英文讀解自修室

  - in the historical Japanese kana/kanji orthography

・用例研究 151 <主語に條件①>

2018-11-05 | 用例研究

[用例研究 151] 〈主語に條件①〉

  これまでさまざまな條件の示し方と、條件を受けての歸結節に假定法の動詞や直説法の動詞が使はれるケースとを、紹介・解説して參りました。今囘より、主語に條件が示唆されてゐるケースを紹介します。見拔きにくいところがありますが、助動詞の過去形がヒントになります(would / could / might など)。

  ある條件が隱れてゐて、

・假定法過去なら〈助動詞の過去形+原形不定詞〉のかたちで現在のこと

・假定法過去完了なら〈助動詞の過去形+have+過去分詞〉のかたちで過去のこと

  について、話し手の思ひや推定が述べられます。(※ [用例研究31](2011年8月3日掲載)で Mr. Beasley がA cup of coffee would feel good. とつぶやいたのは假定法過去のケースです。)

 

□參考例文: 假定法過去の例です。主語 a Japanese にif s/he were a Japanese の意味が示唆されてゐます。(※ s/he は he or she の意味で用ゐてゐます)

151.1     A Japanese would take such a view of life.

                 日本人ならそんな人生觀を抱くだらう。

□參考例文: 假定法過去の例です。二番めの文の主語 I に if I were you の意味が示唆されてゐます。

151.2     "You know, I'm up to my ears in debt, but I have no idea what to do."

                 なあ、借金で首が囘らないんだが、どうしたらいいかわからないんだよ。

                 "I would start by spending only on absolute necessities."

                 ぼくなら、どうしても必要なものにだけお金を遣ふところから始めるだらうな。

□參考例文: 假定法過去完了の例です。主語 a true friend に if s/he had been a true friend の意味が示唆されてゐます。

151.3     A true friend would have acted otherwise.

                 本當の友達ならさうはしなかつたでせう。

□參考例文: 假定法過去完了で否定語が主語になつてゐる例です。

151.4     Nobody else would have thought of that.

                 他の人なら誰もそのことを思つかなかつたでせう。

 

[用例研究 151] 〈主語に條件①〉

 

  (BLONDIE  By Dean Young & Stan Drake)

1  Are you in the mood for a little snack?

1  No, thank you.

2  But don’t let me stop you.

4  A hundred tanks couldn’t stop him.

 

[解説]

1

・in the mood for~: 「~しようといふ氣持(/氣分)になつている」

  □參考例文:

   I’m in the mood for work.

   私は働かうといふ氣持になつてゐる。

・snack: 輕食

2

・let me stop: 使役表現です。〈let+目的語(~)+原形不定詞()〉のかたちで「~にさせておく」「~がするのを許す」といつたほどの意味で、「強ひて~にさせる」といつた強い意嚮は表はしません。Blondie が Dagwood を制止したがつてゐて、「彼女に制止させておく」「彼女が制止するのを許す」といふことになります。それに don’t がついてゐますからやや囘りくどい言ひ方をしてゐることになるでせうか。

3

・3コマめの讀者に向けた視線は、「ん?」といつた風に、問ひかけに含まれる自分のたくらみを見拔かれてしまつてゐることに對する、また彼女の應答のわかりにくさに對する、些かの戸惑ひを表はしてゐるのではないかと思ひます。

4

・A hundred tanks: 「百臺の戰車」。この主語部分に條件の意味が込められてゐます。例へば、「假に百臺の戰車が彼を押しとどめるなら、(それをもつてしても)」。Blondie 自身ではたうてい制止はできないといふことを示してゐます。果して四コマめに Dagwood のすがたはありません。

・couldn’t stop: 假定法過去の歸結節のかたちです。直説法で解すると「百臺の戰車は彼を制止することができなかつた」となり、場面にそぐはない解釋になりますが、假定法として解すると「たとへ百臺の戰車が出動しても彼を制止することはできないだらう」と、彼女の思ひを表はすことになります。ここでは a hundred と大きな數字と戰車を持ち出す大袈裟な表現により、「たとへ~でも(だめだらう)」といふ讓歩の意味合ひが感じられます。

□參考例文: 讓歩の意味が感じられる例です。even if he were offered it 「たとへ出されても」の意味が暗に示されてゐます。「(いくら好きとはいつても)朝からはさすがに…」といふ社會通念に依據した表現なのかと思ひます。

151.5     Bob likes a glass of beer, but he wouldn't enjoy beer for breakfast.

                 ボブはビールが好きだが、朝食には(、たとへ出されても)飮まないでせう。

 

[意味把握チェック]

1 「輕いものをちょつと食べたい氣がしないかい」

1 「しないわ」

2 「でも私に(あなたを)とめさせないで」

4 「百臺の戰車でも彼はとめられないわね(/彼を押しとどめることはできないでせうね)」

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