ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ザ・コール 緊急通報指令室

2013-11-30 23:12:20 | さ行

前半は70点超えのスリルだったんだけどなあ・・・!


「ザ・コール 緊急通報指令室」67点★★★☆


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日本の「110番」である
LAの「911」オペレーター、ジョーダン(ハル・ベリー)は
日々、市民からの緊急コールに的確に応えるタフな女性。

あるとき彼女は
少女ケイシー(アビゲイル・ブレスリン)からの電話を受ける。

「助けて!誘拐されたの!」――。

車のトランクに入れられたという
ケイシーを救うべく
ジョーダンは電話で彼女に指示を出していくが――?!

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声だけで誘拐された少女を助けようとする
アイデアが秀逸。

ハル・ベリー扮するオペレーターが、
広大なLAで
どの車かも、どこを走っているかもわからない
誘拐された少女を助けようと

あの手この手で少女に指示を出す様子が
実にスリリングで

ヒヤヒヤ、ハラハラ、夢中で観てました。


ホント、おもしろい題材に
目を付けたなあと思う。

なんですが、
後半、犯人の動機が明らかになるにつれ、
猟奇ホラー方向へトーンが変化。

これが中途半端で
いただけないんだよなあ・・・。


最後までクレバーな頭脳的対処で
突っ走ってほしかったす。


にしても。誘拐される少女役
「リトル・サンシャイン」のアビゲイル・ブレスリンも、もう17歳。
すっかりギャルっちくなって(笑)

話題SF大作「エンダーのゲーム」(1/18公開)にも出てますよー。

★11/30(土)からシューマントラストシネマ渋谷ほか全国で公開。

「ザ・コール 緊急通報指令室」公式サイト
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REDリターンズ

2013-11-30 22:44:52 | ら行

若いもんに負けるわけがねぇ、この胆力と余裕。

・・・見習いたい!(笑)


REDリターンズ 69点★★★★


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引退した元CIAスパイのフランク(ブルース・ウィリス)は
前作のゴタゴタを終え、
恋人(メアリー=ルイーズ・パーカー)と
おだやかな日々を送る・・・はずだった。

しかし、そこに
元相棒のマーヴィン(ジョン・マルコヴィッチ)が現れ、
新たな任務にフランクを誘う。

一度は断ったフランクだが、
しかし、マーヴィンの身に異変が起こり――?!

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引退したスパイたちが大暴れする
「RED/レッド」(11年)の続編。

続編といわれると、どうしてもテンション下がりがちな
番長ですが

これは
ブルース・ウィリス、ジョン・マルコヴィッチ、
ヘレン・ミレンという前作組に加えて

キャサリン・ゼダ=ジョーンズにイ・ビョンホン、
アンソニー・ホプキンスまで揃いぶみ。

まあ、観る価値ありそうでしょ?

で、楽しみましたハイ。


派手なドンパチの最中でも、
ブルース・ウィリスの“余裕”
「ブッ」という笑いを起こす。

これはつくづく俳優の「胆力」ってヤツかなあと思う。


銃弾の雨あられのなかで
ブルース・ウィリスが死ななくったって
なんらおかしいことはないし

若いもんにまだまだ負けない、を
体現してますからねえ。


ゼダ=ジョーンズが出てきただけで
画面がゴージャスになり

アンソニー・ホプキンスは
軽妙でもどこか怪しく、凄みあり。


ヘレン・ミレンの
“超”見せ場に突合される
イ・ビョンホンとの掛け合いも笑える(笑)

「若いもんなんか、まだまだ」な
この世代の活力、
見習いたいっす。マジで。


★11/30(土)から全国で公開。

「REDリターンズ」公式サイト
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母の身終い

2013-11-28 23:28:37 | は行

この残響はハンパない!
まだ、胸がバクバクいっている……。


「母の身終い」80点★★★★


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フランスのある街。

48歳のアラン(ヴァンサン・ランドン)は
つまらない罪で服役し、出所したばかり。

独り住いの母親(エレーヌ・ヴァンサン)のもとに
身を寄せるが

母親とアランは折り合いが悪く
常にぶつかり合ってしまう。

そんなときアランは
母親が病気で余命を宣告され、
ある決断をしていることを知る――。

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見た後、喉にせり上がってくる、
この石のような重みはなんなのか!


「終活」なんて生易しいものではない、
母親の選択、
この究極のエンディングは、
すべての観るひとに大なり小なりの重石を持たせると思う。


見る前と、後では確実に何かが変わる、という
久々の映画体験です。


ただ、これは「終活」の方法うんぬんよりも
どうにもうまくゆかない“母と息子”を描いた作品であり
そこが、重要。


母親は髪をきっちり束ね、
清潔で、きちんとしている。意志も強そうだ。

他人であるワシから見ると
「こうありたい」と思える女性なんだけど

しかし、
48歳の息子には耐えがたい要所のある母親で

二人は
どうしてもぶつかってしまう。

わかるわ~(苦笑)。


グザヴィエ・ドラン監督が
17歳と母親の衝突を描いた「マイ・マザー」
確実に20年後、いや30年後なわけですよ、コレ(苦笑)。


そして本作の監督は1966年生まれのフランス人、ステファヌ・ブリゼ氏。
確実に自身と40代の主人公、
重なる部分あるだろうなと思う。


どんな親子間にも経験のあることじゃないかしらんと、
自らを振り返り、また胸がつまる。


そんなヒヤヒヤ親子の“緩衝材”である愛犬を
互いに奪い合う様子も
ユーモアにもなっているんだけど、静かに効く。

その犬をめぐる騒動、
そのときの母親の振る舞いの冷徹さもまた、
ラストを経れば意味を持ってくるんですね。

母親と息子を
終始じっと静かに「観察」し、
どこにでもありそうなドラマを焼き付け、

しかし、大きな提起をする。

そして、このラスト……。

いろんな意味で、残りまくり。
自分の“こうありたい姿”も、よーく見えてくるのでありました。


★11/30(土)からシネスイッチ銀座ほか全国順次公開。

「母の身終い」公式サイト
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おじいちゃんの里帰り

2013-11-27 23:57:06 | あ行

予想どおりのあったかホームドラマだけど、
予想以上に笑えて、ジンと胸をつかれました。


「おじいちゃんの里帰り」76点★★★★


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1960年代半ば、
ドイツは労働力として
トルコから多くの移民を迎え入れた。

イズマル家の“おじいちゃん”(ヴェダット・エリンチン)も
当時ドイツに移住したトルコ人。

家族もドイツに呼び寄せ、
いまや三世代がすっかりドイツでの暮らしに溶け込んでいる。

が、
6歳の孫チェンク(ラファエル・コスーリス)は
小学校で「自分はドイツ人なのかトルコ人なのか?」と
考えこんだりもする。

そんななか
おじいちゃんがいきなり
「トルコに家を買った」と言い出して――?!

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ドイツに多くいるトルコ系移民の
ルーツと、いまを背景に
見事な家族ドラマに仕立てたなかなかの作品。

子役使いのうまさ
家族の個性の丁寧な描写、

そして
過去の話と現在の話を巧みにつなげる構成・・・など

セオリーをきちんと踏まえた
“確かさ”もよいんだけど

見事なのが笑いのセンス。

異文化ギャップや異世代交流を、
抜群のタイミングで「プッ」とさせるんですなあ。


宗教や民族の話を基盤に置きつつも
トゲトゲしさとは無縁で、
「ああ、見てよかったな」とつくづく思えます。


監督と脚本は
実際にドイツのトルコ系移民である
ヤセミン&ネスリン・サムデレリ姉妹。

自身らが体験したこと、
自分たちの家族の話でもあるわけだから
こんなにも
リアリティがあって、生き生きしてるんですね。


“トルコ”という土地に根ざした人の生き様というか
民族的な“どっしり度”みたいなものを感じたし、

それが、どこか
死に対する感覚にも共通しているんだな、というのが
興味深かった。

悲しみだけでなく
“つながってる”“そこにいる”感じがあるっていうんだろうか。
なんかいいな、と思いました。


そしてワシにとって嬉しかったのは
おなじみ『週刊朝日』(11/29号)の「ツウの一見」で
『トルコで私も考えた』シリーズの高橋由佳利さんに
お話を伺える機会をもらえたこと!(笑)


高橋さんならではの
“トルコのおじいちゃん”の見方、そして
“異国で生きていくこと”についてのお話も
すっごく参考になりました。


そうそう
宣伝ポスターにワシの推薦コメントが
載ってるかもしれませんぜ(笑)


★11/30(土)からヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開。

「おじいちゃんの里帰り」公式サイト
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アイ・ウェイウェイは謝らない

2013-11-26 01:50:27 | あ行

謝るのはオレじゃない。
謝るのは“そっちだ”と、彼は言っているのです。


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「アイ・ウェイウェイは謝らない」77点★★★★


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北京オリンピックの
「鳥の巣」スタジアムの設計にも関わった

中国の世界的な美術家であり活動家である
アイ・ウェイウェイ。

彼の創作の現場、その原点、
そして中国政府との闘いの日々を描くドキュメンタリー。

2009年に森美術館で個展が開催され、
約46万人(!)が訪れたそうで、知ってる方は知っているかも。
恥ずかしながら、ワシは存じ上げなかったんですが
(ホントにワシ美大卒なのか・・・不肖にもほどがある・・・

いやはや、すごい方がいるもんだ、と感動しました。

アート作品も非常に興味深いんですが、
やはり
「中国って国はメチャクチャだ!」と“中の人”が発言し、
それを発信していることの意味と
インパクトはものすごくでかい。

なんだ、そう思ってる人、ちゃんといるんじゃん!と(苦笑)

それ自体が、当局にとっちゃまずいことなわけで
まあ彼はものすごい監視と、危険にさらされているわけです。


見た目は三國志の登場人物のような髭の巨漢で
猫40匹と広大なアトリエに住み、
作品制作はスタッフ任せ。

もちろん自身でなんでも作れちゃうのだが
彼にはまったく時間がない。

国内外のインタビューに年200本応え
ドイツやロンドンで個展をし

合間に政府が無視する
四川大地震の犠牲者たちの名前を調査し、
作品として発表する。


その行為でますます監視されながら、
ツイッターやYouTubeで
「おかしな中国」を世界に知らしめる活動をする。

英語に堪能なことと、SNSやメディアへの柔軟な姿勢、
そしてなによりユーモアと、チャーミングさが彼の武器でしょう。


監督は若きアメリカ人女性、アリソン・クレイマン。

不屈の闘争精神を生んだ生い立ちも、青年時代も、
現在も含め
よくまあこんなに盛りだくさんな話を
91分にまとめたと思う。


終盤の展開は
そこらのドラマよりハラハラしまっせ。


おなじみ『週刊朝日』(11/22号)の「ツウの一見」で
アイ・ウェイウェイ研究第一人者の
牧陽一さん(埼玉大学教授)にお話を伺いましたが

素顔の彼は映画のとおりで、
さらにナイーブですらある人物で
牧さんが日本から連れて行く学生たちにも、とっても優しいのだとか。

ますます興味沸きますねえ。

そして、牧さんがおっしゃっていた大事なこと。
「これを見て『中国っておかしい』だけで終わらせないでほしい。
日本政府だって、同じようなことしてるんだから」

・・・・・・ホントにそうですよ!

いまもYouTubeなどで
活動を発信し続けているアイ・ウェイウェイ。
ぜひチェックしてみてください。


11/30(土)からシアターイメージフォーラムほか全国順次公開。

「アイ・ウェイウェイは謝らない」公式サイト
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