英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

名人戦第1局【追加あり】

2011-04-09 18:01:38 | 将棋
 森内九段の快勝と言っていいでしょう。
 封じ手の△7五歩では△9五歩、△4一玉とためる手も有力だったが、先手の▲4六歩、▲3七桂、▲4七銀などとは一手の価値が低そうなので、妥当な仕掛けに思えた。
 これに対する森内九段の▲4六歩が非常に意外な一着だった。突っかけられた歩を取らないのは不自然だが、考慮時間が短かったことから、封じ手の△7五歩を予想して、一晩練った手だったと考えられる。
 流れ的には先手の利を手放した感じだが、羽生名人の感想では、意外に手がなくて難しかったようだ。
 ただ、対局開始時の先手の有利さ(52対48か51対49)が、後手にとっては五分五分以上の局勢になったような気がする。
 中盤、羽生名人の△3五歩は驚きであった。△3六歩と取り込んでも先手陣に響きが小さく、先手から▲3五桂の手段を与えるのであまり得な指し方とは思えない。
 その後、△1二角と受けるところを、強く△8五飛と馬取りに出たのが敗因となってしまったようだ。飛車に成り込まれても大丈夫との読みで、観戦した棋士の形勢判断も分かれるほどの難解な局面だったが、森内九段が正確に指し回し、徐々に勝勢を確立して行った。
 第1局、しかも後手番を負けただけなので、まだまだこれからである。しかし、羽生名人の指し手に若干のちぐはぐさを感じ、終盤も大人しく土俵を割った感があり(終盤の△5三角は自ら玉の逃げ場をなくし、勝負のアヤがなくなってしまった)、名人位防衛に不安を残す負け方だった。


 kapkapさんとのコメントのやり取りで浮上した疑問点を付加します
 【追加】
 終盤、私が疑問に感じたのは、▲7四桂(疑問図)に対して△7三銀と逃げた手です。

 △7三銀以下▲7一歩成△7四銀と進み、桂は得しましたが、手番は先手のままで急所にと金をつくらせ、守りの銀が離れてしまったプラスマイナスはマイナスが大きいように感じます。

 解説の渡辺竜王やその他の棋士も手を抜く手はまったく触れませんでしたが(△7四銀と桂を取らずに指す変化は検討されましたが)、▲7四桂の瞬間が反撃のチャンスだったように思います。

 この点について、kapkapさんと意見の交換をしています。よろしかったら、コメントランもお読みください。

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9 コメント

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私の感想 (kapkap)
2011-04-11 09:01:53
久しぶりに投稿させて頂きます。
震災から時が止まった気がしていました。
40年前に受験勉強で読んだラフカディオハーンの英文で、今回の津波そのままの話があったことを思い出します。
亡くなられた方々のご冥福をお祈りし、被災された方々にお見舞い申し上げます。

待望の名人戦が開幕して、今年も春が来た気がします。
私が観たTV解説ではほとんど触れられていませんでしたが、英さんのご指摘のように、羽生名人の封じ手△7五歩に対する森内九段の▲4六歩は私も驚きました。
ああいう歩は黙って取るもの、と思っていたからです。
結果として△8五桂、▲6六銀、△7六歩、と歩がそのまま進み、攻めの桂と守りの桂の交換ですから、羽生名人が悪いはずがないと思いました。
その代償として作った馬を森内九段があっさり捨てたのも意外でした。
また、7四桂から桂を取らせてと金を作る価値も私などには価値の程がよく分からないのですが、その後の流れを見ればなるほど、と言わざるを得ません。
第一局に関しては、森内九段の読みが深く、それに比して羽生名人の指し手がどうも軽かったようです。
次局に期待したいと思います。

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同感です ()
2011-04-11 15:47:14
 kapkapさん、こんにちは。
 震災に関しては、言葉が見つからないというか、言葉がないというか……。
 時が止まってしまった方が多いと思いますが、それでも春が来て、桜が咲くのですね。皆が桜を見てきれいだなと思える日が来て欲しいです。

 第1局は森内九段の快勝でした。
 封じ手直後の▲4六歩は解説がないというより、誰も浮かびませんでした。しかも、互角に戦えるのですから、その手を思いつき掘り下げた森内九段はさすが永世名人です。
 そのタイミング(森内九段は一晩練り、羽生名人は想定していなかった)で、封じてしまった羽生名人は不運だったかもしれません。もし、もう2手前だったら、森内九段も掘り下げなかったかもしれません。

 終盤、私が疑問に感じたのは、▲7四桂に対して銀を逃げた手です。桂は得しましたが、急所にと金をつくらせ、守りの銀が離れてしまったプラスマイナスはマイナスが大きいように感じます。
 解説の渡辺竜王やその他の棋士も手を抜く手はまったく触れませんでしたが(△7四銀と桂を取らずに指す変化は検討されましたが)、▲7四桂の瞬間が反撃のチャンスだったように思います。
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▲7四桂 (kapkap)
2011-04-12 09:28:45
英さん、おはようございます。
たしかに▲7四桂の瞬間がチャンスだった気がします。
まだと金はありませんし、竜も3三の位置で直接の脅威ではありませんね。
具体的には、△8四角、▲3一竜、△6五桂、▲6六銀、△7七歩、▲6二桂成、△6二同玉、▲8三金、△7八歩成、が浮かびましたが、これは次に▲8四金と角を抜かれそうです。
△6二同玉のところ△同角なら、▲7一歩成、△7一同角(歩成放置は7一銀)、▲7二金が厳しいか。
以上は羽生名人の筋(△8四角~△6五桂)の線で考えましたが、3五飛が働きませんね。2五に回っても、先手に歩2枚あるので、連打で止まります。
TV解説で渡辺竜王が指摘していた筋(△5五桂~△2五角)ですと、
例えば、▲7四桂、△5五桂、▲3一竜、△2五角、▲8三金、△4七桂成、▲4七同金、△3七歩成、▲3七同桂、△4七角成、▲4七同玉、△3六角(以下詰み)
勝手読みばかりですが、後者の筋が面白いかもしれません。
いずれにしろ、と金が出来て、3一竜が入ると、後手難しそうですね。
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追記 (kapkap)
2011-04-12 09:32:50
局後の感想戦等見ていませんので、全くの見当違いを書き連ねたかもしれません。
ご容赦下さい。
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同感です。その2 ()
2011-04-12 11:44:06
 kapkapさん、こんにちは。

 私も△8四角よりは△5五桂の方が有力だと思います。△8四角は攻防のようで、実は受けにも攻めにもあまり利いていないようです。
 とにかく▲7四桂の瞬間、△5五桂を利かせて先手の動きを牽制すべきだったと思います。実戦は言いなりになり過ぎた感があります。
 実際、△5五桂と打たれると先手も悩ましいです。放置すると△2五角が相当厳しいですし、かと言って▲5六銀とかわすのは余計に△2五角が厳しくなってしまいます。
 となると、kapkapさんの提示された攻め合いとなりますが、私の棋力では良くわかりません。ただ、きわどい一手争いの終盤にはなると思います。
返信する
指し掛け前後 (kapkap)
2011-04-13 09:05:35
英さん、おはようございます。

今回、名人戦棋譜速報(有料)の申し込みが都合で出来ていませんので、無料のニュース記事をいくつか読みました。
1日目終了時点で行方八段は、
「6割がた、早く終わっちゃいますね。どちらかが、すでに倒れてるはずなんで。(以下略)」
また三浦八段も、
「どちらが良いかは分からないですが、形勢に差がついているはずの局面。羽生名人の主張は、自玉の堅さとスピード。森内九段の主張は、一歩得の実利。主張点が真っ向から対決しています。どちらが大きいかが見どころです」
と述べていますね。
先手の一歩得は横歩取りなら当然ですから、ニュアンス的には指し掛け時点で羽生良しの見方だったのでしょうか。
2日目のTV解説で渡辺竜王以外の谷川、広瀬、木村、鈴木の各棋士が微妙に羽生持ちだったことを思い出しました。
棋譜速報申し込みを急がないとダメですね(笑)
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一日目終了時では ()
2011-04-13 10:38:36
 kapkapさん、おはようございます。

 1日目終了時、つまり、封じ手が明かされていない時点では、羽生名人が仕掛けるかどうか判明していないので、行方八段は断言しすぎでしょう。
 三浦八段の見解は、「羽生名人の主張は、自玉の堅さとスピード。森内九段の主張は、一歩得の実利」という点から、森内九段の陣形が整うまでに羽生名人が△7五歩と仕掛けると踏んでいます。
 で、実際に仕掛けたのですが、森内九段は歩を取らず▲4六歩で局面を収め、流れを緩やかにしました。ただ、1歩得の利を手放すことになったので、先手の得はなくなってしまったというのが、大方の見解です。
 さらに、森内九段の作った馬を羽生名人が△5四角と合わせて馬を消す手が有力(羽生やや良し)と控え室では見ていたようですが、羽生名人はそれも難しいところがあるという感触だったようです。
 中継サイトの解説では
「△5四角は▲7一歩成だと思っていたと羽生、以下△同銀▲5五馬△8五飛▲9一馬△8七角成▲8六歩△7八馬▲8五歩△7七馬▲7三飛(馬銀両取り)と進むと▲7一歩成の効果抜群。これは先手良し。」とあります。
 BSの解説で渡辺竜王は「馬を消しにいく手もありました」というような解説でした。
 羽生名人の△3五歩は、控え室ではほとんど考えられてなかったようです。△3六歩と取り込んでもあまり先手陣に響かないし、▲3五銀が生じるので、効率が悪い気がします。
 馬も消せない、仕掛ける手も難しいとなると、先手が互角以上なのか?う~ん、やはり、△5四角と馬を消しにいきながら、手順を尽くして8筋方面で優位を築期に行くべきだったのでしょうか。
 いや、しかし、実際は▲3五桂と打たれても、△8五飛のところで△1二角とすれば後手がやや良しというニュアンスの解説だったので、△3五歩で良かったのかもしれません。

 終盤は、龍を作らせても苦にしない(広瀬王位もそういう面がある)羽生名人は、駒得を重視したようですが、今回は龍の威力が勝ったようです。(渡辺竜王は龍(竜王)を重視)
返信する
そうですか (kapkap)
2011-04-13 17:56:15
馬を消しに行く△5四角はだめなんですね。

実戦通り進んで、△8五飛の手で△1二角が有力とのことですが、そのあと後手に▲3六銀と歩を払いながら桂に紐を付けて、落ち着かれるとどうなんでしょうか。
先手からは次に▲1四歩、△1四同歩、▲1四同香のような手があります。
△2三歩は銀が浮くし角道が止まりますからありませんね、△2二歩でも上記端攻めがありますから、角を投資した割に2筋は受かっていない気がします。
そうすると▲3六銀の次は△8五飛ですか。
▲3六銀、△8五飛、▲7六銀、△6五飛、▲6五同銀。
そこで△3五銀ですか。▲3五同銀、△6六桂、なるほど厳しい手があるんですね。
▲6六同歩、△7八角成、▲2一飛成、と進んでも、今度は△3一歩の底歩が利きますね。
そうすると△1二角は有力な気がしてきました。
このあたりでヘボの検討はお終いにしたいと思います(笑)

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へぼだなんて ()
2011-04-13 18:25:55
 kapkapさん、こんばんは。

>馬を消しに行く△5四角はだめなんですね

 いえ、中継サイトの解説は、けっこうひとつの変化だけ取り上げることが多いので、鵜呑みにはできません。
 △5四角も有力だったと思います。

>、△8五飛の手で△1二角が有力とのことですが、そのあと後手に▲3六銀と歩を払いながら桂に紐を付けて、落ち着かれるとどうなんでしょうか
>▲3六銀、△8五飛、▲7六銀、△6五飛、▲6五同銀。
そこで△3五銀ですか。▲3五同銀、△6六桂、なるほど厳しい手があるんですね

 ヘボだなんてとんでもないですね。
 中継サイトの解説でも、同様な変化が調べられていると言っていました。
 あと、△1二角に対し、「▲4三桂成なら△同銀▲3四歩△同角▲同飛△同銀▲3二馬△4二金で先手も大変」
 また、▲4三桂成△同銀▲1四歩の変化も検討されていたようです。

 また、お気づきのことがありましたら、教えてください。
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