその建設過程を
しゃべるハトが空から見学し、解説していく。

まず、この巨大タワーが
着工から3年半ほどで完成したことが驚異。

豊洲駅の地下工事の方が時間かかってないか?(失笑)


巨大で特殊な鉄骨を3万7千ピースも作る工場や、
高所でミリ単位の作業をする作業員たちを見ていると
ホントに「すごい・・・」と口が開いてしまう。

技術力の高さもだけど、
重要なのは“忍耐強さ”なのだと感服。

でかい仕事もさ、
ひとつひとつの
小さいことの積み重ねなんだよねえ。


と、意外におもしろいんですが

「千里の道も一歩から」的な教訓を
わざわざおっしゃっていただいちゃうような
やたら説教臭いナレーションがいただけない。

しゃべるハトの解説っていうのもねえ・・・
まあ、理系センスゼロの身にはわかりやすかったけど(笑)
これじゃあよくある
科学技術館とか施設とかでの学習上映レベルって気もする。

ということで
60分と短いし、夏休みにはピッタリですが

個人的には
それこそ「眠れぬ夜の仕事図鑑」とか
ドイツ原発を撮った「アンダー・コントロール」くらい、
ミニマルでクール&アートなドキュメンタリーにしたら
かっちょよかったのになア、と思いました。


★7/28(土)から角川シネマ新宿ほか全国で公開。

「劇場版 東京スカイツリー 世界一のひみつ」公式サイト
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エイトレンジャー

2012-07-27 21:41:49 | あ行

主題歌は割と好きでした。

「エイトレンジャー」22点★☆

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2035年の東京。

少子高齢化が進み、経済が混乱した日本では
警察も民営化され、

早い話が「助けて欲しけりゃ金払え」的な
超・無法地帯になっていた。

そんなある日、
借金を抱える青年・横峰(横山裕)は
見知らぬ男に、
「ヒーローにならないか」と誘われる。

連れていかれた先にいたのは
6人のヒーロー姿の男たち(でもちょいショボめ。笑)

横峰は彼らを取りまとめて、
世の中を救うよう言われるのだが――?!

************************

堤幸彦監督×関ジャニ∞主演の
戦隊ヒーロー(?)アクションもの。

冒頭に提示される悲惨な近未来の状況が
「うわ、ありそう・・・」で、
身近に暗~い未来な感じがちょっとおもしろく
導入はけっこうワクワクしました。

横山裕氏を主人公に
ヒーローになる7人がそれぞれ曰くアリの過去を持ち、
(これがたいした過去じゃないとこがまた。笑

たいした気概もなく
バイト感覚でヒーローをやっているというシチュエーションで

当然、バトルもできず
ダメダメ。

そんな7人が、果たして日本を救えるのか―ー?!という話。


戦闘シーンは戦隊ヒーローものっぽく

さらに
予想通り関西っぽいノリというか
ベタな笑いもあって
楽しいシーンもありました。


しかしまあ
進んでいくに従って
幼稚さが高まってしまい

「実は意外に・・・」を期待したんですが
それはなかった(笑)


やっぱり関ジャニファンでもない人間が
1時間50分これに付き合うのは正直しんどかったすね。

ワシには
セブンイレブンのCMで見るか、
30分くらいの特番とかでよかったや。

★7/28(土)から全国で公開。

「エイトレンジャー」公式サイト
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アニメ師・杉井ギサブロー

2012-07-25 23:33:53 | あ行

日本のアニメ史総ざらい、という意味で
けっこう貴重です。

「アニメ師・杉井ギサブロー」61点★★★


「グスコーブドリの伝記」(公開中)の
杉井ギザブロー監督(71歳)の人生を、
「YOYOCHU SEXと代々木忠の世界」の
石岡正人監督がドキュメンタリーにしたもの。


1940年に生まれ、
東映動画から手塚治虫氏の虫プロを経た
ギザブロー氏の人生は

それ自体がそのまま日本アニメの黎明期の記録であり、
非常におもしろい。

なかでも
手塚治虫氏との話が
かなりのボリュームを占めていて、
いまや神格化される氏の実像も
本人インタビュー映像などを交え、よくわかるんですよね。


「ディズニーを超えろ」を合い言葉に、
しかし人員問題などから
動きを滑らかに見せるフルアニメーションをあきらめ、

それでも面白い「鉄腕アトム」を作ったこと。

さらに
虫プロの経営破綻や実は深刻な後世への功罪など、
知らなかったことがポロポロと出てきて
「へえ~~」の連続。


こうやって
“世界に誇れる日本アニメ”が
出来上がっていったんだなアと興味深かったす。

ただ
本来の目的であるはずの
「杉井ギサブロー」本人にはあまり迫れておらず、
タイトルやバランスを考えると、ちょっと未熟感がある。

また
カメラにもちょっと雑さがありましたが
全体に録音がよくなかった。

ギザブロー氏が35歳で放浪したことなど
おもしろい部分はありそうなのに

実のところ、本人が
アニメは語っても自身を意外に語りたがらないという
ドキュメンタリーには最も難しい対象だったことが
観客にもだんだんわかってきてしまうんですよね。

監督もまとめるの大変だったと思いますが。

それでもアニメ史としては
価値ある一本かと。


★7/28(土)から銀座シネパトスほかで公開。全国順次公開。

「アニメ師・杉井ギザブロー」公式サイト
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眠れぬ夜の仕事図鑑

2012-07-24 23:41:29 | な行

わからないけどクール。
わかれば2度、楽しめる。

まさに最近、この映画と同じような印象の
現代美術を見ましたよ。
(ドイツのトーマス・デマンドでした)

「眠れぬ夜の仕事図鑑」69点★★★☆


「いのちの食べかた」「プリピャチ」の
ニコラウス・ゲイハルター監督が、
深夜に働く人々を映したドキュメンタリー。


無人の監視カメラの奥に操作している人がいたり、
夜勤の看護師さん
テレビ局や、警察官訓練所などなど、

ナレーションも説明もナシでジーッと映しており
まるで「これなーんだ?」謎かけをして、それを推理させるような、
5分ほどの短いシーンの集積からなっています。

わかんなくても
じっと見ていると単純に面白かったり

何を映しているかがわかれば
今度はトリックのようなシュールな面白さがあったり

余分なものナシのミニマム感覚が
なんともクールでカッコいい。


難民や移民問題が何度も出てくることから、
奥にある問題提起などもしずしずと感じられます。


なのですが、
さすがに予備知識ゼロだと
何を映しているのか、わからないものも多かった。


例えば、
ラストのマッチョな若者だらけのライヴ会場の映像。

どこか「不気味さ」はあるんだけど
どういう意味なんだろう?・・・と思ってたんですが

発売中の『週刊朝日』(8/3号)のツウの一見で
谷崎テトラさんに伺いましたところ


あれは谷崎さんも体験したことのある
ドイツのレイブ会場で
まあ見たとおり、ほとんど白人マッチョしかいなくて

かなり「白人優越主義」に根ざしたものであるらしい。

そう聞くと
あの力を鼓舞するような
低音ビートの繰り返しにも、軍隊チックな意味が立ち現れてきて

なるほどねー。

見ながら感じた奇妙さの理由がクリアになると
これが、さらにおもしろいんです。

なのでやはりこれは、
シーンの解説のついたパンフレットと
セットで見るのがオススメです。

ちなみに
取材時、谷崎さんに
「自分がどこに引っかかるかを、知ることもおもしろい」と言われたのですが

番長が一番ひっかかったのって
本番オクトーバーフェスト(ビール祭ね)の
凄まじい熱気と、人、人、人!(笑)な現場だったりして

いやはや、自分のレベルが、
こう……なんつうんですか・・・
えーと、どーもすみません(失笑)


★7/28(金)からシアター・イメージフォーラムで公開。ほか全国順次公開。

「眠れぬ夜の仕事図鑑」公式サイト
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