ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

終の信託

2012-10-22 19:41:04 | た行

うっ。尊厳死って簡単じゃないんだ・・・と
ショックを受けて

観たあと、親にこの映画の話をして
「どうすんべか?!」と大盛り上がりしてしまった(苦笑)


「終(つい)の信託」64点★★★

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1997年。

呼吸器内科のエリート医師・折井(草刈民代)は、
同僚の高井(浅野忠信)と不倫をしていた。

だが、折井は高井にフラれてしまう。

折井をなぐさめたのは
ぜんそくで長年、入退院を繰り返している
患者の江木(役所広司)の優しさだった。

ぜんそくの症状が悪化し、苦しむ江木は
折井に頼む。

「最期のときは楽にして欲しい――」

そして折井はある決断をするのだが――。

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周防正行監督、草刈民代×役所広司が
「Shall weダンス?」以来16年ぶりに共演した作品です。

すごい内容なんですよ。
でもすごく評価が難しい。

というのは、
2時間24分のうち1時間半は退屈だから。

残り50分くらいからの盛り上がりはすごいんですけどね。


前半は
医師役の草刈民代があまりに無機質だったり、
医局内での不倫とか、
失恋して荒波の海を見るとか(失笑)
あまりに紋切り型な描写に、相当げんなりさせられます。


しかし後半、
彼女がある決断をし、そのことが刑事事件に発展し、
検事(大沢たかお)との対決に及ぶと
「草刈民代でなければ出来なかったか」と、ようやく納得させられるんですね。


「チューブだらけで生き続けたくない」という患者の最期の場面なんて
「キレイごとじゃないんだ」という現実を
壮絶に突きつけられてショックだし

「苦しむ人を本当の意味で助けたい」
「殺人」になるむなしさも、とことん感じます。


番長は延命治療拒否派ですが、
しかし「尊厳死」なんて、現実には無理なんじゃないか?というくらい
どずーん、と考えさせられました。

また
威圧的でとことんイヤな検事役の大沢たかお氏が迫力にリアルで
後半は「それでもボクはやってない」を思い出させますね。


“周防流ラブストーリー”という売りだけど
完全に社会派に重心をおいてもらったほうが
見やすかったかな、と感じました。


★10/27から全国で公開。

「終の信託」公式サイト
コメント (2)
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