にれっちのつれづれ日記

本州最北端の小児科医にれっちの独り言(^^)

アレルギーの「生活管理指導表」は簡単には書けません

2017-05-10 11:34:22 | 病気のはなし
年度末や年度初めになると、「学校(保育園)から、食物アレルギーの書類を書いてもらうように言われた」という患者さんが来院されます。
その書類は「学校生活管理指導表(アレルギー疾患用)」や「保育所におけるアレルギー疾患生活管理指導表」というものなのですが、それを持ってきた保護者の多くは「何のための、どんな内容の書類」なのかはよく知らず、「アレルギーの書類」という漠然とした理解で、中には「アレルギーの検査をして結果を記入してもらえばいい」と思っている場合すらあります。
というよりも、その書類を保護者に渡した側の学校や園の先生たちでさえ、十分に理解がされているとは言えないというのが実情のようです。

アレルギー疾患(食物アレルギーのみならず、喘息や鼻炎なども含む)を持つ子ども(中学校=生徒、小学校=児童、保育園=園児)への対応については、学校では文部科学省(実際には日本学校保健会が発行)が示している「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」、保育園では厚生労働省からの「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」に基づいて行われるようになっています。

この両者は、もちろん細かい部分で違いはありますが、全体としては共通した考え方に基づいて作られています。
その中で、医療機関が食物アレルギーに対する生活管理指導表を作成する際に重要な点を挙げると、

1.アレルギーのある子どものうち、学校・園において特別な配慮や管理が必要であると保護者が申し出たものについて生活管理指導表を提出してもらう。
 → アレルギーがあっても、特別な配慮(除去食や授業等での特別扱い)が必要なければ書類は不要

2.診断については「食物アレルギーを血液検査だけで診断することはできない。実際に起きた症状と食物負荷試験などの専門的な検査結果を組み合わせて医師が総合的に診断する。」と明記さている。
 → 何を、どのような形(調理法)で、どの程度摂取し、その際どのような症状が出現したのかという事実が最も重要

3.給食で最優先されるべきは“安全性”であり、その確保のために、多段階の除去食や代替食提供は行わず、原因食物を「提供するかしないかの二者択一」を原則的な対応とすることが望ましい。
 → 症状の程度にかかわらず、「全く食べさせないか、アレルギーの無い子と同様に食べるか

ということになります。

これを、初めて受診した患者さんに対してその場で即時に対応するのが無理であることは、賢明な方ならば理解していただけるでしょう。

実際には、
最初の受診ではエピソードを細かく聞き取り、必要があれば血液検査や食物負荷試験等の計画を立てることになります。
その後は必要に応じて抗アレルギー剤の内服等も行いながら、どの食物を、どのように処理(調理)して、どの程度の量が摂取できるかを、症状発現に気を付けながら観察することになります。
その結果として、初めて正しい管理指導内容が決まります。
さらには、その後も加齢に伴い症状の変化(多くは軽症化)があるので、定期的に受診しながら除去の部分解除を行い、最終的には通常食が摂取可能な状態を目指して行くことになります。

食物アレルギーのお子さんをお持ちの保護者の方々は、普段からかかりつけ医との連携を図って、家庭での生活管理指導を受けておいてくださいね。

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