91歳の女性監督が織る、
人生の機知と知性が詰まったジョージア映画。
「金の糸」75点★★★★
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現代のジョージア・トリビシに暮らす
作家のエレネ(ナナ・ジョルジャゼ)。
79歳になり、足も悪い彼女だが
今日もパソコンに向かって文章を書き、
凜とした姿勢で生きている。
同居する娘と、彼女の娘の子である
ひ孫のエレネとも仲良しだ。
だが、エレネは娘に
「アルツハイマーの症状が出てきた
夫の母ミランダ(グランダ・ガブニア)をここに引っ越させる」と言われ
大いに憤慨する。
ミランダはソビエト時代に政府の高官だった女性。
エレネは彼女をよく思っていないのだ。
そんな彼女のもとに
恋人から60年ぶりに電話がかかってきて――。
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91歳のラナ・ゴゴベリゼ監督が、自身の経験を交えて織り上げた
ジョージア映画。
凛として、知性とともに日々を過ごす
美しいヒロイン・エレネと
ソ連時代に政府に尽くした高官だったミランダ。
ソリの合わない、どころじゃない、
イデオロギーもアイデンティティも拮抗する二人の様子に
ジョージアの悲しい時代や過去が重なっていく――という展開。
二人のシニア女性が
ともに自立した女性であったことも興味深く
ミランダの持つプライドと、エレネの持つプライドのベクトルが
全然違うのも、おもしろい。
しかもミランダは、ソ連時代にかなりの権力を持っていたので
いまだに近所の人たちにもチヤホヤされるんですよね。
エレネのおもしろくなさそうな顔といったら(笑)
まあ、笑ってすむ話ではなく
実はエレネの運命を変えてしまったのが
他ならぬミランダだった――という衝撃の事実も明らかになっていくんです。
昔の恋人との電話でのやりとりも
しかし下世話な恋の再燃などにあらず、
詩を送り合い、文学を朗読し合う
ハイレベルのロマンスですてきだし
そしてまたこの映画には金言が詰まりすぎ。
エレネは言うんです。
「死が来たらどう迎えるかを考えていた。
でもあることに気づいたら心配は消えたの。
私がいる間はそれは来ない。それが来たら私はいない」――。
うう~む、至言。
ジョージアの近代史を知っていたほうが
より読み解きやすいけれど
知らずとも、話の核は理解できる。
人の生きてきた道には過去ができる。
その道の端が見えてきたとき、過去とどう向き合うか――
深い問いかけがここにはあります。
窓からさまざまな人間模様がみえる
舞台セットのようなアパートの描写もうまい。
そして、この映画をみたことで
ロシアの巨匠コンチャロフスキー監督による
「親愛なる同志たちへ」(4/8公開)の理解がグン!と深まったのが
すごい、と思った。
コンチャロフスキー監督が描く党側のヒロインは
まさに、かつてのミランダなわけですよ!
それに
ソ連時代の抑圧や粛清を経験したジョージアの過去は
現在のウクライナの状況にもつながる
こうして映画は学びをつなげ、広げてくれるんですね。
岩波ホールへ、GO!
★2/26(土)から岩波ホールで公開中。ほか全国順次公開。