ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ライトハウス

2021-07-12 02:23:48 | ら行

ロバート・パティンソン×ウィレム・デフォーの

演技バトルが最高!

 

「ライトハウス」72点★★★★

 

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1890年代。

ニューイングランドの孤島に

二人の灯台守が赴任してくる。

 

長年、この仕事をしてきた

クセのある先輩トーマス(ウィレム・デフォー)と

今回が初めての若者イーフレイム(ロバート・パティンソン)。

 

孤島に二人っきりなのにも関わらず

そりが合わない二人は 

険悪なムード。

 

さらに嵐がやってきて

二人は完全に島に取り残され、孤立してしまう――。

 

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A24製作のスリラー。

 

サイレント映画やヒッチコックなど

さまざまな古典の匂いをまといつつも

斬新で

 

おっ!と驚かされました。

 

1983年生まれ、「ウィッチ」(15年)で評価された

ロバート・エガース監督は

1801年に実際に起きた事件にインスパイアされて

本作を創り上げたそう。

 

 

イギリスの孤島に赴任してきた二人の灯台守。

年かさで、ちょっとヤバい感じのウィレム・デフォーと

若いのにワケありっぽい

ロバート・パティンソン。

 

ただでさえ閉塞感ある状況に加え、

二人が全然歩み寄らず、不仲だという(失笑)

もうピリピリするなあ!!

 

 

で、さらに大嵐のために

島が完全に孤立してしまい

さらに極限状態に陥っていくんですね。

 

閉じ込められた二人の運命やいかに?!

 

モノクロームでコントラストのある映像は

ひどく陰鬱で、しかし美しく

 

常に不気味に鳴り響く「ボー、ボー」の音が

海鳴りなのか、警告音か、

終始、神経を逆なでしてくる。

 

そんななかで、次第に精神的に追い詰められていく二人。

現実なのか?幻覚なのか?

 

そんな「際(きわ)」が怖ろしい。

 

ウィレム・デフォーのヤバく深い演技は

「永遠の門 ゴッホの見た未来」(19年)でも十二分に味わっていましたが

ロバート・パティンソンの旨みは

「TENET テネット」(20年)後で、より確かになった感じ。

 

その二人の極限ギリギリな演技合戦が最高で

モノクロームの世界に白い火花が散るような

感覚を味わいました。

 

いやいや

ホラージャンルって

ホントに映画界に「新しい」ものをくれるから

目が離せないんだよね・・・怖いんだけどね・・

いや、これはそんなに「ギャー!!」って系じゃないんだけどね・・・

 

★7/8(金)からTOHOシネマズ シャンテほか全国で公開。

「ライトハウス」公式サイト

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レンブラントは誰の手に

2021-02-28 15:11:07 | ら行

後半の展開にハラハラ。

 

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「レンブラントは誰の手に」70点★★★★

 


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「ようこそ、アムステルダム国立美術館へ」


(おそらくこの後の顛末も入れて

「みんなのアムスステルダム美術館へ」(14年)のタイトルになってます)

で、美術館改装工事の裏側を

そのドタバタをも正直にユニークに描いた

ウケ・ホーヘンダイク監督によるドキュメンタリー。

 


レンブラントの名画が家に飾ってあるという

オランダのごっつ名家の11代目にして

若き画商であるヤン・シックス氏。

 


お育ちの良さを感じさせる

この甘~いイケメンが

オークションで見つけた一枚の絵画。

 


「え?これ、レンブラントじゃん?

だってうちにあるし、ずっとそのタッチ見てきたし」と

判断した彼は

その絵を安く競り落とす。

そしてその真偽を専門家に鑑定してもらうのだが――?!というのが

主軸です。

 


で、まあニュースにもなっている話なのですが

せっかくなので、そのハラハラも併せて観ていただきたい。

それに真偽とは別に、意外な問題も起こってくるんです!

 


主人公ヤン・シックス氏は純然たるおぼっちゃまで

別にお金儲けが目的じゃないんですね。

映画の中で、彼自身が

「家柄を超えて、画商として自身の力を試したかった」と素直に言っている。

 


たしかに目は確かそうだし、

眠っているお宝発掘に向けた彼のワクワクした笑顔も非常にいい。

 


展開もまるきりドラマでおもしろいのですが

ただ、この映画、彼だけのストーリーじゃないんですよね。

 


同時に豪奢な自邸でレンブラント絵画を愛でる

公爵の暮らしぶりとか

逆に絵画を手放すことになった男爵の話とか

それを国の威信にかけて

手に入れようとする美術館同士の駆け引きとか。

 


話があちこちに入り乱れてつなぎ合わされるので

少々わかりにくく

思考が寸断されるのが難点。

 


「芸術の真価とは何か? それは値段なのか? それを誰が判断するのか?」といった

大きな問題を提示していることはわかるのですけどね。

 


さらに、こんなこと言っても詮無いけれど

こんなご時世、庶民としては

ヨーロッパの純然たる階層社会、その歴史を

羨望というより

なんだか複雑な気持ちで見てしまうのもたしか。

 


しかし彼らのような人々が

レンブラントほか才能のパトロンとなり

彼らを育成し、美の至宝を世に残してきたのも事実なんだよなあと

いろいろを考えたりするのでした。

 


★2/26(金)からBunkamura ル・シネマほか全国順次公開。

「レンブラントは誰の手に」公式サイト

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ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ

2020-10-10 18:44:19 | ら行

じわじわと来る、「あとじわ」系。

 

「ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ」73点★★★★

 

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サンフランシスコで生まれ育ったジミー(ジミー・フェイルズ)は

祖父が建て、かつて家族と暮らし

しかし、すでに人手に渡ってしまった

思い出の宿る家を愛している。

 

ある日、現在の家主が

その家を手放すと知ったジミーは


友人モント(ジョナサン・メジャース)の助けを借りながら

再びこの家を取り戻すべく

奔走するのだが――?!

 

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祖父が建て、いまは人手に渡った実家に

こだわり続ける青年と、その親友のつながりを描く物語。

 

新しいのに、懐かしく

どこか文学的で、静かなSFのような雰囲気もある

不思議におもしろい作品です。

 

おなじみ気鋭のA24×ブラピ率いるプランB作品だそうで

ああ、なるほど!

 

ハッとさせるカメラワークや音楽、

独特の語り口とリズムをもつ、映画文体。

そこにある空気を味わう・・・という感じなんですよね。

 

いつもどおり、予備知識ナシで観て

「若者が撮ったとしたら、どんだけ渋い、いい趣味なんだ!」と思ったんですが

実際、若者が撮ってた(笑)

 

主人公ジミー演じるジミー・フェイルズと

ジョー・タルボット監督は10代からの友人だそうで

センスよく、いい意味で老成してる感ありあり。

 

ジミーの実家があるサンフランシスコの街は

かつて日系人たちが住み、1941年のパール・ハーバー攻撃で彼らが収容所へ強制移住させられ

その後、ジミーの祖父らの世代の黒人たちが住み、

やがて家賃が高騰し、黒人たちは出て行かざるを得なくなり、

いまはリッチピープルたちが暮らし、

かつての住人はワゴン車で暮らしていたりする――という歴史の変遷と事情がある。

 

いくら、その家を愛していても

しがない暮らしをしているジミーに、手が届くわけないんです。

でも、あきらめられない。

 

そもそも、なんで世の中は、こんな状況になっちまったのか。

そんな叫びも内包していて、

ちゃんと深い。

 

 

なにより

ジミーがこだわっている家が

「プール付き豪邸」とかではなく、

レトロな祖父の家っていうのが、いいんですよね。

 

美しいヴィクトリアン様式の家だけど

いまどきの趣味からいうと、ちょっとテーマパーク風で、キッチュともいえる。

こういう家にこだわる、ってのが、じわじわとツボる。わかる。

 

ワシも子ども時代に行った

渋谷の裏手にあった、おじさんちが忘れられない。

 

レトロな一軒家の

使い込まれた板の間、台所の灯り、雑多な空間――

取り壊される、と聞いて見に行ったときも

アパートになってしまったあとも

ついつい見に行ってしまうんですよ。忘れられないの。

 

もちろん、そんな一等地、手に届くわけもないじゃん!って

ああノスタルジー。

 

そういうのあるある、って感じる方、ぜひ!

 

★10/9(金)から全国で公開。

「ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ」公式サイト

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ライフ・イズ・カラフル! 未来をデザインする男 ピエール・カルダン

2020-10-02 23:18:10 | ら行

ピエール・カルダン、ブランドの名前じゃなくて

人の名前だって、知ってました?

 

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「ライフ・イズ・カラフル! 未来をデザインする男 ピエール・カルダン」71点★★★★

 

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ファッションだあ?知らねえナァ?という昭和のおじさんだって

知ってるであろう「ピエール・カルダン」の名前。

そのご本人を追うドキュメンタリーです。

 

ご本人がいまだバリバリ現役、かくしゃくとした98歳(!)

ってことにまずびっくり。

 

というか、失礼ながらご存命だったのか!

いや、それ以前に

デザイナーの名前だったのか!と驚く人も少なくないんじゃないかなあ。

 

だって本人も言うんだもの。

「“ピエール・カルダン”が実在すると驚かれるよ。

ブランドの名前だと思われている。広告の成功だね」

 

ええ、ホントにそのとおりでございます。

 

1922年、イタリア・ヴェニス近郊に生まれた彼は

2歳でフランスへ移住。

ディオールのもとで働き、1950年、28歳で独立し

「ピエール・カルダン」を創り上げたデザイナーなんですよ。

 

あまりにその名が偉大で、実は知らないことだらけ――ということが、まず驚きでした。

 

ドレスを作るだけでなく、

1950年代後半から

日本人モデルを始め多様なモデルを起用し、

 

ファッション未開の地だった日本、中国、ソ連にも行き、

ファッション業界だけでなく

世界の美の基準にも革命を起こした、すごい人だったんですねえ。

 

 

各国とライセンス契約をどんどん結び

事業を拡大していった背景には

金儲けだけでない、

ファッション途上国の産業の促進もあったようです。

 

もちろん、商人(あきんど)魂もあったと思いますが

なにより、知らないことを知る、好奇心が大きかったのかなあと思う。

 

特に日本との、浅くないつながりに驚きました。

 

そして、いつも海外のドキュメンタリーを見ながら、思うこと。

1950年代から最近まで

それぞれの時代でピエール・カルダン氏にインタビューをする人たちの

まあ、敏腕なこと!

さまざまに練った質問を繰り出して、本音を引きだそうとする。

 

勉強させていただいてます!

 

★10/2(金)からBunkamura ル・シネマほか全国で公開。

「ライフ・イズ・カラフル! 未来をデザインする男 ピエール・カルダン」公式サイト

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リアム・ギャラガー:アズ・イット・ワズ

2020-09-28 23:56:17 | ら行

どんな才人にも、持てないものがあるのか。

 

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「リアム・ギャラガー:アズ・イット・ワズ」69点★★★★

 

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名作なドキュメンタリー

「オアシス:スーパーソニック」(16年)のその後を

弟のリアム・ギャラガー側から描いた作品。

 

兄ノエルとの決裂後、

自らバンドを結成し、音楽を続けようともがくさま、

私生活でのトラブル、挫折などを正直に告白しています。

 

トラブルメーカーであっても

いまも天賦の声とグルーヴに変わりなく

さすがだなあ、と思うけど

 

でも、やっぱり四苦八苦しているんですよね。

 

「オアシス」というバンドの

あの瞬間、あのスパークは時代との奇跡的な出会いだったのかもしれないし

リアムという人の才能が、一般を軽く超越しているのは当然。

 

が、それでも

どんな「持てる者」にも「持っていないものがある」のだと、

どんな才人も、一人ではやはりダメなのだと

 

そのことがよくわかって

ちょっと残酷でもある。

 

だからこそ、それを直視し、なおかつ前へ進もうとする

リアムのがんばりと胆力には敬服するし

恋人にしてマネージャーである女性と出会えて、本当に良かった!と思うのだけど

 

解散から11年。

いまだ会っていないという兄弟に

なんとかならんのか!と歯がゆい(余計なお世話だけどさー)

 

しっかりできたドキュメンタリーではあるのだけど

ただ、「オアシス:スーパーソニック」があまりに良ドキュメンタリーだったことと

そしてやはり、

片方だけの言い分を聞き

周辺取材をするのは、ちょっとフェアじゃない――という気がしてしまうんですよ。

 

ほんとにこの二人、どうにかならんのか!

 

★9/25(金)から公開。

「リアム・ギャラガー:アズ・イット・ワズ」公式サイト

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