ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

2011年ベスト&ワースト映画発表!

2011-12-28 21:03:45 | ぽつったー(ぽつおのつぶやき)

2011年、ベスト&ワースト映画発表!

まずはベスト10。「思い出してもグッとくる」度で高評価です。

(1位)わたしを離さないで
(2位)ブラック・スワン
(3位)エンディングノート
(4位)家族の庭
(5位)50/50
(6位)ブルー・バレンタイン
(7位)大鹿村騒動記
(8位)さすらいの女神たち
(9位)奇跡
(10位)ピュ~ぴる

以下、80点越えの作品を点数高い順に。

●ソーシャル・ネットワーク
●神々と男たち
●人生、ここにあり!
●エリックを探して
●ゴーストライター
●SUPER8
●キッズ・オールライト
●ツリー・オブ・ライフ
●イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ
●マネーボール
●ラビット・ホール
●水曜日のエミリア
●冷たい熱帯魚
●ヒアアフター
●未来を生きる君たちへ
●ミラノ、愛に生きる

(総評)
1位はダントツ高得点で文句ナシ。
ほか点数的には、10位内より俄然高い作品もありますが(「ソーシャル~」とか「神々と~」とか)

やっぱり振り返ってピンときた作品を
ベスト10に入れたい!ってことで。

あと
番長は基本的に家族モノ好きですが
今年は特に、家族のありかたを振り返るような作品に
秀作が多かった気がします。


そしてワースト10。毎度、ガッカリ度高めのものが順位あげてます。

(1位)デンデラ
(2位)赤ずきん
(3位)CUT
(4位)マーガレットと素敵ななにか
(5位)カウボーイ&エイリアン
(6位)キラー・インサイド・ミー
(7位)軽蔑
(8位)朱花の月
(9位)ニューイヤーズ・イブ
(10位)恋の罪

以下、50点台以下を点数低い順に。もう忘れてる作品もあるかも。ハハハ。

●スマグラー
●指輪をはめたい
●ブッダ
●ビーデビル
●1911
●小川の辺
●アジョシ
●ミスター・ノーバディ
●エッセンシャル・キリング
●ザ・ライト
●ツレがうつになりまして。
●ハラがコレなんで


(総評)
こちらも1位はダントツ高得点で文句ナシ。
10位内も同じく、
点数よりも期待度との反比例ぶりが目立つ作品が、より高い順位になってます。

と、いうことで
今年もお疲れさまでした☆

来年もたくさん映画に出会えますように!

2012年も番長を
どうぞよろしくお願いいたします。
コメント (4)
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善き人

2011-12-25 19:26:08 | や行

元旦公開という、とってもエライ映画。
そして質も内容も、
元旦にふさわしいと思います。

「善き人」71点★★★☆


1930年代、ドイツ。

ヒトラーの台頭とともに
ナチ色が強まっているものの、
まだ人々にさほど危機感のなかった時代。

大学教授のハルダー(ヴィゴ・モーテンセン)は
マジメな“よき家庭人”で、

親友のユダヤ人精神分析医とともに
「ヒトラーなんておかしな人間の影響力は、そう長くは続かない」
と言っていた。

が、ハルダーが書いた“ある”小説が
ヒトラーの目にとまり、
彼はナチ党に入党せざるを得なくなる。

そしてハルダーは自分でも思っていなかった
運命へと導かれてゆき――?!


「サラの鍵」もそうですが
これもナチス題材だから、と回避するのは
あまりにもったいない映画です。

悲惨な描写も、銃声もなし。
でも同時に
胸のすくような勧善懲悪も、ヒーローも、善行もなし。


これは
ごく“普通の人”にとって
「あのとき、なにが“善き行い”だったのか」
「どうすればよかったのか」を
見る人に問いかけるような作品なんです。


「善き人のためのソナタ」に、近い感触もありますね。


主人公はよき夫であり、父である「正しき人物」で
もちろんヒトラーに賛同なんかしてない。

ただ「普通のいい人」なんで
いろんな煩悩もあるわけですね。

それに
「まさかこんなことにまでなるとは思わなかった」という
先の読み間違いも加わり、

自分の意にはそぐわないまま
結果的に悲劇に荷担してしまう。


そんな彼を見るうちに

あの悲惨な歴史に荷担したのは
想像を絶するような「悪い人」ではなく、

あらかた人間の8割を占めるだろう
「普通の、いい人たち」なのだ、ということが身に染みてきます。

それはもしかして、
あなたでもあるんじゃないんですか、と。

ヴィゴ・モーテンセンの
サラサラ金髪にメガネの教授コスプレを堪能しつつ
そんな含みを感じとりました。


来週発売の週刊朝日(1/6-13合併号)で
東京女子大学の芝健介教授にお話を伺ったのですが

主人公のハルダーは
実在の人物がモデルで、

しかも彼の書いた“ある小説”が
あのホロコーストの悲劇における
そもそもの始まりになっているんですって。

かなりびっくり!
そして・・・・・・深い!

映画に興味のあるかたは
ぜひご一読を☆

★1/1から有楽町スバル座で公開。ほか全国順次公開。

「善き人」公式サイト
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運命の子

2011-12-24 16:58:44 | あ行

チェン・カイコー監督の新作です。

「運命の子」52点★★☆

中国は春秋時代に
実際に起こった歴史的な事件を背景にしたお話です。


約2600年前の中国、晋の国。
宰相を務め、繁栄を謳歌する趙(ちょう)一族は

武官の屠岸賈(とがんこ)の謀反で
一族300人を皆殺しにされる。

その騒ぎの中、医師の程嬰(ていえい)は
趙の姫君・荘姫の出産に立ち合い、男児を取り上げる。

程嬰は屠岸賈から逃れ、
なんとか趙の生き残りである男児を
助けようとするのだが――?!


ギリシャ神話か、シェークスピアか、って感じに
話自体はドラマチック。

でも運命の子、というよりも
「運命の皮肉の子」ですねこれは(苦笑)


見栄えのする大河ドラマで、美術も美しく華やかで、
きっちり作られており
まったく予想通りの映画なんですが、

話の持っていきかたが下手くそ。

ややこしいし、
起承転結の転までが長すぎる。

この題材にしては
起伏にもかけるというか。

おそらく「この話、知らぬものはいないだろう」くらいの
勢いで描いてるんだろうと思うんですが、

すみません、話を知らなかったのもあり、

時代背景や敵味方はだいたいわかっても、
先の見えない面白さと、
話の見えないつまらなさはこうも違うのか、と
思ってしまいました。

なによりも
もっと胸すく復讐劇にして欲しかったな。


★12/23(金)からBunkamuraル・シネマで公開。ほか全国順次公開。

「運命の子」公式サイト
コメント (2)
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聯合艦隊司令長官 山本五十六 ―太平洋戦争70年目の真実―

2011-12-23 17:02:31 | ら行

もっとこわもてな人物かと思ってました。
その意外性に、好感。

「聯合艦隊司令長官 山本五十六 ―太平洋戦争70年目の真実―」68点★★★


1939年、夏。

日独伊三国同盟を締結させようと
世論が盛り上がるなか、

海軍の山本五十六(役所広司)は、
同盟締結に反対していた。

「日本がドイツと結べば、必ずアメリカと戦争になる。
それは避けなければならない……」

が、1940年
ついに日本はドイツと手を組むことに。

そして1941年の夏、
アメリカとの対決が避けられないと悟った五十六は
ある作戦を立案した。

それは
「真珠湾攻撃」。

武士道精神を重んじる五十六は、
「必ず米軍に通達をしてから攻撃せよ」と
命じていたのだが――?!


戦艦が出てくるにも関わらず
ドンパチが非常に少ない、いやほとんどない、
静なる戦争映画でした。

それは
山本五十六という人の人柄の描き方にありまして

意外なことに
いかつさよりも、柔らかさが際立つ人物。

えばったりせず、
どこか飄々としていて、情にあつく
なにより平和主義者。

甘党で下戸なところや、
名誉欲も出世欲もないところなどを丁寧に見せていくので
好感度アップするってもんです。

演じる役所広司氏の得意技というか
「ちょっとお茶目」感もうまく出ている。

実際、五十六を知る海軍大将は
その人となりを聞かれて、まず
「茶目ですな」と言ったんだそうで。


その人物像に呼応するように
終始静かな演出なんですね。

それは開戦前のややのんびりした時代から
「真珠湾攻撃」を経て戦争に至っても変わらない。

ただ、歴史の歯車が悪いほうに回っていく恐ろしさは
十分に伝わってきます。


「真珠湾」で奇襲をかけるつもりなどなかったのに、
結果そうなってしまったり、

わずかな誤算やボタンの掛け違いから、
ズブズブと戦争に至ってしまう様が
よく描かれていました。

なんといっても
歴史オンチの番長にとっては

名前だけは知っている
「三国同盟」やら「ミッドウェー海戦」やら
「カダルカナル島」を静かに学ぶことができたのが
とても助かった。

ちょっと長かったけど
勉強になりましたよ。

★12/23(金)から全国で公開。

「聯合艦隊司令長官 山本五十六 ―太平洋戦争70年目の真実―」公式サイト
コメント (5)
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ルルドの泉で

2011-12-22 22:18:32 | ら行

きっと期待してるものと違うと思うんです。

それが、いい。

「ルルドの泉で」74点★★★★


フランスとスペインの国境にある
小さな村ルルド。

聖母マリアの「奇跡を起こす泉」があることで知られ、
難病の人や、救いを求める人々が
世界中からやってくる場所だ。

車椅子のクリスティーヌ(シルヴィー・テステュー)もその一人。

全身麻痺で体を動かすことのできない彼女は
ボランティアに助けられ、街を見学し、泉の水に体を浸す。

そしてあるとき
彼女についに奇跡が起こるのだが――?!


容易に判断しにくい、
だからこそ余韻残りまくりな作品でした。


日本人でもおそらくほとんどの人が
名前は聞いたことがあると思うルルドの泉。

難病の人が歩けるようになったり、
不治の病の人が回復したりする実例があり、
そんな奇跡を求めて、
世界中から巡礼ツアーの人々がやってくる場所なんですが、

そんな街を題材にした着眼がまずおもしろい。

主人公が
「車椅子の人が参加できるツアーは少ないのよ」と言うとおり、

ルルドという場所は
ボランティアも行き届き、街全体が受け入れ万全な
困難な人々にとってのパラダイスでもあるわけです。

その様子を客観的に見ると、
やっぱりかなり異様なんですよ。

ルルドにカメラが入ることはほとんどないそうで、
観客はそんな街を主人公のツアーに混じって
じっくり見学してる気分になる。

泉の内部なんて、けっこう興味津々でした。


で、ついにそこで主人公に奇跡が起こるんですが
これが
「奇跡よ!」とかとシラケる演出じゃないんで
いいんだけど、
我々も戸惑ってしまうんです。

「え?喜んでいいのコレ?」と。

そう思う感覚が、
また不思議というかおもしろいんですよねえ。

監督のジェシカ・ハウスナー(39)は
「白いリボン」のミヒャエル・ハネケに師事した人で
うん、確かにこのクールさ、似てる気がします。


で、結局この映画は
「奇跡がどうの」という安っぽいドラマではなく

障害のある人も、普通の若者もみな突き当たる
「生きる意味ってなんだろう?」
「信じるってなんだろう?」といった
根源的な問題を映し出している、という。


だから、誰の物語でもあり
考えさせ、余韻を残すのだと思います。

ラストもかなり好きでした。

★12/23(金)からシアター・イメージフォーラムで公開。ほか全国順次公開。

「ルルドの泉で」公式サイト
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