ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

グランド・イリュージョン 見破られたトリック

2016-08-30 23:44:19 | か行

前作、けっこう好きで。


「グランド・イリュージョン 見破られたトリック」68点★★★☆


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腕利きイリュージョニスト集団
「フォー・ホースメン」が
ショーのなかで権力者の悪事を暴露し、
世間の喝采を浴びてから1年。

リーダーのアトラス(ジェシー・アイゼンバーグ)、
催眠術の達人メリット(ウディ・ハレルソン)、
カードの天才ジャック(デイヴ・フランコ)らは
あるIT企業の不正を暴露する使命を与えられる。

新たな女子メンバー、ルーラ(リジー・キャプラン)を加え
フォー・ホースメンが再び動き出した――!


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2013年公開「グランド・イリュージョン」の続編。

監督はジョン・M・チュウ氏に変わってますが
ジェシー・アイゼンバーグら登場人物はほぼ同じ。


ニューヨークのビルの屋上から
なぜか
一瞬にしてマカオに着いちゃったり

スピーディに畳みかけるマジックのテクニックで
「あれ?」という間に潜入してたり

マジック、トリックをネタにした
おもしろさは健在。


ただ今回は
ちょっと“タネ”の掘り下げ不足な印象も。

マジックやトリックの楽しみよりも
かなり“復讐劇”になっているし

それにこの手の知恵比べ話は
あまり裏をかきすぎると
裏の裏の裏は・・・裏?となっていくんだよね。

フォー・ホースメンを「待望していた!」という
民衆の盛り上がり方も、
ちょと煽りすぎな気もしてしまった。


でも、やっぱり「どうなってるの?」の種明かしは
おもしろいんですよね。
特にあの、飛行機のね・・・(モゴモゴ←口封じ)。


★9/1(木)から全国で公開。

「グランド・イリュージョン 見破られたトリック」公式サイト
コメント (2)
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はじまりはヒップホップ

2016-08-26 20:45:47 | は行

悲しい話じゃないのに
なぜか観ながらずっと涙が・・・・・・(笑)

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「はじまりはヒップホップ」75点★★★★


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ニュージーランドの小さな島に住む
60代から94歳までのお年寄りたちが
ヒップホップダンスの世界大会に出場することになり――?!という
ドキュメンタリーです。

コーラスにマラソン、オーケストラなど
がんばる老人ものは多いけど
ドキュメンタリーにはやはり殊更にグッとくるものがありますねえ。


そもそも「なぜ、ヒップホップだったのか?」というと
40代のビリーという女性が島にやってきて
「お年寄りを元気にしたい!」と
たまたま提案した、って感じ。

でもやっていくうちに
みんなけっこう楽しそうだし
「大会に出よう!」と盛り上がっていくんですね。


30人ほどいるメンバーの中から
数人のストーリーが紹介されるんだけど
このドラマもなかなか深くて。

大好きなダンナが認知症になり
彼を見舞いながら
ダンスをがんばる93歳とか、

亡き夫の思い出を語る
ピアノが得意な94歳とか。

田舎の小さな島なのに(失礼!)、オペラ歌手やら市民活動家やら、
なんだかすごい女性たちがいるのも驚かされます。

彼らの歴史とドラマの厚みがあるので
過剰な演出せずとも、
心が動かされるんですよね。

彼らは無事にラスベガスに行けるのか――?
ドキドキしながら、見守ってしまう。

それに
彼らがヒップホップを通じて
若者たちと交流するシーンから
涙腺にツン、ときっぱなし。

若者たちは言うんです。
「老人なんていつも不機嫌で、俺たちを嫌っていると思ってた。
でも違ったんだ。
みんな、彼らに会ったその週末には自分の祖父母を訪ねたよ」って。

うう。泣ける(笑)。
こんなにハッピーで明るい話なのに
2回見たけど、2回とも、うるうるとキタ・・・(笑)

元気とピュアな感動をもらえます。


★8/27(土)からシネスイッチ銀座ほか全国順次公開。

「はじまりはヒップホップ」公式サイト


(おまけ)
先日、来日したメンバー5人に
『ボケてたまるか!』著者としても有名な
週刊朝日記者・山本朋史さんを会わせ、
ヒップホップダンスを教えてもらう――という
取材を敢行しました。

アラ80のヒップホップダンサーズVS朋さんの
ダンス対決(?)の模様は
ご本人の筆で
来週発売の『週刊朝日』に掲載されます!

お楽しみに!
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神様の思し召し

2016-08-25 23:54:37 | か行

やっぱ「観客賞受賞」って
信頼できるなあ!


「神様の思し召し」74点★★★★



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天才外科医のトンマーゾ(マルコ・ジャリーニ)は
高慢ちきで毒舌で
はっきり言って「イヤなヤツ」だ。

そんな彼の希望は
優秀な医大生の息子。

が、息子がいきなり
「神父になりたい」と言い出した!

どうやら息子は
ユニークな説法で人気の神父(アレッサンドロ・ガスマン)に
傾倒しているらしい。

息子を元の道に戻すべく
神父に近づこうとするトンマーゾだったが――?!


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2015年の東京国際映画祭で観客賞を受賞した
イタリア人生喜劇。

これは、受賞も納得!
いや~笑いました(笑)


腕利きだけど高慢ちきなエリート外科医と
出自は怪しいけど、カリスマ的人気を持つ神父。

正反対のふたりが出会うことで起こる
科学反応がおもしろいし
冒頭からノリのいいポップソングが使われるところも
「お!」と思うし、

なにより
貧困や、人の見ため、差別、障害などなど
タブーなネタにもズケズケと踏み込む
きっつい笑いに思わず吹き出してしまいます。

あの「最強のふたり」を彷彿とさせる――という
宣伝文句も納得!


冷徹人間が、だんだん人間味を取り戻していくという
テーマは普遍なんだけど
その普遍が、また愉快というか。

イタリアンコメディって
ときどき
とんでもなくツボるものが多い。

「これが私の人生設計」もそうだったなあ。

テンポとかユーモアがさすがなんだよね。


医師の家族の食卓に
「ベリーニ」(桃のワインベースのカクテル。
「カルディ」とかに売ってるあれ!)がよく登場したり
二人が並んで食べる
フォカッチャサンドみたいなのもおいしそうだし

イタリアの食好き、ワイン好きにも
なかなか楽しいと思います。


★8/27(土)から新宿シネマカリテほか全国順次公開。

「神様の思し召し」公式サイト
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イングリッド・バーグマン~愛に生きた女優~

2016-08-24 23:53:47 | あ行

こんなに快活な人だとは知らなかった!
おもしろい!

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「イングリット・バーグマン~愛に生きた女優~」75点★★★★


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「カサブランカ「誰が為に鐘は鳴る」など
数々の代表作を持つ
大女優イングリッド・バーグマンのドキュメンタリーです。


イザベラ・ロッセリーニほか
バーグマンの子どもたちが全員参加し

インタビューに答え、
プライベート映像もふんだんに使われ、
とにかく見応えがあります。

ワシは子ども時代
ヘプバーンより、バーグマン派だったんですが
その背景についてしっかりとは知らなかったし
どちらかというと“しっとりした”イメージだった。

なので、この映画を見て
生涯現役で、5カ国を飛び回り
常に新しいことに飛び込む、自由な人だったんだなあと
すごくびっくりしたんですよ。


さらにバーグマンは
「なんでも取っておき魔」だったようで、
だから
子ども時代の写真も、最初の結婚式のホームムービーも、日記、手紙と
素材がたっぷりあるんですね。

それには彼女の
生い立ちゆえの理由があることもわかるんですが。

それら
ホームムービーに写る彼女の
伸び伸びとした肢体のおおらかさ。

子供たちや動物に向ける笑顔のまぶしさ。

子どもたちが語る
「とにかくチャーミングな人だった」という証言にも
うなずけます。

ナナメ上を向く、あの“神”な角度とは違う彼女の姿が
存分に楽しめて
改めてファンになりました。


往年のファンにもぜひおすすめです!


★8/27(土)Bunkamura ル・シネマほか全国順次公開。

「イングリッド・バーグマン~愛に生きた女優~」公式サイト


(おまけ)
発売中の週刊朝日9/2号で
映画に絡めた「バーグマン」記事書いてます。
ちょっとしたクイズ形式なので
チャレンジしてみてください。
(ちなみにうちの母は「最初の結婚相手はだれ?」を知ってました!笑)

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健さん

2016-08-17 22:50:36 | か行

あらためて「すごい人だったんだ」と。

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「健さん」76点★★★★


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マーティン・スコセッシにマイケル・ダグラスに
山田洋次、降旗康男、立木義浩・・・・・・(敬称略)

国内外のそうそうたる20人超
それぞれにとっての「健さん」を語るドキュメンタリー。

「単騎、千里を走る」(これ、好き!)に登場した
チューリン青年が案内役を務めています。


映画海外を拠点にする監督だからなのか
まずインタビューの構成もリズミカル。

知ったかぶりなしで、
あらためて「高倉健とはどういう人だったのか」を
きちんと紹介してくれているのがいい。

任侠映画のシーンや、さまざまな写真など
映像による情報もたっぷりで
95分間とは思えないボリュームでした。

とにかく
いろんな人が語る素顔の「健さん」のエピソードが
おもしろいんですねえ。

マジメ一徹、のイメージがあったから
意外なエピソードに驚いたり。
遅刻魔だったとは知らなかったなあ(笑)。

それに健さんは
自分の演技を「なぜ、そういうふうに演じたか」を
きっちり言葉で説明できた人だったそうだ。

「きっと演技の先生にもなれただろう」という話に
へえ・・・と思った。


本人の肉声による言葉
「人は思う人がいないと、仕事も一生懸命できない。
その人のことを思うと、心が『ジン』とするような人がいないと」
が、響きましたねえ。

あと
40年来、付き人だった方が語るエピソードに泣きそうになった。

ファンはもちろん、健さんをよく知らない人にも
絶対に楽しめると思います。


★8/20(土)から全国で公開。

「健さん」公式サイト
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