英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

2015~16 A級順位戦最終局 その3

2016-03-10 21:27:56 | 将棋
「その1」「その2」、の続きです。
▲深浦康市九段-△広瀬章人八段
 3勝5敗で森内九段と同星ながら順位の関係で残留が決まっている深浦九段と、他局の結果に関係なく勝てば残留、負けると陥落という状況の広瀬八段の対局。


 先手の深浦九段が、「▲3五歩早仕掛け」を敢行。しかも、▲6六歩を省略しての早い動きだ。(通常は▲6六歩に△4四歩、または△7四歩が入っている)
 以後、5筋を中心に細かいやり取りがあり、△7四歩の銀取りを放置して▲5四歩と5筋突破を目指したのが第2図。


 以下、△7五歩▲7一銀△同銀▲5三歩成△同金▲5四歩と深浦九段は銀2枚を犠牲に5筋突破を確定させた。

 飛車、あるいは角で金を取って成り込めるところを▲5四歩と力を溜めたのが巧技で、深浦九段の強襲が決まったかと思われたが、広瀬八段も△4八銀▲5六飛を利かせてから△4四金と歩頭に出て、角交換を強要したのがさすがの切り返しだった。
 △4四金以下、▲同歩△同角▲同角△同歩と進んだ。


 ここで、▲5三歩成か▲7九玉と指すべきだったとのこと。▲5三歩成には、以下△4七角▲6八玉△5六角成▲同金のときに、△6九銀、△8六歩、△5九飛、△3九飛、△4九飛の5手段、▲7九玉には△4五角▲5八飛△8六歩▲同歩△8八歩▲4八飛△8九歩成▲同玉△8七歩▲7九玉△5五桂が想定されるが、変化が多岐で難解らしい。
 しかし、深浦九段は▲5八金と着手。この手は△4七角の王手飛車取り(飛車は紐付きだが)を防ぎつつ、銀取りにもなっているが、妥協した手。
 銀取りにかまわず△4五角が当然ながらツボを捉えた手。▲4八金と銀を取られるが、もともと深浦九段の強襲で銀を貰っているので釣り合いが取れる。それより、△5六角▲同金と先手の攻撃の要の飛車と角を交換を先手で果たせたのが大きかった。
 △3九飛▲5九銀と銀合いを強要してから、△6二銀と歩成りを防いだ局面は、後手の広瀬八段がかなり得をしている。

 以後、42手、約2時間20分指し継がれたが、局勢は変わらなかった。


 終局時刻は0時33分。広瀬八段(3勝6敗・4位)のA級残留、郷田王将(3勝6敗・6位)の降級が決まった。
 深浦九段も3勝6敗となった。順位(5位)の差で負けても残留は決定していた。


 深浦九段は4度目のA級昇級後、3勝6敗、5勝4敗、5勝4敗、そして、今年度3勝6敗。
 安定していると見ることもできるが、王位戦で2期連続、羽生名人に競り勝った時の凄みが感じられない。序盤、中盤の工夫や、中終盤の着実さの反面、本局の第5図のような難解な局面を、踏み込んで読み切る気迫が感じられないのは、私の気のせいか……
コメント
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