【6月13日(水)の記事からのつづき】
7 關係代名詞 which の文構造
關係代名詞 which(主格)が Forget Him といふ歌にあります。イギリス生れの曲のやうですが、ヒットさせたのは Bobby Rydell ([raidél])といふイタリア系アメリカ人の歌手でした。1959年頃から人氣が出た歌手で、Wild One や Volare、We Got Love などが有名です。映畫 Bye Bye Birdie に出演したことは前にも紹介しました。その折に發賣された彼のドーナツ盤 One Last Kiss / Bye Bye Birdie もついでにかけてみましたが、ノイズがひどくて……その點 YouTube のはうは兩曲とも良い音質で投稿されてをり、その技術には感心しました。1963年末(日本では昭和39年初め)に流行つた Forget Him が日本では最後のヒット曲ではなかつたかと思ひます。
YouTube などの檢索バーへの入力は bobby rydell forget him です。
Forget Him ( M. Anthony )
Forget him if he doesn’t love you
Forget him if he doesn’t care
Don’t let him tell you that he wants you
’Cause he can’t give you love which isn’t there
Oh, little girl, he’s never dreaming of you
He’ll break your heart, you wait and see
So don’t you cry now
Just tell him goodbye now
Forget him and please come home to me
下線部を眺めてみませう。’cause は because の縮約形ですから、直前の命令(「君がほしいなんて彼に言はせておいてはいけないぞ」)の理由を述べてゐることになります。「(なぜなら)彼は君に愛を與へることはできないんだから」と言つてゐます。先行詞 love の説明をするのが 關係代名詞節( which ~)ですから、「そこには(存在し)ない愛」といふことになります。すると、「君がほしいなんて彼に言はせておいてはいけないぞ、(なぜなら)彼は君に、そこには(存在し)ない愛を與へることはできないんだから」と歌つてゐることになるでせうか。
關係代名詞節の中では isn’t の主語がブランクになつてゐます。この缺如の氣づきにより、意識が前の名詞 love に向ふのかと想像されます。しかし、ここでは which が love の言ひ換へとして主語の役割を果してゐると考へると、日本人には讀みやすいのではないかと思ひます。
關係代名詞 which が關係詞節のなかで主語の役割を果してゐる時には「主格」といふことになり、(插入語句が無いときは)次に動詞が續くことになります。
關係代名詞 which が關係詞節のなかで、動詞や前置詞の目的語となつてゐる時には「目的格」といふことになり、(插入語句が無いときは)次に主語が續くことになります。
[例文]
7.1 The towel which you gave me wasn’t very clean. (あなたのくれたタオルはあまりきれいではなかつた)
7.2 It’s the problem about which we can do very little. (それは私たちにはほとんどどうしやうもない問題だ)
※關係詞のあとに不定詞句を續ける文の場合はあてはまりません。たとへば、
7.3 The teacher gave us an extension of the time in which to prepare our papers. (先生は私たちがレポートを仕上げる時間を延長してくれた)
※關係代名詞 which の所有格については、2012年6月13日付の拙稿 6項を參照してください。
【この項 6月27日(水)へつづく】