英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

名人戦第3局雑感 その1

2010-05-08 23:33:07 | 将棋
 羽生名人が3連勝、防衛まであと一歩です。羽生ファンとしてはうれしいのですが、この第3局は内容的には不満が多いです。

 将棋の内容に入る前に、気になったこと、気がついたことを少し。

 まず、BS中継。これは第1局から感じたのですが、オープニングのファンファーレのようなテーマ曲、名人戦の厳粛さをぶち壊しているように感じますが、私だけでしょうか。
 第3局の解説は渡辺竜王で聞き手は鈴木女流初段。渡辺竜王の解説は、形勢判断などの局面を検証する時、その根拠や考え方を示してくれるので分かりやすいです。
 聞き手の鈴木女流は、『囲碁将棋ジャーナル』では将棋を把握して手順もしっかり覚えているので、私の評価は高いです。
 初級者への配慮も心得ていて、有段者なら自明のことも、わざと質問してくれます。ただ、それが解説者のリズムを壊してしまうこともあります。しかし、これは背反する事象なので仕方がないです。
 ただ、変化手順の後、盤面を戻す時、時々あやふやになるのが気になりました。(端歩の位置が違って、そのまま解説が始まってしまったことがありました)


~挑戦者の三浦八段について~

A将棋の展開の予想

 研究が深く、序盤はその研究手順を踏襲し、研究範囲を超えるまで考慮時間をあまり使わないタイプなので、一日目にかなりのところまで局面が進む(第1局)か、消費時間にかなり差がつく展開(第2局)になるのではないかと思っていました。
 その予想は、あらかた当たっていると言えますが、その内容はかなり違ったものでした。

B名人戦開始後に判明した三浦八段の特徴を示す事がら
①封じ手の練習
 単に練習するのではなく、練習将棋ではあるが、実戦を利用して封じ手を経験した。まさに実戦訓練である。また、新聞社の記者に封じ手の書き方・形式などを事細かに質問していた。

②二日制の対局は思いのほか疲れたと漏らす
 初日から疲労し、対局後一週間は疲れが抜けないという。

考察
 ①は普通に考えれば、用意周到。
 しかし、第3局を観て、ちょっと違うと感じた。第3局はタイミング的には三浦八段が封じ手にしてもいいような展開だった。せっかく、封じ手の練習までしたのだし、二日制のタイトル戦でないと経験できない行為だ。なので、初日の夕方、封じ手にするのではないかと予想する人が多かったのではないか。
 しかし、封じ手にはしなかった。
 これをストレートに考えると、研究範囲のところで時間を消費するのは勿体ないという結論になる。けれども、②を合わせて考えると、違うような気がする。

 ②は名人戦前の予想とは逆の現象だ。事前研究を踏襲するだけなら、初日から疲労するのはおかしい。久しぶりのタイトル戦、前夜祭や多くの取材陣に気を遣いすぎたという推論も成り立つが、これも違う気がする。
 中継を見ていると、羽生名人の考慮中も必死に読んでいるように見える。また、33手目の▲3六歩に一時間20分の長考。「これしかないところなのに、何を考えているのでしょう」と渡辺竜王も訝しがっていた。
 おそらく、事前の研究やこれまでの読みの検証に加え、新たな変化や気になる変化を精密に読んでいたのだろう。

 ①②を合わせて考えると、物事に正面から誠実に対応するという性格であると結論が出る。まじめ、慎重、誠実の三拍子揃った棋士なのだろう。
 しかし、私の推測は、ここにとどまらない。もしかしたら、「慎重」を通り越して「心配性」なのではないだろうか。
 ちょっとでも気になる変化があれば、とことん考えてしまう。
 封じ手に関して言えば、自分が封じると、封じた手が最善手かどうか心配で眠れなくなるのではないかと心配しているのかもしれない。また、なれない封じ手がうまくできるか不安、できればしないでおきたい。でも、封じ手時刻直前に羽生名人に指される可能性もある。そういった事態も想定しての封じ手の事前練習だったのではないだろうか。
コメント
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