にれっちのつれづれ日記

本州最北端の小児科医にれっちの独り言(^^)

安易な薬剤・サプリメントの摂取はお勧めできません

2018-12-11 09:38:29 | 病気のはなし
高校駅伝の一部強豪校で貧血治療用の鉄剤注射が不適切に使われていた問題が発覚し、日本陸上競技連盟が、高校、中学、大学、社会人の競技団体に使用実態の調査をするという報道がありました。
思春期は、成人に向かって急激に体格が変化し、ホルモンバランスが変わり、また女子では月経発来があったりなどで、鉄欠乏性貧血が起きやすい時期です。
中でもアスリートの場合には、筋肉量の増大による鉄需要の増大、汗や消化管からの鉄排出量の増加があることに加え、特に女子では体型維持のために誤ったダイエットが行われることも少なくなく、鉄摂取不足(鉄以外の栄養素もですが)になって、鉄欠乏性貧血の発生が多い傾向があります。
貧血になると、血液中で酸素を運んでいる赤血球中のヘモグロビンが減ることで体内に十分な酸素が送られず、有酸素運動の能力が低下するので持久力が下がり、パフォーマンスが低下してしまいます。
鉄欠乏性貧血になってしまった場合には、食事で積極的に鉄の含まれた食品を摂取するとともに、鉄剤を内服することで比較的簡単に改善します。
ならば、どんどん鉄を摂ればいいのではないかと考えたくなりますが、そこに落とし穴があります。
鉄を過剰に摂取して本来必要な量を超えた時、尿や便から排泄されてしまえば問題ないのですが、残念ながら鉄は排泄されずに体の各所に沈着し、肝臓や心臓、甲状腺などの機能障害を起こす可能性があるのです。
当然、鉄欠乏性貧血になっていないにもかかわらず、持久力向上などを目的に鉄剤の漫然とした投与(特に静脈注射での投与は経口摂取よりも鉄の過剰が起きやすい)をすると、そのリスクは非常に高いものとなってしまいます。
鉄欠乏性貧血が疑われる時には、医療機関で採血検査を行えば簡単に確認することができます。
また、鉄補充を行う場合でも、定期的に血中の鉄や体内の鉄貯蔵状態を確認することで、安心して鉄の適正な摂取が可能です。
パフォーマンス向上には鉄さえ入れておけばいいなどと、安易に市販のサプリメント等による鉄摂取を行わずに、心配になった時には医療機関に相談をしてくださいね。

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