アキ・カウリスマキ監督、
5年ぶりの長編新作です。
「ル・アーヴルの靴みがき」74点★★★★
北フランスの港町ル・アーヴルで
靴みがきをする初老の男マルセル(アンドレ・ウィルム)。
暮らしは決して楽ではないが、
気心知れたご近所さんに囲まれ、
家に帰れば妻(カティ・オウティネン)と愛犬ライカが
待っていてくれる。
そんなささやかな幸せを噛みしめるマルセルは、
あるとき、
不法難民として警察に追われるアフリカの少年に出会う。
そしてマルセルは、
少年を助けてやろうとするのだが――。
フランスの端から、
海をまたいだロンドンを目指す不法難民という題材は
「君を想って海をゆく」と同じ。
なのに風合いがこうも違うってのが、
映画の面白いところ。
本作は市井の人を描く達人、
カウリスマキ監督ならではの味わいで、
貧しい人が、困った人に手を差し伸べる。
周囲の人々も、黙ってその味方をする。
そしてみんながだんだん優しくなっていく。
そんななんのてらいもない、自然な善意が、
真っ直ぐに見る人の目を射るんですねえ。
甘ったるさではなく、淡泊な筆遣いが、
人の世の情を、まこと見事に映し出しており、
また独特の色使いと間合い、
ユーモアもさすがです。
こういう映画を観ると、素直に
「世の中、捨てたもんじゃないよ」って思えます。
「もっといい職もあるだろうが、
靴みがきと羊飼いが、より人々に近いのさ」という
主人公マルセルのつぶやきが好き。
貧しくとも愛する家族と、
少しのワインがあればいい。
幸福度の高い暮らしの大切さを
しみじみ感じますねえ。
そう、コレですよ、コレ!(笑)
★4/28(土)から渋谷ユーロスペースほか全国順次公開。
「ル・アーヴルの靴みがき」公式サイト