ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

オレンジと太陽

2012-04-11 23:14:04 | あ行

名匠ケン・ローチ監督の息子、
ジム・ローチ監督作品。

これが不思議なほど、オヤジさん似だったりして。

「オレンジと太陽」74点★★★★


1986年の英・ロンドン。

社会福祉士のマーガレット(エミリー・ワトソン)は、
ある女性から「自分が誰なのか調べて欲しい」という不思議な依頼を受ける。

その人は幼いころ、親の都合で
イギリスの児童養護施設に預けられていたが、

あるとき子どもたちだけで船に乗せられ、
オーストラリアに強制的に移民させられたというのだ。

「そんなことがあるわけない」
信じないマーガレットだったが、

あるきっかけで彼女の話を調べはじめる。

そこには驚くべき事実があった――。


19世紀から、ごく最近の1970年代まで実際に行われていた
イギリスからオーストラリアへの
強制的な“児童移民”の事実を描いた作品。

その事実はイギリスでも
つい最近まで知られていなかったそうで
まずはそのことに驚かされます。

監督は主人公マーガレットの書いた本に出合い、
最初はこの話をドキュメンタリーにしようと思ったそうですが、
そうせずに、リアリティをそのままに、
ドラマにしたのがよかった。


社会派な題材ながら、詰問調などにならず
堅実に静かに人の”心”を描く姿勢が
やはり父ケン・ローチにダブります。


まあ、父上の近作よりも
息子のほうがかなりマジメで堅い印象なのが、
またおもしろいところで(笑)。

根底にあるテーマは
「人を助けるとはどういうことか」。

エミリー・ワトソン演じる主人公は、
何千人もの元孤児たちの話を聞くうちに、
その痛みに同調し、自身の心も病んでしまうんですね。

それでも彼女の熱心さ、真摯な思いは
ひねくれてしまった人の心も徐々に開かせる力を持ってる。

真の人助けとはなにか、と考えさせられました。

それに
ちょっとした風景のはさみかたとか、音楽なんかにも
どこか父上との共通点があるんだよなあ。不思議。

いい後継者を育てたんですねえ、パパローチ。


★4/14(土)から岩波ホールほか全国順次公開。

「オレンジと太陽」公式サイト
コメント
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