福井 学の低温研便り

北海道大学 低温科学研究所 微生物生態学分野
大学院:環境科学院 生物圏科学専攻 分子生物学コース

クマムシ

2007-01-18 23:46:00 | 日記・エッセイ・コラム

昨日は仕事が終わらず、午前様。今朝は、院生の博士論文の発表練習。その後、全学のある委員会の資料作り。そして、昼食時にその会議。調整役としては結構気を遣う。時計を見ると午後1時過ぎ。研究室に戻り、冷えた弁当をかっ込む。「さくら」さんが、折角温かい弁当を運んでくれているのになあ。もったいない。

夕方の講義資料の印刷をティーチングアシスタントの院生に依頼。所内の「あれこれ」を世話役として対応。相方のAさんも良くやってくれて、感謝。その後、Tさんが、新しく出た研究結果の相談に来てくれたが、緊急案件対応のため、来週にしてもらう。Tさん、ゴメンナサイ。

そうこうしているうちに、講義の時間が迫る。身支度をして、午後4時に低温研を出て、高機能高等教育センター(学部の教養課程の授業を行うところ)に向かう。講義室N1で全学共通科目『寒冷圏の科学』を開講中。講義室はスチームでムーンとした暖かさ。スチームを閉じるが、室温はなかなか下がらない。こんな暖かな教室で、夕方の講義ならば、学生の皆さんも睡魔に襲われるに違いない。

講義内容をポワーポイントで用意していたが、コンピューターと液晶ディスプレーを繋ぐケーブルを忘れたことに気付く。しかたない、コンピューターなしで講義を行おう。ドキドキ。

胸が高鳴る。膝小僧がガクガク。午後4時半、講義開始。80名余の学部1年生(文系及び理系)と体験入学の高校2年生数名を前にする。今回のテーマは、「低温環境で活躍する微生物たち」。学生とのキャッチボールの中で、ある学生から「クマムシ」の名が挙がる。おおっ!他の学生の皆さんはその名を知らない。そこで、その学生さんに教壇に上がってもらい、黒板に「クマムシ」の絵を描いてもらう。「その絵から想像するものは何か?」、と問うと、別の学生が「ウルトラマンに出てくる怪獣だね」と。確かにそうだね。

クマムシ。それは、約数百μmの緩歩動物のこと。その姿が熊に似ているため、「クマムシ」と名付けられている。英語では、water bear(水熊)。この微小な動物の不思議さは、乾燥、真空、高温、高圧、放射線と言った過酷な環境を耐えぬくこと。もちろん、南極にもいる。

そうか。クマムシの本当の姿を、来週動画を使って、学生の皆さんに見ていただこう。

学部1年生の講義は結構楽しいので、あっという間に時間が過ぎてしまう。時計を見ると、終了5分前。講義のまとめと来週の予告をしたら、午後6時ぴったり。ティーチングアシスタントの院生さんたちが講義の後片付けをしてくれる。講義後の学生の質問にも対応。

チョークで白くなった手を洗うと、院生が、「しらかばドーナッツ、買って来ました。食べてください」と。おおっ、感動。今日が北部食堂でのドーナツ販売終了日のこと。

教室を後にして、JR札幌駅に向かう。徒歩30分弱。午後6時40分発の快速エアポートに乗車。車中でドーナツを味わい、脳細胞へのエネルギー源となる。

午後7時16分、新千歳空港に到着。羽田行きの搭乗券を購入。「孝四郎」で醤油ラーメンをすする。午後8時25分発の飛行機に搭乗。午後10時前、羽田到着。宿に着くと、11時を回っていた。明日は朝一番で都心にて会議。

早足で駆けた一日。今日一日のしめくくりに、コンピューターに保存していた、「南極のクマムシの動画」をマッタリと鑑賞。過酷な環境に耐え抜く「クマムシ」にカンポイ!