ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

刑事ベラミー

2012-04-19 23:43:50 | か行

フランス映画未公開傑作選の1本。
「引き裂かれた女」クロード・シャブロル監督の
遺作となった作品です。

「刑事ベラミー」72点★★★★

フランスのとある海岸で
黒こげの車と遺体が発見される。

そんなとき
フランスのある町で休暇中のベラミー警視(ジェラール・ドパルデュー)を
ある男が訪ねてくる。

ノエル(ジャック・ガンブラン)と名乗る彼は
ベラミーに1枚の写真を見せ、
自分がその写真の男を殺したと告白する。

だがその写真の男はノエル自身にうり二つだった――。


男に興味を持ち、調べ始めたベラミー。
それは例の海岸での事件に関連があるようで――?!



ゴダールやトリュフォー、エリック・ロメールなどとともに
ヌーヴェル・ヴァーグを代表する作家とされ
2010年、惜しくもこの世を去った
クロード・シャブロル監督。

“フランスのヒッチコック”と呼ばれるほどの
香り高いミステリーの名手であります。


そんなシャブロル監督が
実際に起こった保険金詐欺事件の三面記事にアイデアを得て、
プラス
作家ジョルジュ・シムノンの「メグレ警視」シリーズに
「さりげないオマージュを捧げたいと思った」という遺作です。

さりげない、っていうのが
またカッコイイじゃあーりませんか。

そして映画はというと
スリリングながらいささかも大騒ぎすることのない
流石の手さばきで「大人」を魅せてくれる
上質な刑事モノ。


さまざまなオマージュや含みがありますが、
特別なツウでなくとも“見ていればある程度わかる”な優しさがあり、

そして「引き裂かれた女」もそうでしたが
元が実際にあった三面記事事件だという
メロドラマチックな大衆性といい

それこそ大人、という感じ。


いまどきのわかりやすい謎解きではないので
ややとまどうかもしれませんが

冒頭の口笛から、ラストまで、
ちゃんと目を見開き、耳をかっぽじって観ていれば
あらゆるものに意味がありますぞ。


★4/21から渋谷イメージフォーラムで公開。

「刑事ベラミー」公式サイト

「フランス映画未公開傑作選」では
このほか
この4月に無くなったクロード・ミレール監督「ある秘密」
エリック・ロメール監督「三重スパイ」も公開されます。
コメント
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