A級順位戦
2月1日に8回戦が行われた。
郷田 真隆棋王(5勝3敗)○-●高橋 道雄九段(2勝6敗)…23時59分
佐藤 康光王将(4勝4敗)○-●屋敷 伸之九段(4勝4敗)…0時2分
谷川 浩司九段(2勝6敗)●-○橋本 崇載八段(2勝6敗)…0時9分
羽生 善治三冠(7勝1敗)○-●渡辺 明 竜王(5勝3敗)…0時46分
三浦 弘行八段(6勝2敗)○-●深浦 康市九段(3勝5敗)…0時56分
(時刻は終局時刻)
羽生-渡辺戦は終盤、大波乱が起こった。

羽生三冠が△6八角成の王手に、8八の銀を上がって移動合をしたところ。歩頭の銀捨てである。普通の▲7七歩より後手の馬取りのプレッシャーがあり、後手の指し手に制約を与えている。しかし、平凡に△7七同歩成とされて、後手玉は詰まないという結論が控室の研究で出されている。
形作り?……しかし、数手前に玉を6七に逃げる手も有力だったのに、あえて7七に逃げ△5九角と王手をさせ、合駒の銀を桂で取られ(桂銀交換)、さらに△7六歩にわざわざ8六に玉を逃げ△6八角成と王手で金をぽろっと取らせる順を選んだからには、△7七同歩成には、後手玉が詰むか誰も気がつかない詰めろ逃れの詰めろがあるのではないかと淡い期待を抱いていた。
………△2三歩??、≪何、この手?≫
▲3四桂△5二玉▲3三龍……何か、すごく得したような。先の△2三歩は▲3三龍と入ってくださいという1手パスに思えた。≪何が起こったんだ?≫
羽生三冠が△7七同歩成とされた時に後手玉が詰むと錯覚していたのは一連の指し手から想像できる。しかし、渡辺竜王も全く同様な錯覚をしていたという。両者とも「ちょっと前の局面で、先手の持ち駒が銀1枚でも詰みだったので、△7七同歩成の局面も当然詰む」と思い込んでいたらしい。取り敢えず、先手龍の利きを逸らして、それから先手玉の詰みを考えようとした△2三歩だったようだ。
長時間の激闘、時間切迫の中、読みを省略、エネルギーを節約して、この先の難解な局面を読み切ろうとした。しかも相手は羽生三冠である。さらに、如何にも詰みがありますよという羽生三冠の手順である。
結局、龍の利きが変わっても先手玉は詰まず、大逆転となった。
それにしても羽生三冠、今期の順位戦は神がかり的な運だ。2局目の郷田戦以外、負け寸前、敗勢の局面からの逆転勝ちばかり。敗れた前局の三浦戦は逆に楽勝に思えた。2勝6敗と残留争いをしていても不思議ではない内容だった。
この結果、挑戦権争いは、7勝1敗の羽生王位・王座・棋聖と6勝2敗の三浦八段に絞られた。
残留争いは、剣が峰に立たされている橋本八段が勝ち、谷川九段と高橋九段が星を伸ばせなかったため、2勝6敗で谷川九段、高橋九段、橋本八段が並び、八回戦で敗れた3勝5敗の深浦九段も残留を確定できなかった。
それにしても、深浦九段はA級順位戦では勝負弱い。
八回戦の相手の三浦八段とは因縁があって、19年前のC級2組の最終局、ともに7勝2敗だった両者が対局し激戦の末、三浦八段が勝ち、来季の順位を上位にしたのが因縁の始まりで、翌年(53期)のC級2組、第58期B級2組で両者同星ながら、頭ハネで三浦八段のみ昇級。さらに、A級順位戦においても、第63期・第65期・第67期も同星ながら三浦八段が残留、深浦は降級している。
その順位戦の不運とは逆に、両者の対戦は現在、深浦九段が12連勝中であった。(以上の情報は、中継の実況解説より)
現在、降級の危険度は、橋本>高橋>谷川>深浦の順。橋本八段と高橋九段は負けると即降級、橋本八段は勝っても、谷川九段、深浦九段、高橋九段のうち二人に勝たれると降級。また、高橋九段は勝っても、谷川九段と深浦九段の両者に勝たれると降級という状況。
谷川九段は最終局に敗れても、高橋九段と橋本八段がともに敗れると残留。深浦九段は敗れても、谷川九段、高橋九段、橋本八段のうち2人以上敗れると残留できる。
深浦九段の降級の確率は、勝率を5割と仮定すると、16分の4で25%。最終局に敗れたとしても、残留確率は50%はある。とは言え、過去3度降級し(4勝5敗での降級が2度の不運)、まだ残留したことのない深浦九段は背筋の寒い感覚が消えないところだろう。
A級最終局(3月1日)の対戦カードは以下の通り。
△羽生 善治三冠(7勝1敗)-▲橋本 崇載八段(2勝6敗)
△三浦 弘行八段(6勝2敗)-▲高橋 道雄九段(2勝6敗)
▲渡辺 明 竜王(5勝3敗)-△郷田 真隆棋王(5勝3敗)
△佐藤 康光王将(4勝4敗)-▲深浦 康市九段(3勝5敗)
▲屋敷 伸之九段(4勝4敗)-△谷川 浩司九段(2勝6敗)
ところで、久しぶりに『将棋世界』2月号の「A級順位戦予想クイズ」に応募しました。いつも対戦表に勝敗予想は書き込んではいるのですが、投函するのを忘れてしまうのです。今年は締切当日に投函できました。
その予想ですが、8回戦で三浦-深浦戦を外してしまいました。今期こそ深浦九段に残留して欲しいと思ったからですが、深浦九段の8、9回戦での失速ぶりを考慮した最初の予想を貫くべきでした。
さて、最終局のクイズの私の予想は、
○羽生 善治三冠-橋本 崇載八段
○三浦 弘行八段-高橋 道雄九段
○渡辺 明 竜王-郷田 真隆棋王
佐藤 康光王将-深浦 康市九段○
○屋敷 伸之九段-谷川 浩司九段
羽生三冠の勝利は当然として(橋本八段ごめんなさい)、三浦八段のA級順位戦の最終局は、過去9年で6勝3敗(ここ5年は4勝1敗、3連勝中)の強さを考えると三浦八段の勝ちは動かない。渡辺-郷田戦は棋王戦や王将戦での流れで変動しそうだが、竜王の強さと先手番を考えて竜王の勝ち。
佐藤-深浦戦は私の希望。屋敷-谷川戦は、谷川九段に復調の気配はあるものの、順位戦先手番の屋敷九段の鬼のような強さを考えると屋敷九段の勝ち。
降級の有力3名が全員敗局で、降級者は高橋九段、橋本八段ということになるが、最終局の私の予想は昨年は5局中2局しか的中せず、一昨年は全局外しているので、当てにはならない。
2月1日に8回戦が行われた。
郷田 真隆棋王(5勝3敗)○-●高橋 道雄九段(2勝6敗)…23時59分
佐藤 康光王将(4勝4敗)○-●屋敷 伸之九段(4勝4敗)…0時2分
谷川 浩司九段(2勝6敗)●-○橋本 崇載八段(2勝6敗)…0時9分
羽生 善治三冠(7勝1敗)○-●渡辺 明 竜王(5勝3敗)…0時46分
三浦 弘行八段(6勝2敗)○-●深浦 康市九段(3勝5敗)…0時56分
(時刻は終局時刻)
羽生-渡辺戦は終盤、大波乱が起こった。

羽生三冠が△6八角成の王手に、8八の銀を上がって移動合をしたところ。歩頭の銀捨てである。普通の▲7七歩より後手の馬取りのプレッシャーがあり、後手の指し手に制約を与えている。しかし、平凡に△7七同歩成とされて、後手玉は詰まないという結論が控室の研究で出されている。
形作り?……しかし、数手前に玉を6七に逃げる手も有力だったのに、あえて7七に逃げ△5九角と王手をさせ、合駒の銀を桂で取られ(桂銀交換)、さらに△7六歩にわざわざ8六に玉を逃げ△6八角成と王手で金をぽろっと取らせる順を選んだからには、△7七同歩成には、後手玉が詰むか誰も気がつかない詰めろ逃れの詰めろがあるのではないかと淡い期待を抱いていた。
………△2三歩??、≪何、この手?≫
▲3四桂△5二玉▲3三龍……何か、すごく得したような。先の△2三歩は▲3三龍と入ってくださいという1手パスに思えた。≪何が起こったんだ?≫
羽生三冠が△7七同歩成とされた時に後手玉が詰むと錯覚していたのは一連の指し手から想像できる。しかし、渡辺竜王も全く同様な錯覚をしていたという。両者とも「ちょっと前の局面で、先手の持ち駒が銀1枚でも詰みだったので、△7七同歩成の局面も当然詰む」と思い込んでいたらしい。取り敢えず、先手龍の利きを逸らして、それから先手玉の詰みを考えようとした△2三歩だったようだ。
長時間の激闘、時間切迫の中、読みを省略、エネルギーを節約して、この先の難解な局面を読み切ろうとした。しかも相手は羽生三冠である。さらに、如何にも詰みがありますよという羽生三冠の手順である。
結局、龍の利きが変わっても先手玉は詰まず、大逆転となった。
それにしても羽生三冠、今期の順位戦は神がかり的な運だ。2局目の郷田戦以外、負け寸前、敗勢の局面からの逆転勝ちばかり。敗れた前局の三浦戦は逆に楽勝に思えた。2勝6敗と残留争いをしていても不思議ではない内容だった。
この結果、挑戦権争いは、7勝1敗の羽生王位・王座・棋聖と6勝2敗の三浦八段に絞られた。
残留争いは、剣が峰に立たされている橋本八段が勝ち、谷川九段と高橋九段が星を伸ばせなかったため、2勝6敗で谷川九段、高橋九段、橋本八段が並び、八回戦で敗れた3勝5敗の深浦九段も残留を確定できなかった。
それにしても、深浦九段はA級順位戦では勝負弱い。
八回戦の相手の三浦八段とは因縁があって、19年前のC級2組の最終局、ともに7勝2敗だった両者が対局し激戦の末、三浦八段が勝ち、来季の順位を上位にしたのが因縁の始まりで、翌年(53期)のC級2組、第58期B級2組で両者同星ながら、頭ハネで三浦八段のみ昇級。さらに、A級順位戦においても、第63期・第65期・第67期も同星ながら三浦八段が残留、深浦は降級している。
その順位戦の不運とは逆に、両者の対戦は現在、深浦九段が12連勝中であった。(以上の情報は、中継の実況解説より)
現在、降級の危険度は、橋本>高橋>谷川>深浦の順。橋本八段と高橋九段は負けると即降級、橋本八段は勝っても、谷川九段、深浦九段、高橋九段のうち二人に勝たれると降級。また、高橋九段は勝っても、谷川九段と深浦九段の両者に勝たれると降級という状況。
谷川九段は最終局に敗れても、高橋九段と橋本八段がともに敗れると残留。深浦九段は敗れても、谷川九段、高橋九段、橋本八段のうち2人以上敗れると残留できる。
深浦九段の降級の確率は、勝率を5割と仮定すると、16分の4で25%。最終局に敗れたとしても、残留確率は50%はある。とは言え、過去3度降級し(4勝5敗での降級が2度の不運)、まだ残留したことのない深浦九段は背筋の寒い感覚が消えないところだろう。
A級最終局(3月1日)の対戦カードは以下の通り。
△羽生 善治三冠(7勝1敗)-▲橋本 崇載八段(2勝6敗)
△三浦 弘行八段(6勝2敗)-▲高橋 道雄九段(2勝6敗)
▲渡辺 明 竜王(5勝3敗)-△郷田 真隆棋王(5勝3敗)
△佐藤 康光王将(4勝4敗)-▲深浦 康市九段(3勝5敗)
▲屋敷 伸之九段(4勝4敗)-△谷川 浩司九段(2勝6敗)
ところで、久しぶりに『将棋世界』2月号の「A級順位戦予想クイズ」に応募しました。いつも対戦表に勝敗予想は書き込んではいるのですが、投函するのを忘れてしまうのです。今年は締切当日に投函できました。
その予想ですが、8回戦で三浦-深浦戦を外してしまいました。今期こそ深浦九段に残留して欲しいと思ったからですが、深浦九段の8、9回戦での失速ぶりを考慮した最初の予想を貫くべきでした。
さて、最終局のクイズの私の予想は、
○羽生 善治三冠-橋本 崇載八段
○三浦 弘行八段-高橋 道雄九段
○渡辺 明 竜王-郷田 真隆棋王
佐藤 康光王将-深浦 康市九段○
○屋敷 伸之九段-谷川 浩司九段
羽生三冠の勝利は当然として(橋本八段ごめんなさい)、三浦八段のA級順位戦の最終局は、過去9年で6勝3敗(ここ5年は4勝1敗、3連勝中)の強さを考えると三浦八段の勝ちは動かない。渡辺-郷田戦は棋王戦や王将戦での流れで変動しそうだが、竜王の強さと先手番を考えて竜王の勝ち。
佐藤-深浦戦は私の希望。屋敷-谷川戦は、谷川九段に復調の気配はあるものの、順位戦先手番の屋敷九段の鬼のような強さを考えると屋敷九段の勝ち。
降級の有力3名が全員敗局で、降級者は高橋九段、橋本八段ということになるが、最終局の私の予想は昨年は5局中2局しか的中せず、一昨年は全局外しているので、当てにはならない。
この時点で、挑戦は羽生3冠と三浦8段の2人に絞られました…がしかし、十中八九羽生3冠が挑戦者になるでしょう。三浦8段は、5、6回戦の連敗が痛かったですね。橋本8段にはNHKでも勝っているので、俺的には「またかよ~」という感じですが、名人挑戦は羽生さんです。^o^
なので俺も9回戦の予想は、英さんと全く同じです。ということは、降級に関しては高確率で高橋9段と橋本8段の2人でしょう。
谷川九段がB1に降級するというのは、ちょっと考え難いですね。
ということで、9回戦が今からとても楽しみです(≧∇≦)
>十中八九羽生3冠が挑戦者になるでしょう
だと、いいのですが。
>橋本8段にはNHKでも勝っているので、俺的には「またかよ~」という感じですが、名人挑戦は羽生さんです。^o^
相手は剣が峰で、駒が躍動する将棋を指してくると思われます。
それに、橋本八段には竜王戦では、昨期はランキング泉で、前々期は決勝トーナメントで敗れていますし、今期の順位戦の内容は悪いので、油断はできません。
谷川九段には、私の予想を覆して、自力で残留を決めていただきたいです。
>谷川会長には自力で勝って残留を決めてもらいたいです。
ええ、そうですね。復調の気配がある谷川九段ですから、期待しましょう。
特に谷川新会長は、LPSAとの問題があり悪影響が出ないように、そして残留を願っています。
それから将棋界(順位戦)の歪みシリーズも読んでいますよ。英さんのこだわりを感じます。お忙しそうですが、次のブログ放電発信記事を楽しみにしています。
最後に女流名人位最終局は、素晴らしい名局でした。
順位戦でも、数々の名局が生まれることを期待しています。
私が一番忙しい金曜日というのが、悲しいのですが、どうせ深夜の勝負になるので関係ないかもしれません。でも、序中盤の深い読み比べもじっくり見たいですね。
午後5時現在、
△羽生 善治三冠(7勝1敗)-▲橋本 崇載八段(2勝6敗)は、羽生三冠が橋本陣を飛車ごと押しつぶしそうな気配。
△三浦 弘行八段(6勝2敗)-▲高橋 道雄九段(2勝6敗)
この将棋は、もう少し進まないと分かりません。
▲渡辺 明 竜王(5勝3敗)-△郷田 真隆棋王(5勝3敗)
後手の郷田棋王が、先手の攻めを顔面から受ける戦型を選びましたが、3時間を超す長考は、何か誤算があったのでしょうか?
局面の是非は分かりませんが、この長考が、終盤の時間切迫と疲労を招きそうです。
△佐藤 康光王将(4勝4敗)-▲深浦 康市九段(3勝5敗)
佐藤王将の方が模様が良さそうです。
▲屋敷 伸之九段(4勝4敗)-△谷川 浩司九段(2勝6敗)
右桂が働きそうな分、屋敷九段の方が良さそうです。
でも、勝負(ドラマ)はこれからだと思います。