ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

真夏の方程式

2013-06-27 21:05:48 | ま行

ガリレオ、ほぼ初体験。


「真夏の方程式」71点★★★★


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美しい海を持つ瑠璃(はり)ケ浦の町に
ガリレオこと湯川(福山雅治)がやってくる。

彼はこの海で海底資源を開発しようとする企業の
オブザーバーとして来たのだが、

電車で出会った
理科嫌いの小学生(山光)に妙になつかれ、

宿泊先の旅館の娘で
開発反対派の成美(杏)の冷たい視線にさらされる。

そんなことおかまいなしの湯川だったが
ある朝、民宿の宿泊客が死亡する事件が起きる。

そこには過去のある事件が関係しているようで――?!

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東野圭吾原作でテレビでも大人気の
「ガリレオ」の映画版です。

ガリレオほぼ初体験なんですが
人気の秘密がわかった感じ。

無愛想な主人公の理系キャラ立ち
その論理的な思考に基づいた展開、

そしてどぎつ過ぎない殺人描写・・・と
安心して見られるんですねえ。

変わり者の湯川番のような
刑事(吉高由里子)との捜査法の対比も効果的だし、

小学生を登場させて、主人公の助手的な存在にし、
「ぼくなつ」(@プレイステーション)ふうの夏休み風景を
描いたのもオイシイ。

そのぶん、
そもそもの発端となる事件の動機が弱いのが
果てしなく惜しい――!

なんですが、
そのせいでなかなか謎解きできないという良効果をもたらし(笑)
けっこう楽しめました。

刮目は、物語の鍵となる、旅館の娘役・杏さん。

抜群のプロポーションで海中を自在に泳ぎ回り
実に魅せてくれるのですが

新聞のインタビュー記事読んだら、潜りは初体験だったそう(汗)
すごいなあ、堂に入ってるなあ。
多芸な人なので、潜りもできるのかと思ってた。

顔をぐちゃぐちゃにして演技する様子に
すごい成長を見ました。


監督の西谷弘氏は
映画だと「アマルフィ」(@織田裕二)とかも手がけた人。
脚本は「HERO」(@キムタク)とか「犯人に告ぐ」も手がけた福田靖氏。

ともに「日本人に求められるエンタテインメント・ミステリー」の名手、と言って
問題ないんじゃないでしょうか。


★6/29(土)から全国で公開。

「真夏の方程式」公式サイト
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コン・ティキ

2013-06-26 22:56:18 | か行

原作は冒険家のバイブル的存在なんだそうです。


「コン・ティキ」69点★★★★


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1937年、ノルウェーの学者トール・ヘイエルダール
(ポール・スヴェーレ・ヴァルハイム・ハーゲン)は

「ポリネシア人の祖先は、南米から海を渡ってやってきた」
という仮説にたどり着く。

だが、古代の南米には船がなかったため
彼の説は相手にされなかった。

でも、船はなくとも
いかだがあったじゃないか!

そして1947年。

彼は自説を証明するために、
自ら丸太のいかだでペルーからポリネシアまで8000キロの海を
渡ることになるが――?!

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1947年に歴史的大冒険として名を残し、
のちに多くの冒険家や探検家に多大な影響を与えた
いかだ“コン・ティキ”号の航海を

ノルウェー生まれの40代監督コンビが映画化した作品です。


ハラハラはもちろんあるんですが
“ど・シビアな冒険!”というよりも、
海の雄大さ、自然の壮大さや美しさを強く感じさせる
「冒険譚」の趣が強いと感じました。

まあそれはそれで楽しめるんですけどね。

「ライフ・オブ・パイ」のほうが
よっぽど恐ろしい漂流だったなあと。

畳八畳あるか?ってほどのいかだの上で
5人の乗組員が100日も過ごすっていうのが
すでに「うげぇ」ですが(すいません。冒険心なくて)

想定通りというか
乗組員たちの関係が次第にギスギスしてくる様子が、最もハラハラします。

冒険とは無縁だったクルーの不安に
すっごく共感したりしました。

だがしかし
丸太を組んだだけのいかだで大海原に浮かんでいる・・・という事実が想起させるほどの
不安感があまりないのは
やはり物足りない。

嵐やサメなど、トラブル要素も出てくるんですけど
一過性というか。

スッキリした作りなのはいいんですが、
その分終幕が意外にあっけなかったりもしました。

現実のヘイエルダール氏は02年に亡くなったそうですが、
この映画の企画段階には
自ら参加していたそうです。

てか役者よりけっこうイケメンだったりするんだこれが(笑)。



★6/29(土)から全国で公開。

「コン・ティキ」公式サイト
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アンコール!!

2013-06-24 23:16:18 | あ行

これはですね~
テレンス・スタンプにやられました。


映画「アンコール!!」70点★★★★


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ロンドンに暮らす老夫婦、
気むずかし屋のアーサー(テレンス・スタンプ)と
社交的なマリオン(ヴェネッサ・レッドグレイヴ)。

アーサーは病弱なマリオンが
合唱サークルに熱中していることに
よい思いを抱いていなかった。

そしてある練習中にマリオンは倒れてしまう。

それでもなおマリオンは発表会でソロで歌うことを
目標にしていた。

その曲は
「トゥルー・カラーズ」。

そしてマリオンの歌う曲を聴いたアーサーは・・・。

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いや~
ヴァネッサ・レッドグレイヴが
「トゥルー・カラーズ」(by.シンディー・ローパー)を歌うシーンは
鬼の番長も目もさすがにうるっときましたわ(笑)


老人コーラスが生きがいの病弱な妻と、
彼女を支える献身的だけど堅物な夫。

最期のときまで歌と仲間に囲まれて生きる妻と
対照的に不器用な夫。

しかし、夫婦にやがて別れのときが訪れて・・・という話。


これはですねえ
「カールじいさんの空飛ぶ家」の
あの最初の10分をずっとやられてるようなもので
涙腺に拷問でもあります。


ある意味、ド・ベタな話なんですよ。

老人コーラスが定番系でなく、
ヘビメタあり、ヒップホップありだったりするのも、
お約束だがまあなるほど、という感じだし。

しかし、それを見せ切るのが
本気で堅物っぽいテレンス・スタンプ。

彼のムッとした顔の奥に
妻を思う気持ちを感じるだけで
けっこう「グッ」とくる感じです。

さらに
「トゥルー・カラーズ」から後、
妻が亡くなってからの展開がしっかり作られているのも
ちょっと意外性あり。
“第二楽章”という感じでなかなかよかったです。


★6/28(金)からTOHOシネマズシャンテ、7/5(金)から全国で公開。

「アンコール!!」公式サイト
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スタンリーのお弁当箱

2013-06-22 18:46:56 | さ行

うわーお弁当が美味しそう!とは想像つきましたが
それ以上によかったっす。


「スタンリーのお弁当箱」73点★★★★


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インドのムンバイに暮らす
小学生のスタンリー(パルソー)は

わんぱくでおもしろいクラスの人気者だ。

だが、お弁当の時間、
スタンリーはお弁当を持ってこない。

クラスメイトたちは彼に
お弁当を分けてやるのだが

しかし食い意地の張った意地悪な先生(アモール・グプテ監督)が
それを阻止しようして――?!

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明るく、弾けるように楽しく
かつ大事な問題にソッと触れるうまい作品。

インド映画だけど、歌って踊って・・・ではなく、
(あいだに、ちょっとポップソングが挟まるけどね)
96分なのもありがたい。


学校にいつも一番乗りのスタンリー。
お弁当の時間に、そっと水を飲みに行くスタンリー。

しかし彼の家庭の描写はまったくなく、
でも、何か事情があることはさりげなくわかる。

そんな彼に仲間たちは
快くお弁当を分けてやる。

そしてそこに悪役の先生が登場・・・と
善悪はっきりと、
観客の感情移入をシンプルに誘導するんですね。


そんなストレートな娯楽性のなかに
そっと
インドの子どもの貧困や、労働問題など
問題提起を含ませてる。
実に効果的な方法だと思いました。

スタンリーをいじめるイジワルな国語の先生は
アモール・グプテ監督本人で

スタンリー役の少年は
監督の実の息子なのだそう。


監督は子どもたちに台本を与えず、
彼らの自然なパフォーマンスを引きだしたそうで
是枝監督の手法に似てるかも。

そういえば
光溢れる映像にもちょい共通点あるかもなー。

こっちのチラシもカワイイです。


★6/29(土)からシネスイッチ銀座、梅田ガーデンシネマほか全国順次公開。

「スタンリーのお弁当箱」公式サイト
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コンプライアンス-服従の心理-

2013-06-19 21:06:28 | か行

実に胸くそ悪い話なんですが
むー・・・おもしろいんですよ。


「コンプライアンス-服従の心理-」72点★★★★


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2004年、アメリカ・ケンタッキー州にある
大手ファストフード店。

金曜日で店が大わらわなときに
女性店長(アン・ダウド)のもとに
1本の電話がかかってくる。

電話の主は「警察官だ」と名乗り、
店員の18歳の少女(ドリーマ・ウォーカー)に
窃盗の容疑がかかっていると言う。

「いま、その場で少女の身体検査をしてほしい」
命じられた店長は――?!

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実際に起こった事件を題材に
ドキュメンタリーではなく、再現ドラマでもなく、
事件の異様さと不気味さを冷淡に描いた作品。

観ているときはムカムカするんですけど
これは良くできていると言わざるを得ない(苦笑)

「少女が米大手企業を訴えた」という側面が
宣伝の全面になってるけど、

主題はそこよりも
「なんでそんなことになったのか?!」に絞られていて
そこがおもしろいんですね。

警官を名乗る男からの電話で
「従業員の少女を裸にして調べろ」と命じられた店長たちは
「あれよあれよ」という間に言いなりになり
マジであり得ない展開となる。

「いたずらでしょ?」「はやく気づけよ!」と
1時間半に渡ってイライラさせられ
不愉快なこと極まりない。

しかし、現実に同様の事件が
70件以上も起きてるっていうからもう!

「なんでみんな、怪しいと気づかない?」と憤慨しつつ、
「さて、自分なら気づけたか?」と自問する。

警官を偽る犯人のトークは実に巧妙だし、
なにより
誰にも後ろ暗いことのひとつふたつある(特にワシ・・・汗

「できれば警察に関わりたくない」と
言いなりになってしまう人々の
気持ちもわかったりして・・・。


という具合に
観ている間は猛烈にイラつきつつも、
見終わってそこんところの心理を、深く潜って考えたくなり
見応えあったなアと思い返す次第です。


で、深く潜って考えるその手助けになったのが
おなじみ「ツウの一見」(@週刊朝日)でお話を伺った
社会学者・辻泉さんの解説。

「なぜ、こういう事件が起こるのか?」を
すごーく明快に教えていただいて
マジで“頭の電球に灯が点った”状態になりました。

現在発売中の6/28号に掲載されていますので
鑑賞後にでもぜひ、ご一読を!


★6/29(土)から新宿シネマカリテほか全国順次公開。

「コンプライアンス-服従の心理-」公式サイト
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