福井 学の低温研便り

北海道大学 低温科学研究所 微生物生態学分野
大学院:環境科学院 生物圏科学専攻 分子生物学コース

ブリザード

2007-01-19 13:28:00 | 南極

南極での私たちの野外観測は天候にも恵まれました。しかし、ブリザードのため3日間停滞したことがありました。それはスカルブスネスでのこと。

強風が吹き荒れ、外へ一歩でも出ると吹き飛ばされそうでした。そんな時は観測小060117屋の中でじっとしている他ありません。

生物の調査の場合、試料を採取した後、何らかの処理が必要です。日本に帰ってから、南極の微生物の顕微鏡観察をするために、試料に固定液(グルタルアルデヒドやホルマリン)を加えなければなりません。試料が腐ったりすることを防ぐためです。しかし、固定液の作用で微生物の形が変わったりしてしまいます。もちろん、微生物は死んでしまいます。

南極で生息する微生物の活動の様子を調べるには、どうしたら良いのでしょう? その簡単な方法の一つは、現地で顕微鏡観察することです。今回、南極に携帯顕微鏡を持って来ました。しかも、デジタルカメラを装着しているので、観察している最中にデジタル写真や動画も撮影できます。顕微鏡の解像度や画質は研究室のものに01_48比べれば、はるかに劣りますが、微生物の実際の生き様を探る上で多くのヒントを与えてくれます。たくさんの試料を採取したので、何時間あっても観察しきれません。

観察しながら、微生物との対話です。どうしてここにいるの? 何食べているの? 冬はどうしているの? 敵は誰なの? 仲間はいるの? 数えきれない質問を浴びせますが、相手はそう容易く答えてくれません。彼らと、じっくりつきあうしかないのですね。

荒れ狂う外。穏やかで静かな観測小屋の中。メンバー4人、それぞれがそれぞれのことごとで過ごした3日間でした。