にれっちのつれづれ日記

本州最北端の小児科医にれっちの独り言(^^)

成長期女子スポーツ選手の体調管理に除脂肪体重(LBM)の活用を

2020-03-06 14:53:52 | 病気のはなし
成長期女子スポーツ選手が記録向上のために無理な減量をして体の機能に大きなダメージを与えていることが、最近いろいろな形で報道されています。
一番有名なのは鉄欠乏性貧血ですが(高校駅伝チームで病気でもないのに鉄剤注射をしていることが問題になりましたね)、それ以外にも骨折や痩せすぎによる無月経の誘発など、様々な問題が明らかなになってきています。
体重管理というとBMI(Body Mass Index)が有名で、これは身長(m)を体重(kg)で2回割り算した数値なのですが(これをcmとgで計算するのが小児のカウプ指数)、この数値には落とし穴があります。
簡単に言えばマッチョは筋肉モリモリで重いのでBMIが高く出て、サルコペニア(加齢や疾患により筋肉量が減少したもの)では脂肪タップリでも正常に出てしまう、ということです。
相撲の小兵力士の炎鵬関を例にとってみれば、身長1.68m、体重98kgなので、98÷1.68÷1.68=34.7となり、高度肥満に該当する数字になってしまいますが、だれがどう考えても炎鵬関を肥満だと思う人はいませんよね。
そこでアスリート、特に女子の体重管理の指標として現在注目されているのが除脂肪体重(LBM:主に筋肉量を示す)で、この数値を減らさない(成長期にあっては増やす方向)ようにエネルギー管理をするというものです。

今日の東京新聞WEB版に、順天堂大が大分の病院と一緒に開発したアスリートのための成長・コンディション管理アプリ「スラリマッスル」の記事が載っていたので、是非読んでみてくださいね。

  >>> 東京新聞WEB版の記事はここをクリック   >>> スラリマッスル(順天堂大)はこちらから

******** < 東京新聞WEB伴より> *******************************
 成長期にある女子のスポーツ選手の体調管理に、主に筋肉量を示す「除脂肪体重(LBM)」が注目されている。体重や体脂肪率を意識した減量を重視するのではなく、適切な食事の量を保ちながらLBMを指標とすることで、健康的に体の成長を促せるという。
 LBMは体重から脂肪量を引いた値で、筋肉量が七割を占める。第二次成長期には身長が伸びると必ずLBMも増えるため、その値をしっかり把握することで健康的に成長していることを確認できる。無理な減量などで、背が伸びているのにLBMが増えていなければエネルギー不足の証しで、身長の伸びが止まったり骨の成長も阻害されることになる。
 LBMを指標とした体調管理を支援するため、順天堂大女性スポーツ研究センターと西別府病院(大分県別府市)は、スマートフォン向けアプリ「スラリマッスル」を開発した。体重と体脂肪率を入力すればLBMを確認でき、記録を続けることで体の状態を把握しやすくする。また標準的な八~十六歳の女子選手四十八人の三年分の体組成データを基に、身長に対してLBMの値が適切かどうかを判定。足りない場合には追加で摂取すべきエネルギーの量を、おにぎりの個数に換算して表示してくれる。
 同センターは「成長が止まってからもパフォーマンスを上げるために、LBMを維持して増やすことは大切」とし、成人アスリートにも利用を勧める。今後は競技別やポジション別の理想的なLBMも研究する。
 女子選手の体調管理は体重や体脂肪率、身長と体重から割り出す体格指数(BMI)などが指標にされてきた。体重が増えることを過度に戒め、「BMIを減らせ」と指示する指導者もいる。しかし減量ばかり意識して必要な食事を取らないと、低身長や貧血、無月経、疲労骨折などが生じやすくなる。アプリ開発者は「気付かぬうちにエネルギー量が不足し、女性アスリート特有の健康問題を起こしかねない」と指摘する。
 そもそも同じ体積では脂肪よりも筋肉の方が重いため、アスリートなど筋肉量が多い人はBMIが高く出てしまう。西別府病院の松田貴雄医師は「BMIは肥満の指標には良いけど、アスリートの指標には適切とは言えない」と強調する。
 アプリのダウンロードは無料。インターネットで「スラリマッスル」と検索。